2022余所自作97『温泉に入ったら・更に追加分』

表TOP 裏TOP 裏NOV 96<97>98 BBS

 けほけほと咽せる濡れ鼠は新入社員と言うよりやはり少し幼げで、背中を擦っておきたいものの直前の状況を鑑みるとそうはいかず省吾は急いで入口近くの桶に乗せていた手拭いを取りに戻り、湯口で濯いで絞ってから彼女の顔を拭う。
「あ、ありがとう…ございます……」
 照れる余裕もないのか湯の中にぺたりと座り込んだまま瞳を閉じて軽く顔を突き出してくる彼女は無防備としか言い様がない。豊かな乳房の下三分の二が湯に湯に浸かっていても可愛らしい乳首の位置ははっきりと判り、非常に目のやり場に困る。風呂嫌いではない子猫が飼い主に身を任せきっている様に瞳を閉じて委ねている彼女に、指の関節でこつんと頭を軽く弾いて省吾はそのまま手拭いを彼女の頭の上に乗せた。
「横着しないの」
「伊能さんはもう少し甘い方がいいと思います」
「愛想が良い方じゃなくてね」
 どちらかと言えば相手の打ち解け方の方が驚異だと思いながら肩を竦める省吾に、彼女が何か物言いたげな視線を何度も向けては小声できゃーと浮かれた声を発しては少し身を捩った。絶対におかしな事を考えている。
「でも伊能さんが誰にでも甘くなったら偽彼氏出来なくなりますよね?困ります」
「まだやる気あるんだ……」
 セクハラ寸前の事故の後では気拙くて中止になるかと思いきやまだやる気なのかと少し驚いていると、彼女がまたずいっと膝を詰めてきた。片膝寄せてくる度に乳房がぶるんと前後に揺れて作る波が省吾に押し寄せてくるのが素晴らしい。
「どうしてそんなに乗り気なんだろうかな」
「伊能さんは魔法使いなんです」
「は……?」
 童貞を拗らせると男は魔法使いになれると言うネット俗説が頭に浮かび思わず顔が胡散臭いものを見る目を向けてしまう省吾に、彼女は恥ずかしげにだが真っ直ぐ身を乗り出して瞳を輝かせる。子供でもこうはなるまいと思う無邪気さと穏やかな時の差の激しさに苦笑いしてしまう。
「だってずっと気になって仕方のなかった事をすぐに楽にして下さったのですもの」
「気にしてどうにかなる話でなければ放っておくに限るけどね」
「そうはいきません」
 少し拗ねた様に顎を引いて省吾を訴えかける様に見る彼女は本当に年齢不詳にあどけなく、それでいて母性を感じさせるのは…豊か過ぎる乳房のせいかもしれない。
「まぁ解決したならよかったね」
「まったく……」
 少し唇を尖らせた彼女が、急に黙り前のめりだった姿勢を正し正座をした。それをやられると乳首が湯から出て目のやり場に今まで以上に困るのに気付かないらしい。
「しょ、処女ですよ!?」
「はい……?」
「私、御祖父様の言いつけで幼稚園から女子校にずっと通っていて男性とのお付き合いはした事がありません!会社勤めを始めてからも先程申し上げました通り門限がありますのでお断りしておりましたし」
「――因みに門限何時?」
「夜の七時です」
「小学生かい」
 思わず突っ込んでから省吾は悪い予感に見舞われ思わず周囲を見回した。誰の気配もないのを確認して彼女を見ると不思議そうに小首を傾げる姿に嫌な汗が滲んでくる。
「もしかして良い所のお嬢様?」
「いいえ?」
 鵜呑みにしていいのか判断に困る即答を怪しみながら省吾は彼女の頭をこつんと叩く。
「お嬢様かそうでないかは置いといて、女性が処女かそうでないかとかはしたない事を言わないの」
「だって…誤解されたくありませんもの」
