後ろから押し込まれる様な勢いで乗車した香澄は、連結部を経て少しばかり先刻の車両とは異なる車内で極力目立たず隠れられそうな席を探そうとした。だがそもそも電車移動にそう慣れてもいない少女は背後からの乗客に押し流され、車両の隅の四人掛けの席の前に辿り着く。先客は通路側に早々に新聞を広げている男性と窓側にスマホを弄っている学生らしき男性で、一瞬躊躇った後連結部へのドアの前に立とうとした香澄は更に押し出された。新聞を読む男にぶつかりかけその奥の空席に転がる様に進んでしまい、香澄は窓に両手を着いた持ちこたえる。
窓の桟に手を突き腰を背後に突き出す体勢の上、ふわりと捲れたスカートに慌てて香澄は裾を引いた。極端に捲り上げたスカートも不安だが、ブラジャーを着けていない胸周りも同じ様に不安で、腰でほぼ直角に曲げた身体に豊かな乳房が大きく前後に揺れ、薄い布地を突き上げ白い腹部が露わになる。それは真横からではあまり問題のない状態だが、着席している男達から見れば白い胸の谷間か豊かな乳房の裾の隆起が丸見えになる構図である。
「す……、すみません……」
「いえ」
新聞を読んでいた男にぼそりと返され、見られてはいなかったのだと安堵したものの、通路を見た香澄は郊外のホームの行列からの想像より混んでいるのか、既に自分が立とうとした場所に他の人物が立ち、他も通路に戻るだけの空間が空いていないのに気付き途方に暮れる。スカートの後ろを押さえて隠すだけで精一杯の香澄は、丸見えの自分の乳房下半分を見ている男の表情を倒れ込んできた迷惑者への非難だと思い再度頭を下げそして身を起こす。漸くスカートの裾を押さえずに済む安堵に胸を撫で下ろす少女は、陽光が射し込む窓辺でブラジャーを着けていないセーラー服姿は淡い鴇色の乳輪が色濃く浮かび上がり男達の目に映っていると気付けていなかった。
通路へは戻れないがだがこのまま空席に座るのも躊躇われ、背後を再度見た香澄は、四人掛けの席から通路を挟んだ向かい側はトイレであるのに気付き身を強張らせる。電車のトイレには凌辱の記憶しかない。まだ性交を知らなかった身体を玩具にされ、代わる代わる男達の性器をしゃぶり、口腔奉仕を執拗に教え込まれた場所。
恐ろしい物から逃れる様に視線を逸らした香澄は凍り付いていた間にも更に車内が混雑していた状態に困惑する。やはり折り返し駅は混雑するものなのか、ホームで整列している人々より多い人垣に中央方面の他の座席等は見えない。もしかしてどこか途中の乗り降りの多い駅の階段などでは便利な位置なのかもしれない。襲われたあの日の様に誰も少女を拘束しない状況に、ホームでの痴態を見られてはいなかったのではないかと言う期待と自意識過剰だったのだと恥じる情けなさで香澄の頬が薄桃色に染まる。
「座れば?」
新聞紙を構えたままの男に勧められ、香澄は再び一礼をしてから窓際の席に腰を下ろし、手の中のニップルリングをセーラー服の胸にある飾りに近い隠しポケットにそっと隠し、膝の上に両手を置いて極力身を縮込まらせる。目の前と隣の男性に悪意がなければあとはただひたすら座っていればいい。いっその事眠ったフリをしてしまえば無視して貰えるだろう。
発車音の後がくんと電車が揺れ、到着時とは逆方向に流れ始める風景に、香澄は自分がどれだけ眠り移動したのか判っていない事に気付く。今は何時なのだろうか、ここは何処でこれから何処に向かっているのか。落ち着いて座れる安堵とホームで達してしまった身体の陶酔が抜け切らない疲れに香澄は瞼を閉じて電車の心地良い揺れに身体を預ける。カタンカタンと定期的に押し上げる揺れが急速に睡魔に襲われる意識の底で性交の牡の突き上げと緩やかに重なっていく中、泥の中に沈んでいく様な意識は何故か、何故か安堵していた。夢ならば怖くはない、夢の中は誰も自分を傷付けない、温かな湯や春の日差しの様な穏やかな世界に漂っていられる…そう考える少女の身体から力が抜け落ちていく。
胸ポケットの中のニップルリングの鈴が電車が振動する度に微かにちりんと鳴った。先刻の駅に到着するまでは夢を見る余裕もなく熟睡してしまっていたがまだ疲れが抜け切っていないのか、香澄は堪らなく心地良い振動の世界へ落ちていく。
