アル王子(変更可能)はいつものように父王の呼び出しを受けた。またぞろ攻め落とした国の美姫でも連れてきたのかと思ったが王は一人。戸惑うアルに王は引退を宣言する。もちろん後を継ぐのはアルしかいない。ただし、王は条件を出してきた。覇者の印を手に入れよ、と。これまで姫をたらしこむことしかしてこなかった王子に活路はあるのか。いつものように期限はたったの20日だ。
いじってシリーズも遂に終わりの時を迎えました。本編3作、外伝1作、ミニディスク2作となかなかの数です。フィナーレを前になぜかシミュレーション要素が加わりました。文字通り予想外の冒険という感じです。
購入動機は原画と「2」のお手軽さがそこそこ気に入ったから。よってジャンルの変更は素直に不安でありました。
初回特典は設定大全集。
修正ファイルが出ています。環境によってはインストールさえできないので該当する人は落としましょう。
ジャンルはアドベンチャー+シミュレーションRPG。アドベンチャーは特に変わったところはありません。いつも通りのソレです。
シミュレーションRPGは斜め見下ろし型のタクティクスバトル。高低差がある以外はごくごく平均的なシステムを採用しています。味方ユニットはわかりやすく主人公と9人の姫のみ。メイドのニーナは参戦しません。行動順序が決まっていて全員分が終わると敵ターンに移行します。勝利条件も敵の全滅と非常にオーソドックス。
シナリオの間に挟まれる戦闘は10回。ひとつひとつの戦闘にかかる時間はマップの狭さもあって非常に短いです。どうやらシリーズのお手軽感はここでも生きている模様。ほとんど攻撃の度にレベルアップすることもあって爽快感もなかなか。各種の技や魔法もそれなりに見応えがあります。戦闘不能のペナルティは特にないようですが、強いて言えば頻繁にレベルアップするゲームなので、その機会を失うのがペナルティといえばペナルティでしょうか。
難易度はほどほど。エロゲーは簡単である、という固定観念から考えると少し難しい部類に入るかも。全体的な移動力が低いのでこれに慣れないと思わぬ不覚をとる可能性も。それでも「サクラ大戦」が難しい、という人でなければ問題ないと思います。
操作性も慣れれば悪くない、以上に仕上がっています。改善の余地もそれなりにはありますが、我慢できないというほどでもありません。ホイールを押すとその時点のまま行動終了はなかなか便利でした。個人的には一気に敵ターンに進む操作とかあるとマップ終盤など便利で良かったかと思います。
気になるのはマニュアルが通り一遍な説明であまり親切ではないことでしょうか。この手のジャンルに不慣れな方はやや戸惑うかもしれません。未だに私もよく分からないところがあります。ZOCと称される概念とか。
本作の特殊性は主人公にあります。まっさらな状態から出発する彼はマップクリア後の姫たちのHによってその特性を写し取ることが可能です。マップ中で得られる3種の使い捨てのアイテムと2種の繰り返し使える道具を組み合わせることによって様々な効果を得られます。その効果は技や魔法にスキル、あるいは基本パラメータと様々。もちろん対象となる姫の特性です。ただ、増えるだけの技、魔法、スキルと違ってその他の要素は戦闘中の激しいレベルアップのせいもあって正確な把握は困難です。理想的な主人公を作り上げるにはかなり苦労するでしょう。まぁ、テキトーにやってもそれなりに強くなるのであまり心配はいりません。
足回りはようやく人並みになりました。メッセージスキップは既読未読を判別してなかなかのスピード。ただし、Hシーンはその限りではなく既読扱いのようです。
バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが対象テキストの選択が少しばかりしにくいです。
各種鑑賞モードにおいて右クリックで抜けられるようになりました。当たり前の機能が備わることが実に嬉しく感じます。
個人的な環境が推奨環境ギリギリなんですが、鑑賞モードやアドベンチャーパートが前作までに比べてやたらと重いです。そのわりに戦闘パートは快適に動いていてよくわかりません。GHz以上になると全体的にスムーズに動くようになるんでしょうか。
