星野王子（変更不可）、通称星の王子くんの周囲は一癖も二癖もある美少女ぞろい。さながら磁石に引かれる砂鉄のようにいつでも女性の視線を独り占め。今日も今日とておかしな事件が起こります。王子くんの周囲を衛星のようにまわる５人。果たしてこのバランスが崩れた時どうなるのだろうか。

 

　リーフの新作はやっぱり名前のない学園を舞台（のひとつ）にしたアドベンチャー。

　購入動機はこれといったものはないですが、強いてあげるならブランド買いでしょうか。体験版の評判があまりよろしくなかったのでビクビクしながら買いました。

　初回特典は「星の王子くん」イラストレーションブック。

 

　ジャンルはいつも通りのアドベンチャー。ただし、最大で選択肢が２つしかないのでゲームとは言いづらいように思います。

　足回りは相変わらずため息が出そうなほど気が利かない仕様です。メッセージスキップは既読未読をほぼ判別して平均的なスピード。ただし、使う機会は繰り返しプレイを除けばほとんどないのであまり気になりません。

　バックログはウインドウ単位で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、それほど戻ることはできません。ロード直後にも使用不可。

　クイックセーブ＆ロードはありません。

　「ＷＨＩＴＥ　ＡＬＢＵＭ２〜ｉｎｔｒｏｄｕｃｔｏｒｙ　ｃｈａｐｔｅｒ〜」に搭載されていた時間制の起動ディスクは幸いなことになくなったようです。心からホッとしました。二度と復活させないで欲しいです。

 

　シナリオは発売延期の事実から察せられるような不足感が各所で目立っています。大まかに説明すると最初と最後。主人公は宇宙一モテるのにそこに理由はなく、加えて出会いから好かれるまで、グループを形成するまでのくだりが一切、書かれていません。各シナリオのラストで膨らませて盛りあがるようなところで尻すぼみｏｒ説明不足のような形で着地するケースがほとんどです。また、エピローグも総じてとてもあっさりした描写で終わっています。ひょっとしたらライターだけはわかっている、というやつなのかもしれません。

　共通シナリオはとても短く作中でのわずか一日。その後、個別ルートに分岐しますがそれぞれの展開は全く異なっていて非常にバリエーション豊か。飽きさせにくい構成となっています。

　日常の掛け合いは濃いメンツによるネタの応酬といったドタバタ劇。主人公が埋没するほどヒロインやサブキャラの個性は強いです。波長が合えばとても楽しめますが、そうでない場合は置いてきぼりになる可能性が高そう。笑いも同じく波長次第。笑いどころ自体は多めに用意されています。後は笑えるかどうか。

　すでに書いたように惹かれあう過程はありません。ヒロインは最初から好感度の限界を突破していて、主人公を巡って大岡裁き状態。回想でも全く触れることはありません。とにかく無条件。主人公の方も相手の好意をわかっているけれどもわかっていないというご都合主義全開のスタンスでおまけにいわゆる５人の中から誰を選ぶ、という決断がどこにもありません。○○のルートだから気負いすらなく○○を選ぶといった按配。出来レースとか言ってもいいかもしれないくらいです。

　Ｈシーンは各ヒロイン１〜２回程度。取りあえず入れました、という感覚が強く導入も含めて期待しない方がいいでしょう。エロ度はお世辞にも高くありません。尺は全体的に短めです。

 

　ＣＧは本作では珍しい誉めどころ。原画家のファンならば十分に満足できるのではないでしょうか。甘夏ぷりんだけがやや安定に欠ける嫌いがありますが。残念なのはリーフということで差分が圧倒的に少ないこと。本作は特にそれを感じました。

　立ちＣＧもイベントＣＧに負けていません。安定度ではむしろ上回るほどで掛け合いを盛り上げることに一役も二役も買っています。衣装も豊富で驚くくらいに変わってくれます。それだけに序盤で寝間着の素材がないのがとても違和感があるシーンがありました。

 

　音楽はいつもの、と評したくなるような穏やかで心地よい曲が多数用意されています。ボーカル曲も本作のイメージをうまく抽出しているように感じられました。ヒロインだけでなくサブキャラにも専用のテーマ曲が用意されていて驚きます。

　ボイスは主人公を含めてフルボイス。多数のキャストを配していますが総じて演技は安定しています。むしろ一部ではやり過ぎなくらい熱が入っています。中でも熱血系オタキャラの番場寿明は表の有名声優がこなしていてやたらと印象に残りました。

 

　まとめ。対岸の火事を眺める作品。感情移入しようとか考えない方が楽しめるでしょう。あくまでもどこまでも人事のように笑うのが本作の作法ではないかと密かに思います。

　お気に入り：番場寿明

　評点：６０

 

　以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。

 

 

 

 

 

 

 

１、甘夏ぷりん

　真打ちというにはあらゆる意味で物足りない。本作はキャラの魅力としては５人が横一線と言っていいと思うんですけど、構成はそうじゃないんですよねー。この食い違いは意外な不幸となって表れているような気がします。

　王子くんママの分析に１００％同意。すでに肥えてきているというのに２０を越えたらどうなってしまうんでしょうか。まぁ、王子もきっと太らされるだろうからいいんでしょうかね。

 

２、葵りんご

　王子が自分の魅力に参らない、と作中で嘆いていましたけどヴァレも実もトシちゃんも（恐らくは他のクラスメイトも）やっぱり参ってないデスヨ？　ずっと年上とはいえ他のサブキャラも全く。本命以外は興味がないにしてもこの事実はちゃんと把握しておくべきではないかなぁ。

　りんごシナリオのぷりんがあまりにも能天気すぎて笑いました。男のヴァレの方が状況が見えていて、読みもできているってどうなのさ。まぁ、鋭く突っ込めば本作のヒロインはみんなそんな感じですけどね。

 

３、葉加瀬ちの

　あまりにも超科学の娘すぎて全く人間にしか見えません。驚異的なスタンド能力の持ち主とかいう方が納得しやすいです。よって属性的な魅力はあまり感じないですね。ＨＭＸシリーズとはあまりにかけ離れています。ただ、設計図がないから代わりはいない、という設定はとても良いと思います。まぁ、ほとんど死にようがない気がしますけども。

　ちのの服装が本格的メイド服とか書いてあったんですけどどのへんが？　魔法少女のコスチュームの方がよっぽど近いような。

 

４、神乃こころ

　スタイルは抜群なんですが、それ以外となると不意に沈黙してしまうものがあります。中途半端に腹黒っぽいところがあるのも逆に色々と狭めてしまっているように思えてなりません。自分以外のシナリオで極端に活躍していないような。

 

５、ユーリ・ゴローニン

　実は男と知ったら他の４人はどう反応するんですかねぇ。実はそこが知りたかったのですが、残念ながらありませんでした。

　個人的には全く興味はなく全員男でさすがにゲンナリでした。