 恥ずかしくはあるのか赤面して少し顎を引き拗ねた瞳で省吾に訴えかける反論は何処か舌足らずで可愛らしいと思いかけた時、刷り込み効果と言う言葉を思い出し一人納得する。免疫のないお嬢様が安全牌らしい男に妙に懐く…卵から孵った雛が一番最初に見た存在に懐くのと同じである。
 湯口から注がれる水音が聞こえ、雲のない夜空に風がそよぐ。全身ずぶ濡れになっている目の前美人が微かにふるっと身を震わせるのを見、省吾は自分の頭を乱暴に掻いてから彼女の肩に手を添えた。
「正座終了」
「はい?」
「きちんと肩まで湯に浸かりなさい。そのままだと風邪をひく」
 一泊二日の社員旅行の翌日から出勤させる程酷い会社ではなく土日の休みはあるものの、このまま湯冷めで風邪をひかせるのも躊躇われ、思わず説教半分で触れてしまった彼女の肩の華奢さに省吾は戸惑い即座に手を離す。ここ最近触っていなくても女体の柔らかさは十分知っているし、彼女の乳房はしっかり触っているのに油断すると意識が悪い方に傾きそうになる。第一お互い全裸なのは異常事態だろう。
 遠い灯篭と星明かりだけの薄暗がりの中、彼女が無防備にふわりと微笑んだ。
「伊能さん、優しいです」
 そう言い正座の脚を崩したかと思いきや隣に並ぶ形で岩に背を預けて白い脚を伸ばす彼女の肩は、省吾の上腕に当たりそうな位置になる。言いつけ通りに肩まで湯に浸かる微調節でもぞもぞと腰を前にずらしていく彼女の白い腰の脚の付け根近くが湯の揺らぎの中黒く翳む。
「しっかり温まってから帰りなさい。じゃ」
 目の毒と役得の鬩ぎあいに負ける前の戦略的撤退を図り帰ろうとした省吾の手を彼女が慌てて両手で握り、そして慌てて手放した。
「あのっ、これは、その…、変な、変なつもりではなくて!あのっ、で、でも、あの……っ」
 混乱の極みらしい上擦った声で必死に何かを訴えようとしている彼女の頬が真っ赤に染まっている。
「天音さん?」
「……っ、一人きりは…少し……不安…です」
 いや君露天風呂に一人で来ているし。そう内心ツッコミを入れながら省吾は天を仰ぐ。混浴だと思っていなかった可能性もあれば、先刻の接触で怖くなっている可能性もある、自分を親鳥だと認識した結果急に甘えたくなったのもあるだろうか、ああそうだ確か赤ちゃん返り現象。だが温まるまで戻れない女性を見捨てて帰るには確かに偽彼氏若しくは親鳥失格だろう。
「甘えん坊だなぁ」
 思わず漏れてしまった感想に、何度か瞬きをして呆けてから彼女が少し頬を膨らませた。
「偽彼女なので甘えさせて下さい」
「そう言う事言ってると偽彼氏として悪戯するかもよ?」
 少しは警戒して欲しいものだと思いながら言った軽口に、彼女の頬がまた染まる。両手を頬に添えて何やらまたスイッチが入ったのかきゃーと黄色い小声で囀って湯の中で身を暫しくねらせる美女に悪い予感を覚えながら、省吾は乾いた笑いを音もなく吐き出す。
「で、でしたら…あの…あの……っ、む、む、胸を…指定しても宜しいでしょうか!?」
 される側からの悪戯箇所の指定がきた。

 彼女を肩まで湯に浸からせながら乳房に触れる方法を暫く考え、諦めさせる為に言ったのは湯に浸かっている省吾の上に仰向けに乗る体勢になる事だった。普通は偽彼氏であっても全裸で男の上に乗るなど考えられない筈であり、内心これで助かると思っていた省吾の期待はあっさりと打ち砕かれた。いや、あっさりとではなく、とても恥じらいながら不慣れ極まりない仕草で健気に従う恐ろしく男の劣情を煽る動きと震えと戸惑いの蜂蜜声を繰り返し聞かされと言う射精制御並みの拷問を伴っていた。
 省吾の肩に頭を預けている彼女の肩は一応湯に浸かっている。
 だが豊満な乳房の頂は湯から可愛らしく顔を覗かせていた。