シナリオ。姫の名前を呼び、ひたすらに誉めるだけであった前作から大きく進歩しました。戦闘や旅という要素が加わったことにより、キャラクターにこれまで出ることのなかった面が見られるようになって表現に厚みが増しています。日常の掛け合いも特徴が出るくらいには読めるものになりました。
Hシーンは総数100を越えるせいか、あるいはシチュエーションが10人の姫で同じせいか、文章的にかなりの類似性が見られます。努力の後は感じられるのですが、ヒロイン毎にまるでテンプレートで描いたように共通のキーワードがあり(アイリなら○○、かぐやなら△△というような)、全体でも主人公が姫を徐々に調教していく(調教ではないはずなのですが)かのような雰囲気があるので飽きやすいです。シミュレーション部と絡んでいるとはいえもうちょっと工夫してもらいたかったです。そのためにHシーンの魅力を削ぐようでは本末転倒ですから。
同意の上ですが触手やスカトロなども含まれています。
個別エンドはありません。ルートと呼べるものはひとつだけです。ハーレムも全員を集めたものはありません。
CGはシリーズのカラーを壊すことなく継承。シミュレーション部のユニットたちも普段の立ちCGのイメージを損ねることなく描かれています。小さくとも可愛くデザインされている姫たちは好印象。立ちCGに背景は相変わらず伝統という名の流用で潔いまでの省力化がなされています。
ユーザー側の勝手な思い込みとしてシリーズが進んでいくとボリュームが増していく、というものがあるのですが、思い込みはやはり思い込みでしかなくイベントCGの総量は「2」とほぼ同じです。
ポイントなのは姫が増えていることで、結果として1人あたりの枚数は減っているという、前作までにお気に入りがいればいるほど残念なことに。それでも、同じシチュエーションということを考えれば原画の坂下吹雪氏は最大限の努力をしてくれたと思います。差分も十分ですし、前作までの半脱ぎ不足もある程度は改善されました。
音楽はいつものいじプリ節。CG同様に見事な使い回しを基本としてシミュレーション部などに曲が追加されています。まがりなりにも戦闘なので脱力系の曲でなかったのは良かったです。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。既出ヒロインは同じ声優を採用、演技が異なるということもありません。新ヒロインたちも旧ヒロインに負けない演技を聞かせてくれます。
まとめ。ジャンルが少しばかり変わってもいじプリはやはりお手軽ゲーでした。忙しい人にも優しいプレイ時間です。ただ、セーブ&ロードを活用せずに真面目にゲーム中でHシーンを回収しようとすると時間はかかりますけど。
お気に入り:オーレリア、イングリット、ヴァレンカ
評点:70
以下はキャラ別感想。というよりもユニット別感想か。ネタバレはあるかなぁ。
1、アイリ
魔法使い系では最も使えないかも。移動力が2しかなく順番もかぐやより遅い。しかも、2系統の魔法はともに射程が短く使う機会はすごく少ない。意図的に使わないことには活躍するのは無理。体力面も最低で絶対に物理攻撃の矢面に立ってはならない。
実際サッパリ使った記憶がない。序盤のみんな弱かった頃に手はひとつでも多い方がいいと使ったくらいで終盤となると計画的に使った以外は全くなし。
2、かぐや
魔法使い系では最も役に立つ。移動力3はなんと言っても魅力。射程距離も長く使い勝手よし。回復魔法も使えるのでほとんど万能。順番も戦士系が終わったところで回ってくるちょうど良さ。唯一の欠点は高低差が1なことくらいですけど、実際にはそれほど困らない。
つーても結局はそれなりにしか使いませんでした。戦士系と比べたらね。
聞き慣れると彼女の声に和むようになってました。ほのぼのという言葉が相応しい雰囲気をボイスで生み出していましたよ。
大全集でかぐやの衣装デザインがぬがしやすく、とあったのにはやるせない思いでした。基本的にHシーンは脱がせるもの、という考え方なんですよねぇ、このシリーズは。残っているのはシャルロットの手甲やタイツにティアラぐらいがせいぜいで、それ以外はほとんどなにもないもんねぇ。
3、シャルロット
