学園が2年目になっても幼なじみに起こされる久住直樹(変更不可)の朝は変わらない。同居している従妹もあきれ顔。とても5年より前の記憶がない人間だとは思えない。新しい季節に出会う140センチに満たない新任教師、空から落ちてくる転校生はそんな直樹にとっての転機となるのか。
オーガスト第3弾。ここしばらくの業界の流れに沿ってか製作期間が順調に増加。前作から1年の月日が経ってます。第4弾はさらなる時間がかかるんでしょうか。
初回特典はコルクコースター3枚、マウスパッドに100ページオーバーのラフ設定付きマニュアルとなかなか豪華。売れた分を次作に反映してくれる作りには好感が持てます。スリーブからちょっぴり抜きにくいのはご愛嬌。
購入動機はズバリ見極め、ですかね。第1作「バイナリィ・ポット」の荒削りな部分がほどほどに気に入り、第2作「Princess Holiday」の小さくまとまった印象がイマイチであった私としてはこの第3作でオーガストの方向性を見定めようかと。サブタイトルのOperation Sanctuaryにたいへん嫌な予感がしながらも目を瞑って買いました。
パッケージによるとジャンルは東奔西走スクールADVだそうで第1作からのミニマムカテゴライズを貫いています。多分、気に入っているんでしょうからこれからも続くことでしょう。
ジャンル名はともかく、システムはマックスカテゴライズなオーソドックスアドベンチャー。ただ、諸般の事情か学園マップとチビキャラをわざわざ描いておきながらマップ移動方式ではなく、文章中の選択肢によってのみ分岐する方式を採用。
足回りは親切さこそ伝わってくるものの、完成度はまだまだといったところ。
メッセージスキップは巡航速度といったイメージ。シナリオボリュームを考えると相対的に遅く感じます。明らかに暇潰し道具必須。選択肢後に止まってしまうのも困りもの。既読未読は判別してくれます。
メッセージの巻き戻しは別画面で行います。ボイスのリピート再生も可能ですが、戻れる分量はかなり少なめ。
個人的に重要と感じるポイントは全く進化していないのが残念。設計思想は悪くないんであとは数字的な問題なんですが……。
シナリオはテンポの良さが取り柄だった前作を薄く薄く引き延ばした印象を受けました。恐らくプレイヤーからシナリオが短いと指摘を受けてのシナリオサイズだと思うのですが、ハッキリ言ってしまえば無駄に長いです。
言うまでもないことですが、シナリオサイズの肥大化はレベルが伴わなければ意味がないどころか、逆にマイナスのイメージを与えてしまいます。そして、シナリオのレベルはほとんど変わっていないかと。
日常会話はどこかぎこちなく、ボケツッコミがうまく機能していません。何か起こりそうで何も起こらないといいますか。会話として面白いこともありますが極めて稀。無味乾燥な会話がゲーム全体を横行しています。
惹かれ合う過程は無きにしも非ず、程度。全く表現がない訳ではありませんが、全体的に描写不足。それゆえにヒロイン側の言動に得心がいかないこともありました。
1作目にも見られた2人のヒロインで1つのシナリオという傾向が本作にも見られるのは残念な限り。それも共通シナリオのあとの個別シナリオでイベントを共有しているので随分と寂しい気がします。共通して使っているためにシーンの繋ぎがおかしくなることも見受けられました。世間的にこういうのは手抜きというと思うのですが。
サブタイトルの意味する後半部分は伏線がほとんどなく、かなり唐突な展開を見せています。初オーガストなユーザーはかなり置いてきぼり、前作をプレイしたユーザーは「またか」の嘆息をもたらすのではないかと。この展開を用意した意図がわからないのも相変わらず。全員が同じネタでなくとも良かったのではないでしょうか。
全シナリオ終了後には恒例のおまけシナリオが現れます。これの中身もこれまでと同様。
CGは更なる進化が感じられるものの、原画的にはもうひとつ。これまでにあまり挑戦していないデザインのヒロインや構図を描いているせいか、カット毎に顔が違って見えることもしばしば。
Hシーンは各キャラ綺麗に3回ずつ。体のラインはさらにふくよかになりましたが、個人的には表情があまりエロくなくなったように感じました。
立ちCGはポーズ、表情ともよく変わってくれます。性格が絵に出ているのも好印象。衣装も衣替えを含め、かなり豊富に用意されています。ただ、フェイスウインドウに全くと言っていいほど意味がないのが気になります。立ちCGには適用できないSDカットなども特に見当たらなかったのですが。それとは別にフェイスウインドウ内の衣装が場面に応じて変わってくれるのは嬉しいところ。
背景は折り紙付きの美しさ。よくぞここまでというくらい描き込まれています。
