275   真昼に踊る犯罪者(ソフトハウスキャラ)
 
 日本大陸は中央に位置する加来山府。そこは犯罪都市として世に名高いところ。山県一義(変更不可)は忍者、化け猫、元殺し屋の仲間と共に何でも屋を営んでいる。依頼されればどんな非合法なことでも請け負う、それが彼ら。そして今日も事務所には真っ当でない依頼が舞い込むのだった。
 
 ソフトハウスキャラの第4作。この作品からボイスを収録することになったようです。ライアーソフトといい、ボイスを導入するにはだいたい3作から4作くらいは必要なんでしょうか。
 個人的にはブランド初買いになります。購入動機はどこかの雑誌できちんとゲームしている(意:遊べるゲームシステムがしっかり構築されていること)と書かれていたのを目にして。
 初回特典なのかは不明ですが、メモ帳と初期設定資料集が付属してます。メモ帳は使うに使えませんが、設定資料集は嬉しいです。こういうのがあるとソフトに対する愛着が深まります。個人的にはパッケージアイディア集が珍しくて良かったかと。
 
 けして致命的ではないようですが、修整ファイルが出ています。長くプレイすることになるゲームだけにしっかりとあてておきましょう。
 
 システムはフィールド移動のない、依頼達成型のRPG。イメージとしてはこれが一番近いと思います。ゲームの流れは、事務所に依頼が舞い込む→達成可能なようならメンバーを構成、出撃→障害(戦闘、調査、誘拐など)突破→依頼達成、レベルアップと簡単に書くとこうなります。依頼の中身によってイベントがどこかに挿入されることも。
 流れの中で中心に来るのが障害突破の部分。システムもここを中心にして組まれています。
 上では簡単に書きましたが、実際には障害はもっと細かく色々なものに分かれています。「誘拐」の依頼ひとつとってみても、下準備、調査、ターゲット確認、誘拐実行、戦闘、逃亡、後処理という感じで。
 各障害をクリアするためにはメインとなる4人の基本パラメータか支援メンバーの特殊能力が必要になります(例えば交渉なら弁護士、脅迫ならマフィアというように)。パラメータは障害の難度に応じた数値が必要ですが、特殊能力は持ってさえいれば無条件で成功します。つまり優秀な能力(職業)を持った支援メンバーを揃えることが重要になる訳です。
 しかし、そこでアクセントになるのが戦闘です。戦闘は集団戦だけでなく、爆発物処理、金庫破壊、障壁破壊もこれに含まれます。この戦闘という障害だけは無条件で突破する方法はありません。純粋な戦闘力が必須になります。
 先程の便利な特殊能力の持ち主には総じて特徴があります。簡単に言えば荒事に向かない職業が多いのです。戦闘のない依頼なら問題ありませんが、そうでないならメンバー構成にはバランスが大事になります。せっかく優秀な能力を持った支援メンバーを参加させても、途中の戦闘で失ってしまっては障害を突破できなくなってしまうからです。
 戦闘は敵味方最大20体以上が画面を乱れ飛ぶチップアクション。依頼実行前にトラップを仕込むことも可能です。かなり派手でなかなか楽しめます。「行殺(はぁと)新選組」がすこーしだけ近いです(あっちはまぁ、半分演出でしたが)。
 ゲームは手持ちの能力を省みて達成可能な依頼を探す、そんな感じで進めていきます。途中には日付によって特殊イベントなども起こります(温泉旅行とか)。
 今作を形作るメインのシステムは非常によく出来てます。何度繰り返してもストレスの溜まらないスムーズな進行に程良い達成感。難し過ぎず、簡単過ぎずという絶妙なバランス設定。2周目以降は経験がしっかりと活きるのもポイント高いです。
 
 足回りは必要十分な機能を備えています。メッセージスキップは強制のみですが、そもそもあまりスキップを必要とするゲームではないのでこれでOKかと。
 メッセージの巻き戻しは依頼を挟んでも可能で、しかもロード直後にも可能とかなり使いやすくなってます。
 この手のゲームにありがちな、なかなかセーブ出来ないということもありません。さすがにいつでもとはいきませんが。
 