 仰向けで人間の身体に乗る不安定さの為だろう、膝は合わせているが爪先は省吾の脚の両脇に下ろし、そして両腕の行き場に困り切った揚げ句首と頭に絡み付かせているのは、素直に自分の身体を支えるのは諦めて男の手が自由に動かせる様に精一杯考えた結果と思われる。物凄く問題のある方向に思考するのは正直な話止めて貰いたい。結果、耳元で蕩けた蜂蜜声の吐息を聞きながら巨乳や全裸の身体をじっくり鑑賞出来、尻肉に勃起状態のモノを挟まれる滝行ばりのハードモードに陥っていた。
 取り敢えず手に掬った湯をそっと乳首に垂らした瞬間、彼女が甘く詰まった鳴き声を漏らす。びくっと震える身体は湯の浮力もあってとても軽いのに、堪らなく淫らな動きで男の身体を撫でてくる。遠い灯篭の明かりを微かに反射する湯の糸が、ぷるんと可愛らしく突き出している柔らかな色合いの乳首と乳輪へと垂れ、自然と塗り広げられていく。先刻は乳首だけは避けていたが、だからなのか彼女のとてもいやらしい反応が肉槍から脳髄までをじわりと焼いていく。
「天音さん」
「――は…ぃ……」
「嫌なら、直ぐに教える事」
 こくんと頷く彼女は恐らく自分がとんでもなくいやらしい体勢をしているのだと判っていないのだろうなと思いながらゆっくりと両乳房の裾野を撫で上げると、あん…と小さな声が至近距離で漏れた。彼女の甘い声と同時に尻肉がきゅっと締まり猛りきったモノを搾りあげ、白い身体が揺れて生じる細やかな波が水面に広がっていく。軽く上げた豊かな黒髪が幾筋か解けて省吾の肩や背中に貼りつき、落ちない様に絡み付いている細い腕と同じで愛撫をせがんでいる様に思えて背筋にぞくりと妖しい感覚が這い登る。先刻と同じで乳房は柔らかく、だが張りはある。ずっと指を滑らせただけだった触診ごっこと違い、今回は同じ御本人からの希望ではあっても今回は悪戯である。いや同意の上のこれを何と言えばいいのか判らない。
 ゆっくりと指を這わせるとんっんっんっと彼女の詰まった吐息が切なげに零れ、首に巻き付く腕が頼りなく震える。軽く這わせるだけだった指をそっと下乳に宛てがうと彼女の乳房の大きさがしみじみと実感出来る…普通に考えれば手全体で包み込んだり少し余る位であろうものが、足りない。豊満な半球の下半分を掬い上げるのですら上品に指を揃えた状態では全く足りない。がっつりと掴んでしまわないと怪しからん乳房を操れない。初心なお嬢さんの乳房を鷲掴みにするのは安心安全な偽彼氏として回避しておきたいものを、その本人の我が儘乳房が許さない。どんな無理難題だこれは。
「天音さん」
「はひ……っ」
 若干噛み気味の上擦った、泣き出しそうにも聞こえてしまう甘い声が耳元で応えてくる。意地悪な事はしたくないなと思いながら、省吾はあらぬ方向を見た。
「弄って、いいかな?」
 男の身体の上で女の身体がはっきりと縮込まる。
 さぁっと周囲の木立を抜け草を揺らす風の音が鳴り、綺麗な夜空を見上げて省吾はゆっくりと息をつく。
 魅力的な身体に乗られて劣情を覚えない筈もないが、据え膳食わぬは武士の恥と食らいつくには相手が可憐過ぎる。男と仕事帰りにお茶を飲む事すら楽しそうに夢想するお嬢さん相手にケダモノになるのは余りにも大人げないだろう。よく頑張りましたと頭を撫でてやりたいなと思うの刷り込み効果の親心や偽彼氏より兄の気分に近いだろうか。
 やはり怖いのだろうと半分安堵し半分残念に思う省吾の顔の近くで、縮込まった子の頭が少しだけ動いた。
「宜しく…お願いします……」
 明らかに耳元で、溜息よりも細く蜂蜜より甘い微かに震えている完璧な据え膳声が、温かな息と共に省吾を揺さぶった。
