『誘惑〜Induction〜改訂版 STAGE-19』

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 何処までも試す。
 拒みはしないと判っている、異常な確信。
 根底にあるのは偽りだと判っているからこそ、追い詰めて傷つけて暴いても消えない虚しさ。
 ――何故、微笑むのか。悲しげに。

 まさか口移しの命令に少女が従うとは思ってもみなかった…いや従うとは確信しており、しかし実際にそうなると予想外に驚いてしまうのが、可笑しい。
 このまま動かず軽く揶揄うのも面白いと思いながらゆっくりと男は唇を動かし、尖らせている唇を愛撫する。少女自身から重ねられている事が新鮮であってもブランデーを含んでいるのだから早く口移しで飲まないといけないと判っていても、気を失っている時の弛緩した柔らかさとも驚いている時の強張った感触とも異なる唇を、男はつい柔らかになぞり軽く唇で挟み噛みじっくりと味わってしまう。踵を浮かして背伸びをしているであろう華奢な肢体が裸の男に重なり強張り、唇の動きに時折びくんと震える様は自分を守る術も知らない脆弱な小動物を連想させる。どうせ接吻などとは考えていないであろう。喉の渇きを潤す看護か困った悪戯にただ応じているだけか。バスタオルに包まれている身体を片腕で絡め取り、少女の後頭部から項にかけてにもう一方の手を添える。濡れて束になっていてもしなやかな髪が心地良い。
「ん……」
 口を閉ざしたままの少女が微かに甘い鳴き声を漏らす。ホットワインを飲んでいた時の様子を見るにこの少女はあまり酒に強くはない。今口に含んでいるブランデーを飲んでしまえば酔い兼ねずこの時間を酔いで損ねる事を惜しみ、男は少女の唇を奪う様に深く唇を重ねさせて強く吸う。
 びくんと腕の中の身体が強張り、甘い小さな唇が微かに震えた後僅かに綻び飲み慣れている酒精が細い管から滴る様に口内に滴り落ちてくるのを男は舌で転がす。甘い。男の口内に酒を流し込むのも気恥ずかしいのか吸われるがままに少しずつブランデーを移す少女の切なげな詰まった吐息が男の理性を蕩かす。
 腕の中の肢体は細い…骨張っているのとは違うが不安になる程に脆弱な感触は子猫か小鳥を手に乗せて包んでなぞるのに近いかもしれない、配慮なしに自分が力を加えればあっさりと壊してしまえる存在が無防備に身を委ねてくるくだらない万能感がぞわりと背筋を這い昇り、男を滾らせる。華奢な身体を動かすとその身に巻き付いているバスタオルの前が肌蹴け男の幹が柔らかい薄い腹部に重なる…この中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜて少女を鳴き狂わせたい衝動に尾?骨の辺りから腰に炭酸の泡が弾ける様な愉悦ともどかしさが広がる。判るまい。無難な自慰の道具とでも思っているであろう目の前の男がただの獣だと判っていれば大人しく家について来はしないだろう。
 食らいつく様に深く重ねている唇で捻り弄るその奥で男の舌は少女の唇をぬろぬろと舐り回す。んっと甘く詰まった鳴き声が小鼻から零れるのを心地よく聞きながら男はゆっくりと腰を遣いながら少女の腰を自分の身体に凭れかからせて上へと押し上げる…風呂上がりでありながら既に淫らがましく愛液を溢れかえらせている下腹部の谷間が幹を滑らせ柔らかな陰毛が傘を撫でた。少女の腰を抱いている片腕を更にぐいと上げる男に、重なる身体の、柔らかに潰れる乳房とバスタオルの下で男の猛る肉棒と濡れて襞を綻ばせている粘膜がぬるぬると絡み合いぐちゅぐちゅと沸き立つ音が照明も灯していない台所に篭もり、そこに少女のくぐもった鳴き声が溶ける。
 室温のブランデーが徐々に少女の口内で温くなり純粋な味だけでなく雑味が加わる…口移しをしている相手の唾液の微かなとろみが、背筋をぞくりとざわめかせ支配欲を掻き立て嗜虐を唆してくるのに任せ、男は少女の唇を舌で割る。雑味、だろうか?甘い…この少女でしか味わえない心地良いまろみを舌で転がし、啜る。旨い。もっと欲しくなる液体を男は嚥下する。
