橘学生会館物語

第壱話:親の不安と娘の不安は似てるけど違うのよね

私が上京したのは8年前。(うっわ〜)初めて親元を離れ、
寮に入ることになった。場所は東京、世田谷区。

18歳の割に子供っぽい格好をして、リュックを背負い、
両親と一緒に東京へ向かった。小田急線がわからず、迷いに
迷ってようやく着いた、「橘学生会館」。

管理人のおじさんにあいさつをして、いざ自分の城へ。
なんと部屋は四畳しかなく、しかも
縦に細い間取りだった。
あまりの狭さに母は大笑いした。「こんな所に住むの?」と。

私はかまわなかった。というか、どうでもよかった。
部屋の狭さより、親との別離よりも重大なことがあったから。

荷を解いて買い物へ。とりあえずゴミ箱を買った。白地に黒い線が
ななめに入った円中型。父の「
お前は白が好きやろ?」の一言で決定。
私はまた他のことを考えていた。

最後に3人でご飯を食べた。近所にあった中華料理の店でちゃんぽん。
うちのほうが美味いな」と、父。私もそう思った。
日帰りの両親を見送った…はず。だけど、よく覚えてない。
一人残されて、夕食まで時間があるから暇だろうと漫画を買った。
読みきりばっかり載ってる雑誌だった。それは覚えてる。

夜の6時から同じ日に入寮した女の子が集まっての集会があるという。
私の頭の中はこのことでいっぱいだった。上京するにあたり、
一番の不安は「友達ができるのか」だった。私はかなりの人見知りで
なかなか
友達ができない子だった。だからそれが一番の関心事であり、
一番不安なことだった。せっかく買った漫画もほとんど読めなかった。

 

子供っぽい格好」…トレーナーにキュロット(!)だった。しかも体重は今より10キロもデブ!
縦に細い」…奥行きしかない。その部屋にはロッカー(もちろん細い)、ベッド(当然ロフト式)、
       勉強机(当たり前のように折りたたみ式)が完備?クーラーはもちろん無い。
ゴミ箱」…今でも部屋にある。思えば長い付き合いだ…。
お前は白が好き」…なんの根拠があって!嫌いではないけど、ゴミ箱なんだから、黒の方がいいんでは?
          とも思ったけど、父の愛に素直に答えてみた。よよ、落涙。
うちのほうが美味い」…外で中華?を食べると必ず言う。でも私もそう思う。井の中の蛙親子。
友達ができない」…今の私を知ってる人は疑うのだろうが、本当にそうだったんだってば。
          中学1年はかなり人生勉強になった。担任のW先生、未だに恨んでます。(ちょっと嘘)