「……。胸だけだからね」
 自分に言い聞かせる様な声が出た。

 たぷんたぷんと湯を揺らして省吾の指からたっぷりと溢れる豊かな乳房を捏ね回す。子供の頃の粘土いじりを思い出すねっとりと指が沈み込む感触が堪らなく気持ちよい。華奢な胸部は軽く腕の中に収まるのにその正面の乳房は湯の中でもずしりと重い…筈だが絶妙に胸筋が補っているのか確かな質量があるのに男の手で弄ぶのに適しているかの様に心地良く揺れ動く。軽くはない。だが重過ぎもしない。豊か過ぎる乳房を今自分が好きな様に弄べるのだという強烈な実感。指を深く食い込ませてしまった瞬間に零れる、悩ましい甘い声。柔らかく捏ねられるのもいいが、恐らく彼女は少し力尽くで扱われるのが好きだ。感度の問題でなく、性的に。
 目の前で透き通る様な白い肌が上気し薄桃色に薄らと染まり、自分の、やや節張った可愛げの欠片もない男の指で水饅頭の様に捏ね回されている。AVの様な卑猥極まりない光景と、もどかしげにくねっては懸命に堪える身体の感触。上に乗られているからはっきりと彼女の身体の疼きが伝わってくる。仰け反る背、頼りなく揺れ膝を挟み込む足、落ちまいと絡み付きしがみつく腕、牡槍を挟み込んだまま引っ切りなしにヒクついている尻肉。
 そして、甘過ぎる声。
 苗字を呼ぶでもなし、淫らに快楽を言葉にするでもなし、先刻も彼女は声を潜めていたが、堪えられずに零れる上擦った甘い声がとてもいやらしい。囀る時は尻肉がひくひくと震えて牡槍を締め付けてくる。仰け反る背中が身体中がそれが好きだと訴えかけてくる。指を食い込ませて乳房をねっとりと揉みしだかれるのが、とても好きだと。男とお付き合いもした事もないお嬢さんが。
 んっ…んは……ぁ……っと蕩けきった、それでいて恥じらいを捨てきれない蜂蜜声は、息を詰まらせる時が一番淫らである…今は。堪えないといけないと懸命に抑えるそれは突き壊して下さいと強請っている様なものである、いや実際ぎゅっと牡槍を絞ったまま痙攣する尻肉と脚の軽い痙攣は白い身体に貯まった熱を如実に訴えてくる。壊せば、どれだけ卑猥ないい声で鳴いてくれるのかを聞きたくて仕方がない。ましてや少し指を食い込ませるだけで綺麗によがってくれる資質の、女。
「天音さん」
「っ……は…、は……ぃ……」
「乳房を弄るよ」
 ぴくんと身体が揺れる。じっくりと丁寧に乳房を弄り回してはいるがまだ乳首には触れていない。湯から突き出している可憐な鴇色の頂は触診の真似でもやはり避けていた。わざわざ言えば彼女から止められるかと思いながら、恐らく彼女が止める事はないだろうと想像が付いている。つまり言葉責めだろうか。
 乳房に指を食い込ませたまま緩慢に弧を描くと豊満な双丘が蕩けて一つになってしまいそうな淫猥な形に歪む。むにゅりと潰し合う狭間は深い一本の溝になり、肉棒を挟めばさぞや気持ち良いだろう魅惑的な柔らかな谷間が出来ては広がる。
「伊能さん…、お嫌じゃありません…か?」
 不安そうな声音はまだコンプレックスを払拭しきれない為だろう。微妙な怯えを含んでいるのに感じて上擦った極上に甘い声は同じく、多分、拒まれる事を前提としていない。肯定して甘やかして貰える事を期待している声に応えてやるのは義務とすら思える可愛らしい子猫の声に媚態。
「とんでもない」
「っ……あああああぁ……んっ」
 そっと指先で初めて乳首に触れた瞬間、彼女の唇から感極まった喘ぎ声が零れた。腰が肉棒の上でびくんと跳ね、水面が波打ちぱしゃりと湯が弾ける。乳首を軽く撫でただけでとても淫らな鳴き声をあげてしまう彼女に、思わず首を巡らせ濡れた髪に口付けてしまいかけ、省吾は寸前で堪える。髪だろうが頬だろうが口付けてしまえば恐らく深みにはまるだろう事は想像に難くない。偽彼氏としての最低限の線引きとして無難な所か。
