元の発言 [ Re: 魏誌韓伝の国名 ] お名前 [ ピクポポデミ ] 日付 [ 8月2日(金)23時06分13秒 ]
>>そうするとどんな音が一番ふさわしかったのでしょう。
>>ちょっと想像つきません。
私も想像つきません(^^;)
他の言語音や音響を音写するとき、どの音素に着目するかは母語の音韻体系によって異なり、また個人差もあるでしょう。
例えば犬の鳴き声でも日本語は「ワンワン」、英語は「バウバウ」、朝鮮語は「モンモン」。
また、朝鮮語の音節は「子音+母音」もしくは「子音+母音+子音」ですが、最後につく子音(終声)のうち、b.m.s.j.h などは、単独では殆ど聞こえません。
例えば韓国語で「チョコレート」は「チョコレ」と言います(そう日本人には聞こえます)が、実は最後の「レ」の後ろには終声の「s」があります。ところが、後ろに「〜です」を意味する助動詞「イエヨ」が付くとこのsがリエゾンして「チョコレシエヨ」(チョコレートです)になります。
この助動詞は、前の名詞に終声がある場合には「イエヨ」、終声がない場合(母音で終わっている場合)は「エヨ」であり、例えば「寿司」なら「スシエヨ」(寿司です)になります。
この終声の有無と助動詞の関係を知らなければ、「スシエヨ」が「寿司です」、「チョコレシエヨ」が「チョコレートです」・・・・つまり韓国ではチョコレートを「チョコレシ」と言うんだ、と思うでしょう。
外国人が相手の言語のことをよく知らず、自らの音韻感覚で音写すると、こういう母語話者自身には想像もつかない音写をしてしまうことがよくあります。
>>古代中国の方言についてはやはりまだ分かっていないようですが、
当該地方の住民全部が引っ越したり、あるいは他の言語・方言を話す人々が大挙引っ越してきてクレオールが発生したり、といった大規模な社会変動がない限り、方言の音韻体系は時代を経ても殆ど変わらない、と私は考えています。だから、現代の各地方の方言から古代の方言音韻体系はかなり復元できるはずです。
前にも書きましたが、私は魏志のインフォーマントになったり、古代の朝鮮人に漢字を教えたりしたのは、山東省あたりの方言を話す中国人ではなかったかとにらんでいます。
>>役人なんかはその時代の中央語を指向したのではないでしょうか。少なくとも中央に送る文書は、中央語で読まれることを意識したとか・・・
テレビもラジオもカセットもCDもない時代に、地方の人間が標準語(首都の方言)の漢字音を覚えようとするには、首都から来た人に教えてもらうか、首都に留学するかしかありません。
魏の官僚達が科挙でちゃんと選ばれていたかどうかは知りませんが、科挙の試験も筆記試験であって、今日の日本の英語の試験の如く、口頭言語の発音なんかは問題にされなかったでしょう。(韻書を丸暗記して詩文が作れればいいだけです)
だから、地方出身の役人は、長く首都に駐在しているエリートはともかく、地方回りばかりしていれば自分の方言が抜けなかったはずで、特に辺境の楽浪郡や帯方郡などに飛ばされる役人がエリートのはずがなく、標準語などは話せなかったと考えられます。
>>そうでなければ、もっと方言が残ったと思いますが。
文字に書かれる「漢文」は文章語であり、漢代や三国時代でも漢文と口頭言語は乖離していたはずです。文章語としてのラテン語が、そんな言語を話す人間が誰もいなくなった後でも長く使われていたのと同じです。だから、漢文をいくら読んでも、方言はおろか首都の人間が本当はどんな言語を話していたかさえ解らないでしょう。
明代に「洪武正韻」という韻書が編纂されていますが、明代の首都は北京であるから当時の北京の漢字音を写したものだろう、などと思ったら大きな間違いで、古代の切韻系統の韻書を編集し直したものに過ぎず、これを頼りに中国語を学んで北京に行った者はみんな困ったらしいです。
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