高岡進也(変更不可)は戸惑っていた。半年前の春の季節に新潟の地にやってきて、ようやく慣れてきたと思えば大雪の洗礼を受けたからだ。まだまだ義理の双子の妹たちと友人らに教えを受ける日々。やがて何気ない日常に解けていくはずであったが義父にひとつの提案をされる。酒造りを手伝ってみないか、と。引き受けた進也を待つものは。
新規ブランドハートブリングの第1弾。通常版の他にインターネットによる認証システムを用いたPlayGate版も発売されました。しかし、後者にはプレスミスが生じてそのままではプレイできなかったりと新システムの船出は順調ではなかったようで。ゲームディスクの発送や臨時のデータダウンロードが行われたようですが、パッケージとして新プレス版が出たのかは不明。
D.O.に関係があるのかないのか色々なところが似ています。パッケージやマニュアルのデザインだけでなくマスコットキャラクターまで同じ。そこまでしていながらブランド名を変える必要はどこにあったんでしょうか。まさか偶然の一致でもないでしょうに。
購入動機は原画とシナリオの酒造りという要素が目新しく感じられたから。
システムは基本に忠実なアドベンチャースタイル。
足回りはかなり快適です。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。コンフィグで調整すれば選択肢後もスキップを継続してくれるのはすごく便利でした。
バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、戻れる量はそれほどでもありません。
シナリオは長所と短所がくっきりと分かれています。
長所はテキストで日常会話はほどほどに面白く、特に主人公とヒロインが互いを意識するきっかけからその距離が徐々に近づいていく様子は非常に丁寧に納得のいく形で書かれていて好感が持てました。
短所は酒造りの描写と終盤の展開。酒造りの様子は酒蔵の中を背景にして、ひたすらその様子を教科書のように通り一遍に書いているだけなのでよほど興味がないと知識が頭に入ってきません。
そして終盤の展開。いわゆる起承転結の「転」の部分にあまりにも大きな難題が設定されていて常識的にクリアは不可能としか思えません。しかも、物語ですからそれを克服する訳ですが、文章の様子からではとても不可能を可能にする過程が描かれているとは思えず。明らかに用意した障害を扱いきれていません(注:1名は例外)。
好感度選択肢は今時では珍しいくらいにストレート。ヒロイン全員の前で誰に酒造りを応援されたら嬉しいか? と悪友に聞かれるなどいっそ微笑ましい選択肢が並んでいます。
本作は間の表現にやや難あり。日付表示もアイキャッチも存在しないにも係わらず場面転換が非常に唐突に行われます。大概は音楽も変わらず頭にも戻らないので慣れるまではかなりの違和感があります。なにせ最初の場面転換は登校中からいきなり夜ですから。絶えず文章から経過時間を把握しないといけないのも微妙なマイナスポイント。
Hシーンは均等に各ヒロイン4回ずつ。ここでも主人公とヒロインの心情はきっちりと描かれていて好印象。ただし、純愛ゲームらしくエロ度はほどほど。
CGは原画家の特色である「可愛らしさ」を引き立たせる形で彩色されていて絵買いに応える成果を挙げています。しかし、イベントCGが差分抜きで72枚というのはさすがに少なすぎるように思いました。数枚のSDカットによるフォローがあるのがせめてもの救いでしょうか。これの出来は通常のイベントCGとは違う味を出していて良いアクセントになっています。
立ちCGはポーズ、表情ともに多彩に用意されていますが、普通のゲームであることを考えると喜怒哀楽の表現が大袈裟すぎるような気がします。デフォルメしすぎといいますか。
HシーンCGはテキスト同様におとなしめ。さらに半脱ぎ属性の方には微妙に悲しい感じです。外は寒くとも中は暖かいからか、それともそれが本来のHという解釈からか主人公はとにかくよく脱がします。
音楽はいかにも雪国という感じの曲が用意されています。しかし、曲数の少なさ以上に同じ曲ばかり聞いている印象があり、あまり良いイメージが残らないのは残念なところ。
ボイスは主人公以外フルボイス。演技の方に問題らしい問題はなし。ただ一部のヒロインはHシーンになると若干……という気がしないこともないです。
まとめ。極めて普通の作品、というところでしょうか。シナリオでも書いたように良いところと悪いところが相殺し合っている印象を強く受けました。
酒造りにもう少し絵を含めた具体的な描写をするとか、そこに双子だけでも絡めるとかすれば他作品との大きな差別化に繋がったのではないでしょうか。
イベントCG枚数とか音楽とかからは省エネ作品という雰囲気も伝わってきます。
お気に入り:高岡沙雪
評点:60
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、鮎川早苗
本作のツッコミ女王。とにかく承服できない設定が多すぎます。横文字をカタカナでさえ覚えられずにどうやって英語で高得点をとるのでしょうか。つーか、授業中はアレルギーとか起きないのか。
お嬢さまは変わっているのか着物以外の私服は持っていないとか結婚しても旦那を名字で呼ぶとか首をかしげたくなることが多かったです。
あーそれとHの時にゴムもなしで後ろ→前というコンボは止めた方がいいと思います。病気になっても知りませんよ?
2、山吹千里
女の子には人前でも平然とペッティングするが男には触るのも触られるのも駄目というのはどうにも理解しにくく。や、レズだってんなら話はわかりますけどそうじゃないしねぇ。
家出の真相はやはり拍子抜けというのが正直なところ。あのセリフにカチンとくるかはタイミング次第だろうし、なによりあのテキトーな母ですから思慮深い発言なんてするはずもなし。思いつきを口にする、なんてのは千里が一番わかっているんじゃないかなぁ。まー、なんにしても人ん家に迷惑かけてまで黙秘する理由はわかりませんな。
3、高岡美雪
あまり目立たないんですが実は結構、姉と比べて良いトコ取りをしているんですよねぇ。冷静に特徴を比べると差は歴然と言いますか。しかし、ツンデレキャラとしては「ツン」の部分に勢いがないので印象の弱さはカバーできず。半脱ぎHが多めなのが救いでしょうか。
4、高岡沙雪
見た目、性格ともに可愛いところは総取りといった感あり。シナリオ的には料理は致死量、酒蔵にまともに入れない、体も弱い、朝も弱い(主人公を起こせない)、と一見して活路は全て絶たれているように見えるんですがなぜか目立っているという。恐らくは唯一、趣味の会話が光っているからだと思うのですが。ボーイズラブだけでなくパソコンのパーツに関する会話を可愛さ担当の沙雪がするのは印象的ですからねぇ。
あとは本作において酒造りの結果以外で唯一、普通らしくない失神グセ。Hシーンにも使われるこれがイメージを深めているのではないかと。ホント、純粋性能では苦しいのにねぇ。
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