橘学生会館物語

第弐話:おじさんの努力と少女の策略。

さて、問題の6時。管理人のおじさんのアナウンスが流れる。
いよいよだ、と意を決して食堂へ向かう。

その日入寮したのは私を含め5人ほどだったと思う。その中の2人
元々友達だった様で、すでに「私達はもう友達だもんね」オーラを出していた。

おじさんの説明が始まる前に何かプリントをもらった。まあ、規約だったろうと
思う。
その紙をななめ読みしながら、「もう友達」の2人を除いた、
いわゆる「フリー」「自分と同じ立場」の女の子の様子を探る。
おじさんはその間も絶えず笑顔で、寮の楽しさ、安全性を語っていた。

目の前に座った女の子は色白の、こういってはなんだけど、なんかみょ〜に
貫禄?がある人だった。雰囲気も恐くなかったので声をかけた。
普通なら自分から声なんてかけられないのだけど、この時は平気だった。

ナゼか。それは相手も必ず不安だから!という自信だった。
自分と同じように
田舎から一人で出てきて、友達はいないはず。絶対にいける!
とにかく、自分から行動を起こさなければっ!と、気合を入れていた。

思ったとおり、笑顔で答えてくれた。にか!っと、音がするほどに。
やっぱり。これで安心。ほっとした時にはおじさんの話は終わっていた。

でも、私はなんて言ったんだろう。最初の一言。大事な、大事な最初の言葉。
大阪弁だったと思うんだけど。
今度、聞いてみなきゃ。

 

管理人のおじさん」:酒好きのいい加減なオヤジ。これから果てしないバトルが繰り広げられる。
2人」:背の高い子と低い子の二人組み。目撃する時は必ず二人一緒だった。私とは全く縁が無かったようだ。
その紙」:どこにいったんだか。安心して、すぐに捨てたような気もしないでもない…。
田舎」:私の実家は大阪。都会だと思うんだけど。他の子は東北、日本海側など、本当に田舎だった。(すまん)
にか!」:笑福亭鶴瓶か、石塚秀彦か、という位の満面の笑みだった。印象深いのよ〜。
今度聞いてみなきゃ」:未だに付き合いあり。結局この寮でできた友達の中で一番仲良くなった。
            人生、わからんもんだのう〜。