 シナリオはアドベンチャーではないためか、ひとつひとつのイベントは短く、あっさり目の描写が用いられているようです。恐らくはゲーム進行の快適さを考えた処置だと思われます。
 いわゆる本筋というべきシナリオは特定の依頼をこなすことによって進行。個別ルート的なシナリオは対象ヒロインをリーダーに起用し続けることで展開します。
 従来のゲームに比べて主人公がやや変わってます。一行のリーダーでありながら口数の少ない不言実行型。好みの女に対してはさらなる不言実行。
 ヒロインたちとスタート時から肉体関係というのもちょっと珍しいかと。シナリオが進むに連れて出会いの様子が書かれていくという通常とは逆のパターン。
 
 CGはゲームの状況に応じた様々なカットが大量に用意されていてRPGとは思えぬ(パッケージにはシミュレーションとありますが)豪華さを感じさせてくれます。
 イベントCGが原画家の個性を最大限に発揮する方向で指定されているので、ただ新しいCGを見るだけで楽しくなります。
 時折、挟まれるSDカットがたいへん可愛らしいです。一見の価値有り。
 立ちCGはゲーム全体でそれほど使われないせいか(代わりになるCGが数枚あるため)、ポーズ変化はほぼありません。表情変化は使う機会が少ない割にはコロコロとよく変化します。
 オープニングデモは目新しさはないものの、基本を押さえた見応えあるものに仕上がっています。
 
 音楽はこのゲームにおける唯一の難点でしょうか。悪くはない、と表現するのが精一杯です。他が素晴らしいだけにかえって目立ってしまっているように感じるのかもしれませんが。
 オープニングはボーカル付き。曲同様にうまいとは言えませんが、個人的にはなかなか気に入っています。歌詞はまるで違いますが、どことなく「とらいあんぐるハート」1&2の歌を彷彿とさせます。
 ボイスはジャンルを考えると驚きのフルボイス(女性キャラのみ)。使い回しのようなセリフにもしっかりと収録されていて嬉しいです。演技がうまいだけでなく、キャラに則したキャスティングがまたさらなる輝きを引き出しています。特にアーティー役の声優さんの演技は素晴らしく、ボイスなしではこのキャラクターは絶対に表現できないでしょう。
 
 まとめ。かつてないほどプレイ中に不満を感じないゲーム。作り手の意図が充分に発揮され、プレイヤーはそれを充分に受け取ることが出来ている、そんな風に感じられます。アドベンチャーに食傷気味な人にはもちろん、やり込み系のゲームがプレイしたい方にもオススメです。
 お気に入り:アーティー・ブルックリン、山春日霧姫
 評点:89
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、奥平鈴
 なんちゃって忍者の称号が素敵です。実際に加来山大学忍術部のメンツの方が遥かに使えるあたりが笑えます(しかも全員)。
 霧姫のスパイということは一義と初めて会ったときにはやっぱりわざとスリを働いたんですかね。
 
2、葵宮子
 うーん。旧作をプレイしていないので、どうしてもどこかで置いていかれている感じが拭えませんでした。戦闘でも今ひとつ使いにくいですしね。
 
3、アーティー・ブルックリン
 ああ、もうなにからなにまで可愛すぎます。どこかやる気のない声に動作、そのくせ鬼のように強い。SDキャラの可愛さもピカイチ。 
 小さい体に巨大な刀。しかも元殺し屋というあたりがナイス。決まり過ぎです。局長に誉めてもらうために戦うというあたりもまた可愛さ倍増。必然的に依怙贔屓。
 エンディングで少し大きくなっているカットにさらにさらに……(以下略)。「お金がある」イベントのラブリーさは只事でなく。
 
4、山春日霧姫
 一義のためならどこまでも一直線。有言実行を地で行く彼女は一義とは対照的で逆にお似合いなのかも。そもそも執着心の薄そうな一義を5年間も繋ぎ止めているのは実はかなりすごいことなんじゃないかと。
 「一義のプロよ」というセリフは琴線に触れまくりでした。
 
5、山県一義
 なんといっても余所のゲームではあまり見かけることのない性格設定がいい感じです。どう見てもスケベだががっついた感じがまるでしないほど、それが当たり前という態度で女を抱く姿勢は素直にすごいと思います。
 その割には霧姫を筆頭に女性陣に頭が上がらないというのもナイス。かなりいい関係が構築されてますよね。
 失敗には容赦なく厳罰をもってあたるというのもリーダーらしくていい感じです。 
 
 


前のページ 目次 次のページ


| ホーム | サイトマップ | 更新履歴 | 徒然なる日記 | 不定期映画鑑賞記 | ゲーム感想 | 気になるタイトル | リンク |