水位の上昇に人々の生活がおびやかされるようになった頃、メティスという異能の力に目覚める人間が表れ始めた。それは新時代の幕開けか、破滅の序曲か。答えはなかなか見えないが人々は対応していく。
澄之江学園はメティス使いたちが多く通う学園である。速瀬慶司(変更不可)は一般人であったが適性を見出されスカウトされる。果たして彼にはどれほどの出会いが待ち受けているのか。
Clochetteの第4弾はやっぱりというかなんというか同一チームの前作のリベンジを思わせるような企画です。
購入動機は飛躍的に進歩した御敷仁氏の原画(CG)に惹かれて。
初回特典はカミカゼ☆ファンブック。予約キャンペーン特典はカミカゼ☆原画集。他にも予約したその場で色紙、さらに追加でポスターと非常に営業展開が意欲的でした。
それほどたいしたものではありませんが、修正ファイルが出ています。気になる方はあてておきましょう。
ジャンルはいつも通りのアドベンチャー。
足回りは平均クラス。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、共通シナリオが長めのために使用機会が多く相対的にやや遅く感じます。ただし、シーンジャンプ機能がついているのでそれほど気になることはありません。「次の選択肢へ」機能ではないので要注意。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、あまり戻ることはできません。ロード直後にも使用できます。
シナリオは意欲的な設定を十分に活用しているとは言い難いです。萌えゲーという括りでしょうから止むを得ない面もあるのでしょうが、物語に過度の期待は厳禁。味付け程度に考えておいた方がより楽しめると思います。
Clochetteだから、と枕詞を付けてもいいくらいに本作もキャラクターが優秀です。5人のヒロインたちはいずれも甲乙つけがたくとても魅力的に書かれています。出来の良いCGの効果をより高めるためのテキストが原則用意されています。
原則というのは残念ながら複数ライターの弊害が出ているシナリオもあるから。設定やキャラクターのすり合わせが不十分なのか違和感を覚えるケースがしばしばあります。構成そのものに疑問を感じるシナリオもあり、共同作業がうまくいっていないと感じさせられます。
日常の掛け合いは意味ある会話は少ないものの読み進めるのは楽しい、といったイメージです。笑いはほどほど以上に求めない方がいいでしょう。
惹かれ合う過程はあんまりありません。主人公のオーバースペックでヒロインがあっさりと陥落してしまうので。例外といえるのは宇佐美沙織くらい。代わりに恋仲になった後の想いを深めていく描写はしっかりと書かれています。これもやはり、シナリオによって差がありますが。
本作はイベント数自体はそれほど多くありません。少ないものを薄く引き延ばしている印象さえあるほど。シナリオ毎の物語のバリエーションもほとんどありません。濃密なのはヒロイン描写に限られます。もちろん、それはHシーンにも言えることでかなりエロいです。一部のヒロインではヒロイン側の視点も用意することで(行為自体はそれほどでもないのに)エロさを倍増させることに成功しています。
CGは同一チームの前作から驚くほど進歩を遂げています。Clochetteのもうひとつのチームに引けをとらなくなったのではないでしょうか。いわゆるハズレに該当するようなカットがなく、その上でクオリティが高いです。内容がエロス偏重なのは仕方のないところでしょうか。
相変わらずイベントCGが差分を除いて80枚というのは出来が良いだけにとてももったいなく感じます。しかも、今回は事前に雑誌媒体などで描き下ろしとして発表されたものがイベントCGとして採用されているため(加工はされていますが)、より少なく感じられてしまいます。
立ちCGはイベントCGに負けないくらい、多彩で愛らしいヒロインたちの姿を演出してくれています。少ないイベントCG(特に通常)を感じさせないだけの存在感を持っています。これがひとつの文章の中でくるくると変化するのですから実に賑やかです。
鑑賞モードで立ちCGをひとつひとつ確認できるのは嬉しい配慮。とても残念なことにアイキャッチに使用されているCGは登録されません。
音楽はタイトル、世界観、ヒロイン、ボイスといった他要素に比べるといささか地味であるのは否定できません。場面に応じた曲はヒロインのテーマ曲を含めて用意してありますが、どうもインパクト不足のように感じます。ボーカル曲に押されてしまっているのも厳しいところです。また、特定の曲を広範囲で使いすぎなようにも感じます。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。イメージ優先と思われるヒロインの声はCGからの期待を裏切りません。アクシデントでひとり当初と変わっているとは聞かされなければ信じられないくらい。役にマッチした演技は聞き応えも十分です。
まとめ。正しい進化を遂げている作品。わずか数ヶ月前に前作をプレイしたこともあって、その進歩をまざまざと感じます。全体的な底上げができていますが課題はやはりシナリオ。方向性も含めてですが、次をどう持ってくるのか楽しみです。
お気に入り:姫川風花、速瀬まなみ
評点:70
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、姫川風花
本作品の顔と言っていいヒロインなので各方面で露出が多く、それに負けない魅力が感じられます。CGの出来もなかなかで中でもケータイを持った立ちCGは実に可愛らしい上にアイデア賞もの。一方でパジャマのCG素材がないのでフェイスウインドウが妙なことになるシーンがあるのはご愛敬。
風花があまりにも運命の相手っぽく書かれているので他のヒロインにいくのがちょっと心苦しく感じられます。素の性格もそれを後押ししています。
アイギスの設定が切ない。光によって無効化されるってそれでよく絶対防御だなんて呼ばれるものです。ポスポロスの前の光るだけのメティスでも無効化されちゃうってことですからねぇ。通常攻撃だって光を放つ攻撃はいくらでもあるのでは。
全てのメティスに対して実験した訳でもないのに「絶対防御」と呼ばれていたのにそれじゃあねぇ。工夫しなければペネトレイターも防げないというのではただの盾と大差ないデスヨ。
2、沖原琴羽
アルゴノートの正式な部員でないから、ってことでもないんでしょうけどメティスがあんまり役に立たない。これを受けてハブられるようなケースがシナリオ全体で目立ちます。そのせいか本人のシナリオも地味でどうにも能力設定に失敗したような感があります。まぁ、それ以上にシナリオ全体に問題がありますけど。
本作最大の乳はちょっといき過ぎなくらいでこれを理由に避ける人がいても不思議ではありません。CGによって差がありすぎるのも気になるところ。特にパイズリのは病的な大きさ。
3、祐天寺美汐
高飛車を演じさせられているお嬢さま、けれど素の性格がバレバレ、という変わったヒロイン。どこを狙っているのかわからないだけに声優が違ったり、お供の2人がいなかったらと考えるとちょっと怖いです。デザイン的にもポジション的にも中途半端で、残り4人のヒロインに全ての面で後塵を拝しているようなところがあります。シナリオが足を引っ張っているのも頂けません。
4、速瀬まなみ
妹キャラというか生態そのものが笑えるヒロイン。お兄ちゃんのためならばどんなことでも突破してしまうというメティスそのものなところが素晴らしい。まぁ、その割に他シナリオでは諦めが良すぎるような気がしますけど。せめてどのシナリオも風花シナリオくらいの描写は欲しいところ。
実妹問題が前振りだけで結局は触れぬまま終了というのが残念。
5、宇佐美沙織
色々な意味でひとり異彩を放つヒロイン。ライターもそれに相応しいかの如くJ・さいろー氏が担当(確証なし)。ポジション的にもアルゴノートと敵対する風紀委員ということでなかなかうまい構成になっていたとは思います。感触が違うだけでなかなか新鮮です。
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