316   re−laive(KLEIN)
 
 芳野高志(変更不可)は退屈していた。学園に入学して一年。故郷から離れた生活にもすっかり慣れた。昨年は陸上に代わる何かを探していた一年だった。しかし、高志は何も見つけられなかった。同級生に対して焦りを感じ始めていた時、幼なじみの佐伯こずえが入学してくる。こずえは高志を追いかけてきたのだ。想いの丈をぶつけてくる彼女に高志は返す言葉を持たなかった。
 
 もう一体、いくつ存在しているのか。数える気もおきないブランドにまた新たに加わったのがこのKLEIN。つまりは今作がデビュー作ということになります。
 初回特典はキャラ妄想本(ラフ集)。ひとつひとつに原画家本人のコメントがついているのが嬉しいです。他にも通常特典として卓上カレンダーなどがついてます。デビュー作にしては豪勢な特典ではないでしょうか。
 購入動機はこれはもうズバリ原画家買い。あとはデビュー作なんで二作目以降への期待を込めての投資という側面もあります。
 
 システムはもう書くのが面倒になってくるほどいつものアドベンチャー。あえて書くなら選択肢は移動場所が多く、行動を選ぶことが少ない傾向にありました。
 立ちCGが表示される際には、主人公以外のセリフが漫画のような吹き出しで表示されます。ただ、このゲームは基本的にイベントCGのあるところでしかボイスがないので微妙なところ。それとも、だからこそ吹き出しなのでしょうか。それはともかくとしても、度々吹き出しから文字がはみ出るのはあまり誉められませんし、それ以上に画面の端でカットされて読めないことがあるのは言語道断だと思います。
 足回りはデビュー作といえどもけして誉められたものではありません。メッセージスキップは高速ではありますが、如何せん既読未読を判別してくれないのが困りもの。むしろ高速であるがゆえスキップ中の文字を追うことができず、既読未読を判別しないものとしても、使いにくくなっています。
 メッセージの巻き戻しがないというのも今時ツライです。
 セーブ関係も今一つ。コンフィグ画面を呼ばないとセーブ&ロードが出来ない、クイックロードがタイトル画面から使えないなど不便な面が目立ちます。精液の量なんて項目を作るくらいなら、もっと違うところに力を注いで欲しいです。
 鑑賞モードにおいてシーン回想がないというのも珍しいかも。
 
 シナリオは何と言うか、あまりにもあからさまな構成。正直なところ、今作を並列ヒロイン型のゲームと呼ぶのは語弊があると思います。理由は簡単でメインヒロイン佐伯こずえ以外のシナリオは十把一からげと言っていいほど工夫なく同じ展開であるから。しかも、それは恋愛と呼ぶのもおこがましいほど主人公がひたすらに流されるだけのお話。別にそれが悪いとは言いませんが、恋人を作ることに悩む主人公という設定の上でのそういうまとめはどうかと思います。こずえのシナリオ以外は考えるのが面倒だったんでしょうか、とか邪推もしたくなります。互いに惹かれあう描写が皆無では。
 日常会話及びキャラクターの配置はかなり少女漫画的。よってゲームとしてはあまり存在に意味のないキャラもいたりします。
 淡々とした日常を描く、というのが狙いであればそれは成功していると思います。これで終盤に日常から離れた効果的なイベントが配置されていればそれも活きてくると思うのですが。
 昨今のエロゲーには誤字など珍しくもありませんが、その事実を踏まえてなお、今作の誤字の多さは目に余ります。それも変換ミスではなく、タイプミスが非常に多いです。正直、その酷さは書き上げた後に一度も読み直していないのではないかと思うほど。
 「カァ……」「ぽっ……」などの照れる様子や「どきどきどきどき」などの心境を示す擬音をボイスとして発音させるのは寒いと思うのですが。それもギャグではなく大真面目ですからね。
 今作の大きな弱点として個別シナリオが短いことが上げられます。上述したようにスキップは既読未読を判別しませんが、もしこれが判別したなら2回目以降のプレイ時間は2時間に届くかどうか。そのうち、8割以上を共通ルートが占めています。これではプレイが進むに連れて印象が悪くなっても仕方ありません。通過したルートによって共通シナリオ内のイベントにほとんど変化が起こらないのもツライところ。
 メインヒロインのシナリオをクリアするとこのゲームの名称の由来が明かされるのですが、この直前にゲームの締めとも言うべき文章が出ます。これがどういう訳かそのまんまマニュアルに載ってます。結論をマニュアルに記載するゲームもなかなか珍しいかと。
 
 CGは絵買いに応えるクオリティを誇ってます。かなり原画に忠実だと言えるでしょう。微妙な表情もよく表現されてます。脱衣時に体のラインが気になる時も。まぁ、これは原画家の特徴と言うべきでしょう。
 立ちCGは表情、ポーズともに多彩に用意されてます。キャラの魅力を余すことなく表現しているかと。
 
 音楽は良いものと悪いものが混ざり合っている、玉石混淆という印象。ただ、悪い曲ではないのですが、白石若葉のテーマ曲はキャラに合っていないと思いました。
 ボイスは一部のみ。立ちCG表示中はほぼありません。複数のキャラが掛け合うシーンでないのはやはりさみしいです。声優さんのレベルは問題なし。ただし、若月友人を除く。彼だけはイメージにも合っていないし、ひとり平均点を下げていると思います。
 
 まとめ。CGは合格点。シナリオとシステムは大幅改善を求む、というところ。極めてデビュー作にありがちな評価のような気がします。それでもやりようによっては大化けの可能性もあるので頑張って欲しいところ。
 お気に入り:芹沢葵
 評点:50
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレはないかと。
 
 
 
 
 
 
 
1、佐伯こずえ
 まず一言。彼女の怒り顔の立ちCGはたいへん怖いと思います。軽いギャグであんな顔をされたら本気で怯えそうです。
 こずえシナリオの場合はやっぱり主人公の心情表現が不足どころか、矛盾しているのが厳しいです。最初に結論ありき、過ぎるんでしょうな。そこへの繋がりにももっと気を配ってもらいたいものです。
 
2、芹沢葵
 姫は実に実に可愛いです。立ちCGが何とも言えない魅力を放ってます。つーか、彼女の魅力がなければ、このシナリオは余裕で不合格ですよ。というか、最初のHシーンもなぜそういう展開になるのかよくわからないし。
 葵シナリオに限った話ではないですけど、そういう関係になってからも変わらずにこずえとのことを悩み続けるのが不自然すぎ。まぁ、ハッキリ言えば単にフラグによって反映されるような文章を用意していないだけということなんでしょうが。
 芹沢家のしがらみってやつがもう少し克服困難な障害として描かれていたならねぇ。もうちっとはましな印象が残ったと思うのだけれど。
 
3、愛田鉄太郎
 メインキャラよりもキャラが立っているというのはかなり問題があるかと思います。まぁ、自分のエピソードがないからこそあそこまで自在に動けるのでしょうが。
 
 残りはどうでもいいので割愛します。


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