2019余所自作04『内緒の誘惑』

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 早朝の始発駅。風光明媚な観光地に住まうのが夢の親に巻き込まれて高校3年の冬に引っ越すなんて最悪だけど、ほんの少しだけイイ事があった。
 ちょっと神経質そうでいつも本を読んでる人がいる。社会人2〜3年といった所かな?ちょっと危なっかしそうで絶対彼女いない歴=年齢っぽいぱっとしない人。うん。絶対彼女いない。でも不潔っぽくはない。顔も十人並み。どうって事のない感じ。こんな辺鄙な田舎から都心への通勤お疲れ様。そんな感じで認識してたけれど、あんまりにも退屈だからちょっと悪戯してみる事にした。
 正面に座ってみる。
 一瞬目が合って、そしてまた本に視線を戻す。むっ。女子高生が気にならないのかな?と思えたのは相手が不愉快なおっさんじゃなかったからかもしれない。おっさんなら絶対にしてやらない悪戯。でも不発。まぁいっか。
 翌日からエスカレートさせてみる。
 次は、スカート丈をいつもより短く折り返してみる。冬場にこれはかなりのサービス。
 やっぱり一瞬目が合って、そしてまた本に視線を戻す。こらもう少し見てもいいんじゃない?これでも結構際どい丈にしてるんですけど?
 そんな毎朝。そんな悪戯。ちょっとずつエスカレート。

 分厚いタイツをストッキングに戻してみる。寒っ。
 タイツだとパンティ透けないけれどこれだと透けて見えるからね。どうせすぐ本読み始めるんだろうけど。でも瞬殺したらもうちょっとは引っかかるかな。
 見てる。今確かにぎくっとしてた。でもやっぱり目を逸らした。
 気が付けば、物凄く、こっちが意識してた。
 終点で降りるのも一緒で、その頃はもう車内は満員御礼状態で、その人の後ろにひっつくみたいにして降りると、ほんのちょっとミントの匂いがした。歯磨き粉かな、シャンプーかな。意外と背が高くて、でもちょっと猫背。ヲタっぽいかな。でも、鞄持ってる手の形が、結構好きかもしれない。大きな手で、指が長い。頬が熱くて、ちょっと恥ずかしい。

 悪戯してるのに気が付かないのかな。この人意外と馬鹿なのかな。
 今日は、ノーブラ。セーター着てるから絶対に安全。誰も気付かない…ってそもそもこの電車は暫く二人きり。ノーブラとか頭悪いんじゃないかと自分でも思って、恥ずかしくて頬が熱くなる。背筋がむずむずして、何だか身体がおかしい。やだやだこんな変質者みたいなの。もうやめ。ちゃんと鞄の中にブラ入ってるし。隣の車両のトイレで着けよ。恥ずかし。馬鹿らし。スカートはパンチラ確実で中身は紐パンとかどんなチキンレースしてるんだろ。もう馬鹿らし。

 立ち上がって隣の車両に向かおうとしたら、その人がいきなり立ち上がって、そして、私の手首を掴んだ。

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