128   ショコラ〜maid cafe”curio”〜(戯画)
 
 元ヤンキーの結城大介(変更不可)は何の因果かアンティーク(メイド)喫茶の二代目。現在は将来の店長候補としてこき使われる毎日。そんな中、父親が再婚することに。しかも、知らされたのは新婚旅行に向かう空港からの電話で。唖然とする大介を置き去りにするように、出来たばかりの義妹を迎えに行けば世間知らずの家出娘に出会うわ、店長代理に抜擢されるわ、腐れ縁の同僚と常連に苛められるわと気の休まる間がない。果たして両親の戻る3ヶ月後まで無事に勤め上げることができるのか。そして、そのとき隣にいるのは。
 
 どの程度の共通性があるのかわかりませんが、一応は「Ripple〜ブルーシールへようこそっ〜」のメインスタッフが関わっている当作品。となれば当ページ管理人としてはそれだけで購入動機としては充分な訳で。メイド属性がないにも係わらず買いました。
 戯画といえば大きな箱に1枚きりのCDという切ない仕様が基本な訳ですが、最近はどうやら変わってきたようで。本編2枚に初回特典マキシシングル1枚という豪華さ(戯画にしては)。ケースもブックレットのようになっていて驚かされます。
 
 いつものことと言えばそれまでですが、修整ファイルが出てます。もっともバージョンアップファイルと称した方がいい内容なので必ずあてておきましょう。仕事シーンのカットや過去ログの追加など明らかにプレイ環境が向上しますので。ついでにシナリオライターの要望が実現して(ホームページ内のインタビュー参照)ヒロインの一人、香奈子さんの黒ストッキング破かないパッチも公開されてます。ノリのいい企画です。香奈子さん好きな方とコアな属性をお持ちの方は是非に。
 
 システムは移動場所選択型のアドベンチャーなんですが、少し変わった要素が含まれてます。店長代理である主人公にはウエイトレスとは異なる仕事があってそれが日々たまっていきます。つまりヒロインばかり追いかけている訳にはいきません。あまり仕事をため過ぎると警告を挟んでゲームオーバーになります。ほどほどに仕事もこなさなければなりません。
 ぶっちゃけ、ここがゲーム性ということですが、ゲームとしては微妙かと。当然のことですが、ゲームとして面白い訳はありませんし、イベントの日付を固定しない(できない)シミュレーション的なシステムゆえに連続した会話も望めませんので。プチ店長候補気分を味わうだけのシステムにしては代償が大きいような気もします。
 足回りは「Ripple」からは進歩していますが、まだまだの点も。メッセージスキップは非常に高速ではありますが、相変わらず既読未読を判別しませんし、仕事シーンが高速化ないし、スキップされないので効果は薄め。
 メッセージの巻き戻しはデフォルト状態ではなし。上述したように修整パッチで追加されますが、マニュアルにはしっかりと写真付きでこの機能の存在が。それって未完成で発売したという証左ですか? 
 追加した機能のせいか、イベントCG表示中には右クリックからしか呼び出せない、ホイールマウスに対応していないなどイマイチ洗練されていません。ただ、ボイスの再生は可能ですが。
 わりかし珍しい仕様としてキャラクターごとにテキストのカラーが設定されてます。自分で変更も可能という変わった親切さも発揮。個人的には嬉しい仕様ではありますが、こういう機能ってテキストがわかりにくいゲームほど用意しないんですよねぇ。某世界一のエージェントなゲームも見習って欲しいものです。
 
 最近は流行りなのか今作にもコピープロテクトがかかってます。SafeDiskという有名なものが。それはいいんですが(本当は良くない)、動作が異様に重くなるのが困りものです。いつも思うことですが、正規のユーザーが苦しまなくてはならないというのは納得いきませんね。
 
