56   Only you−リ・クルス−(アリスソフト)
 
 ストーリーは旧版に同じなので省略。ただ、当然というか、世紀末ではなくなっていますが。
 
 旧版「世紀末のジュリエットたち」は私の心のゲームのひとつです。そのゲームのリニューアルとなれば買わない訳にはいきません。そう、たとえ最大のお気に入りキャラ鏡守真澄がいないとしても(タイガージョーは殿堂入りにつき、別格扱い)。
 せっかく旧版の感想もありますので、主にリニューアルされた今作との違いについて書いていきたいと思います。
 
 今作は本編2枚組なのですが、早くもここで問題が。アリスの「ぱすてるチャイム」以降のゲームを買われた方ならご存じでしょうが、このパッケージにはCDは2枚までしか入らないんですよ。本来なら問題はないのですが、アリスソフトには毎回、アリスCDなるものが付属されています。
 つまり、今回は全部で3枚になる訳です。余った1枚はどうなっているかと言えば、隙間に無理矢理入っています。CD屋で売られている、ちゃちいカバーに入って。ハッキリ言って怖いです。今にも傷がつきそうなんですよ。初めて出す時は特に注意しましょう。
 
 システムは旧版の改良、あるいはマイナーチェンジ。良くなった部分もあれば、悪くなった部分もあります。
 旧版には場所移動による移動コストが数値で示されていて、移動後に時間帯(午前、午後、夜、深夜)が変化するかどうかはユーザーが自分で計算しなくてはなりませんでした。
 リニューアル版では棒グラフが用意されていて、一目でわかるようになりました。ただ、このグラフの数値と破滅カウンター(前作の大王カウンター)の数値は同じでないので注意が必要。もっとも、それを気にするシーンはまずありませんが。
 移動先の場所選択は旧版と見た目も同じで、6つの区域からひとつを選択。さらにその区域の中から移動先を選ぶ訳ですが、区域を選ぶごとに画面を書き換えるようになったので旧版より遅くなっています。
 ゲーム中、場所移動は何度となく、行いますので明らかにテンポが悪くなっています。小さいことのようですが、プレイ時間の増加に大きな影響を与えています。これはセーブ・ロードなどのシステム関係にも全く同じことがいえます。
 
 旧版では移動先にヒロインがいるかどうかはわかりませんでしたが、今作では「羽根」の形でわかるようになりました(これも時代の影響ですかね)。しかし、具体的に誰がいるのかまではわかりませんし、中には「羽根」が反応しないヒロインもいます。さらにはちょっと変わったケースも用意されていますので全幅の信頼を置くのは危険です。
 
 旧版ではなかった新要素として、「漢ポイント」なるものがあります。真の漢らしい振舞いをすれば増え、そうでなければ減ります(旧版でいうところの、「くっ、どうして俺はこんな選択肢を選んでしまったんだ」というようなやつです)。
 その用途は戦闘シーン。通常攻撃に付加することにより、必ずクリティカルヒットになります。注意点は選択した時点で消費されてしまうこと。麻痺させられたりして、攻撃出来なくてもしっかり減ってしまいます。
 
 戦闘シーンは旧版と大きく異なっています。どういう理由からか3ターン先行入力をしなくてはならなくなっています。
 1ターンでの攻撃にコンボが発生することから考えても、このシステムはおかしいのではないでしょうか。
 3ターン先行入力させるということは先の展開を読めということです。ところが、体力ゲージが60%以下及び30%以下にならないと使えない必殺技は入力時点でその数値になっていなければ選択出来ないのです(!)。
 強力な敵に会ったとき、そのままでは殺されることがわかっていても、逃げる以外には手の打ちようがないのです。
 これでは読みも駆け引きもあったものではありません。ただの足かせです。
 ちょっと考えてみればわかりますが、このシステムにおいて主人公が不利になることはあっても有利になることはないのです。
 コマンドの内容も旧版とは大きく変わりました。「ジャンプ」や「流し」がなくなってしまい、攻防もなにもなく、ただひたすらに殴る蹴るのみです。
 敵の出現の仕方も単調になり、マンネリを通り越して作業になっています。
 全体的に見て、繰り返しプレイを行っても戦闘にプレイヤーの経験がほとんどいかされません。
 なぜ、こんなことになったのでしょう。どう見ても改悪なんですが。
 エフェクトは派手になっていますが、CPUに余裕がないと負担が大きくかかりそうです(コンフィグで調整可能)。個人的には見た目にあまり効果的とは思えません。当然、旧版より戦闘にかかる時間は増えています。
 敵キャラは全て新規デザイン。ただし、幹部連中は描き直し。個人的には旧版の方が良かったです。特に幹部連中。
 
 シナリオはもちろんイマーム氏。
 基本的には旧版をそのまま用いて書き足し、書き直しをしています。それはいいのですが、時間が経っているせいか、そのままの部分と新しい部分で雰囲気に違いが出ているような気がします。まぁ、このあたりは仕方ないのかもしれません。
 ただ、残念ながら期待した、効果的なタイガージョーの出番は増えていません。
 エンディングを見るとオプションメニューにおまけシナリオが出現します。ミニシナリオというより一発ネタという感じです。個人的にはもう少し長いものが読みたかったですね。
 