「ん……っ!」
 生温いブランデーが残る口内を舌で舐り回しながら僅かに首を傾け少女との唇の重なりをより深いものにする男に、腕の中の少女がびくんと身を跳ねさせるが、その腕は男の身体を拒むでなく頼りなく宙にあるだけだった。まだグラスを持っている事が気になるが落として零そうが割れようがどうでもいい、ただ少女が怪我をしなければそれでいい。
 ぬちゅっと下で音が鳴り男の幹と袋を少女の愛液が滑らせる。華奢な身体をゆっくりと揺さぶる肌が擦れ合う音が、口を塞がれた少女の悩ましい鳴き声が、青白い明かりが微かに差し込む台所に溶けていく。一人でグラスを傾ける時の心地良い無防備な酩酊感に似た柔らかで穏やかな夜の空気の中で、ぎちぎちに反り返っている肉棒の先から先走りの汁が垂れていくのが判る。犯したい。欲しい。思うまま少女の膣内に突き挿れて快楽を貪りたい…指で探る間に華奢な腰の奥が男を悦ばせる為に生まれた様ないやらしいものだと判っている、ざらつく肉壁、ぐびりぐびりと奥へ誘い締め付ける貪婪な蠢きと達し方、さして運動はしていない筈だが押し返そうとしてくる膣圧、筋肉量も脂肪も少ないが滑らかに体位を受け止める柔軟性…尻肉や性器の周りの肉付きは薄いが激しく突いて打ち付けてもこの身体は上手に受け止める事が出来るだろう。
「あ…ふ………、ぁぁ……ん」
 唾液の糸を引いて漸く離れた唇に緩い吐息を漏らした少女の甘く蕩けた表情が、不意に悲しく苦しげなものになる。既に行っているものは接吻に他ならないのはもう判っているであろうがその表情は男を咎めるものではなく、逃がして欲しいと許しを乞うているものだった。
 未だに逃げたがるか。割り切って男に身を委ねて快楽を享受すればいいものを未練がましく純潔を守りたがるのはあの青年への思慕故なのだろう…そんな自分の思考に男は顔をしかめる…どうでもいい事を何度も繰り返すのは何故だ、まるでそれがさも重要であるかの様に。それとも重要なのだろうか?何が?判っている、本当は判っている。精神の一番奥底で、位置も判らない心とやらの恐ろしい程の割合で。表層で気付けないだけで、気付かぬ振りをしているだけで、理解する部分が壊れているだけで。大量の雑音を一気に浴びせられたかの様な衝撃に男の身体がびくりと僅かに身構えた。
「先生……?」
 微かな、ほんの僅かな動揺に少女が小さな声で問いかけてくる。
 するりと滑り込んでくる。まるで空気の様に一切の不自然さもなく昔からそうだったかの様に静かに手を伸ばせば触れられる距離に、甘い匂いを常に感じてしまう程近く…だが実際こうして肌を重ねていてもその気持ちはここにはない、それが屈辱として男の臓腑を灼く。
「どうしたい」
「はい……?」
「お前はどうしたい」
 何故か語気が強くなる、いや自分で気付くだけの細かな違いだった。だが。
 少女は違った。
 直前まで唇を貪られ惚けていた顔が不思議な程静かに、胸が苦しくなる様な穏やかな悲しさを湛えた瞳が男を見る。嫌になる程するりと男の懐に滑り込んでくる…この救い様のない不快感は誰にも気付かれない筈なのにセラピー犬か懐いた愛玩動物みたいな無防備さで寄り添って言葉なく癒そうとしてくる、その存在自体が元凶にも関わらず。常ならば拒絶して帰らせる所であるが手放したくはない、男として当然だがこの華奢な身体に暴力は振るいたくはない、それなのに凶暴な衝動が込み上げて歯止めが利かなくなる。組み敷いて犯したい、細い首筋に強く歯を立てたい、捩伏せて後ろから激しく貫いてがむしゃらに腰を打ち付けたい。――愚かとしか思えない。
「お傍に……」
 消え入りそうな自信なげな言葉を小さく紡いだ後、少女は更に俯いた。