明るい日差しの中、ゆらゆらと身体が揺れる。刺す様な強い光ではなくレースのカーテン越しの光の中、少女は優しく抱きかかえられていた。アイボリーと青で揃えられた優雅な内装の部屋のベッドの上で香澄を背後から抱え、全裸の身体を重ねている。引き締まった身体の温もりが心地良く、男は何かを囁いてくれる…それは睦言で耳に優しくこそばゆくうっとりとしながら香澄は男に身体を預けていた。
男女として愛し合う温かな実感が胸に穏やかに染み込む中、だが腹部の奥の小さなざわめきがほんの少しずつ大きくなっていく。尻肉に当たる熱い塊、長い事身体を重ね続けているのに挿入されずにいる牡の象徴。決して香澄が濡れておらず準備が整っていないわけではなく、寧ろいやらしく滑り牡の挿入を今かいまかと待ち侘びて膣口をねっとりと蠢かせてる。それでも挿入されないまま背後から抱き締めている間も甘く優しい睦言が耳を擽り続け、乳房の脇の方を指でなぞる男に、うっとりしながら香澄は口を開く。
『おまんこして』
緩やかな愛撫で睦合っている男に心も身体も委ねている夢の中で、表情は幸福そうに笑んでいる香澄の声だけは飢えた牝犬の様に荒々しく男を詰るかの様に、だが甘えてねっとりとむしゃぶりつく様な淫蕩な響きで何度も繰り返して強請り続ける。愛し合う男女の穏やかな睦事とはちぐはぐな淫乱な言葉が口から溢れ続けているそれは、まるで映画の音声が別のものと入れ替わっている様だった。
『おまんこして、おちんぽでずぶずぶ突いて犯して、ね、おまんこして。おちんぽ欲しいの。お尻もおっぱいも叩いて、乳首も抓って、噛まれるの好き。犯して、優しくしないでいいの。ね。早く犯して、早くおまんこして』
夢の中の自分の言葉に驚き、びくりと身を震わせて香澄は目を醒ました。日差しの眩しさに一瞬自分が何処にいるのか判らず呆然としていた少女は電車の走行音や揺れに続き、明るさに慣れた瞳に映る車内の光景に眠る前までの記憶を取り戻す。
ふうっと息を付く香澄は酷い夢の為か冷房の利いた車内で自分の肌が軽く汗ばんでいるのに気付く。恋もよく判らない自分では恋や愛の夢など見る事が出来ないのか…軽い頭痛の様な憂鬱な気分は何故か甘く気怠い身体と相俟って少女を虚ろにさせる。夢位は自分に優しくあって欲しかった。
いつの間にか膝の上から解けて脇に落ちている右手を元に戻そうとした香澄は、自分の右乳房に当たっている隣の男の指の節に気付き凍り付く。新聞を広げている間に当たってしまったのか、外されずにいる指に香澄は身を引いて逃れようと考えるものの、着席の時点から端で縮込まっていた身体には既に逃げ場はない。気になっているのは自分だけなのかもしれない、あのホームでの痴態に気付かれていなかったみっともない自意識過剰さを思い出し、香澄は更に身体を縮込まらせぎゅっと強く瞼を閉じる。だがそれは逆に乳房に当たっている指の節に意識が集中する結果になってしまう。
そもそも記事に意識が集中していて胸に当たっている事に気が付いていないかもしれない。だがもしも気付かれているのならばブラジャーの有無は簡単に判ってしまうだろう。夏のセーラー服は薄い一枚布で、軽い抵抗はあるものの指の節は軽く当たっていると言うよりも貼り付いている感覚が強く、ほんの僅かに押せばブラジャーに包まれていない生の乳房の弾力が伝わってしまうだろう。右手がいつ脇に落ちたのか、もしもまだ腿の上に置いていれば腕が盾になっていた筈だと悔やんでも、既に指の節が当たっている状態で置き直せば男を邪険に振り払う事になってしまうし、それによってこの酷い姿に気付かれてしまうかもしれない。
気付かないで欲しい。早く離して欲しい。救いを求める様に祈りながら少女の意識は男の指に集中し、電車の揺れの度に生じる微かな圧迫感と位置の差に眠ったフリをする身体がぴくりと揺れる。指の節が当たっているのであって指の腹で触れられているのとは違う、意図して触れているのであればもっとはっきりとした意志を感じさせるものである筈だった。
しかし、もしも、意図して触れているのならば?
