コンテンツ国際展開のビジネスモデル 〜韓流ブームの次の一手と日本の戦略


TOP

1.知的財産/コンテンツ振興への大きな取組

2.コンテンツビジネスと著作権

3.様々なコンテンツファンド

4.コンテンツファンドのディスクロージャー

5.コンテンツファンドに影響を及ぼしそうな法改正

6.リスト等

7.セミナー・シンポジウム・勉強会等

>著作権・リンク設定

>about とるじいや

●とるじいやの紺鉄学習帳ブログ

●リンク / プライベート


■日時:平成18年6月30日(金)
■会場:町村議員会館 2F会議室
■主催:韓国文化コンテンツ振興院(KOCCA)
■企画・運営:財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)

(パネリスト)
■ チョン・ジンワン(Jinwan Jung):Eagle Picture 社長、「王の男」プロデューサー
■ ムン・ヘジュ(Jennifer Muhn):K&J Entertainment プロデューサー
■ 李鳳宇(Bong-Ou Lee):シネカノン 代表取締役社長
■ 佐谷秀美(Hidemi Satani):スープレックス 代表取締役社長
(モデレーター)
■掛尾良夫(Yoshio Kakeo):キネマ旬報 取締役 キネ旬総研所長

≪パネリストの活動紹介≫

<チョン氏>
・ 韓国で史上1位のヒット「王の男」をプロデュース
  スターの出ない“ノン・スター”ムービーにもかかわらず1300万人近くが足を運んだ
  ノムヒョン大統領が言及するほどの人気
  俳優イ・ジュンギはこの映画の成功でギャラが10倍に
・ 「王の男」は角川ヘラルドと共同配給で日本で2007年新春公開
<ムン氏>
・ 海外映画⇒韓国(日本では「ハウル」「サトラレ」等)
・ 韓国⇒日本・海外(「私の頭の中の消しゴム」等)
<李氏>
・ 「パッチギ」「ゆれる」「フラガール」を紹介
<佐谷氏>
・ 「嫌われ松子」海外で評価を受けることを狙って制作
・ 最近は携帯電話のゲームの購入、販売も

≪討論内容≫

T.日本における韓国映画の状況

1. 日本における劇場映画の傾向
<基礎数値>
・ 入場者数は1986年を底に2004年まで回復(シネコンの普及)。2005年以降は頭打ち傾向
・ 日本の映画上映本数
  1998年:249本
  2005年:356本
うち、配給大手三社※=58本
   独立系=220本
   (その他ピンク系=80本)
※配給大手三社=東宝、東映、松竹
一方、2005年の興行収入ベースでは
   配給大手三社=約88%
   独立系=約10〜15%
⇒完全に二極化
・ 自国映画と外国映画の比率(興行収入ベース)
日本:自=40%、外=60%
韓国:自=59%、外=41%
・ 洋画の凋落と韓国映画の比率向上
洋画系配給会社による外国映画の興行収入※(単位:億円)
  2002年:932.8
  2003年:850.1
  2004年:899.3
  2005年:730.9
洋画は大作のみヒットしている
韓国映画は近年、外国映画の5%から1割弱を占めている
※UIP、SONY、ワーナーブラザーズ、FOX、ブエナビスタの5社(韓国映画は日本支店での買付となる)

2.日本における韓国映画
<2005年は韓国映画の当たり年>
・ 2005年の日本での韓国映画トップ10(興行収入(億円)/入場者数(万人))
  1位:私の頭の中の消しゴム(30/240) 2位:四月の雪(27.5/220)
  3位:僕の彼女を紹介します(20/160) 4位:甘い人生(6.5/52)
  5位:恋する神父(4.2/32) 6位:マラソン(4/32)
  7位:親切なクムジャさん(2/16)
<韓国映画ブームの経緯>
・ 初期ブーム=映画ファン好みの映画が人気に
  2000年=シュリ(日本での韓国映画歴代4位)、2001年=JSA(同、6位)
・ 最近まで=TVドラマの影響を受けた(主役など)映画が人気に
  2001年=冬の童話(BS)、2004年=冬のソナタ

3.「韓流」ブームは終わったのか?
  2005年をピークに韓国映画のヒットは減少傾向が見られる
  「韓流」ブームはもう終わってしまったのか?
【パネリストからの意見】
<李氏>
・ 「韓流」定着したため、言葉自体は用途を終えつつある
・ 現在の「韓流」低下現象は韓国ドラマ・映画の日本での放映・上映本数が増えすぎたことによる影響が大きい
・ 現在、年80本の韓国映画・ドラマが日本で配給されている=1年の制作本数と同じ。これは異常値
・ 日本だけでなく、韓国でもスター中心の映画の収益は落ちている(高コスト化)
・ 日本でも韓国のように“ノン・スター”ムービーに目が向けられてくるのではないか?

<ムン氏>
・ 今年の韓国映画の製作本数は105本。1991年以来の最高値
・ 多くの作品が制作されることでいい作品も作られるはず。いい作品ができれば日本市場でも受け入れられる
・ 一方で韓国国内での他国映画上映制限(スクリーン・コート)数が減らされる見込みで、上映できる映画の数が減っていくことに懸念
・ このところ韓国では映画の制作費が毎年30%も上昇している
・ したがって、@制作のコストダウンA韓国映画の(上映)市場拡大 が必要

<チョン氏>
・ 今までは日本の配給会社に「版権を販売」するのみ。結果、日本の配給会社が(自ら値を吊り上げ)高コスト体質に
(例:「連理の枝」。5〜6億円程度と、相当な興行収入があったが買付コストが高かったため大きくは稼げていない)
・ 映画「王の男」では、日本でのビジネス・チャンスを広げる今までに無い取組みを開始
配給会社(角川ヘラルド)に版権を販売しない(K&Jエンタテイメントとの共同配給)