堂々の主戦力。順番も早く高低差も十分。技も射程が短いようだが、結局は使いどころがしっかりとある。レベルが上がれば上がるほど強力になっていく。
正直、欠点が見当たらず加減しないことにはレベルは一人旅となっていたことでしょう。
4、オーレリア
唯一の回復、サポートオンリーのユニット。ほぼ攻撃手段がないのでレベルは置いていかれやすい。順番が遅く、移動力も低いのでかなり使いにくい。が、役割の決まりきったユニットなので選択肢はない。特に麻痺回復はオーレリア以外では難しい。実はいないと一番困るユニットかも。
頼むから回復魔法は3マスまで届かせてくれと何度思ったことか。よって毎ターン毎ターン位置決めがかなり重要。考えて動かさないと全然役に立てられない。中盤以降はケチケチせずにアナレープシスを使った方が良いでしょう。
健気なキャラだと思うのだけれど、シナリオ上ではかぐやの助手に過ぎないんですよねぇ。Hシーンではとにかく声に出して望みを言う、というテンプレートなキャラにジョブチェンジ。色々と悲哀の漂うヒロインです。
5、レンファ
順番が早く、移動力が高い。こう来れば速攻を得意とする人ならば非常に重宝するユニットになるはずですが(古い例ですが「ママトト」ならライセンとか)、レンファはイマイチ。序盤から中盤の活躍がせいぜい。通常攻撃は射程2と役に立ちそうですが、思った以上に攻撃力が上がらないのでイマイチ感が強い。加えてZOCのせいで移動力がそれほど活かせない。しかし、何よりツライのは技の弱さと効果範囲の狭さ。如何ともし難いです。
終盤になると戦闘の最初くらいしか使いませんでした。肝心な時はいつも攻撃が届かない。格闘系なのにレベル調整が必要なあたり悲しすぎます。
ムービーの紹介が実に切ない。他は〜な姫とか書かれているのにレンファだけは「カンフーの使い手」デスヨ。姫ではないみたいです。
6、ルゥ
サポートオンリー。通常攻撃が十字方向なのは思ったより便利ではない。移動力も2しかないのでこの能力はないも同じ。攻撃力もそれほど上がらないし。サポート魔法も移動力アップ以外は気休め程度。麻痺回復に役立ちそうだが、ここでも移動力2のせいでほとんど役目を果たせない。
正直、中盤以降は何に使うのやらわかりませんでした。移動力アップを覚えてようやく人に役に立てるようになったというか。それでも使ってしまえば魔力もほとんど残らないんでお役御免でしたが。
7、フレイヤ
最低射程距離が意外と長い。移動力が低いので動かし方が重要。通常攻撃はほどほどだが技は範囲も広く使いやすい。メインユニットで縦、フレイヤで横、という感じに攻めると漏れが出にくい。
使うマップとそうでないマップの差が激しかったような気がしました。序盤はもう一歩ですが、終盤になると役に立ってくれます。
8、イングリット
アイリとドングリの背比べ状態。移動力が低く射程も短い。この2つを兼ね備えていると順番が早くとも遅くともあまり関係がない。高低差3も移動力が2ではほとんど意味を見出せず。
アイリよりはわずかにまし。けれども、我慢して使うというのは全く変わらない。魔法じゃなければどうにもならない相手とかいればもっと変わっただろうけど。
9、ヴァレンカ
順番は最後ながら攻撃力抜群。技も広範囲で使いやすい。ただ、最終奥義は莫大な魔力を必要とする。掃除屋のポジションなのだと思うがシャルロット、かぐや、フレイヤあたりが順調に育っているとヴァレンカに回る頃にはほとんど獲物が残っていないケースが多い。やはり、移動力の低さは厳しい。
お気に入りだったので優遇してました。ルゥの移動力アップ魔法はいつもヴァレンカに使っていたほど。移動力が上がるとZOC無効のスキルも意味を持つようになりましたし。最終奥義を使うのに必要なレベルは71以上。ここまで来るとラスボスは1ターンの攻撃でほぼ死にます。
シナリオ上も存在感があって良かったです。鎧の目に表示される各種文字に和みました。あわあわする様子も可愛らしいです。ただ、鎧の設定は面白いながらHシーンに全く絡めないのが少し不満。なんとか少しくらいは活用して欲しかったです。
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