考えない様にしていた可能性にぞくりと香澄の全身がざわめいた。簡単にブラジャーを着けていない事はわかってしまうし、その上あの痴態を目撃していたのならば…いや、だが、どれだけ整列中の人々の目に映る状態だったのかが香澄には判らない。自分が列の後ろに着いた後に不自然に並び直した人達も、もしも自分に悪戯をしようと考えているのならば…。腰から背筋へと一気にはしる妖しいざわめきに眠ったフリをする香澄の顔に一瞬淫らな羞恥が浮かぶ。まだ引いていない軽い寝汗が堪らなくいやらしいものに思え、そして下腹部の奥の泥濘が先刻の夢のせいか一層範囲を広げ、尻肉の谷間全体までをねっとりと濡らしている状態に香澄は気付きびくりと震える。短い起毛の化繊繊維は粘液の吸収は遅く急いで拭えば目立たないものの、愛液が目立つ染みになるのは最初のあの日に身をもって経験している少女は、たっぷりと濡らしてしまっているであろう状態に羞恥に全身を染めた。終点までこのまま座って、人が居なくなってから拭うにしても座席の染みが抜けなくなってしまう可能性が高いから出来るだけ早く拭わなければならない、だがそもそも座席を拭う為のティッシュもハンカチも、改札を通る為の切符すら香澄は持っていない。
「……」
先刻の弱冷房車より強い冷房の為か、それまで気付いていなかった汗と愛液の匂いにも気付き少女は更に赤くなる。気のせいか精液の臭いも混ざっている気がして息を詰まらせる香澄の心臓がどくどくと早く鳴り、熱い血流が全身を揺さぶった後に腰の奥で膣に集中していく気がした。同級生達の精液だろうか、もしかして外側を拭っただけで膣内の洗浄は行われていないのだろうか、輪姦の安全性を考慮してなのか頻繁な膣内洗浄が当然だった香澄は困惑し動揺する。たった三人とは思えない夥しい精液が膣内からどろりと溢れていたのを失神前の最後の記憶で覚えているが、あれの表面を拭っただけならばもっと酷く溢れて臭っている筈だと焦りながら考える香澄の身体がびくりと震える。
僅かに、だが確かに男の指が動いていた。
薄手のセーラー服の布地を窪ませない力加減の指の節が貼り付く様な感触のままゆっくりと少女の豊かな乳房を這い、泣きそうになる香澄が堪えるのを確認する様に僅かな上下動を繰り返す。新聞を手にしているのだからおかしな動きは出来ない筈で、もしこれ以上大きく動けば新聞が不自然に揺れて周囲に怪しまれるから大胆には動けまい。そう考えて我慢する香澄は一本の指の節だけが這っていた動きが、複数の指の背を使う大胆なものに変わりびくりと身体を震わせる。泣きそうな顔で慌てて男を盗み見た少女は、器用に右手だけで新聞だけを構え自分を同じ様に盗み見ている男と目が合い、慌てて視線を逸らす。
この男はもしかして男達の仲間なのだろうか?だとしたらまた自分はまたすぐに犯されてしまうのだろうか?ホテルでも駅舎でもない、何時誰が乗り合わせるか判らない電車内で…そう考えた香澄の身体をどくりと妖しいうねりが揺さぶった。初日に散々電車内で慰み者にされているがあの頃はまだ処女であり犯されてはいなかったが、今はその禁忌は破られ逆に香澄を犯す事に重点が置かれている気がする。せめてこの席ではなくすぐ近くのトイレの中で犯して欲しい、無関係な人に見つからない場所で…そう考える少女は自分の犯される前提での思考に気付けずにいた。
男の指の節が乳房をゆっくりと這い回り、やがて乳首に触れた瞬間、香澄の全身がびくんと大きく跳ねる。喘ぐまいと意識していた為に声だけは上げずに済んだものの、いつ触れられてしまうかと警戒していた意識は乳首に集中しており、既に硬く凝りきっている乳首は刺激を待ち侘びてしまっている状態だった。布の上からでもはっきりと判るであろう鴇色の乳首を男の指の節にくにくにと捏ね回され、柔らかな乳房に押し込まれる乳首のもどかしさに再び寝たふりを始めた香澄の唇がいやらしく戦慄く。布の上からでは力が分散してしまい乳首は強く擦られる事なく男の指の節から逃れてしまう、新聞で隠した状態での細やかな恥辱に腿の上とシートの上の手が妖しく震え、殆ど剥き出しになっている白い腿の内側が切なく揺れる。