 CG、というかキャラクターデザインに大きな変化がありました。どういう訳かキャラのほぼ全員にロリ化現象が起こっています。
 別にアリスが妹ゲーを作ることを不思議には思いません。ただ、どうしてそれが「Only You」なのでしょう? 流行りだから、という解答は聞きたくないんですが。それともロリにしなかったのが旧版の失敗だということなのでしょうか。
 さらにデザイン全体の、線が省略されるなどして、デフォルメ現象が起きています。バージョンの古いラフの方が明らかに良い出来というのは問題では?
 このキャラクターデザインはシナリオとも絡んで、ひとつの違和感を生み出しています。各キャラの見た目が下がったというのに、セリフはそのまま。やっぱり変ですよねぇ、こういうのは。
 CGは女性キャラが全体的に白っぽい印象。代わりに男性キャラはやたら濃くなっています。
 イベントCGは多くが変更されています。旧版であったところがなくなっているケースが多く見受けられるので、どうもパワーダウンしたような印象があります。旧版のイベントCGが気に入っていた人にはツライ変更かと。
 立ちキャラは旧版よりなぜか退化しています。格闘部メンバーにあった胴着姿のCGがありません。つまり、こいつらは私服で部活動をしているんです。おまけにマネージャーのまゆは制服姿と私服だったものが、制服と私服が兼用になっています。どういうことですか、これは。
 フェイスウインドウの種類は少なめ。中堅メーカーではないのですから、服を着て風呂に入るような妙な状況は避けて欲しかったです。
 
 音楽は旧版のアレンジバージョン。これがどうも。好みもあるでしょうが、個人的には明らかに旧版の方が良かったですね。特にオルゴールの音色は納得がいきません。あれではとても勇気を与えられるとは思えません。
 
 まとめ。旧版をプレイしておらず、かつ妹属性の人ならいいかもしれません。正直、旧版をフルカラーにしてくれるだけの方が遥かに良かったです。未体験の人には今からでも旧版をプレイすることを薦めます。
 お気に入り:旧版と比較するとなし
 評点:46
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、秋月まゆ
 目も当てられません。個人的には可愛さ大幅ダウン。特にフェイスウインドウの魅力の減退が著しいです。新設定により、物語のスタート時のみ、ダジャレを言うのは明らかに不自然。
 お弁当の差し入れCG消滅とスカートが枝に絡まるCGの変更はどうにも許し難いです。
 描き足しCGはどうにもインパクト弱し。やっぱりロリなせいもあるのでは?
 今作では若人とくっつく状況はなさそう。これに限っては良い変更。
 
2、仁藤美咲
 まゆに同じく。ジーンズ姿が好きだったので非常にツライです。どうしてスパッツなのでしょう。
 外見は幼くなったのに、なぜか部屋は飾り気がなくなっています。なぜ?
 書き直しのシナリオは今三歩。結果オーライな印象が強過ぎるように思うのですが。
 消滅させられた親父さんに哀悼の意を捧げます。
 そういや、仁藤流柔術奥義は序盤のイベントでしか使いませんね。
 
3、杜若あやめ
 旧版からシナリオ、デザイン共に最も変更が少ないキャラ。しかし、それだけに新たに書くことがほとんどありません。
 タイガージョーの活躍ならやはりあやめのシナリオですね。まさに縦横無尽の活躍ぶり。
 
4、鏡守萌木
 真澄に代わって出番を得たキャラ。駄目です。それだけで平静さを失いそうです。
 なぜ、どうして。もうこれだけです。
 
5、天童来夢
 えーと。メガネを外す前と後で、服装が違い過ぎます。生まれ変わったつもりで頑張るとか、言っていましたが、いきなりこんな変貌を遂げられたらクラスのみんなは引いてしまうのではないでしょうか。メイドさんルックだし。
 のぞみちゃんも個人的には旧版の方が良かったです。このシーンのCGが削られているのもしんどい。
 
6、ミュシャ・カレニーナ
 刻印の力で元に戻らないのはどうしてなんでしょうか。このシーンはエンディングへの伏線かと思っていたんですが。
 ハイパーモードCGが削られて、ただの分身になっているのはいただけません。バンドリーにやられたCGも旧版に比べて迫力不足なように思います。
 バンドリーの新しいデザインが×なのも、感情移入度減少。あまり憎い敵という感じがしません。
 アンナの存在は蛇足のような気がします。登場させたことでかえってまとめるのに苦労しているように見えてしまいます。
 
7、鈴 麗蘭
 旧版の没キャラが復活。デザイン的にやや弱いように思います。性格と外面のギャップを狙っているのかもしれませんが、イマイチ効果が出ていないような? やっぱり威厳が感じられないのが一番きついかと。
 シナリオが萌木のものとよく似てしまっています。イベントの進み方が被るとどちらのイベントかわかりにくいです。
 鈴家の問題の解決があまりに安直ではないでしょうか。そんな簡単に済むなら、どうして今まで暗殺稼業などやっていたのでしょう。
 
8、軽井沢成美
 大阪弁のスキルを身につけたのは好感度大。出番が増えたのはいいが、旧版と同様にイベントCGがないのは痛い。
 成美に限った話ではありませんが、どうも全体的にエンディングCGには気合が感じられません。 
 
9、魔神勇二
 顔が変わりました。なにか特徴の乏しい顔になったような気がします。
 ド○ン顔でなくなったのは別に構いませんが、照れた表情がきちんと表現されていないのが悲しいです。あの表情がなんとも良かったんですが。
 波陣滅殺の画面効果はまるでファイナルファンタジーの召喚魔法のよう。どこかで見たような、という印象が拭えません。ラスボスのデザインもですが、演出は旧版の方が良かったです。
 
 はぁ、こうして書いてくと本当に良いところが見つけられません。 


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