受験勉強はスポーツだ!

 ここでは、おいらの受験時代の経験、および塾講師の経験から考えた、おいらなりの受験勉強の方法論について解説します。ただし、このページに書いてあることは理数系科目についてのものです。文系科目は違うかもしれません。

 受験勉強というと、暗ーく机に向かってやる辛気臭いものだと思っている人が多いと思います。しかし、実際には受験勉強というのはスポーツと同じように動きのあるものなのです。スポーツは肉体を使い、受験勉強は頭を使うくらいの違いしかないと言ってもいいくらいです。以下、受験勉強とスポーツの類似点を挙げ、その観点から見るとどのように勉強していけばいいかを解説していきます。受験勉強のやり方がよくわからないという人に対し、分かりやすいスポーツの練習法と比べることで、どう勉強していけばいいかを実感してもらうというのが目的です。特に体育会系のクラブ活動をしている人には実感が伴って共感してもらえると思います。
 おいらは、スポーツにせよ受験勉強にせよ、4段階のステップを踏んでいくものだと考えます。そして、その各段階について、スポーツと受験勉強に共通の目標があり、どのような意識をもって臨めばいいかというのが似ているのです。では各段階について説明します。

Step1:計算力=基礎体力
 ステップの第一段階目は計算力です。これはスポーツでは基礎体力にあたります。加減乗除が速く正確にできるということは、スポーツでは速く走れて高くジャンプできてスタミナもあることと同じことになります。
 どこが似ているのかというと、計算力にせよ基礎体力にせよ、全ての分野で共通に必要な能力となることです。スポーツなら大抵のもので走るのと同様、理数系科目なら大抵の分野で計算をします。また、走ってすぐ転ぶようではスポーツにならないのと同様、計算を一つ間違えてしまうと正解が出せません。
 次に似ていることは、この能力はできるだけ上げておいた方がいい、さらに上限はないということです。スポーツでは速く走れた方が、長く走れた方が絶対に有利なのと同様、計算速度は速いほうが、正確性も高ければ高い方が絶対に有利なのです。
 最後に、この能力には少しだけコツがいる時もあります。無駄な動きをなくせば速く長く走れるのと同様、うまく考えれば速く正確な計算ができることもあります。単純な例として、54+12+46+88の計算があります。普通に前から順番に足すよりも、54+46、12+88が共に100となることを見抜ければ答えは200と速く出せ、ミスも減るというわけです。
こう考えると、計算力というものは日々の鍛錬が大事となるわけです。できるだけ毎日計算をして、頭の基礎体力を付けておきましょう。スポーツでのジョギングや筋トレと同じことです。

Step2:一つの公式を使う=基本動作
 次のステップは一つ一つの公式を使えるようになるということです。これはスポーツでは基本動作に当たります。野球では素振り、キャッチボール。サッカーやバスケならディフェンスなしでのドリブル、パス、シュート。テニスならサーブ、単純なラリー。などがそれぞれきちんとできることです。ここにも共通点があります。
 まずは、Step1とは違い、やり方を知らないと上手く出来ないということ。スポーツにおいては、例えば野球の素振りにしたら、でたらめにバットを持って振り回しても上手くなるはずもなく、バットの握り方、腰の回し方など基本的なことは教わらないと出来ないと思います。同様に受験においても、公式はまず公式そのものを教えて貰わないと出来るようにはならないわけです。
 次の共通点は、いくら頭で分かっていても繰り返し練習しないと出来るようにならないということです。これもスポーツでは野球の素振りを例にとると、たとえプロを教えるような凄いコーチにやり方を教わっても、自分でバットを振らないで上手くなるはずがないのはよく分かると思います。これも受験では同様で、いくら良い教科書を使い良い先生に習っても、自分で手を動かして公式の使い方を練習しないと全く出来るようにはなりません。スポーツなら当たり前のこのことも受験では意外に出来ていない人が多く、教科書にびっしりとマーカーで印をつけて、中味もばっちりと覚えているのに、自分で手を動かしていないからテストの点が悪いなんて人は結構います。これは先ほど言ったように、野球のレッスンだけ真面目に聞いて自分でバットを振っていないのと同様です。どれほど馬鹿げたことかが分かるでしょう。
 最後の共通点は、しっかりと出来ていなければいけない反面、それに埋没してはならないということです。スポーツ、再び素振りを例にとると、一日千回素振りをして、素振りの達人になったとしても、実際にそれだけで試合でガンガン打てるかというとそういうわけでもないでしょう。実際の試合ではピッチャーの球は緩急上下に変化するわけですから。受験でも同じことで、いくら一つ一つの公式の使い方をマスターしても、それだけでは実際の入試には太刀打ちできないのです。なぜなら、実際の問題は複数の公式を複雑に組み合わせて初めて解けるからです。つまり、大事なことは、基礎は基礎としてしっかり練習するが、実際に使う時にはそれを適切に選び、自在に変化させるものだという意識をきちんともつことです。おいらは「目の前の問題を解くために勉強しているわけではない」と良く言います。基本動作の鍛錬は、基本動作で終わらず、将来的には自由に変化させていくものだという柔軟な思考を持ちましょう。そのためには、単にガリガリと練習するのではなく、どうしてこの公式が有用なのか、なぜ?ということを常に頭に浮かべるようになると、後で応用が効きやすくなります。