 シナリオは「Ripple」譲りのセンスが光ってます。日常会話の掛け合いはかなりの高レベル。キャラクターがごく自然体で立っているので不自然さを感じません。設定内容をテキストでしっかりと実現しています(最近はこれが怪しいメーカーが多くて)。
 シナリオ量も「Ripple」よりも増量(2倍だとか)といいことずくめのようですが、微妙な点も。今作はシミュレーションであるせいか、会話の発生する期間にゆとりが用意されています。これは裏返せば1度会話が発生すれば次がなかなか発生しない、すなわち小イベントごとに妙な間が開くということを意味します。
 何らかの媒体の攻略情報を見た人ならおわかりでしょうが、今作は個別ルートに分岐する6月1日まではほぼ同時攻略が可能になってます。当然、これに従えば1ルートとして見た時の会話量はオンリープレイ時に比べて増えることに。しかし、会話のリズムや量としては明らかに同時攻略時が適切(分岐直前は複数のヒロインから告白されまくりですが)。オンリープレイだと1週間に多くて3回くらいしかイベントが発生しないため、非常にお寒い状態になってしまいます。個別ルートに分かれた6月はその傾向が特に顕著。1週間に1度もイベントが起こらないことも珍しくありません。
 よって純粋なテキスト量は多くなったのかも知れませんが、体感する量はむしろ減っているようにさえ感じてしまいました。
 また、今作はどういう意図からか個別ルートに分岐したはずの6月にも共通イベントが発生します。それは別に構わないのですが、この内容が明らかに個別ルートの展開と矛盾することがあるのはどうかと思います。鬱状態で同僚と喧嘩しているはずなのに突然、朗らかに挨拶して普段通りのイベントが始まったり、など。
 ある意味で今作一番の進歩は複数回Hを実装したことではないでしょうか。「Ripple」はまさにそこが泣きどころだっただけに嬉しい配慮です。ただ、確かに複数回ではあるのですが、いわゆる「とらハ」的ではありません。寸止めや夢オチなど、多くのヒロインは最初の1回を複数に分けたような意味合いの内容が多いです。
 このあたりは個人の嗜好によるでしょうが、個人的にはHシーンが見たいという以上に、主人公とヒロインの関係の変化こそを見たいのでやや微妙ではありました。
 
 CGは「Ripple」からは原画、塗り共にややイメージが異なる印象を受けました。わざとなのか、自然の変化のなのかわかりませんが、ねこにゃん氏の絵柄が少し変わったようにも。
 イベントCGは良い仕上がりではありますが、美里やすずのカットで一部に安定しないものも見受けられました(問題あるというレベルではありません)。
 立ちCGは表情、ポーズともよく変わってくれるのですが、イベントCGとの間に若干の落差があるように感じました。このあたりは「Ripple」よりも微妙に落ちるかと。
 枚数こそそれほど多くありませんが、背景CGはなかなかの美しさ。おかげで人物が引き立ってます。
 
 音楽は全体的にレベルアップしたように感じました。「Ripple」はややチープな感じがしたのでこの向上ぶりは嬉しい限り。ただ、主題歌については明らかに負けてます。まぁ、これはゲーム内容から考えても仕方ないのかも。
 ボイスは絶妙のキャスティングを実現。キャラクターの見た目と性格からイメージされる声が実際とピッタリ一致しているように感じました。ここまでシンクロ率が高い作品にはそうそうお目にかかれないと思います。まさにいい仕事してます。
 今回は主人公以外はフルボイスを実現。数少ない男性陣もいい演技しています。ちなみに個別オン/オフ可能(野郎は一括)。
 
 まとめ。欠点の多くを克服した「Ripple」。前作のファンはもちろん、それ以外の人にもオススメ。メイド属性がなくともそれなり以上に楽しめると思います。半脱ぎも多いですし。
 こういう正常進化した作品を見るのは気持ちいいです。中には退化したとしか思えないゲームもありますし。
 お気に入り:秋島香奈子
 評点:85
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、橘さやか
 まさに血涙ものですが、今作にもメガネがいました。客の立場で見ればウエイトレスでないのが救いか。しかし、キャラとしてもいかにもなコテコテのメガネさんでシナリオを進めるのは大変でした。のっけ(個別シナリオ突入直後)から駄目だこりゃ、と口にしてしまったくらいですから。
 突然、脱ぎ出す方もどうかと思いますが、その途端に相手のことを好きだと気付く方もどうかしてます。
 そういやエピローグはなんだか微妙です。あの環境にあってメガネと4年間まったく連絡をとらなければ確実に香奈子さんか翠とくっついてしまうと思います。また、4年も経っているのに誰の姿も変わらないのは変。このあたり、なぜ他のゲームではこういったシーンで立ちCGを用いないのか考えて欲しいところ。
 
