190   とびでばいん(アボガドパワーズ)
 
 前作から半年、ハイドとサクラは王立遺跡調査委員会の依頼を受けて再びアーヴィルの街へとやって来た。しかし、街では空中海賊による連続誘拐が起きていた。
 巻き込まれた形でも知人が誘拐されたとあっては黙っていられない。女性専用のほうきに乗ってサクラは飛び立った。ハイドを留守番に残して。
 
 アボパの新作は前作の世界観を用いてのシューティング。パッケージによると「プラスADV、横スク、寿司飛びシューティング」とあります。敵を倒すと寿司が出るというと、どうしても今は亡き東亜プランの「スノーブラザーズ」を思い出します。どちらもゲーム内容に関係ないところは共通していますね。
 
 特典として「終末の過ごし方」、「D+VINE[LUV]」のアレンジCDが同梱されています。初回限定でないあたりがいかにもアボパらしいです。
 このCDがなかなか良い出来です。はっきり言って本編の曲よりもこちらの方がよくできています。まぁ、ADVとRPG、それにSHTでは曲の傾向もまるで違うので、一概には比べられませんが。
 
 このゲーム、初回ロットの大多数は素敵なことに箱が開きません(スリーブが抜けない)。よもやインストール前に困難に遭遇するとは思いませんでした。いやはや、ユーザーの前に立ちはだかるのはバグだけではないんですね。
 ホームページを見れば色々とフォローがされています。取りあえず、嫌いな人の顔にでも見立ててパッケージを破りましょう。
 
 シューティングパートは全7ステージ。始める前に四段階から難易度を選択します。途中での変更は出来ません。
 物語があるせいか、残機制ではなくライフ制。よって力押しが可能になっています。コンティニューという概念はありません。ゲームオーバーもありません。つまりペナルティの類は一切ないんですね。いくらエロゲーとは言っても、もう少し緊張感があった方がいいような気がします。
 サクラの攻撃はファイヤ(〜way型)、ウインド(ホーミング型)、サンダー(前方集中型)の3種のショットにルーンショット、それにボンバー。
 3種のショットはアイテムを取るごとにパワーアップ。溜め打ちのルーンショットの威力は変わりません。当然、ボンバーは残弾制です。
 通常ショットが3種類あることにあまり意味はありません。ステージや敵による使い分けというのが必要ないためです。はっきり言って使いやすい武器のみ選択していればそれで充分です。もう少し工夫して欲しかったです。
 アイテムの発生や点数、それに威力の意味でもルーンショットの方が重要なのでますます意味がありません。困ったものです。
 通常ショットは押しっぱなしで連射なんですけど、この親切な機能にも思わぬ弊害があります。ボス戦前は会話シーンがあるのですが、この機能のために非常にメッセージをとばしやすいです。追い打ちをかけるようにこのゲームにはメッセージの巻き戻しはありません。初めからやり直さない限り、二度と読むことは出来ないのです。
 ここではストーリーの大事な会話がなされるのでかなり困ります。幸いボス戦前には警告音がなるので、そのときはマウスに切り換えることをお薦めします。これは街でも同じことが言えます。
 
 ステージ構成はかなり単調です。舞台は色々と変わるのですが、背景が背景でしかないのでアクセントに欠けてしまっています。
 当たり判定のある障害物とか、ステージ固有の仕掛けとかがあると良かったのですが。
 お手本は世間にいくらでも溢れているのでもう少し手を入れて欲しかったです。基本は出来ているので尚更そう思います。
 
 アドベンチャーパートはハイドが担当。その目的はHのみ。口では色々と言ってますが物語の役には全く立ちません。彼女に戦わせておいて、自分は女漁り。染ノ助、染太郎もびっくりの役割分担です。
 システム的には移動先を選んで会話するのみ。ここで目的(H)を果たさないとサクラは次ステージに行けません。ホント、難儀な彼氏を持つと大変です。
 ユーザー的には実にわかりやすく、「次ステージへのフラグが立ちました」とダイレクトに教えてくれます。親切設計もここに極まれり、ですね。
 シナリオはなんというか、シューティング用にカスタマイズされています。山も谷もなく、素晴らしいスピードでHシーンに突入。脱衣麻雀並みの強引さでハイドは戦歴を重ねていきます。ストーリーを「D+VINE[LUV]」の続きにしたのはこれが理由ではないか、とは考え過ぎでしょうか。
 
 原画は前作から引き続いて本田直樹氏が担当しているのですが、どういう訳かロリ化現象が起こっています。サクラだけは設定上、幼くなっているんですが、どう見ても全員……です。
 キャラもなんかあまり似ていないように思います。前作ファンには少々、しんどい仕上がりですね。別にギャグが主題という訳でもないのですから。
 
 音楽は矢野雅士サウンド。シューティングのせいか、やや精彩を欠いているような気がします。S.Eはなかなかの仕上がりですが。
 
 一度、エンディングを迎えるとシューティングオンリーのモードも選べるようになります。個人的には最初から選べるようにして欲しかった気もします。そういうのは駄目ですかね? ちなみに2周目はありません。
 
 まとめ。可もなく不可もなく、でしょうか。私には非常に残念ですが、シューティングの一作として名を覚えることはないでしょう。「コットンじゃん、コレ?」とか言われたら私にはフォローする術がありません。
 ああ、なんだか不意に「ガンスターヒーローズ」(シューティング扱い)とか「サンダーフォース」シリーズがやりたくなってきましたよ。
 お気に入り:シューティングだからねぇ……。
 評点:67
 
 深みもないんでキャラ別感想はなし。一言だけ書くなら、メインヒロインのミストには存在感がありません。外見的特徴がないのもツライです。
 


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