橘学生会館物語
第四話:炊き込みごはんと親の愛。
めでたく娯楽室デビューも果たし、いくらか寮生活を
楽しめるようになってきた私は、本来持っている
「リーダーシップ」といえば聞こえのいい、ただの
仕切りたがりな部分を発揮しつつあった。
寮の食事は平日の朝と夜だけである。当然休日は自炊になる。
一応台所には鍋やフライパン、包丁などは完備されていた。
寮生はそれを駆使し、ひもじい食事を作ることになっていた。
で、問題。ご飯である。もちろん、炊飯器はある。だが。
寮生全員の分は無い。皆、「マイ炊飯器」を持っていたのである。
でも一人一個買うのもなんだしと、以前娯楽室で仲良くなった
6人ほどでワリカンにして、共同で使うことになった。
私が言い出しっぺだったような気がしないでもないなあ〜。
当然、当分の間の米も共同である。
皆で駅まで買い物に行き、無事購入。最初に食べたご飯はとても
美味しく感じた。おかずは各自で買い、皆でつついた。
だいたい私はほうれん草の胡麻和えと、から揚げだったような気がする。
寮で作ったご飯でよくやったのは炊き込み御飯。これをやろうと
言い出したのも私。おかずが少なくて済むからってことで。
あと、重宝したのは親元から送られてくる宅配便。通称「親の愛」。
さすが、親なだけにかわいい娘の好物ばかり送ってくる。
私の場合はラーメンがないと生きていけないという体なので、
必ず即席ラーメンが入っている。あと、ナゼかカップスープ。
果物嫌いの私にビタミンを摂らせようと、はっさく。これは困った。
たまには食べるが、四個入りなんて送られた日にゃ、もう大変。
で、一計を案じた。
その頃、すでに皆から「おやびん」と慕われ?ていた私は、その
立場を利用し、皆に親の愛、はっさくを分け与えたのである。
「ビタミンは摂らなきゃいけないのよ!」なんつって。
皆はまんまと「はは〜〜〜」と頭を下げ、親の愛を受け取ってくれた。
これ以降私は「おやびん」ではなくなったような気がしないでもない。
「仕切りたがりな部分」…慣れるまではおとなしいが、慣れるとリーダーになりたい。人の言う事聞きたくない。
我ながら困った性格だ…。だからだな。(何がだ)
「包丁」…見事なまでに切れない。しかもサビサビ。おばちゃん、たまには研いでくれ〜。
「ひもじい食事」…女子寮だからとて、洋食オンリーって訳でもない。(あたりまえだ)自炊ともなると大変。
何しろ初料理の女がたくさんいた。米を洗剤で洗ったツワモノもいたほど。ちなみに
そのグループは何時間もかけて台所を独占し、シチューを作っていたこともある。迷惑だ。
「マイ炊飯器」…夕方になると、この炊飯器がずら〜〜とならんで湯気を出していた。圧巻。
「即席ラーメン」…当時は「うまかっちゃん」、「チャルメラ」、カップヌードルなどが主流だった。
「おやびん」…誰が言いはじめたか不明。そんなにいばってた?「おやぶん」まではいってなかったのね。わはは。