音楽はBGMとして可もなく不可もなく。プレイ後にはあまり記憶に残らないような気がします。ただし、主題歌は耳に残りやすく、映像とも相まって楽しげな雰囲気がよく出ていると思います。
ボイスは安心の実力陣が担当。個人的に聞き覚えのない方も問題ないどころか良い演技をしていました。男性陣も含めてフルボイス。
まとめ。時間をかけて作った無難な作品。どこを見てもこれまでの延長線上でしかなく冒険している箇所がないのが残念。奮起を望んだシナリオも良くない方向に予想通りでした。個人的に次はちょっと厳しいかと思います。
お気に入り:藤枝保奈美……、かなぁ
評点:55
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、天ヶ崎美琴
メインヒロインらしいようでらしくない微妙なお方。個人的なプレイ順序が自然に最後になったという自分ルール的意味合いではメインっぽいんですけど、客観的にはとてもそう見えない。声優的にもそんな気がします。
付き合っている気が全くしない、というのが美琴に感じたウィークポイント。大なり小なり変化がないとやっぱり面白くありません。そのくせ、空気のような自然な存在って訳でもありませんし。
2、藤枝保奈美
デザイン的にたいへん好みなお方なんですが、顔が安定しないのがどうにもこうにも。立ちCG、イベントCGとも「誰?」ってなカットが多かったのが悲しいです。正面を向いた基本カットは実に可愛いんですけどねぇ。
保奈美の制服姿の立ちCGって妙に胸が苦しそうに見えます。つーか、あれはもしかしなくても押しつぶされているような。エプロンをつけるとなぜか、胸が強調されるのが笑います。やっぱりリボンは外しているんでしょうか。あんだけ大きいですし。
シナリオ的には保奈美の方がメインっぽい感じでした。ドングリの背比べとはいえ、まだしも盛り上がってましたし。エンディングはあまりに工夫がなくてちょっと泣けましたが。
3、橘ちひろ
シナリオの起伏の少なさというのはある意味で重要です。印象が薄ければ薄いほど北都南さんの有り難みがわかりますから。ロリキャラはこの人の独壇場と言っても過言ではありません。
温室で水浸しのCGがなんかお気に入りです。あの視点(瞳)の動きが妙に好きなんですよね。いかにもっぽい感じが良く出ていて。
白いワンピースで自転車特訓はかなり無茶だと思います。つーか、まわりも教えてやれよと。
それにしても主人公への告白を茉理に迫られたからといって、未来人であることを明かすのはどうかと思います。腹芸が出来ないにも程があるのでは。
エンディングもどうなのかなと。このゲームにタイムパラドックスを持ち出すことがナンセンスという気がしないでもないですけど、別れた次の瞬間に主人公のところに帰ってこれるんじゃないですかねぇ。その方が年の差も埋まるし、いいんじゃないかと。
4、渋垣茉理
中東転勤。もしかしたら、このゲームで最も笑ったところかも。ここまでお膳立てされた設定でまだやりますかと。しかも、茉理だけ。
このシナリオで最も気になったのは誕生会イベント。ゴルァ! ヤカンが誕生日プレゼントって長年連れ添った夫婦かい!? と激しいツッコミを入れたくてたまらなかったです。茉理は喜んでるし。
もひとつ保奈美の誕生会イベントも。保奈美への主人公のプレゼントが茉理の料理を試食しただけって、あなたは鬼ですかと。長年世話になってそれだけですかと問い詰めたい気持ちで一杯でした。
最後は茉理の日記。今、考えても何のためにあったのかよくわからない。まるでインパクトのない内容だったのですが。予想の範囲を一歩も出ていないというか。
5、野乃原結
立ちCGのキュートさが結先生の魅力ですな。ロリ属性の方だけでなく可愛い物好きの方まで引き寄せるのが罪深さ。ボイスも想像以上の破壊力でありました。
それにしても、濡れた水着でベッドに寝かせる主人公は脳が膿んでいると思います。着替えさせられないなら、そのためにカフェイン漬け教諭がいるでしょうに。
6、仁科恭子
いつも思うんですが、オーガストの年上キャラ(除くラピス&結先生)ってどうしてこうも印象が薄いんでしょう。ラストから2番目にプレイしたのに内容をまるで覚えていないんですが。
7、秋山文緒
サブキャラにしては良い声優さんがついているのはコンシューマー要員ということデスカ? 情報が少ないゆえかなんだか良キャラに見えて仕方ないです。
メガネがいないなー、このゲーム。と思ったらひっそりと委員長が担当。個人的にメガネは苦手ですが、ズレメガネはオッケーなので委員長は割と好きですわ。
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