 何故だろう、この少女を問い詰めていると未就学の幼子を大人げなく叱り付けている感覚に捕らわれる事がある。簡単に少女の心を折ってしまいそうな感覚が堪らなく精神を不安定にさせ、自分の思考の手綱を操れなくなるこの不快な衝動は何なのだろうか。精神が冷えているのか白熱しているのかも判らない、ただ闇雲にこの少女を手に入れたくなる…この妄執が堪らなく気持ちが悪い。
 不意に男の脳裏に過ったのは病院の渡り廊下で見たあの光景だった。カフェテリアで仲睦まじく微笑む少女と青年の横顔。思い出したくもない記憶が隙あらば精神を波立たせる。
「ああ、あいつに会いたい、か」
 ぽつりと男が呟いた言葉に少女の身体がびくりと揺れ、強張った。
 こんな惨めな必要性などで触れたくはない、確認などしたくもないと思いつつ男は少女の華奢な顎に指を添えて顔を上げさせ、凍りつく。今にも砕け散ってしまいそうな脆く儚い泣き出しそうな少女の顔はあまりにも可憐で、男の敗北感が一気に膨らむ。――そんなにあの若造が愛しいか、思い出すだけで泣く程に、その顔は、身体は、あいつに捧げる為のものか…ならば何故此処に居る。
 言葉が凍り、気味の悪い衝動が溢れる。そう、溢れる。これは何だ?落ち着きのない奔流に男は息を詰まらせる。堪らない不快感が惨めで、男は視線を動かし、ふと少女の髪に目を止める。
 腰までの豊かな黒髪は先刻風呂場で濡らせてしまった為に束になり波打っている…それが乾くには時間がかかるだろう上に、少女は骨折患者である以前にあまり身体は丈夫な方ではなく体調を崩しやすい。腕を骨折していてはこの量の髪を乾かすのも難儀だろう。
「来い」
 少女を居間のソファの横で待たせ、男は洗面台のドライヤーを取って戻り壁のコンセントに繋いだ。そのまま全裸のままソファに座り、指でくいと困惑顔の少女を招き寄せる。
「膝に乗れ」
「ぇ…? あ、あの……?」
 流石に臨戦態勢とは言えない半勃ち状態のモノが気になるのか戸惑う少女の手首を掴み、男は向き合う形で腿の上に座らせた。バスタオルを巻いていても男の腿を跨ぐ部分は剥き出しであり、続いて抱き寄せる背に少女の華奢な身体が密着する形になる。何もかもが簡単に折れてしまいそうに細い中、乳房だけは不似合いな程豊かで煽情的であり、細い背が撓っていてもウエストは密着しない。バスタオルに包まれている乳房が胸板に重なりいやらしく歪むのよりも、耳まで真っ赤に染めて顔を逸らしている少女の初々しさが何処かこそばゆい。
 全裸の状態でほぼ裸の女を跨がせていればそこはもう濡れ場に雪崩れ込むだけの状況なのだが、不思議と現状を楽しめている気がする。
「あの……」
 俯きつつ小さな声で恥ずかしげに何かを言おうとしている少女に、男は至近距離にあるその顔を見つめた。
「腕が痛むか?」
「あの…、向きが……」
 何の向きが問題なのかが理解出来ず暫し考えた後、男は女を膝に乗せる場合そのまま挿入行為に移行しない状況もある事を漸く思い出す。いや全裸とバスタオル一枚の姿で何を間違えようがあるのかと思いもする上、男のモノに重なっている少女の下腹部の谷間は既にねっとりと濡れているのだからどちらかと言えば少女の要求の方がおかしい。それでも恥ずかしがる顔の愛らしさに、悪戯心が軽く芽生える。
「この座り方が気に入らないか」
「ぇ……?ぁ…あの……そんな……」
「髪を乾かすのに横座りでは腕を回し辛い」
「ぁ…そ、そうですね…申し訳ありません……」
 正しくはあるが後付けの指摘を鵜呑みにした少女が更に顔を赤く染めて俯く。何処までも丸め込むのが容易いその危うさに薄く嗤いながら、同時に誰にでも騙されやすいであろう気質にこのまま家に閉じ込めてしまえれば気が楽だと思い、男は自分の思いつきに戸惑う。何を馬鹿な事を考えているのだろう。
「しがみついていろ」
 少女の頭を自分の肩に埋めさせ、男はドライヤーのスイッチを入れた。
 静音型との話だが静まった居間では充分に五月蝿いドライヤーの音が鳴り響き、温風から少女を庇う様に男は背から少し離した場所で髪の束を解しつつ乾かす。濡れた髪が徐々にさらりと指の間をすり抜ける程に滑らかになっていくのは心地よく、不意に寄り付かなくなった本宅の大型犬の毛並みを思い出す。象牙色の長毛種は既に老年に差し掛かった事だろうが、大人しい気質の犬はこの少女と波長が合うかもしれない。
