111   このはちゃれんじ!(ルージュ)
 
 主人公、乙丸このは(変更不可)は貧乳…、ではなく微乳であることが悩みの普通の女の子。少なくとも本人はそう思っていた。
 ところが、彼女は兄の錬金術によって作り出されたホムンクルスであったのだ。しかも、その体を維持するには性的エネルギーが必須であるという。否応なく自己開発に走らされるこのはに明日はあるのか!?
 
 原画のことみようじ氏の可愛らしい絵に惹かれて購入。デフォルメカットも大きな要因になってます。
 
 初回特典は設定資料集とマンガの小冊子がついてます。見たところ、ことみようじ氏はマンガには慣れていないのかな、という感じを受けました。
 
 システムはオーソドックスなアドベンチャーに自己育成のシミュレーションをプラスしたもの。日中はアドベンチャーパートによって進行し、夜になると自己育成パートになります。
 アドベンチャーパートは通常のイベントCGの他に、キャラクターがコミカルに描かれたデフォルメカットが時折、挟まります。これが数も豊富で、軽妙なテキストと合わさって相乗効果を上げています。
 自己育成パートはアドベンチャーパートのフラグにより選択可能な行為が増えていきます。しかし、残念ながら単調でありゲームとしての面白さに寄与していません。二度目以降にはほとんど足枷となってしまうでしょう。
 足回りは及第点クラス。
 メッセージスキップは非常に高速。ただし、メッセージウインドウ枠によるスキップは既読未読を判別せず、強制スキップ。コンフィグによるスキップは判別こそしてくれますが、完全自動なので止めるためにはコンフィグで再設定せねばならず、人によっては少し使いづらいかもしれません。
 メッセージの巻き戻しはウインドウ単位で行います。かなり巻き戻せる上、ロード直後でも使用可能です。加えてボイスも再生することが出来ます。
 おまけモードでイベントCGだけでなく、デフォルメカットが登録されるのは実にありがたい仕様です。こういうカットは登録されないゲームが多いだけに嬉しさもひとしお。
 
 シナリオは全体としては微妙です。
 日常会話はギャグが効いていてよく笑わせてくれます。男女とも非常にキャラが立っていて、ボケツッコミトークが小気味よく展開します。しかし、本筋と呼ぶ部分がやや描写不足であるように感じます。どうやら少ない文章量でさりげなく「何かを」伝えようとしているようですが、目論見が成功しているとは思えません。また、ギャグからシリアスへの移行もスムーズとは言い難いです。
 エピローグ部が妙にしんみりとしたテイストで本編とはかなりギャップを感じました。狙ったものだとは思いますが、どうも効果がわかりませんでした。
 ギャグ、シリアスがうまく融合しておらず、まとまりを欠いているような印象を受けました。トータルバランスが今一つかと。
 
 CGはたいへん美しい出来映え。原画からCGへ魅力が少しも損なわれることなく仕上がっています。特にデフォルメカットは出色の出来。見ているだけで楽しいです。
 立ちCGは各キャラ2〜3種類で表情、ポーズとも、ほとんど変化なし。気になる人は気になるかも。その代わりにメッセージウインドウの左にあるフェイスウインドウがにぎやかに変化します。基本はギャグカットですが。
 
 音楽はBGMに徹している印象。わりとオーソドックスな作りなので耳に馴染みやすい反面、地味に感じることもあるかと。
 ボーカルはオープニングとエンディングの2曲に用意されています。ただし、エンディングはトゥルーエンドのみ。
 ボイスは女性のみフルボイス。声優さんのレベル、キャラを考えた配役ともに見事ですが、男性キャラにボイスがないのは明らかなマイナスです。せっかくのノリのいい会話が用意されていても効果が半減されてしまっています。
 ボイスのボリュームバランスが一定しておらず、調節が難しいです(特に主人公)。このせいでいっそボイスがなければ良かったのではないかと考えてしまうほど。
 テンション系の会話が多いだけに主人公のボイスは多少、好き嫌いが分かれるかもしれません。
 
 まとめ。見せたい箇所がもう一歩、絞り込めていない作品。エロス方向偏り気味のテキストは充分に笑いを提供してくれますが、それだけで満足したと思えるかどうかが、評価の分かれ目。スタッフの実力が感じとれるだけに細かいところが気になってしまいます。
 個人的には、繰り返しプレイを強いるわりにゲーム部分が退屈なのとシナリオの締めの弱さが気になりました。ちょっと期待が高かったので辛目です。
 お気に入り:日御子菜苗、道法寺織人
 評点:69
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、乙丸このは
 正直に言って、演技は悪くないと思うんですが、なんかこの声が苦手です。特に自虐的反応を示したときが。
 結局のところ、本物のこのははどうなったんでしょうかね。なんかすっぱりと無視されていたような気がしないでもないのですが。あと貴英の問題はなにも解決されていないような……?
 
2、日御子菜苗
 素敵です。「なによう。じゃあ、どんな方法でちーたんを消せばいいのよう」というセリフに彼女の全てが集約されているかと。
 全ての会話の起点になっているかのような重要キャラ。シリアスにも強く、それ以上に幼女プレイ(?)にも強いという完全無敵さを誇る。
 愛称で呼びたがるところが裏目に出てか、菜苗っち(=7エッチ)と呼ばれてしまうあたりがナイス。
 声優の北都南さんの演技も秀逸。幼児退行Ver.は「高町なのは」のようでした。
 
3、鶴来千尋
 色物キャラたちの中にあってはちと分が悪いようです。語られる部分が少ないのも印象を薄くしてしまっているように思えます。
 
4、道法寺織人
 菜苗に弄られるために存在するような男。おいし過ぎる数々のリアクションは見ていて楽しいが、おかげでヒロインである苑生よりも目立ってしまっている。
 
5、西泉俊介
 出番はけして多くはないが、その存在感はメインキャラにも負けてない。個人的にはもっともっと活躍して欲しかったです。
 菜苗に捕まった彼は果たして幸せであったのか、難しいところのように思います。


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