ゲシュタルト 近作で聴かれるバッドの音楽は、「図と地」の世界により近づいて きている。いや、音楽は何であれそういうものだけれど。どういう ことかと言うと、長く、低くうねる持続音と、それと容易には区別 がつかない埋没する旋律の重なり合いの音楽、例えば"Abondoned City" のような作品に比べて、ずっと見通しのよい音響になってき ているのである。ほとんど変化を持たないシンプルなリフをバック に立ち上がりの鋭いピアノが歌ったり、音場の前面にかっちりと定 位するギターソロ(!)であったりと、「舞台と表現者」とでもい える演劇性さえ持つ感のある最近のバッドの音楽である。このとこ ろ続く共同作業の結果現われる音楽を、こうした背景と前景(つま り図と地)、音楽で言うところの伴奏と旋律の役割分担という関係 から考えてみると面白い。 共演者たち、たとえばこのページで登場するアンサンブル、ツァイ トガイストやXTCのアンディ・パートリッジなど、それぞれの持 つトーンと融合しながらもそれを一層強調するコラボレイターとし てのバッドは、イーノにやはりどこか似ているのかもしれない。結 局は自身の音楽として聴かせてしまうところが。 |