 濡れた髪の束を毛先から順に解している間も押し付けられたままの体勢のまま動かない少女の身体が温かい。肩に胸板に腿に重なっている柔肌越しに伝わってくる早鐘の鼓動が、何処か後ろめたくいやらしい。最初半勃ちだったモノは既に充分過ぎるまでに反り返り、深く跨がせて密着させた少女の下腹部の谷間の粘膜を押し上げている。傘に当たっている膣口がひくひくと震え、男の袋まで濃密な愛液が滑らせているのは見なくても判った。バスタオル一枚の姿で男に跨がり密着しているのだ昂ぶらないでいろと言うのは無理な話であり、少女をそんな身体にしたのは男自身である。
 背中に回されるでもなく、首に縋り付くでもない華奢な腕が頼りなく胸板に添えられているが、それは行き場が判らない結果であろう。
 照明を灯さないままの居間の青白い風景の中、男の指からさらりと滑り落ちていく様な柔らかな絹糸の髪がドライヤーの熱風に靡く。ぼんやりとそれを綺麗だと思う男の裸の肩を、少女の浅く堪えているであろう息が撫でる。医者として患者の治療には尽力しても、女に尽くす事はない男は、自分が少女の髪を乾かしている姿が不思議でならない。苦痛ではない。だが恐らく他の女にも同じ様に接する事はないであろう。奇妙な、だが空気を吸う様な自然な行為と感じる時間は、どこかもどかしく、そして精神を麻痺させていく。
 この少女の髪が長く豊かで乾かす時間がかかるのを、ぬるま湯か陽だまりに似た穏やかな温かなものの様に精神の隅で受け止めている自分に、男は微かに息を漏らす。
 それは少女の堪えた呼吸よりも細く、男自身も気付かないものだった。

 白い腰が震えていた。
 居間のフローリングの上に横たわる男の上で、少女の腰がひくひくと揺れる。何度も恥ずかしがる少女に頭を跨がせ、男は鴇色の粘膜の下端の孔を舌で穿ち続けていた…鳴き続けている少女の顔は男の腰の上にあった。己の愛液に塗れたモノ恥ずかしいのか小さな唇で濃密な粘液を啜り舐めとる度に男の舌を膣口が締め付け、『汚した』モノを舌で清める一方で膣奥からは新たな愛液がとろとろと溢れてくる。簡単に抱え込めてしまう華奢な白い腰は男のモノを無理に突き挿れれば壊れてしまうのではないかと思う程骨格が小さく骨も薄い。丁寧に触れなければならないと思う度に、逆に激しく抱きたい衝動が深まっていく。
 じゅるっとわざと音を立てて愛液を啜ると、少女が羞恥に極まって甘く鳴く。恥ずかしがって無意識に左右に揺れそうになる腰は手に押さえ込まれて動かないものの、その力と仕草は男には伝わっている。あんっあんっと鳴いている声の可愛らしさと恥ずかしがりぶりに、舌の根元近くまでを突き挿れ顔を腰に押し付ける男に、少女の声は更に甘く極まったものに変わった。いやらしい。まだ男には処女を捧げてもいない分際で、少女の全身は凌辱と加虐を全細胞で強請ってくる様な淫らなフェロモンをたっぷりと溢れ返させている様だった。さぞやこの腰を抱えて最奥に膣内射精をするのは気持ちよく、そして支配欲を満たすであろう。
 時間を、場所を意識せずにじっくりと少女を弄べる贅沢の心地良さに溶ける。ここではどれだけ鳴かせてもいい。
 執拗に捩じ込み続けていた舌を引き抜き、男がその下の肉芽をやや、いやかなり強く噛んだ瞬間、少女が甲高く淫らな悲鳴をあげた。びくっと手を振り解きそうな程跳ね上がろうとする細腰を指が食い込みそうな力で押さえ込み、小さなクリトリスを削ぎ落とす様に歯を滑らせる。白い柔肌に一気に汗が滲み、少女の甘い匂いが少し冷えた居間で更に深まっていく。慈悲を求める鳴き声は牡の嗜虐欲を激しく煽り、男の歯は何度も繰り返し根元から先端までを噛んでは削ぎ続け、とぷりと溢れる愛液が男の顔を濡らしていく…よく濡れる少女に男の目が細くなる。被虐の悦びをこうも植え付けられては初々しい初体験などでは到底満足は出来まい、いやそもそもこの濡れ具合も唇と歯型塗れの肌も相手を引かせるには充分かもしれない。これで男の影を理解出来ない馬鹿はいまい。
