何度も顔を洗い、液体歯磨きで何度も口を漱いだ後、乃愛は洗面台の正面の鏡を見た。
どうにか服装を整えはしたものの、ブラジャーなしのブラウス姿もウエストで折り返して膝上三十センチのスカートも…そして中央で割れているパンティも変わらない、が、目の前の人物が誰なのかが判らない。自分に似ているが、誰なのだろう。虚ろな瞳で自分を見ている、この人は。
ぞくりとざわめく身体が治まらない。体育館舞台下の予備倉庫で教師から解放されるまでの数十分…全校集会の予定を考えれば一時間以上、ずっと執拗に膣口と窄まりを指で捏ね回されながらクリトリスを弄ばれ続けた。自慰でない他者による性器の刺激に翻弄されながら縋る様に教師のモノにむしゃぶりついていた…まるで恋人や夫の性器に奉仕するみたいに舌を絡ませ、吸い付き、自ら頭を前後に揺らし。嫌だった。少なくとも脅迫されて始めて口腔を犯されたあの日や、マットに押し倒され教師のモノで口を塞がれた最初の頃は。
逞しかった……。
口腔を犯し続けた教師のモノが脳裏から離れない。喉奥を突く傘、唇を捲る猛々しい鰓、唾液で滑る口腔粘膜を擦り立てる幹の太さとゴツゴツと浮かび上がっている血管。悍ましい筈だった。愛情など当然ない。思慕もない。脅迫されてからは尊敬すら出来ずにいる。それなのに、奇妙な感覚が乃愛の精神で芽吹き根を広げていく…逆らえない、従うしかない、そんな諦めに近いが何かが決定的に違う、陶酔感。
はぁっと熱い吐息が漏れ、鏡の中の人物が淫らな表情で喘ぐ。
二度の射精。最初は小さな声で全て飲む様に命令され、そして、二度目は自ら嚥下した…吸い付いて、ほんの僅かだけ硬さが弛んだモノの残滓を啜る程に。苦い。粘り気の強い、熱い液体。有機的な臭い。自分にはない牡の証。教師の精液と性器を思い出し…いや囚われたまま乃愛ははぁはぁと荒い欲情の呼吸を繰り返し自分の両腕を抱き締める。いやらしい。汗に濡れたブラウスははっきりと少女の薄桃色に上気した柔肌を透かし、鴇色の乳輪と乳首にぴったりと貼り付いていた。淫らに濡れた瞳で鏡の中の女を見つめながら身を捩る乃愛は、乳首の辺りのブラウスの布地に幾筋も強い皺が寄っているのに気付き、喘ぐ。教師から解放された時はブラウスは半ば脱げていたが、それまではブラウスの上から乳房や乳首を荒々しく揉まれ、抓られていた。その教師の爪痕。まるで絞り染めの様な絞り上げられた痕。ああああっと細い声が唇を割り、乃愛の膣から頭の先まで小さな火花が弾ける。
洗面所の外から聞こえたチャイムに、乃愛の身体がびくりと震え、固まった。
全校集会の後は風紀指導で、それが終われば移動時間と休み時間の後、授業が始まる。
『教室に…戻らないと……』
下腹部は、拭えない。
それは同級生達の前で確認されなければいけない場所だった。
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34『全校集会後の衛生確認』
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