毎週金曜日の聖地からの帰り道、遠海悟(変更不可)は空から落ちてきた何かと激突した。何やら人の気配がしたのだが、落ちていたのは平和の象徴であるただ一羽の白い鳩のみ。衰弱していたこともあってか悟の動物愛護のスキルが発動、連れて帰ることにする。翌日、部屋で目覚めた悟の隣にいたのは金髪の美少女であった。自らを愛天使と称する少女が巻き起こす騒動の行方は。
MOONSTONEの新作は某漫画を参考にしたとしか思えない要素満載のアドベンチャー。
購入動機は体験版をプレイしてほどほどに面白かったので。あまり大きな期待はしませんでした。
初回特典はオリジナルサウンドトラック。
ジャンルはありふれたアドベンチャー。マップ移動方式を採用しています。
足回りはもう一歩というところ。メッセージスキップは既読未読を判別して平均的なスピード。作動させると未読文を挟んだ後に継続されたりされなかったりとやや不安定な面があります。
バックログは別画面とメッセージウインドウ単位の2種類を用意。ホイールマウスに対応(後者が起動)、ボイスのリピート再生も可能ですがそれほど戻ることはできません。ロード直後にも使用できません。どちらも戻れる量は一緒です。
CG鑑賞モードの使い勝手がよろしくありません。なぜか差分を変更させる時だけ反応がすごく鈍くなります。どうしてなんでしょうか。
シナリオは安易さが目立ちます。用意した設定に対して工夫が見られず、良くない意味で見たまんまの物語となってしまっています。各シナリオの分量も少なく、見どころを探さなくてはいけない仕上がりです。それどころかシナリオによっては理解に苦しむ展開も存在します。主人公のエロゲーオタクという設定もまるで活きておらず、ほとんど意味を成していません。
日常の掛け合いは悪くはないものの、絶対的な量が少ない上にオチにあたる最後を省略するのが基本スタイルなのでぶつ切り感が強いです。また、複数ライター制の影響か、シナリオやシーンよってテキストの面白味や盛り上がりに差があるように感じました。中でも志木梓シナリオは主人公の設定を活かしてヒロインの魅力を出しつつ、非常にノリのいい会話が組み立てられています。
惹かれあう過程はあってないようなものです。最初から好き、誤解、お試し、よくわからないがいつの間にか、というパターンであるため最初からまともな描写は望めません。分量の少なさももちろん、影響しています。
Hシーンは各ヒロイン2〜4回程度。微妙に水増ししているようなシナリオも存在します。シナリオ全体の分量を考えれば尺は長めです。純愛系にしてはエロ度はそこそこ高いと思います。
CGは原画家の稚拙さがあちこちに出ています。立ちCGは個性を狙ったのか会話に用いるには首を傾げたくなるようなポーズが山積みです。しかも、それを無理矢理に使っているので違和感があります。
例)踵落とし(に見えませんが)のポーズで驚きを表現。
イベントCGも各所で気になる構図やカットが散見されます。中でもやまかぜ嵐氏はHシーンにも影響を与えていて、せっかくデザインした制服などを半脱ぎなどにさせることができません。基本は各衣装(パーツ)を完全に着ているか、脱いでいるか。実にもったいないです。
Hシーンはすでに述べた理由により構図のわりにそれほどエロくありません。
音楽は穏やかな曲が多く、曲調がとても似通っているために違いを感じにくいです。ヒロイン毎にテーマ曲が設定されていますが、プレイ中にその使い分けを感じ取ることは出来ませんでした。反面、テーマ曲は勢いが感じられて耳に残りやすい曲になっています。
ボイスは主人公のほか、名前のないキャラにはありません。演技の方は特に問題なし。志木梓役の宮沢ゆあなさんは思い切りのいい演技でテキストのノリの良さを倍増させています。
まとめ。参考にした成果を感じられない作品。これで某漫画を読んだことがない、とか言われたらあまりの偶然っぷりに退いてしまいそう。
正直に言うとMOONSTONEの行き詰まりを感じます。デビュー作ならばこれくらいでもいいかもしれませんが……。次回作はCG込みで相当に期待させてくれないとしんどいです。
お気に入り:志木梓
評点:50
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、ミカ・アルステッド・ハイネ
主人公が恋をしていない状態で金曜日にエロゲーを買いにすら行かずにミカの手伝いをするのは奇妙では。愛天使が人間に、という設定はそもそもの前提を台無しにしているような。嫌でしている仕事のようです。
殴るポーズがいかにも変です。
2、遠海佐奈
兄を足蹴にする妹という基本設定が甘すぎるように思います。炊事、洗濯もしてくれるし最初からデレています。張り合いなさ過ぎ。
珍しく実妹との恋に対する問題を真面目に書いていると思ったら、最も苦労するであろう周囲の反応は完璧スルーという腰砕けぶりでした。
3、藤井澄佳
シナリオが意味不明。1年半前の手紙が出てくるくだりは本気で理解に苦しみました。
4、ルキア・ルミナス・スイレン
真剣にアホすぎて眩暈がしました。学校だけとはいえ、こんなのがトップとは。あなたって建前じゃなくて本音で馬鹿なのね。
5、周防美鶴
出会いのシーンでじいやに追いつかれないのはすごい謎。軽く見積もっても美鶴は30キロ以上はあるだろうし、そんな荷物をお姫様だっこしてボディーガードから逃げきるってどういうことなのか。主人公がスポーツ選手であっても楽ではないと思うんだけどなぁ。つーか、あの状況は十分にクビに値すると思うのだけれど。
萌えゲーということを考えるとマイナス印象を植えつける個別シナリオの内容は感心しますけど、短すぎてまるで取り戻せていないなぁ。
6、志木梓
本作の意外な(?)良心。予想しない会話の楽しさに驚き。オタクでない人がオタクを理解しようと付き合ってくれるイベントの数々が楽しい。惜しむらくは兄貴たちの事後のコメントがなかったこと。
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