 どうでもいい。
 びくびくと身を震わせ絶頂の最中にある少女の身体を横に転がして男は見下ろす。
 折角乾かした髪は今度は汗で湿っているが繰り返し汗塗れになるならばもう気にしないでもいいだろう。床に倒れているしなやかな肢体は儚げな程華奢で、そして絶頂にびくびくと震えている様は牡の理性を甘く淫猥に溶かし切っていく。
「俺が満足すればいいと言ったな…後悔するなよ」
 後悔はしないだろうが、恐らくは『泣く』。そう思いながら男は少女を抱き上げた。

 シャワーで汗を流している間、浴室に戻り一番に湯を注ぎ洗面器の中の冷えた薬液を容器ごと湯煎で温める。また身体を洗われる程に汗を掻いたのだと恥じらっているであろう少女の髪はまたタオルで纏め、これ以上濡らさない様にしてから男は後ろ抱きにして湯に浸かった。
 細い項を何度も吸い、噛みながら乳房を揉みしだき、そして窄まりを撫で回し指を埋めていく。先刻まで弄んでおいた場所はすんなりと男の指を迎え入れ、拡張に時間を取らせなかった。やはり常識的に膣より窄まりの方が精神的抵抗が強いのだろう戸惑う声をあげる少女に、男は湯の中で両手で膣と窄まりに指を挿れ、同時に弄り始める。軽く表面を流しただけの膣内は濃い愛液に満たされきっており、軽い抽挿の度に湯に溶け出していく葛湯の様だった。
「ぁ…あ……っ、せん…せ……おゆ…よごれ…ぁ!ぁ…ぁっ、あん…っ!」
「汚せるものなら汚してみろ」
 寧ろ汚さずにいるのが無理な話だと思いながら男は湯の中で穿つ指を増やす。同時に膣と窄まりを弄ばれる少女の鳴き声が浴室に反響し、腕の中で身悶える少女に水面が乱れ湯船の縁から溢れ出す。台所も居間も照明を灯さずにいたが浴室は間接照明まで全てを灯してある。
「――お前は小食だな」
「はぃ……?」
 ぽつりと呟いた男の声に少女が戸惑いの声をあげるが、指の動きにそれはすぐに鳴き声に変わる。
 夕食も少ししか食べない。元から病院でも完食出来ていない。気が休まらないのか、食欲が落ちているのか…特に昨日からほぼ何も食べていないのは……、
 自分といるのは…嫌か。
 指の動きを激しくさせながらのその問いは、言葉にしないのだから身悶える少女に届く事はない。だがそうであって欲しいと男は望んでいた。華奢な身体を好ましく感じてもそれが不健康な事は理想的ではない。カフェテリアで少女は年齢相応に明るく穏やかに微笑みながら飲み物を口にしていた。クリスマスイルミネーションの灯りの下ホットワインをおずおずと口にするその顔はそれとは異なっていた。記憶が棘となり精神を掻く。戸惑う様な眩しい様な微笑みを、それでも誰にも与えたくはない惨めさに男は少女の項を強く噛む。
 レストランでの弾んだとは到底言えないぽつりぽつりと交わす言葉。倍の年齢では大して成立しないであろう会話が、何故かゆったりと染み込んでくる…今まで少女が見た好きな景色が脳裏に浮かぶ。厳寒の満天の星空、山村暮鳥の詩の様な一面の菜の花、水面を埋める花筏と見上げる染井吉野の桜並木と静かに落ちる花弁、絵画館前の金色に染まる銀杏並木道、足の下の細かな砂を波が浚う感触と水面の揺らぎ。少女の柔らかな声で聞くそれらは穏やかでありつつ奇跡の様な色彩を帯びていた。返す言葉で伝える北海の波濤や肺の奥まで凍りそうな空気、夜明けの湖に漂う朝靄、無音の深夜に飲むブランデーの味。――恐らく自分の好んだものなど色褪せて聞こえるだろう。両親に惜しみなく愛情を注がれて大切に丁寧に育てられたのがよく判る少女の微笑みは、穢れなく美しい。
「――誰にも微笑めない程に傷つけばいい」
 凪いだかと思えば荒れ狂う己の感情を持て余し、男は程よく温まった少女の身体を抱えて湯から上がった。