コラム:公式の覚え方、使い方
 Step3に行く前に、実際に公式を覚えて使う場合の考え方について解説します。重要なことは3つ。
 1つ目は、公式を形だけで覚えないということです。意外にある話が、「運動エネルギーは?」と聞かれて、即座に「ニブンノイチエムブイジジョウ」と答えるのに、「じゃあエムって何?」と聞くと答えられないパターンです。これが公式を形で覚えているパターンです。エムが何かわからないでどうやって公式を使うつもりでしょう?公式を覚えることが目的じゃなく、使うことが目的なんだという意識がないとこうなりがちです。じゃあどうやるのかというと、ニブンノイチエムブイジジョウと口に出して言うのは構いませんが、意識の中では「運動エネルギーは二分の一かける物体の質量かける速度の二乗」なんだということを考えなければなりません。大事なのは公式の名前じゃなくて中身です。
 2つ目は、ほとんどの公式は自分で証明できるようになっておくことです。ちゃんと中身まで覚えてて使えればいいじゃんとか思いがちですが、人間の記憶なんてあてにならないもので、結構忘れます。でも、公式の証明ができると忘れにくくなり、忘れても導けたりします。ついでに言うなら、公式の証明そのものが結構重要な考え方を含むことが多いので、公式の証明そのものを質のいい問題として利用した方がお得なのです。
 最後に大事なことは、公式を使って練習する際に、どの場合にこの公式が適用できて、どの場合に適用できないのか、適用できないとしたらどうしてかということを常に考えることです。自分で問題を解いて、公式の適用間違いをした場合に、単に間違えたーと思うだけじゃなくて、どうして自分の考えがいけないのかということを毎回考えるようにしましょう。間違いを直すという方法が上達への一番楽で早い方法です。練習なんだから間違いは当たり前です。むしろ積極的に間違え、それを糧にしましょう。

Step3:公式の組み合わせ=基本セットプレー
 次のステップは、複数の公式を組み合わせるということです。これはスポーツでは基本的なセットプレーに当たります。野球ではショートゴロからのダブルプレーの取り方、サッカーならコーナーキックからの点の取り方、バスケなら2−2でのディフェンスのかわし方、テニスならサーブ&ボレー、などというものです。
 まずはスポーツにも受験にも基本的な組み合わせが存在するということです。野球でのダブルプレーの取り方には決まった方法がいくつかあるでしょう。同様に受験にも基本的公式の組み合わせがあります。最大値の問題→変数設定→微分→極大値というものなどなどです。
 次に大事なのは、上のStep2が確実にできて初めてこのStep3に進めるということです。キャッチボールがろくに出来ない人がダブルプレーを取る事が出来ないように、基本的公式が一つでも抜けていたら基本セットは出来ないということです。よって、上のStep2がきちんとできいない人はまずStep2を確実にしましょう。
 そして次に大事なのは、このStep3までは頭を使わないで反射的に出来るようになる必要があるということです。ダブルプレーにしても、慣れてきたチームでは、誰がどこのカバーをするとかいちいち考えないで反射的に動いていると思います。同様に受験では、基本的な公式セットの解法は、いちいち自分で考え出さなくても、もはや当然のものとしていきなり使えるようになる必要があるのです。
 最後のポイントは、Step2と同様ですが、この基本に埋没しないということです。実際の試合では練習したとおりにしないほうがいい場面も多々あるわけです。同様に受験でも、基本セットは大事ですが、場合によってはそれを崩したほうが良い場合もあるということを肝に銘じておきましょう。そのためには、何でこの基本セットが有効なのかを考えるのはStep2と同じことです。

Step4:入試問題=試合
 最後のステップは、実際の入試問題です。これは、スポーツでは試合に当たります。入試本番は試合そのものにあたり、模試などは練習試合、自分の家で入試問題を解くというのはチーム内の紅白戦みたいなものと考えてください。
 共通点は、まずはもちろんこれが最終目標だということです。スポーツで練習するのは試合で活躍するためなのと同様、受験勉強をするのは入試問題でよい点を取るためです。
 次に、また上で述べたことの繰り返しになりますが、基本は不可欠であると共に絶対ではないということです。スポーツの試合でも、基本のプレーは大事ですが、臨機応変に使いこなさなければいけないのと同様、入試問題でも基本の考え方を大事にしつつ自在に変形しなければなりません。
 最後に、Step3まではある程度決まりきったことの練習だったのに対し、このStep4に来て初めて頭をフル活動させるということです。スポーツでは、試合の組み立てとして、最初から全力で行って優位に立つのか、持久戦に持ち込んで相手のミスを誘うのかとかいう大局的な戦略に加え、目の前のディフェンスが空いたから一気に突っ込むとかいう局所的な戦術を試合の間中ずっと考えていなければなりません。同様に入試問題に対しては、まず全ての問題に目を通し、どの問題から考えるのかという大局的な戦略に加え、この問題はこの方法ならうまくいきそうなのでもう少し計算してみるといった局所的な戦術も考え続けなければいけないということです。どちらにせよ、このStep4では自分の全力を出すことに注意し、また、決まったやり方なんてものはないということを実感するのが大事です。

いかがでしたでしょうか。スポーツと受験は、使う部分が体か頭かの違いはあれ、意識の持ち方は全く同じであることが理解していただけたでしょうか。よく考えれば当然で、体の神経と頭の神経はどうせ作りが似てるんでしょうから、発達の仕方も似てる、つまり鍛え方も似てくるわけです。よって、受験勉強をする人は、これをスポーツに置き換え、自分は今何を鍛えたらよいのか、どのように鍛えたらよいのか、どんな意識で鍛えたらよいのかを常に考え続けるのが良いと思います。すると、ただの単調な勉強よりも効率が上がるだけでなく、自分の上達が見えて楽しくなってくると思います。

では、以降は各科目について詳しく方法を述べていきます。
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