<佐谷氏>
・ (モデレーターからの「日本の、市場実勢を無視したバイヤーの高コスト体質についてどう思うか?」との質問に対し)映画は企画が命。映画は容易に収益予測が立たない分、本来、企画内容によって評価されるべき
・ 現在は企画より出演するスターによって映画が評価(収益予測)されてしまっており、これが価格高騰化の原因
・ このような映画の版権は高騰しすぎ。本来、1億円程度が上限ではないか

U.韓国における日本映画

1.韓国における日本の劇場映画の状況
・ ソウル(韓国全土ではない)での日本映画トップ10(入場者数(万人)/上映年)
  1位:ハウルの動く城(98/2004) 2位:千と千尋の神隠し(93/2002)
  3位:LOVE LETTER(64/1999) 4位:呪怨(6.5/2003)
  5位:踊る大捜査線 the movie(?/2000)

2.韓国では日本映画がなぜ受け入れられていないか?
  上記のとおり、日本における「韓流」ブームに比べると日本映画はさほど売れていない
  最近でも、「NANA」や「リンダ・リンダ・リンダ」の前評判はよかったもののヒットしなかった
なぜ?
【パネリストからの意見】
<チョン氏>
・ 原因は作品にある、と思う
・ 日本映画が市場開放された初期の作品「LOVE LETTER」は地方を含めるとおそらく1位。これは、作品に“普遍性”がありいい企画だったから
・ “大作”がコケたのにはそれなりの理由がある(⇒とるじいやの私見:“純粋に映画の内容以外の要因で売れた(例えばTVとのリンク)映画は、海外上映においてはそのファクターがない分、難しかったのでは”ということを言いたかったのでは?)
・ 日本でも韓国でもよい作品は売れる
<ムン氏>
・ 1998年以降、日本大衆文化の開放が(4段階に分けて)されており、2004年には完全開放された
・ 2002年の韓国映画界のシュミレーションでは、完全解放後“日本の映画のシェアは8〜10%ほどになるのでは”と懸念されていたが、実際には2%程度でくすぶっている
・ この理由は以下と推察
  @ 導入期の問題
    日本の大衆文化導入期が、ちょうど韓国映画の最盛期にぶつかってしまった
  A 国民感情
・ 「ハウル」のヒットで分かるとおり、日本映画が全く売れていないわけではない。アニメには商機がある
<李氏>
・ (前提を覆すが)日本映画は韓国でそんなに売れていないわけではない。ハリウッド資本以外の外国映画の中では大きいシェアを持っている
・ 日本映画が売れていない、とした場合、その理由は以下と推察
  @ 韓国の市場規模が小さすぎる
    人口は日本の1/3。金額換算で映画マーケットは日本の1/20では?(広島+岡山程度)
    例:入場料:日本の約半分、ビデオ市場:1/30〜1/40程度、TV市場:1/20程度
  このため、日本のメジャーが本気でターゲットにしていない
  A 国民感情の問題
    例:竹島問題など政治問題が発生⇒翌日の入場者数が半減する
  B 国民性の問題
    韓国人は韓国映画にしか興味が無い(例えば映画関係者ですら海外映画を見ていない)
    「ウリ」(=「我々」)の感覚
  C 海賊版の問題
    著作権意識が低く、インターネットで海賊版を見るのが“普通”の感覚
  ハウルはなぜ売れたか?⇒日本でDVD化される前に韓国で上映したから

V.日韓で(共同して)何ができるか?
  日本と韓国の映画(映画界)の違いは?(例:韓国では監督専用車が当たり前)
  違いを超えて何が出来るか?
<ムン氏>
・ 韓国映画業界では最近、日本のドラマ、漫画、本に注視(「日流」という俗称)
  例:金城一紀、江国香織、野沢尚等
・ 「29歳のクリスマス」を原案にした映画「SINGLES」が韓国でもヒットした
・ すでに「Fly Daddy Fly」「愛なんていらねえよ、夏」の韓国での映画・ドラマ化が決定
・ ただし、この結果、原作の版権が高騰している
  「29歳のクリスマス」=約100万円
  「今、逢いに行きます」=約500万円
・ 一方、日本の映画会社(角川)が原作の版権を買い、韓国で映画を製作するケース(村上龍「半島を出よ」)も出ている
・ よって、企画段階から日韓共同で行うビジネス展開が増えてくる、と思われる
<佐谷氏>
・ (ムン氏の言う)日韓共同ビジネス展開は同感。実際にこの1〜2年、自分も多くの韓国の脚本家・プロデューサーなどに会い、“企画”を開発している
・ この流れを進めるために、以下のような解決事項があると思念する(“出資者”へ影響)
    プロダクション/プロモーション
    制作の体制
    スタッフの役割
    出演者のギャラ
    二次利用
<李氏>
・ 日本においても韓国においてもお互いの映画シェアは小さい
・ 洋画などの市場に食い込むべし
・ 日本映画は韓国映画になり、韓国映画は日本映画になるべき(私見:上記2氏のいう共同制作などを含んだ提言と思われる)
<チョン氏>
・ “日本市場”“韓国市場”という向き合い方ではなく“観客”が何を望むかが重要
・ 今後、多様な方向の多様な試みがなされることでよいビジネスモデルが出来上がると期待
・ 日本の小説やマンガはストーリー性が高く優秀。そのため、韓国映画が原作の映画化権を入手するにはハリウッドや日本のTVドラマがライバルとなる



| HOME | BACK | 



Copyright (c) 2006 とるじいや. All Rights Reserved