 二カ所を同時に弄ばれた余韻でぐったりと蕩け乱れた呼吸を繰り返す少女を左側臥位に転がし、指を三本挿入していた時とは異なり表面的には孔を閉ざしているものの弛んでいる窄まりに、男は指を二本差し入れた。びくっと身を震わせるが異を唱えない少女に内心嘲笑とも苛立ちとも落胆とも取れない曖昧なものが込み上げるのを感じながら、男は指と指の間からシリンジに繋がる管を少女の腸内へと送り込む。細過ぎず太過ぎず薬液を送り込むには充分な太さの半透明な柔らかな管を少女の直腸内に残して男は指を引き抜いた。
「何…でしょ……」
 異物感に戸惑っている様子の瑞穂が自分の腰から延びる管がシリンジに繋がっているのに気付き、不安そうな瞳を男に見せる。
「浣腸をした事はないのか?」
「……」
 頬を真っ赤に染め首を振り少女が唇を何度か動かす。何故今それを聞かれるかすら判っていないのかもしれない…いや流石にそれはないだろうか?だが今自分の置かれている状況を把握しきってはいないであろう、判っていて中断を希望していないとすれば性的好奇心が旺盛にも程がある。
 少女の今にも泣き出しそうな困り切っている表情に男は口の端を歪めた。
「恥じらい堪える間もない。初めての浣腸ならばもって数分か」
「ゃ……、それは…それだけは……」
「俺を咥え込むならば仕方あるまい?」
 びくっと少女の身体が強張り、自分を見上げてくる表情の意味が判らず男は数瞬固まる。諦めか哀願か絶望か、少なくとも期待や悦びではないそれは淫奔さには繋がらず男を失望させなかった…だが心弾むものでもない。男と少女には何処までも隔たりがある。赤面していた顔を今度は青醒めさせている慌ただしい少女を見下ろし、男は手を伸ばす。壊れ物の様だ、こんなに面倒臭く脆い存在はない。まだ新生児の方が扱い易い。
 そっと髪を撫で持ち上げて口吻てみると、少女が戸惑った顔をして見上げてきていた。何の表情だろうか。戸惑いと訴えと思い詰めたもので溢れそうな瞳は自分に何を伝えたいのかが男には判らない。
 これから精神的外傷を負わせるであろう浣腸のシリンジの管を咥え込ませてある状態で少女の髪を恭しく口吻る構図の滑稽さは嗤えるが、何故か精神は凪いでいる。気持ちが悪い。病んでいるのではないかと疑いたくなる己の精神の不安定さは堪らなく気持ちが悪い。それなのに、目の前の少女から目を離せられない。
 色好みの女でなければアナルセックス込みの浣腸など受け入れはしまい。少女が本心で浣腸されるのを恐れているのは事実で、そして自分が完遂するであろう事も判っている…その上で哀願してくる。哀願の素振りでなく本心で、自分が少女の訴えに耳を傾けると信じている。止めて貰えると考えている少女も、叶えてやるのも吝かではない自分も度し難い。いや、恐らくは少女は判っていて、自分も判っている…予定調和的な互いの欲情と慎みと支配の偽りなき戯れ。結末は、変わらない。
 少女を見下ろしながら男はシリンジを押し薬液を送り込む。注入が判るのかびくっと身を強張らせる白い身体に、ゆっくりと時間をかけすぎて途中で排出されない様に適度な速度でシリンジ一本分の薬液を注入し、男は管を引き抜く。
「あ、あの……、申し訳ありません…あの……私…、少し洗面所を……」一応は何がされたかは判るのか真っ赤に染めた顔を見せまいと逸らしながら退出を願う少女の身を軽く抱き起こし膝立ちにさせると、中途半端な助けに不安そうに小首が傾けられる。「あの……?」
「ここで出せ」
 少女の正面で浴槽の縁に腰を下ろし、男は白い小さな顎に指を添え自分へと向けさせた。言葉の意図する所が判らないのか困り切った表情で一瞬男を見つめる少女の姿が酷く艶めかしい。浣腸の薬液に違和感があるのだろう強張った華奢な身体、男の付けた唇と歯の跡が夥しい柔肌、結い上げてはみたが幾筋か解れて貼り付く漆黒の長い髪、足腰の細さを裏切る豊かな形良い乳房…両腕で密かに視姦から隠そうとする様がより一層淫らさを強調する。男の家に眠っている間に連れ込まれ浣腸をされていてもまだ泣いて逃げ出さないのは何故なのか。