 湯から突き出している乳首を軽く一撫でした後、じっくりと乳輪をなぞり続け、時折乳首を擦る度に彼女が息を詰まらせる。
「不感症なんてあり得ないって判るかな?天音さん」
「……。意地悪です……」
 小さく訴える声音は甘く蕩けているのに少し舌足らずで、思わず視線を向けてしまう省吾の目に耳まで真っ赤に染めて潤んだ瞳で自分を見上げている彼女の愛らしい喘ぎ顔が映る。うっすらと開いた小さな唇から覗く白い歯と滑る舌…そして僅かに唾液が滲んだ口の端が劣情を煽り、ぞくりと背筋に妖しい感覚が這い登る。拙い。このままだと流されて手を出してしまいそうな危うい感覚に省吾は目の焦点をずらしながら愛想笑いを浮かべる。婦女暴行は御免被るし、第一に彼女を怖がらせたくはない。
「――このまま、たっぷり可愛がっていいかな。指で敏感な乳首を弄ってから、舐めて、吸って、噛んでみたいな…興味あるだろう?どれだけ気持ちいいか」
 少しだけ顔を寄せて小さく囁きかけるのは、彼女が逃げ出す為の言葉だった。暴力を振るいたくはないし、辱める言葉も吐きたくはない。『私はそんな女ではありません』と怒ってくれれば誤魔化せる。土下座くらいなら劣情のお詫びにすべきだろうか。
 至近距離にある彼女の顔がわなわなと震え、そして真っ赤な顔で省吾を至近距離から見上げ、きゅっと顎を引いて恥ずかしげな、困り切った表情をした。頬を叩かれる位はあるかとさて怒られようと覚悟した省吾の耳に、微かな葉擦れの音にも消えてしまいそうな可憐な震える声が届く。
「お願い…します……」
 極上の蜂蜜声でのおねだりに勝てる男がいるだろうか、いやいまい。

 震える身体が、上擦る吐息が、堪らなく淫らだった。
「あ……っ…、いの……さ…んっ……、いのう…さぁ……んっ、ぁ……ぁっ、だめ……」
 湯から出ている可憐な乳首は柔らかく茹でた小豆に近い感触と大きさで、省吾の指の腹でくにくにと転がり同じく柔らかな鴇色の乳輪に食い込み窪みが出来る様も美味しそうであり、そして、これを食べる事はもうお許しが出ている。拙いと思いながらも二人きりの深夜の露天風呂での秘め事は少し後ろめたく、そこが更に静かに興奮させる。遠慮なく片手で豊か過ぎる乳房を鷲掴みにし、緩やかな弧を描いて捏ねると温かな水饅頭が湯の中でゆったりと形を崩す…もったいないと思いながら自分の手が彼女の乳房を初めて歪めさせていると思うと支配欲が首を擡げてきてしまう。まさかこのまま押し流されて最後の一線を越えるとは思っていないが彼女がどこまで自分を許しているのかが判らない。中指で乳首を前後に小刻みに揺さぶり、そっと、親指と中指で挟み込む。
「痛かったら、言う事」
 唇で挟み込んでじっくりと圧力を加えたいと思いながら、ゆっくりと指の力を加える。ぴくんと揺れた彼女の身体が徐々に強張ったまま仰け反り、至近距離にある彼女の唇から甘い囀りが溢れだす。未知の刺激に確かに怯えているのに身体が疼ききっている。巨乳のせいで不感症扱いされるなどとんでもない、どうしようもなく淫らな敏感な身体と、そして恥ずかしがり屋でありながら快楽に弱い危なっかしいお嬢さんに何故か懐かれているのがこそばゆい。指で軽く抓っている乳首に、乳房が僅かに円錐形に歪み、深夜の露天風呂の薄暗がりの中、遠い灯篭の齎す陰影が白い肌を堪らなく卑猥なものにする。
「天音さん、見てごらん。自分の乳首が抓られているところ」
