朝比奈真一(変更不可)は無職だった。大きな目的−世界中の人を笑わせる−があったが、それは控えめに考えても就職に繋がりそうにない。でも、真一は気にしない。しかし、幼なじみの桐山ヒカリはそれを許さない。一方的に押され気味でも話は一応、平行線。ところが、思わぬところで事態は解決。
真一に目をつけて迎えたところ、それは地球防衛軍。地球を狙う宇宙人に対抗する力、メガラフターに真一は欠かせない存在なのだ。とはいっても月給25万がそのまま命の値段ではヒカリが納得するはずもない。はずもないが真一は気にしない。果たして地球の命運は。
ライアーソフトの新作はよもやのロボットもの。多彩なゲームを世に送りだしてきたにも係わらず、お金がかかりそうなジャンルには手を出してこなかったことを考えると驚きです。まぁ、蓋を開けてみればこれまでと同じようなスタンスで作られた、中規模でまとめられたゲームでしたが。
ライアーソフトなのでやはり「笑い」に期待して購入しました。
初回特典の類は特にありません。
ジャンルはパッケージによると「愛と笑いで地球を救うボケツッコミSLGアドベンチャー」。なんだか名は体を表しているようで実はそうでもないです。基本がアドベンチャーで各話の最後にSLGが用意されている、この点では間違いありません。しかし、「愛」はともかくとして「笑い」はかなり怪しいです。「地球を救う」笑いの表現はカードを使ったメガラフターのネタ披露。設定的には確かに「笑い」なんですが、プレイヤーの目にはただネタの種類だけが書かれたカードに過ぎません。主人公が最後に必殺技の名前を叫ぶあたりも「笑い」から縁遠くさせているような。
ゲームは1話完結の全13話構成。予告はありますが、アニメのようなオープニングやエンディングはありません。基本的な流れはアドベンチャー→戦闘→SLG→次回予告という感じ。SLGで開発したカードでデッキを組んで戦闘に望みます。ルールは簡単、場の空気を上げて相手を笑わせる(高い数字を出す)こと。カードの種類が相手の好みを表していて、好みはイコール効果があるという意味。そうやって相手の耐久力を減らしていくと戦闘に勝利します。負けると即ゲームオーバー。戦闘からのコンティニューとかありませんので注意が必要です。ちなみに通過済みのものであれば2周目以降はスキップ可能。
ここまでで既におわかりかとは思いますが、戦闘シーンとは便宜的な呼び名で本作は「戦わないロボットもの」だったりします。古いところから例えれば歌の代わりに笑いを用いた「マクロス7」のようなものでしょうか。つまり(と繋げていいのかわかりませんが)、メガラフターのいかにもなデザインに対して人型ロボットの格好良さを見せるような演出は一切ないんですね。一番の頑張り(?)が胸部が光る一枚絵ですから。やっていることは電光掲示板のネタ表示という意味ですし、期待の仕方を間違えるとかなりがっかりします。
SLGとは地球防衛軍を経営すること。それも一パイロットの主人公が。偉いところから予算をもらえない防衛軍が宇宙人を使って防衛費を稼いで運営、というアイデアはさすがにライアーソフトという感じがします。しかし、実際のSLGはひたすら手間がかかるだけでゲームとしての面白味が皆無。正直、時間稼ぎのための足かせにしか見えません。特に2周目以降は面倒さと退屈さがかなりのもので、テンポを損ねているように感じました。せめてもの救いはバランス調整が優れているので戦闘に緊張感があることでしょうか(それも所詮は1周目だけですけど)。
本作は本編中にヒロインの攻略に関する情報がゼロなせいか(それらしい選択肢とかがない)、セーブデータにヒントが用意されています。データにヒロインの姿があれば攻略条件を満たしているという意味のようです。
足回りはいつものライアー仕様。ただ、いつからかプログラムが外注になったせいか動作は今回も極めて安定しています。メッセージスキップはCtrlキーの押しっぱなしのみで後はシーンスキップ。後者は既読未読を判別してくれます。前の選択肢に戻る機能もやはり標準装備。
バックログはメッセージウインドウ枠をそのまま使って行います。使用中もテキストの色が変わらないのもいつも通り。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。
