Harold Budd
Ruben Garcia
Daniel Lentz

MUSIC FOR 3 PIANOS

(ALL SAINTS,1992)




(original artwork)

柔らかな輪郭


意外なことだが、これが初のピアノのみによるディスク。しかしソロではない。
3台のピアノの交響。


トラック1"pulse・pause・repeat"。タイトルが響きを象徴する。ゆっくり連打される音は「拍動」、ひとしきり響いた後の「沈黙」。そして、「繰り返し」。本当にタイトルそのままなのだが、旋律も伴奏も誰もが中心的役割を受け持っていない。ゆらぐパルスを3人のピアニストが重ね合わせる時、その音高の違いが和音を作り出す。コードの色彩が旋律でもあるという、響きのありかた。

旋律的な曲であっても、3人はズレとゆらぎを生み出す。トラック3"Iris"では左右のスピーカから飛び交うピアノの粒が総体としてのメロディを形作るのだが、それは担当する音高が定められたハンドベルの演奏のような補完的な意味でではなく、主旋律ににじんだ輪郭を与えるためのものだ。そう、このピアノ・アンサンブルは、淡いオブリガート(主旋律を追う付随的な声部)を追及しているのではないか。聴きながら一つの旋律を追いかけていると、常に寄り添う後光に気付く。水彩で描いては指でにじませていくような。
線描と点描とによる、かすかな輪郭と装飾が美しい。



・h o m e・ ・ambient・ ・harold budd・