149   静寂は闇の調べ(Remain)
 
 世界中を焦土と化した未曽有の大戦が終わり、復興の兆しが見え始めた。穂積尚治朗(ほづみ しょうじろう)は、生まれ故郷へ向かう汽車に乗っていた。
 尚治朗宛てに届いた手紙に、実の父親と遺産相続の事が記載されていたのだ。
 初めて聞かされた事実。顔を見たことすらない実父。心の奥底に眠る、朧な記憶。様々な思いを抱きながら、尚治朗は生まれ故郷の洋館に向かう。
 錆びかけた鉄門を入った所で、一人の少女が声を掛けてきた。不思議そうな表情をする尚治朗を見下ろし、少女は失望の表情を浮かべる。
 「あたしは今でも、ちゃんと憶えているのに…」
 少女と過ごした幼い頃の思い出とは、一体何なのか。そして、尚治朗をここへ呼び寄せた穂積善造(ほづみ ぜんぞう)の真の目的とは…?
 −血に彩られた、憎しみと悲しみの幕が開く−
 (パッケージより抜粋)
 
 Remain第2弾。ここしばらくのエロゲ界の傾向なんでしょうか。特別なトラブルがあったようには見えないのに2作目に1年を越えた期間がかかるというのは。本作品もその例にもれることなく1年半以上が過ぎています。ゲームの規模が大きくなっているというならともかく、むしろ小さくなっているのではないかというケースもしばしば。ゲーム制作は難しい、で済ませて良いことなんですかね。少なくとも期待している人間からすればねぇ。まぁ、ここのメインはすたじおみりすなどのデバッグ作業ではないかという気がしないでもないのですが。
 
 購入動機は雰囲気が気になったから(別に悪い意味でなく)でしょうか。
 
 例によって例のごとく修整ファイルが出ています。それほど大したものではないのですが、とっととあてておきましょう。
 
 システムはオーソドックスなアドベンチャースタイル。ただ、戦後間もない洋館での厳かな雰囲気をぶち壊すに充分な試みが導入されています。
 それは好感度ゲージ。特定の選択肢を選んだ際に上がったり下がったり、わざわざハートをあしらったゲージが動きます。少なくとも雰囲気を大事にしたいならもう少し考えた方が良かったのではないかと。というか、初めて見た時は笑ってしまったんですが。しかも、このシステムというのが意表をつき過ぎるというか、意地悪な選択肢内容のせいで用意したのではないかというあたりどうにも。
 このゲームではテキストにルビがふられることがしばしばあります。その際に行間が変わるんですが、どちらにしても一度にウインドウに表示されるのは2行まで。これなら行間は常に一定である方が良いのではないでしょうか。
 足回りはかなり優秀。メッセージスキップは実用的なスピード。もうちょい早くても良かったかもしれません。コンフィグを調整することでオートモードにもなります。贅沢を言えば選択肢を挟んでもスキップを継続してくれるとより良かったです。
 メッセージの巻き戻しは別画面で行います。ボイスのリピート再生も可能で容量もかなり戻ることが出来るようです。リピート再生可能なゲームではかなり珍しいのではないでしょうか。ホイールマウスにも対応していますが、長い分量を戻りにくいのが残念です。スクロールバーとかあればねぇ。
 
 シナリオは明らかな未完成です。企画の段階の60〜70%くらいしか出来ていないのではないでしょうか。納期まで時間がないからこれでいいや、とでもいうような作りが見え透いています。
 ヒロイン6人のうち、2人は個別ルートに突入した途端に選択肢が一切、出現しなくなって展開もいい加減になり、文章量も激減という豹変ぶり。
 残りの4人も体裁こそそれなりに整えていますが、必要最小限かそれ以下の描写しかされておらず、寂寥の感がひしひしと伝わってきます。加えてオーピニングデモに書かれた各ヒロインのセリフ、そのシナリオのテーマ的なものが全く内容に反映されていません。それどころか結果的にまるで関係ないものまである始末。
 当ページであらすじをパッケージなどから引用するのは何らかの意味がある時。一番下にある文章。とても内容と合致しているとは言えません。どこも血に彩られてはいないし、あまり憎しみもなかったような。
 さらに書かれたインモラルサスペンスアドベンチャーの文字。どこがインモラルなのかと開発者には問いたいところ。九分九厘、純愛しかなかったような気がしますが。
 さらにさらにぼかされたパッケージの画像。その中には明らかに本編では使われていないCGが。しかも、3P。これが恐らくはインモラルの名残ではないかと思いますが、完成しているCGがありながら使えないというエロゲーとしては見事な本末転倒っぷり。
 このように全てのベクトルがこの作品が未完成であると告げています。これでは失望するな、というのが無理な話です。延期ばかりするのも問題ですが、こうまであからさまな未完成というのもどうかと思います。
 
 CGはすでに書いたように未使用CGがあるくらいですから、原画の魅力を損ねることなく、しっかりと塗られてます。しかし、使えない訳ですから枚数は少なく、部分違いを除くとわずか60枚。これでは残念ながら及第点以下というしかありません。
 立ちCGは表情が非常に多彩。照れた表情が素直に可愛いと思える出来に仕上がっています。
 
 音楽はここの系列のブランドらしくなかなか聞き応えある曲を揃えているんですが、普段のシーンではヒロインが登場しないと曲が鳴らないケースが多いのが難点です。別段、効果音を聞かせようってことでもありませんし。
 ボイスはキャラに合ったキャスティングがされていて好印象。レベルも安定していて、安心して聞くことができます。
 
 まとめ。プロ意識の欠如したやっつけ作品。延期か見切り発車か。エロゲー界の深刻な病理の一端が垣間見えるようです。どっちにしたってユーザーは8800円を払う訳で。良い印象が残るはずもありません。
 お気に入り:穂積一草(デザインや照れた表情が二重丸)
 評点:30
 
 どうしたって書く気にならないのでキャラ別感想はなし。


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