橘学生会館物語

第参話:洗濯室の偶然と娯楽室への挑戦

友達もできそうな手応えを得た私はすっかり余裕も出て、
寮周辺の探検、散策も済み、森繁久弥の家を発見して感動したり、
意外に駅までが
遠いということも知った。

で、一人暮らしの必須科目、洗濯。寮には洗濯室があり、なんと
一回200円もした。タダでええやんけ!と、何度思ったことか。
しかも、一応女子寮なので、外には堂々と干せない。なんか
プレハブの様な所に陰干しするのである。いや〜ん、お日様は〜?
だもんで、面倒くさいということもあり、結局乾燥機にお世話になる。
乾燥機、なんと10分100円。300円でも半乾きにしかならなかった。

ぶつぶつ言いながら洗濯をしていると、前日集会で前に座った
色白の貫禄ある笑顔のステキな(?)女の子が
洗濯籠をぶら下げて来た。
「あれ?」「あ!」ってな少女漫画のような劇的な?再会を果たした。
洗濯が終わったら話でも、なんていう約束を取りつけるのには
苦労しなかった。お互いおしゃべりには飢えていたから。

で、初の洗濯を終え、いそいそと約束の場所、「娯楽室」へ。
ここは寮内で唯一寮生が集える、
大きなTVのある部屋だった。
いつも誰かしらいたが、なかなか入りづらい状況で、一度も入ったことが
なかった。でも、今回は大丈夫。だって約束してるんだもん。

娯楽室でいろいろと身の上話をし、久しぶりに笑い、他の寮生とも
仲良くなれた。皆、きっかけがつかめなかったらしい。
でも同じ年頃の女が集まると恐い物無し、騒ぎすぎて早速おじさんの
お叱りを受けるはめになったのである。それも嬉しかったりして。

 

寮周辺」…世田谷区経堂。駅から商店街を抜け、坂を降りていくと寮があった。
      スーパーは駅に伊勢丹、ピーコック、寮の近所にはヨークマートがあった。
遠い」…駅までおよそ20分。この距離を毎日てくてく歩いたおかげで、夏に初めて帰省した時には10キロ痩せていた。
洗濯室」…お風呂場の隣だった。洗濯機が4、5台、乾燥機が2台。混雑日はしれつな順番待ちがあった。
洗濯籠」…ほとんどの寮生は黒いプラスチックの手提げ籠を使用。だいたい初日に近所の雑貨屋で購入した物。
娯楽室」…とは名ばかりの、TVしかない広い部屋。でも四畳の部屋にず〜っといるよりは
      ここで本でも読んでる方がましだった。誰かしら話ができたし。
大きなTV」…当時まだTVは個々にもらってなく、ここでしかTVは観られなかった。が。
        学校の先輩達がいる時はチャンネルを変えられないので、気をつけなければならなかった。
        でもだいたい観たいTVは同じだったような気がする。でも私は野球が観たかった。
お叱り」…とはいえ、まだ入寮して間も無い頃。おじさんも優しかったし、私達もかわいかった。