 びくっと身を震わせてから恐る恐るといった体で彼女が顎を引いて自分の胸へと視線を巡らせ、そしてはっきりと大きく身を跳ねさせた。
「や……ぁ…っ、はずかしい……です…いやいや……ぁ…っ」
 中断を求めている様でいて全く抵抗していない甘い淫らな声で訴える彼女の腰が腿が頼りなく揺れる。尻肉で挟み込まれている牡槍は最初から猛りきっているが、彼女も興奮しているのは声や乳首のしこりだけでなく伝わってくる…ぬるぬると、袋の辺りにぬめりが絡みついてきていた。湯の中では垂れてくるのではなく薄められて塗り広げられている筈だがそれでもはっきりと判る程彼女の下腹部からは愛液が溢れている。処女ではあってもいやらしい事にこうも正直なのだから自慰位はしているのだろうかとふと思い、小刻みに擦られている牡槍に更に血液が集中して勢いが増す。
 ふるふると首を振りかけた彼女が、乳首を抓る指の力を更に加えると甲高く甘く囀り動きを止める。指の中のしこりが痛々しい事が更に興奮させ、省吾は抓りながら乳首を上へと引っ張り乳房の形を更に歪ませた。まるで吊られた様に円錐形に引き延ばされた白い柔肉が湯から露出し、ぷるんとした綺麗な肌を湯が滑っていく。出来るだけ怖がらせず静かにただ満足させてあげればよい筈なのに、彼女の声が聞きたくて仕方ない。
「嫌ならやめるよ」
「……。だめ……」
「それなら、どうして欲しい?」
「もっと…、もっと……気持ちのいいこと……を…ゃぁ……んっ…、はずかしい…、もっと……」
「これは気持ちよくはない?」
「いじわる……っ、伊能さんはいじわるです…ぅっ……」
 小声で拗ねながらそれでも抓られている乳首を見つめる瞳は逸らさないでいる彼女に、少しだけ省吾は頭を動かした。
「?」
「何かな?」
 自分のした事を判っていない彼女ににこりと笑い、誤魔化した。

 ちゅぱっちゅぷっと白い乳房に顔を埋めた男が乳首を吸う音が露天風呂の岩陰で鳴り続けている。
 湯の中で胡坐を掻いた省吾の腿の上に跨り向き合う体勢の彼女の手は自分の乳首を舐め吸い上げる男の後頭部に添えられ、乱れて仰け反り崩れ落ちない様に必死で縋り付いていた。舌で押すと絶妙な柔らかさで沈み込む白い乳房には加減してうっすらとつけた唇の痕が幾つも浮かび上がり、それは乳輪に近い程数を増している。無理矢理ではなく、一つ一つ彼女に許可を得てから付けた痕は浴衣の襟からは零れず、恐らく油断しなければ誰にも見つからないでいられるだろうが、これがアウトかセーフかは微妙な所だった。
 向き合い乳首をしゃぶり乳房に吸い付きながら、片手で乳房をぐにぐにと揉みしだく省吾のもう一方の手は、彼女の白い腰に添えられていた。
 動いてしまうのである。乳首を吸う度に、噛む度に、身悶える彼女の腰が省吾の腿の上で揺れ動き、湯の中で牡と牝の脚の付け根が擦れ合う。軽く濡れているどころではない濃い葛湯を垂らした様な彼女の愛液が省吾の茎と袋に絡み付き、互いの陰毛が絡み付く。限界まで猛りきっている省吾のモノは当然彼女の膣内ではなく牡と牝の腹部に挟まれた状態でありその気になって操らなければ貫く事が叶わないのが救いだった。懸命に声を堪えながらも初々しく身悶えてしまう彼女の腰の動きは危なっかしく、薄い下腹部が幹を擦る動きは淫猥なそれとは異なりとても拙く、それがまた男の支配欲を煽るが同時にもし上に載られた場合は危険な角度に曲げられそうで怖くなる…素数を唱えるよりも理性を引き戻してくれる危険の可能性だが、それよりも至近距離で聞こえてくる甘く張り詰めた鳴き声と凶器としか言い様のない豊かな乳房の弾力と大きさが牡の本能を休ませない。
