40   えらぶる(May−Be SOFT)
 
 ビデオ編集の外注スタッフとして実績を積み重ねてきた吉樹(名字なし、名前のみ変更可能)。回ってくる仕事への不満はただひとつ。男優絡みの仕事ばかりだということ。
 そんな吉樹がフリーから一転、社員として雇われることに。しかも、任された新企画は願って止まないAVモノだった。
 
 新生メイビーソフトの第3弾はビデオ編集アドベンチャーとでも呼べばいいでしょうか。前作「−スガタ−」が事前予想よりも気に入ったので購入。まぁ、メーカーでデフォルト買いというほどには信頼度は上がっていないんですけどね。
 
 システムはビデオ編集(お仕事)モードに加えてごく一般的なアドベンチャー。2週間という期間で10本の作品編集を済ませることが必要になります。
 具体的には作品の設定をつかんで映像(シーンという意味合い)、セリフ、音楽の3つの要素について、それぞれ三択から正しいものを選びます。3つの組み合わせが出来る訳ではなく、正しい組み合わせはひとつ。間違っていた場合、上司からアドバイスがもらえます。実際的な感覚としては答えの覚えにくいクイズというところでしょうか。1周目だけならこの組み合わせを考えるのもそれなりに楽しいのですが。
 今作は繰り返しプレイが必須でありながら、ビデオ編集モードは全く同じことを繰り返すのみ。これは明らかなマイナスでしょう。創意工夫する気がないならせめて2週目以降は飛ばせる仕様にすべきかと。
 個人的にははっきりとした正解など作らず、組み合わせによって売り上げが異なるといったようなシミュレーション要素を盛り込んだ方が良かったと思います。それなら2周目以降も楽しめますし。
 仕事は午前と午後に分かれていますが、午後パートがあるのは編集に失敗した場合のみ。成功すれば午後パートは省略。
 ビデオ編集モードの合間に通常のアドベンチャーが挿入されます。各ヒロインシナリオへの分岐はここだけで起こり、ビデオ編集モードは基本的に関係ありません。未確認ですが、納期までに仕事が終わらない場合のみ絡んでくると推測されます。
 足回りには今回もウインドウを採用していません。こだわりなのかはわかりませんが、相変わらずデザインも使い勝手も洗練されているとは言い難いです。
 メッセージスキップは既読未読を問わずにすっ飛ばします。メッセージの巻き戻しはありません。セーブは一日の終了時のみ。正直、この仕様から親切さは微塵も感じられませんが、そこに腹を立てるほどには各要素に魅力や必要性を感じないのでそれほど問題ないかと。
 コンフィグにエディットモードなるものがついてます。Hシーンをビデオ編集モードのようにいじれるものです。大したことは出来ませんが、鬼畜シナリオにほのぼのした曲をつけるとなかなか笑えたりします。
 
 シナリオは文章量が非常に少ないために読み応えという言葉とは無縁。それなりにドラマらしきものは起こりますが、キャラクターのバックボーンがゼロに等しいのでどんな言葉も行動も説得力がありません。
 日常会話はやる気がないというか、表現するつもりがないのではないかと勘繰りたくなるほどに淡白。記憶に留めておくのは困難です。
 完成したビデオのシナリオは部分的な抜き取りになってます。ただでさえシナリオが充実しているとは言えないアダルトビデオでそんなことをすればどうなるか、火を見るよりも明らかです。もはや紙芝居と表現するのも憚られます。
 あと主人公は変です。自分のイタしたHシーンがアダルトビデオの仕事として回ってきたのにノーリアクションはおかしいと思います。おまけにそれが盗撮なのか無断投稿なのかすらわからず。
 
 CGは前回とは変わって基本的に明るいラインの塗り。当然でしょうが、作品の方向性に沿った塗りは達成されています。
 今回は望月望氏には珍しくロリで貧乳なキャラがいますが、なんか辛そうに見えます。本当は巨乳キャラだけ描いていたい、そんなオーラがCGから感じられるのは私だけでしょうか。
 
 音楽は緩んでます。なんていうかそのネジが。主に主題歌がその最大の原因かと思いますが、どうも曲の方向性が絞りきれなかったのではないでしょうか。曲のレベルそのものは低くないんですけどね。
 ボイスはフルボイスではありません。一部のみ。
 
 まとめ。表現したいものが見えない作品。何を作りたかったのか、伝えたかったのか私にはわかりませんでした。慣れないことをしているという雰囲気が伝わってくるようにも。やはりインモラル方向の作品の方が向いているのではないかと。
 お気に入り:涼月菫&霞
 評点:50
 
 以下はキャラ別感想。一応、ネタバレ注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、朱原瞳
 メインヒロイン(たぶん)なんですが、最も印象に残りません。こうしてひとことふたこと書く内容にも事欠く有り様。誰か彼女に個性を。
 
2、日向翼
 前作「−スガタ−」に登場した末娘。ただし、シナリオ的な関連性はなし。別にブラザーコンプレックスということがシナリオに絡んでくる訳でもなし。そのシナリオは全ヒロイン中、最も投げやり。
 
3、仁野苺
 原画に魂がこもっていない(気がする)ロリ娘。なんというか望月ワールドにおいて途方もない違和感を醸しだすことに成功って感じです。
 
4、涼月千花
 従姉妹の双子が主人公とイタしてさらにそれがアダルトビデオになっても顔色ひとつ変えないツワモノ。おまけに本人のシナリオではまともなHシーンなしという変わり種。
 
5、涼月菫&霞
 「巨乳ボンバー」という劇中作品に登場。彼女たちだけが(ゲームの中の)現実、ビデオ世界の双方に顔を出している。よって存在感は一番。オマケではあるものの、ヒロインだし。
 シナリオ的には逃げっぱなし。これでいいのかとシナリオライターに尋ねたくなるオチ。他のヒロイン同様に出番及びCGを用意すればもっとこの作品は評価されるのではないかと。
 個人的には声優さんが気になります。クレジットはあおい和樹となってますが、私の耳には友永朱音(青山ゆかり)さんの声に聞こえます。っていうか間違いないかと。


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