1948年に発表された1600Fは,56mm x 56mmというフォーマット・サイズを持つカメラです。
1600Fという型番は,幕速の最高速度1/1600秒の,フォーカル・プレーン式シャッター(F)から付けられたとされています。
1600Fの発売から4年経った1952年,1000Fが発表されました。1000Fの外見,フィルム・フォーマット(56mm x 56mm),操作機構は1600Fと殆ど同じですが,幕速が1/1000秒に下げられている点が最大の違いです。1600Fの後継機として登場した1000Fですが,(1)幕速のさらなる安定性を確保するため,(2)製造最終工程において行う各種調整を容易にするため,の2点からこの幕速が選ばれたされています。「外見等は殆ど同じ」と書きましたが,シャッター・スピードを選択するためのガバナーという内部部品などは,異なるのが寧ろ当然と推察できるからです。
1000Fは1600F同様,製造開始から4年後の1957年まで製造されました。そして1000Fの次には,500Cシリーズへと後継機の座を譲っています。
ハッセルブラッドは,フィルムサイズが56mmx 56mmであることは先に述べました(今もそうです)。このように大きなサイズのフィルム面にムラなく露光を与えるには,シャッターにそれなりの工夫が必要です。1600F前の時代には,レンズ側にシャッターを組み込む方式(レンズ・シャッター)が専らで,1600Fや1000Fのようにボディ側にシャッターを組み込む(フォーカル・プレーン)方式の採用はセンセーショナルな出来事でした。
ハッセルブラッド社は,中判カメラにこれらの技術を装備することで独自路線を歩みだしたかのように見えました。しかし,1000Fの後継機種である500Cには,レンズ側にシャッター機能を持たせる方式の選択を行い,ボディ側の負担を事実上無くしてしまいました。フォーカル・プレーン・シャッターにもレンズ・シャッターにも,それぞれに優れた機能を持っています。従って,この時の選択を,単なる技術退行と位置付けてしまうのは早計と言わざるを得ません。
1600Fでの高速フォーカル・プレーン・シャッターの実現,500Cでのボディへの負担フリー化。ちょうどその間に位置付けられる1000Fは,ハッセルブラッド社の前向きさと真摯さの両方を示唆する非常に面白い中判カメラであると私は思っています。
1600Fが約3,300台,1000Fは約10,000台製造されていますが,手作業で組み立てられていた時代のことを思えば,その人気の程が伺い知れます。
幻の(?)エクター 135mm/F3.5 ハッセルブラッド 1600F/1000F用です。
2010年の今では,滅多にお目にかかれない超レア・アイテムとなってしまいました。
製造番号:ET1432 (1949年製)
フィルターはシリーズ8 (VIII)を使います。このフィルター(径)も レア・アイテムとなっています。