繰り返し擦られる乳首に徐々に少女の唇が開き、喘ぎ声こそ零さないものの甘く乱れた呼吸を漏らしその表情は快楽を堪えるものへと変わっていく。セーラー服の胸を這い回る男の指の節は大胆さを増し、白い布に包まれた豊かで柔らかな乳房にははっきりと男の指が食い込み、陽光を浴びながら荒々しく裾までを揺らし衣擦れの音を立てる。男の位置では乳房を荒々しく掴む事も乳首を捏ねる事も出来ないと判っている少女の頭に浮かぶのは安堵ではなく耐え難い疼きだった。
【ああん?乳首を噛まれるのがそんなに好きかね?】
不意に耳元で囁かれた気がした瞬間香澄は席の上でがくんと仰け反る。ベッドの上で床の上で窓際で、何度も何度も痛みに泣く程乳首も乳房も噛まれ叩かれ抓られ、その度に膣があの猛々しく太く大きな幹をぎちぎちと締め付けてしまうのを実感させられ、救い様のない淫乱な牝だと罵られながら達し続けた記憶が一気に全身を貫き、絞られる牝肉に愛液がとろりと溢れて座席へと伝っていく。乳首が痒く、もどかしい。公共の場で玩具にされる惨めさや禁忌感と同時に、処女を奪った男の執拗な責めに支配され続けてしまう自分に香澄は絶望感を覚える…だが身体はあの責めを望んでしまっている気がした。噛んで欲しい抓って欲しいぎゅっと挟み潰しながら捻って、痛みでじんじんと痺れる所を舌で甘く転がして吸い付いて引き伸ばして欲しい、熱く溶けきった状態で身も世もなくおねだりしてお仕置きして貰いたい。駄目、こんな場所で。でもこんな場所だから。いやらしい牝なの、香澄、おまんこされる事しか考えられない淫乱なんです。眠ったフリを辛うじて続ける少女の脳裏に浮かぶのは赤黒い逞しい牡の性器だった。腕を脚を腰を抑え込んでずぶずぶと犯す太い熱い幹と膣内を掻き乱す凶悪な鰓、泣き咽ぶ香澄の乳首を捻る男の指、むしゃぶりつかれ口内で引き伸ばされる乳首の先を舌が激しく擦る。犯されながら乳首を捏ねられる淫らな恍惚。今は違う、今は犯されていない、それなのに乳首の疼きが激しい凌辱を身体の全細胞に思い出させる。おじ様やめてもう許して。
不意にセーラー服の裾から内側へと潜り込んで来た手の感覚に香澄はびくっと跳ね、そして頭上の網棚にある鞄に仕込まれているカメラのレンズに気付く。
「ぁ……、ぁぁ……っ」
密かな恥辱と考えていた行為がやはり観察されていたのだと判り顔を背ける香澄のセーラー服の裾は男の手の形に盛り上がり、逆手のまま腹部を指の節と手の甲で撫でる男に少女は頬を染めて微かに喘ぐ。男達の責めは女の扱いに慣れている上に香澄をよがらせる事を大前提にしていたが、今香澄を辱めている男は女を玩具にしている事には変わりがないが人目を忍んでいるのもありどこかが違い、それが更に羞恥心を煽り男の指の動きに意識が集中してしまう。男達の仲間ではないのかもしれない、だとすれば何故香澄を玩具にするのだろうか。自分が何をしたと言うのだろうか。泣きたい気持ちの香澄を無視し乳房の下半分にたどり着いた指が何度も楽器の弦を弾く様に指に掻かれセーラー服の膨らみがぶるんぶるんと大きく揺れ、むず痒さが限界まで達している乳首が布の弛みを押し上げ卑猥な突起を浮かび上がらせていた。
はぁっと甘く切ない声を漏らす香澄は熱から逃れる様に緩く首を振り、涙に濡れた瞳で小さく首を振る。いっその事激しく乳房を揉まれてしまった方がいいとすら思えるもどかしさに冷房の効いた車内で肌に汗が滲み、座席の上で乳房を突き出す様に少女の背が仰け反った。
うっすらと開いた瞳の揺れる視界の中で男がにやりと歯を見せて笑い、そして男の指の節と節が少女の乳首を挟んだ。
Next 驟雨・続03
201612101132