 不意に少女がびくっと身を震わせた。
「あの…、先生…少し…、外に出てはいただけませんでしょうか……」
 切迫しかけているのだろう、だがそれでもあくまでも遠回しに怖ず怖ずと願う少女に、男は嗤う。
「俺の目の前で出せ」
「え……?」
 理解が出来なかったのか呆然とする少女の顎を男は指の腹で撫でる。
 泣き喚く程の恥を掻けば少女はもう他の男の前でも無防備に肌を晒す事など出来なくなるだろう。いや男と密室で二人きりになる事すら怯える様になるかもしれない…精神的外傷を負わせる罪悪感は確かに存在する、だが少女を誰の手にも委ねさせない醜い喜悦が遥かに勝る。泣き喚くがいい。絶望するがいい。男に穢される嫌悪を覚えるがいい。――誰にも微笑まなくなればいい。嗤う自分を見つめる少女の瞳に浮かぶものは怯えでなく何故かを問い思い詰めたものであり、それは不思議と不快なものではなく、男は無性にその唇を貪りたい衝動を抑える。
「あの…、わたし……」
 いつも柔らかく澄んだ少女の声音が苦しげな硬さを帯びる。初めての浣腸としてはよく堪えているだろう、強張った華奢な身体が何処か痛々しく男は目を細めた。びくっと一瞬身が跳ね、小刻みに震える様見つめながら男の指は無意識に少女の白い頬を柔らかに撫でる。よく泣く少女の瞳から大粒の涙が溢れ、懸命に堪えているのであろう華奢な身体は呼吸の方法を忘れたかの様に強張っている…もう限界であろう少女の肌に汗が滲み、小さな唇が何度も揺れ動く。
 綺麗だな、と男は感じる。
 これから見苦しい排泄をする少女の心が壊れる間際なのに、それを眺められる幸福に股間のモノが限界までいきり勃っているのが嫌という程感じられる。当然浣腸や排泄物には興味がない。ただ、目の前の少女が壊れる様を、それを実行させ眺められ支配する特権の様なものが、瑞穂の身も心も消せない楔を打ち込める事が堪らなく心地良い。
「見ないで……ぇ…っ」
 押し殺した痛切な哀願すら、射精を促しそうな程愛らしい。ここで退出すればどれだけ感謝されるか判らないが、少女を壊すには適さない。細く上擦った啜り泣きを零しながら、崩壊の原因である自分を詰りも殴りもしない無力な淑女の強張った顎に指をかけ、男は自分へと向けさせる。
「瑞穂。――お前は俺のものだ」
 男の言葉に驚いたのか一瞬呆けた後、少女の瞳から更に涙が溢れる。そんなに泣いては水分が足りないだろうと口の端を歪めそうになる男の目に映る少女は、混乱の極みにある様だった。人前での排泄等という常軌を逸した行為に、それを見物する異常な男、さぞや逃げたいだろうが、もう遅い。細い顎が指を弾かんばかりにがくがくと震え、白い身体が断末魔の様に縮込まり豊かな乳房が揺れる…乳首は噛み付きたくなる程硬くしこり、柳眉が潜められ、そして涙の粒が散る程に勢いよく瞳が閉ざされる。
 綺麗な脚の間で、浴室の床に細く液体が弾けた。シャワーも止め水音も途絶えた浴室にその音ははっきりと響く。最初ストローにも満たない細さの液体は、すぐさま勢いを増し無様な音を立てつつ白い脚の間に腸内のものを溢れさせていく。
「嫌ぁ……っ!!」
 少女が痛々しい悲鳴をあげる間も放り出されていく物には興味を持たず、静かに男は少女を見る。ぞくりと、甘美な満足感が腰と腹腔の辺りで生温く滾っている。熱くもなく、冷えてもいない奇妙な感覚だがそれは男を恍惚とさせた。
 男の前で全裸で排泄させられるのは、この少女にとってどれ程異常な行為だろうか。逆らっても押さえつけられ逃れられはしないと諦める計算が出来る少女ではない。ならば誰の前でもこうなのかと考えかけ、何故か拒絶反応の様にぶつりと思考が途切れるが再考を男は放棄する。

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改訂版2206252353

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