2001年4月 8日

PC所有者の現状を理解していないライター達


 

 最近のPC関連記事を読むと思うのは、ライターが「今のPC初心者の現状を理解しているのだろうか。」と言う疑問である。
 大手メーカーから新製品が出れば、「いかに以前の製品より優れているか」を褒め称え、購入する(または、アップグレードする)価値がある事を訴えている記事が多い。
 考えてみれば、これは当然のことで、PC関連雑誌は各メーカーから広告収入を得ているし、評価用機材の貸し出しや、各種イベント(新製品の発表会など)への招待を受けないと記事が書けない状態であるからだ。
 つまり、メーカーの意に真っ向から対抗する記事を、日本のPC雑誌は書けない体質にある。
 (その証拠に、大手メーカーの製品を否定する記事を日本のPC雑誌で見た事がない。否定するなら記事を書かない方がメーカーから反感を買わないですむからであろう。)
 また、メーカー広告を乗せないPC専門誌もあるが、「中立」と言いつつも内容が充実しているとはいえないし、製品レビューもいまひとつだ。
 
 従って、雑誌の記事は「ユーザーにとってどれほど利益があるのか」は解るが「費用対効果を考えている事は稀である。」と言えよう。
 そもそも、大多数のユーザーにとって何が必要なのだろうか?
 1Ghz以上のCPUスピードは必要なのか?
 64MBものメモリ容量を持つビデオカードは必要なのか?
 30GB以上のHDDは、必要なのか?
 数年に1回PCを買い換えたり、毎年パーツを交換しなければ、使えないマシンになってしまうのか?
 
 答えは、ノーである。
 
 実例をあげるなら、今HARIが自宅で使っているメインマシンのスペックを書こう。
 マザーボードは、今やジャンクでもお目にかかれないソケット5搭載の物で、下駄をかませてMMX-Pentiume233Mhzを乗せている。
 メモリは80MB、総HDD容量も15GB弱。
 ビデオカードは、VRAM8MBを搭載したATIのGraphics Pro Turbo(Mach64)。
 さすがにHP掲載用写真の画像処理は遅いが、それ以外の日常利用に不満点はない。
 
 実は、HARIは新PCを作っている最中であるが、これは「画像処理のスピードの遅さ」が原因ではなく、最近のハード(USBや、IDE接続HDDなど)がマザーボードで対応しきれなくなってきているからである。
 つまり、補強できる部分は補強しきっていて、これ以上の性能アップ長命化が望めない状態であるからだ。
 (PCIスロットも、空きが無い。)
 
 また、OSも初期のWindows95を使用している。
 これは、HARIがOSのアップグレードは、「いくら新バージョンのOSがすばらしくなっても」安易に行ってよいものではないと考えているからだ。
 PCだって車やカメラと同じで、「調子が良い(安定している)時は、極力そのままで使った方が良い」と思っているからである。
 
 先の独り言Windows終焉の兆し。でも取り上げたWindowsXPだが、これから日本でも盛り上がっていくだろう。
 しかし、よく考えて欲しい。
 いまやPC所有者の中でも無視できない存在である「普通のユーザー」が家庭で使うPCのOS(多分、Windows98かMe)をWindowsXPへアップグレードする事が必要だろうか?
 雑誌記事では「より安定性を増した」とあるが、Windows9xシリーズは「使用するのが耐えられないほど不安定」だろうか?
 また、より実用的になったと言われる「Terminal Service」機能を取り上げる記事もある。
 だが「LANに接続されたPCを事由に操作できる」機能は、悪意を持ったユーザーにとっては宝の山、格好の「セキュリティ・ホール」を作ってくれる。
 そして、WindowsXP恐るべき事に、驚くほどハード資源を要求する。
 「Windows98世代のPCは買い替えを検討した方が良い」程らしい。(98だって、発売されてまだ数年なのに、だ。)
 パワーユーザーとかヘビーユーザーとか呼ばれる人たちならともかく、一般ユーザーが「決して安くない、今も使えるPCを買い換えてまで新しいOSを導入」すると思っているのだろうか?
 また、WindowsXPだけを動かすに、メモリが最低128MBは必要で、OfficeXPを動かすには192MB以上必要だといわれている。
 最近(メーカー製で、初期導入済みOSがWindowsMe世代)のPCであってもメモリ増設は必要だが、雑誌の記事は簡単に「最近メモリも安くなっているので、増設のハードルも低くなって・・・」などと平気で書いている。
 今使っているPCに、メモリを増設してWindowsXPへのアップグレード版を購入すれば(WindowsXPのアップグレード版価格はまだ未発表だが)約2万円強になるだろう。
 一般のユーザーにとって、決して安いとは言えない金額である。
 そして、Windows9x系からアップグレードしたユーザーには「アップグレード前は正常に動いていたハード、ソフトが動かなくなる」という体験が待っている可能性が高い。
 (ソフトを、新バージョンが発売される都度アップグレードしているユーザーが、どれほどいるだろう?)
 また、WindowsXPにWindows9x系ソフトを動かす仕組みを入れるらしいがどこまで動くかは謎である。
 ハードが正常に動くかどうかは、そのドライバ次第。(Windows2000に対応したドライバがあれば、望みはかなりあるが。)
 
 本来、OSをアップグレードするには、使用しているハードはもちろん、ソフトの互換性を全て確認してから行うべき物で、安易に行うべき好意ではない。
 その事を指摘している記事は稀で、逆にアップグレードすればすばらしい世界が体験できるかのような記事が殆どである。
 
 それも当然、PC雑誌のライターは技術系で好奇心が強く、「新しいものを使ってみたい」気持ちが強い人が多い。
 (そうでなければ、PC系ライターは勤まらないのだが・・・。)
 となれば、新しい物に対して好意的に書くのは当然だ。
 (そして、満足できない製品は記事を書かなければ良い。)
 
 ライターは、あなたのPC環境(利用目的や使用頻度)を全く考えずに、製品スペックや自分が試用しての感想を書いているだけである。
 (はたして、ライターが「お勧めする」と言っている製品を、どれだけ自腹で買っているか、調査して欲しいものだ。)
 雑誌や雑誌系HPの記事を、100%信用してはいけない。
 雑誌の記事は、あくまでも参考までにとどめるべき物である事でしかないのである。。
 
 なお、PCを買い換えたり、新しいPCをこれから組もうと考えている人は、WindowsXPを前提に考えるべきだろう。
 HARIは「WindowsXP」を否定する気は無い。
 (多分、HARIが今作成中の新PCはWindows98SEとWindowsXP Proのデュアルブートシステムになるだろう。)
 しかし、一般ユーザーが現行システムに大きな不満がなければ、雑誌の記事に踊らされてアップグレードする価値は無い、と考えているだけである。
 (これは、ハードの増設も同じである。)



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