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ミニクーパーとミニクーパーSの登場 〜ミニシリーズMk.1の時代〜
発売が開始されたミニは、多くのカーマニアの予想通り、すぐにモータースポーツシーンに投入された。1960年4月に開催されたジュネーブラリーでは、早くも1リットルクラスの1位と2位を独占するという快挙を成し遂げた。そして、より強力なエンジンを搭載するスポーツモデルを望む声が徐々に高まりを見せていった。
この声に応えるべくして完成したのがミニクーパーである。
当時F1のトップコンテンダーで名エンジニアでもあるジョン・ニュートン・クーパーは、レースを通じて知り合ったイシゴニスと仲が良く、ミニの試作車が出来ると早速それを借りて運転し、これに手を加えると相当速くなると早くから気付いていた。そこでミニを作っていたBMCを説得し、高性能版のミニ=ミニクーパーを作り上げたのだ。
クーパーシリーズはADO50と呼ばれ、ベーシックミニとは分けて考えらた。
クーパーの名を冠したモデルがBMCのラインアップに加えられたのは、ミニがデビューした2年後、1961年10月のことであった。外観こそそれまでと変わりはないが、オリジナルモデルに搭載されていた848ccのエンジンをストローク・アップした997ccエンジンを搭載、SUの1-1/4のツインキャブレーターでチューニングされ、ノーマルの34馬力から55馬力にパワーアップ、クロスミッションで、さらに7インチのディスクブレーキまで装備されていた。
ミニクーパーはデビュー翌年の1962年、全世界で153もの勝利をマーク。特にラリーでの成績は目覚ましく、ミニクーパーの登場は当時のモータースポーツシーンに大きな衝撃を巻き起こした。
より速くなったミニクーパーは街のチューニングショップが腕をふるうための最高のアイテムとなり、中でも特に目立ったのが、ダニエル・リッチモンド率いるダウントン・エンジニアリング社のチューンド・ミニ・クーパーだった。優に160km/hを出せるチューニング技術は、ミニクーパーの売れ行きに気をよくしていたBMC設計部を注目させ、やがて次期ミニクーパーの生産を決定させるのである。これがミニクーパーSである。
ミニクーパーとミニクーパーSの違いは、ミニクーパーが純粋なカタログモデルだったのに対し、ミニクーパーSはレース対応モデルとして設計されたところにある。1963年に発売されたクーパーSは、発表当初1071ccモデルだけであったが、翌年の1964年に970ccと1275ccのクーパーSが追加された。めまぐるしい排気量変更はレースでのクラス分けによるもので、各クラスに合うモデルを、参戦するドライバーのためにメーカー自ら用意したというわけだ。
ミニクーパーがノーマルミニのブロックを流用したチューニングであったのに対し、ミニクーパーSは、ジョン・クーパーがブロックから新たに設計したエンジンを使うなど、全くの別物。このミニクーパーSのエンジンは、その生い立ちを裏付けるかのように、サーモカバーの後部にひし形のマークが刻印されているなど、専門家が見れば一目でMk1クーパーS用エンジンであることがわかる特徴がある。クランクが鍛造であることも、Mk1クーパーSだけの特徴。ヘッドのスタッドボルトの数まで異なっている。パワーは970ccが65馬力、1071ccが67馬力、1275ccは75馬力。ブレーキも強化され7.5インチディスクが採用されている。キャブレーターは3種とも共通のSU1-1/2ツインであった。最高速は、970ccが148m/h、1071ccが152m/h。特に1275ccは最高速160Km/hという空前絶後のスーパーミニで、1965年以降も生産が続けられたのは1275ccだけである。(細かく言うと、970ccは1965年1月までの生産)
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