エスカレートしていく一方だった。
「今年の…ぶ……体育祭の出し物につ…ついての……提案、は…金曜日まで…に……」
体育館の舞台の上で体育祭実行委員会からの連絡事項を読み上げてはいるものの乃愛の声はマイクで拾い上げるのもギリギリと言った程度しか出なかった。校長や教頭の挨拶の時には起立しているが各自生徒の連絡事項の間は全校生徒はその場に座って聞く事になっており、今、少女の目の前には体育館の奥まで全校生徒が座っている。
体育の授業の際にいやらしい体操着を着させられて以降、登校直後から乃愛の制服に同級生達の注文がついた。曰く「弱エアコンで大変だろうから」と尤もそうな理由付けだが、内容は異常極まりない。熱さ対策に制服のスカートはウエストで折り返して膝上三十センチにする事・締め付けで気分を悪くしない為にノーブラになる事・パンティは衛生面を考えて準備された物だけを身に着ける事。夏物の薄いブラウスでノーブラになれば仄かに乳輪の色や形が透けて見え、膝上三十センチのスカートでは立ったままでもパンティが隠れるかギリギリであり、そして、パンティは、毎朝誰かが購入した物がHR前に黒板に貼り出され、それを受け取り、衆人環視の中、教室の後方のロッカー前で出来るだけ見られない様に着替える日々が続いていた。
教師達はこれでもまだ気付いていないのだろうか?いや気付かれていて男子生徒達に何の注意もないのだとしたらそれこそ乃愛にとっては恐ろしかった…まだ気付いていないのだ、気付かれたらこの羞恥の日々が終わるのだと祈りながら、だがその日が訪れた時は自分はどう扱われるかが判らない。そもそも痴女として乃愛が糾弾される可能性の方が大きいのではなかろうか?
『見えてない…よ……ね……?』
今日は全校朝礼があると判っていたが、よりによってそんな日に準備されていたパンティを一目見て乃愛は泣き出しそうになったのを思い出す。今身に着けているパンティは、ぱっと見はただの純白のパンティだが、クロッチ部分が二重になっていないだけでなく中央で縦に二つに割れていた。パンティがビキニラインの外周をゴムで合わせている為、身動きすればパンティは中央部分でぱっくりと開いてしまう…それを直せなければ開いたままになってしまう。柔毛や下腹部の丘が既に露出してしまっている可能性を考えると膝が震えて嫌な汗が滲んでくる。壇上のマイクの前で何気なく手でスカートの裾を抑える乃愛の乳首がこりこりと硬くしこり薄い夏物の制服のブラウスを突き上げている事も、薄く掻いた汗がブラウスを更に透けさせ乳輪の淡い鴇色を更に浮かび上がらせている事も、短過ぎるスカートを抑える頼りなく揺れる手がより一層その奥を注視させる事も、少女は気付いていなかった。
『早く終わって…早く……』
冷静に読み上げれば三分とかからない連絡事項だが緊張の余りたどたどしく読み上げる乃愛の愛らしい声は途切れがちで。中々先へ進まない。
普通ならば朝礼が長引く事を嫌い騒ぎ出しそうな生徒達は何故かしんと静まり壇上の少女を食い入る様に見ているのは、工業高校の学年でたった三人しかいない女生徒の体調不良を危惧しているからなのかもしれない。だが、その中には乃愛を毎日いやらしい目で見ている同級生達と、そして乃愛を口腔凌辱した教師が含まれている。それでも自ら希望して入学した高校から転校や退学する勇気は少女にはなかった。
ぞくりと腰奥から背筋へ這い登る甘い疼きに壇上で少女の身体が震える。貼り付いているパンティが濡れている気が、内腿が濡れている気が、した。それで判ってしまう…中央が割れているパンティから柔毛から尻肉までが露出してしまっている。ただ立っている間はまだ見えないかもしれないが壇上から退く際、階段を降りる際、ただでさえ短過ぎるスカートは恐らくそこを隠してくれない。まだ処女なのに何故自分はこんなに濡れてしまうのだろう。大勢の視線が絡みつく錯覚に乃愛の小さな唇が震える。教室に戻れば教卓の上で足を開いての『衛生的かの確認』が待ち受けている…同級生全員の前でパンティを脱いで自ら濡れた場所を拭わなくてはならない。
全校生徒に見上げられながらレポート用紙たった一枚未満の連絡事項を漸く半分程度読み上げた乃愛は気付かない。
自分の表情が、淫らに喘ぐかの様なものである事に。
Next
32『壇上から退場』
FAF201909252312