シナリオはギャグとシリアスの乖離が激しいです。埋めきれない溝の名は構造的欠陥、という印象があります。というよりパッケージのうたい文句からして本作がシリアスメインであるとはとても思えないのですが……。
攻めてくる宇宙人は元ネタの存在するものばかり。言うまでもなく元ネタを活用したパロディが目的です。対象年齢は20代後半以上。防衛軍側もそれを受けてのギャグがメイン。それが後半(個別ルート)に入るといきなりシリアスになり、ギャグ担当のキャラクターは半ば退場状態。あまつさえSLGもなくなります。防衛軍としての日常をパロディとギャグで積み重ねてきたというのに。どうしてもシリアスがやりたかったなら、せめてパロディはもっと控えめにするべきだったのではないでしょうか。
またシリアス設定のために主人公が「笑い」に全く向いていない(面白くない人間だから笑いを目指している)、さらには恋愛ゲームの主人公にも向いていない、という性格なのはかなり厳しいです。これはシリアスパートでも足を引っ張っているような。
意気込みは伝わってくるものの、明らかに二つの要素が同居できていません。基本としては良いものを持っているだけにもったいないです。シリアス部だけを別個に見た場合、その描写は悪くありません。だからこそ、もったいないと感じてしまうのですが。
ヒロイン描写に関してもやや弱さが感じられます。メインストーリーに乗じた形でしかヒロインを描いていないので思い入れを持つのがかなり難しいです。もっとヒロインの魅力が伝わってくるような(できれば防衛軍から離れた)イベントが欲しかったところ。
Hシーンは各ヒロイン1回ずつ。正直、あまり必要ないものがほとんどであるように感じました。宇宙人ともH可能ですが、なにせヒロインでさえ……な訳ですから。ま、ライアーにエロを期待する人もあまりいないでしょう。
CGは基本的に「可愛い」を基準に描かれているように見えます(除くメカ)。フェイスウインドウは各キャラ豊富に用意されていて、SDカットと合わせて会話を盛り上げてくれるのですが、それもギャグに限っての話。このカットをシリアスな場面でも使っているのでかなり興醒めします。
フェイスウインドウのカットが頑張っているせいか、立ちCGは服装以外それほど変化なし。ポーズも棒立ちっぽいものが多いです。
イベントCGは上述のHシーンにほとんどが費やされているので実のところ、あまり見た覚えがありません。そう枚数もあまり多くないですしね。
ロボットは、というかメガラフターは見た目に格好良いのですが、そのデザインがそれ以外にサッパリ反映されないのが悲しいところ。宇宙人ロボのユーフォリアンはなかなかですが、どこの星から来た宇宙人であってもデザインが2種類しかないのはさすがにどうかと思います。
音楽はメリハリがきいていて頑張っているように感じました。ただ、ライアーの曲はいつもレベルが高いだけにそれらと比較してしまうとややツライかも。
ボイスは残念なことにパートボイス。容量からの問題なのでしょうか。プレイ中はどうにもその区別のポイントがわからなかったです。
どう考えても不可解なのは味のある男性キャラにボイスがないこと。特に万城目博士にボイスがないのはこのゲームの損失ではないかと。
演技のレベルは安定していて申し分ありませんが、防衛軍指令、村松パスタとオペレーター響七海の声優の声質がよく似ているのは配置として微妙な気も。
まとめ。見た目と中身の食い違いが激しい作品。広報展開も含めて色々と考えた方がいいのではないでしょうか。ライアー初心者なら騙されたと感じる人もいるかも。
補足:特定のシナリオをクリアするとパスワードが出てきます。これを使って追加シナリオをダウンロードできるようです(5月28日現在、まだ公開されていません)。
お気に入り:万城目博士、マーズ星人、ステゴロ(ヒロインがいません)
評点:63
ヒロインへの思い入れのなさゆえにキャラ別感想はありません。
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