天海春彦(名字は変更不可、名前のみ可能)の住む街には変わった現象がある。ひとつは常に空にある巨大な虹、もうひとつはGift。人生においてただ一度だけ他者に与えられる贈り物。限定された人間、限定された使い方しかできない不可思議な現象には一体どんな意味があるのだろうか。
MOONSTONE第4弾。個人的に初MOONSTONE作品だったりします。これまでの作品と方向性を変えたところに着目して購入しました。
初回特典はサウンドトラック。もしかしたらパッケージサイズも初回特典なのかも。
ジャンルは取り立てて珍しいところのないアドベンチャースタイル。
足回りは親切さに欠ける設計。メッセージスキップは既読未読を判別してそこそこ早いですが、どうにも速度が安定せず止まったようになることもしばしば。
バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、スクロールバーの使い勝手が悪く、一気に戻るということができません。また選択肢の際にメッセージウインドウが消えるためにバックログやクイックセーブが使用できないのは意外に不便でした。
「ひとつ前の選択肢に戻る」機能があるのですが、この選択肢に場所移動選択が含まれないので使い所がほとんどありません。せっかくの便利なハズの機能も役に立てにくいです。
通常セーブ時において毎回、ヒロインのアイコンを選ばなくてはならないのはかなり面倒。せめて必要な時だけ選ぶ(変える)という仕様にするべきだったのではないでしょうか。
立ちCGの変更時など画面の切り替えがかなり遅いです。いつも一タイミング待たされる格好なので無意味にテンポが悪くなっています(推奨環境はクリアしています)。
フルスクリーン時、マウスカーソルが画面の左端にあるとクリックしても全く反応してくれません。通常、左端に置いているので個人的にはとても不便でした。
シナリオ。全体的に説明不足。ライターだけがわかっていて、プレイヤーにはサッパリわからないというケースが一度ならずありました。中でもGift現象については一つのシナリオを除いて、あらかじめ知っていることを前提に書かれているのでかなり置いてきぼりでした。
「学園」+「魔法」という舞台設定であるせいか、展開は全編通してトンデモ風味。それはいいとして5本しかないシナリオでネタが被っているのは少し工夫が足りないように思います。
全てのシナリオで、という訳ではありませんが主人公とヒロインが惹かれ合う過程の描写はなかなかに秀逸。段階を踏んでの恋愛が楽しめます。ただ、そうした描写を実現していながら恋人成立後はすみやかにエンディングに向かってしまうのは残念。ちょっとくらいはイチャイチャするイベントを挟んでも良かったのではないかと。
テキストの単語の選び方には疑問を感じます。どのキャラも区別することなく「やおら」、「ビックリ団」などの単語を1ルートで複数回に渡って喋るのは明らかに不自然。ライターのマイブームか何かなんでしょうか。
演出としての間の取り方がもう一歩。何の兆候(CGなどの変化)もなく、話や時間が飛ぶことがまま見受けられました。
Hシーンは原則として各キャラ1回。2回のキャラはCG分割払い方式にて実現。Hシーンが売りでないにしてももうちょっとは欲しいところです。加えてシナリオ展開上において必要ない、もしくは不自然な形でのHシーンがあったのも残念。
全シナリオにおいてエピローグの使い方がイマイチ。まるでわざと印象に残らないようにしているのではないか、と邪推するくらいに意味の感じられない薄い内容ばかりでした。
CGはかなり寂しい印象があります。メイン原画家2人にサブが3人いて差分抜きでイベントCGが100枚ではさすがに少ないように思います。プレイ時間に対する供給量もけして多いとは感じませんでした。また塗り方にばらつきがありシナリオにマッチした繊細なCGがある反面、そうでないCGがあるのはもったいないところ。
立ちCGはポーズ2種類に多彩な表情で喜怒哀楽を表現しています。目立つ感情表現(怒る、困って汗を出す、ため息をつくなど)は立ちCGをそのまま用いてSDで描かれているのですが、これがどうにも可愛くありません。本来の原画と噛み合っておらず困りものです。
音楽は前に出すぎることなくBGMに徹している感があります。悪く言えば地味ですが、じっくりと聞かせてくれる曲調に仕上がっているかと。