2、大村翠
 ポスト速瀬水月@「君が望む永遠」。他に表現しようがなく。開き直り度もいい勝負。
 しかし、それでも主人公に比べれば可愛いもの。香奈子さんに対してあまりに自分勝手。そして他人の痛みを理解しなさ過ぎ。鈍感というのはエロゲー主人公の多くに共通するスキルですが、それがここまでの罪深さと直結しているのは珍しいくらい。エピローグでも大物ぶりを発揮。限りない優しさを見せて店に来てくれた香奈子さんの行動をあたかも当然のものとして受け止めているあたりどうにも。
 シナリオとしてはバッドもトゥルーも結果が大差ないというあたりにも問題があるように思います。そんなんこのシナリオだけですよ。
 個人的に翠の最評価ポイントはその笑い声。主人公の過去発覚シーンの笑い声は最高。性格がわかるような笑い声がギュー。
 
3、桜井真子
 本人に責任はないんですが、あまりにも唐突に変わる主人公の態度にゲンナリ。わずか2週間程度で増長できる主人公にいっそ感心します。受け継いできたシステムがあるんですから代理の真価なんて何ヶ月も経たなければわからないと思うんですけど。
 彼女の場合、主人公をどうして好きになったのかさっぱりわからないんですよね。そもそも彼女はやや変わった夢の持ち主な訳で。全ての行動の選択がそこに根ざしてのものだとしたら怖すぎます。将来もしも、店を辞めたら愛想を尽かされてしまうんでしょうか。ぶるぶる。
 
4、結城すず
 美里同様、ほとんど刷り込み状態で好きになったのではないか、という点に目をつぶればかなり良かったと思います。本人もですが、むしろ周囲の対応が素晴らしかったです。中でも香奈子さんと翠が相談にのるシーンは最高。こういうテキストを読みたいがためにやっているようなものでした、このゲーム。
 ライバルキャラが本当にいい奴というのは微妙かなぁ。確かにこういうキャラは画一的で面白味がないケースが多いんで、いいキャラにしたんでしょうけど。後味があまり良くないのがどうも。
 すずシナリオで一番感心したのは、学校でのすずの姿。よもやと思う姿(実際の描写はないですけど)で感心しました。ここに関してはライバルキャラの存在がうまく効いていたかと。
 
5、チロル
 体全体を使ってのリアクションが楽しいです。チロルとの会話目当てににわざわざバッドエンドを見ていたくらいですから。専用CGがなくともきっと見ていたのではないかと。
 
6、真名井美里
 メインヒロインではありますが、わりかし珍しい感じのキャラに仕上がったんじゃないですかね。誘惑系でもないのにここまで押して押して押しまくるキャラはちょっと他では見当たらないんじゃないかと。
 世間知らずゆえの周囲を巻き込んでの珍騒動も面白かったです。特に主人公に借金しているとみんなに明かしたイベントが面白かったです。
 シナリオ的にはバッドの方がいっそ幸せそうに見えるとは言い過ぎですか。少なくとも第三者的視点ではこちらの方が面白いんですよねぇ。店長室H発覚後のすずの反応が知りたかったデスヨ。
 トゥルーの方はそこに至る過程があまりにも脱力もので。元ヤンキーという設定があることが却ってしょんぼり度合いを倍増させることに。小指の先ほども役に立たない主人公ってのもねぇ。
 
7、秋島香奈子
 一体何度バッドエンドを見たことか。単体でなんとかなると思いながらチロルのヒントを頼りに何度となく特攻。そして玉砕。メッセージスキップの既読判定がないことが辛さを倍増してました。読む度に痛みを覚えるシナリオですしねぇ。しかし、それだけに思い入れも深いです。クリアした時はただそれだけで嬉しくなりました。こんなこといつ以来だか。
 香奈子さんは印象的なイベントが多いです。自分のシナリオはもちろん、他人のシナリオでも。中でも香奈子さんが主人公をお茶とケーキに誘う簡易ウエイトレスプレイがお気に入り。彼女の性格がよく出てます。やはりマイペースぶりを相手にも持ち込むあたりが香奈子さんの魅力かと。制服に着替えるイベントもいい味出してます。
 シナリオ的には難しい面も。回想シーンの出し方がちょっと出し惜しみな感があり、最も大事な決定的に惹かれたイベントが最後の最後まで出ないのがマイナス。主人公とプレイヤーの情報格差が大きすぎ。ちょっと置いてきぼり風味。
 さらにはプレイヤー的に報われるのがほんの一瞬しかないのも寂しい感じ。エピローグにもう少し厚みがあれば印象ももっとよくなったと思うんですけど。真打ちキャラな訳ですし。


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