「あぁ……っ、ぃや……っおとたてちゃ…や……っ、ぁんんっ、んっ、はずかしぃ…で…す……っ…ぅぁ……んっ、おとたててすっちゃ……やぁ…っ、あっ、あぁぁっ!」
 ひくひくと下腹部の秘めるべき場所が省吾の幹の付け根を忙しなく擦り立ててくる。恥ずかしげに顔を真っ赤に染めている彼女は時折覗くと涙を滲ませて口の端を唾液で濡らしている蕩けた顔をしているのに、堪らなく清楚な危うさを醸し出しているのが不思議だった。何故ここまで懐かれているのかが判らない。乳輪のすぐ脇に新しい痕をつけたものの、今回は少し濃かったかもしれない。彼女の薄鴇色の乳輪と同じ様な濃さの痕は数日は残ってしまうだろう。
「天音さん、胸を弄られるの好きになった?」
「いじわる…ぅっ……伊能さんのいじわるぅ……っ、ぁ、んっ、あっ、あっ、あっ…舐めまわしちゃうの…だめ……ぇっ、すき……、すき…です……っ、とっても……すき……」
 ぐいと腰を引き寄せてしまうのは、彼女が暴れる為である。決して、そんな意味ではない。

 ぽーっと惚けて動けなくなってしまっている彼女の身体をまた背中から抱いて、乳房の下に手を回している省吾はだいぶ位置を変えて知る星座を見上げる。
「もう数日後なら流星が見えたかもしれない」
「ほぇ……」
 蕩けきって指一つ動かせない彼女の湯あたりが心配だが、女湯まで連れて行って浴衣を着せて連れ出すのは作戦として困難極まりないだろう、いや誰もが寝静まっていそうな深夜なら出来るだろうか?だが湯の中ならばまだしも湯から上がらせた彼女の全身を拭いて下着や浴衣を着せ付けるのは見つかったら拙い以前に、問題がある気がした。だからと言ってこのまま朝を待つ訳にもいかず、ただ彼女が回復するのを待つしかない。
「あのですね」不意に寝惚けた様な彼女の声が聞こえて省吾は軽く首を傾けた。「北極星は、わかるんですよ?」
 まだまだ夢見心地な彼女の甘い声を聞きながら省吾は首を巡らせて北の空を見る。
「ずっと変わらないで、そこにいてくれるんです…伊能さんなら、とうぜんわかってらっしゃるでしょうけど」
「歳差運動があるけどね」
「さい?」
「一万二千年くらい未来にはこと座のベガの辺りが天の北極になるんだよ。だから変わる…ゆっくりとね」
「そんな未来はいいんです…いまの北極星が、わたしにはだいじ」
 少し拗ねた声で訴えてくる彼女は本当に子猫の様に甘え上手で放っておけない。
「ベガ。東の…あっちの低い位置に見える目立つ星、あれがベガ」
「だから、わたしにはそんなのいりませんってば」
「七夕の織姫と彦星の、織姫だよ?」
 そう言うと彼女は暫く考え込む様に黙った。裸の女性を裸のまま抱きとめている拙い状態なのに何処かまったりしてしまうのが自分でも不思議でならない…下腹部の密着と摩擦はあったものの乳房だけで軽く達してしまった彼女と違い省吾の身体は肉体的満足には程遠い。だが後におかずにしてしまうのにも躊躇いがある。それをしてしまったら偽彼氏としていつか堪え切れなくなるだろう。そう言えばこの偽彼氏は何時まで続ければいいのか終了条件を聞いていないのを思い出す。
「聞き忘れていたけど、天音さん、彼氏とか好きな人とかいないの?」
 その問いに、腕に抱え込まれている彼女が突然ぐいと首を巡らせて今宵一番の微笑みを浮かべた。
「好きなひと…できました!」
 その笑みに、省吾の胸にちくりと針で刺された様な痛みが走ったのは、まぁ、気のせいだろう。

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