ボイスは微妙にフルボイスではなく。サブキャラにも用意されていますが、名前のない生徒Aのようなキャラには用意されていません。メイン、サブとも演技の方は問題なし。
まとめ。何を見せたいのかわからない作品。シナリオ、CG、キャラ、音楽、エロなどなど、ゲームを構成する要素のどれをとっても売りとなるべきものが見えてない。あらゆる方向に対してサービスが足りない作品といってもいいかも。
お気に入り:神代縁
評点:55
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、深峰莉子
正直言って彼女の傲慢さには我慢なりません。霧乃ファンであれば激怒もののシナリオ展開ではあるまいか。修学旅行の2人の態度には気持ち悪ささえ感じましたよ。君らは微塵も後ろめたさがないのかい、と。最悪なのはその後。霧乃が主人公にGiftしているのが気に入らないからGift現象そのものをなくしたい、ってどこまで自分勝手なら気が済むのか。莉子がいらないから自分が必要ないという主人公もまさに同じ穴のムジナ。醜悪の一語に尽きます。
純粋に理解不能なのは糸電話のイベント。片側が壊れている理由が明かされるのがなぜ、莉子シナリオなのか。全くもって意味がないと思うのですが。なんのために片側を壊したのやら。
2、木之坂霧乃
全体的にトンデモシナリオであるため、妙に普通な霧乃シナリオはどうも印象度で不利な感じ。しかし、Giftの使い方はなかなか悪くないです。ただ、それが秘密であったがゆえに効果に対してありがたみが全く感じられないのが残念なところ。実際、主人公も記憶がないのでサッパリ感謝していないし。強制的に悪役にさせられる莉子シナリオといい、不憫でなりません。せめてGift効果がなくなった後に反動でもあれば良かったのに。
本来、霧乃からすれば莉子はどうにも許し難い存在だよなぁ。後から割って入ってきて妹に収まってしまうし、約束は身勝手な理由で先に破られてしまうし、帰ってきて再び、それもあっさりとポジションを奪ってしまうし。約束を二人とも破ったのに自分だけ殴られるし。
どうでもいいですが、制服にマイ帽子ってーのはどうなんでしょうか。デザイン的にピッタリというあたりも初めから狙っているのが見え見えなだけに、よく苛められないな、と。主人公も案外本気で心配したのではあるまいか。
3、外薗綸花
縁シナリオとどちらを先にプレイしたかが心象に大きな影響を与えそう。こちらが先ならまだいいのですが、縁シナリオが先だとどう考えてもナラカが倒せるとは思えない。倒せてしまうなら縁や姫の立場がなさすぎるでしょう。
徐々に惹かれていく過程はなかなかだと思うのですが、それ以外がどうにも盛り上がらない。2回の戦闘シーンも全然駄目だし。攻撃が通じないとわかってからGiftを受け取る流れとか世界の危機が個人の意地に矮小化されているのはどうかと思います。
4、藤宮千紗
ある意味、一番のトンデモシナリオかも。私のように最初にプレイしてしまうとかなり面食らうのではないでしょうか。何も説明してくれることなく「Gift」、「魔女っ子」、「偽Gift」なんて単語が平然と飛び交う訳ですから。
綸花シナリオ同様にカップル成立までの描写は良い感じ。ただし、スピカうんぬんはどうにもこうにも。結局、謎かけっぽい会話の数々も何の意味もなかったという。答えなんてないんだから。
それにシナリオの筋書きがどうにも無理矢理で。千紗の考えは到底、理解できませんよ。自分の回りの人間は全て利用する対象でしかないと言わんばかりです。あの告白だって残酷以外の何物でもないよなぁ。
5、神代縁
この世界への入門編としては最も向いたシナリオ。これだけがGiftの説明をきちんとしてくれます。どうせ、霧乃シナリオ以外はトンデモな内容な訳ですからその辺は問題ないというか、むしろ相性診断にちょうどいいのかも。このシナリオが駄目なら他だって駄目でしょうから。
恋愛描写はほどほどながらGiftの使い方、というか見せ方(CG)は良かったように思います。ただ、Giftでしか果たせない理由は苦しいにも程がありますけど。魔法使いは自殺不可なんですかそうですか。
ナラカ討伐は元気玉が勝利の鍵というのはどうなのか。まぁ、他シナリオに比べればこれもGiftの使用例としてはいいのかも。まぁ、こちらを肯定すると綸花シナリオはどうしたってねぇ。向こうに比べれば盛り上がってる、かな?
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