かつて少年少女たちは胸踊る冒険を体験した。その果てに遭遇した2つの神秘的な月。時は流れ、輝きは記憶の隅に追いやられた。だが、完全に消えた訳ではないそれは再び現れた。2つの月。菅野孝(変更不可)はかつての冒険の舞台へと帰ってきた。期待と興奮ののちに彼らを待ち受けるものとは。
暁WORKSの新作は青春冒険(?)アドベンチャー。
購入動機は体験版がクセはあれど面白く感じられたから。
初回特典は絵コンテ・ラフ・原画集。
修正ファイルが出ています。それほど重大なものではありませんが、気になる方はあてておきましょう。
ジャンルはごく普通のアドベンチャー。
足回りはもうひとつというところ。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがそれほど戻ることはできません。ロード直後にも使用不可と長丁場のゲームにしては厳しいです。フォローとしてシナリオセレクト機能があります。通過した場所にタイトル付けがしてあって、いつでも飛べるようになっています。
シナリオはとても粗削りです。光る部分がある一方でプロット通りに進めるためか、非常に強引さを感じる箇所が散見されます。キャラクターの行動に一定の説得力が足りていない、明らかにバランス感覚を欠いている、など。
活き活きと動く登場人物たちは魅力的で掛け合いも盛り上がりやすいですが、笑いの面ではそれほどでもありません。微笑レベルと考えておいた方が無難でしょう。いわゆるキャラは立っていますが、そのぶんクセが強く、特にヒロインたちは人を選びそうなメンツが集まっています。
共通から個別へ分岐する定番の構成ながら本作はほぼクリア順制御がかけられていて、周回を繰り返しながらも連続した読み物という体裁を取っています。そのためか各ルートごとに展開に幅を持たせながらそれでいて、パターン化を感じやすくなっています。謎が収束するシナリオがあることもそれを後押ししてしまっています。
惹かれあう過程はシナリオごとに差があるものの、総じて強引であるという一点は変わりません。これは主人公のキャラも影響しています。なまじヒロインを対象として見ていないと言ってしまったがゆえに余計に苦しくなってしまいました。
Hシーンは各ヒロインほぼ2回ずつ。シーンを用意するのが極めてわざとらしかったり、無理矢理だったりするケースが多いです。特に2回目。頑張りは感じられますが、それほどエロくはありません。尺は標準程度。
CGは全体的にレベル高め。基本となる立ちCGと背景の出来が安定しているので世界観に余裕が感じられます。それほど登場機会の少ないキャラや場所にもわりと用意されています。そのせいで時折あるシナリオとの齟齬が逆に目立ってしまうのは玉にきずですが。
冒険活劇と銘打つわりにそれらしいイベントCGは控えめです。このあたりは立ちCG演出に頼っているように感じられます。
本作の肝のひとつである「道具」にはアニメーション演出を用意。出来自体は良いですが、作中における道具の効果が地味であるため、ちょっと大げさに見えます。繰り返し使用されますがクリックひとつでスキップ可能なので安心です。
音楽はこれだけで売りになるくらい多彩な曲が用意されています。マニュアルにサントラの宣伝(?)があるのは伊達ではないというくらい様々な場面に応じた曲があります。ラップ調の曲に加え、作中に登場するゲームにまで。ただ、バリエーション自体は問題ないものの、ジャンルを考えると熱さを表現するような曲が少し弱いように感じました。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。主人公は普段は喋らないのですが、なぜか急に喋ります。時にはモノローグにまで。頻度が低いために印象が固定化しにくく、個人的には聞く度に違和感がありました。
演技の方は信頼のおけるメンバーが揃っているので終始、安心して聞くことができます。
まとめ。勢い任せの作品。シナリオの研磨の弱さをCGと音楽が懸命に埋めようと頑張っているのが感じられます。細かいことにはこだわらない、という方に向いているでしょう。
お気に入り:楠井シスターズ、八木井貢一郎
評点:65
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、春木麗
詐欺的な仮面を身につけたおかげで本質が損なわれなかったというのはわりと幸運だったのかもしれません。基本的にわがままで他人にはそれを許さないあたり、実にいい性格をしています。麗に限りませんが、本作はヒロインとしては難ありな人物が多いですよね。
2、楠井梨子
エチオピアの目の実際と愛らしいアニメーションの間の乖離が激しい。これもまた、ほとんどの人間に言えることですね。
ロリキャラ枠なんですけど、外面的なデザインとおかん属性のせいであまりそうは見えません。おかげで主人公が恋愛対象としては見られないというような序盤の反応に違和感がありました。
3、連城八重
残念ぶりでは麗にも引けをとりません。正直に言って幼い頃に憧れるのは難しいと思います。会話がうまく成立しにくい変人お姉ちゃんではなぁ。まぁ、今でもあんまり変わらないんですけどね。インコの匂いに興奮する人だからなぁ。
兄を見つけて数日間、音信不通になったのは残念。行動は理解できますが、結果として道具の乱用を防ぐという活動が兄を見つけるまでの暇潰しのように見えてしまうところが、ね。
4、真堀束沙
博士ポジションということでやっぱり残念系。会話して楽しくない相手はツライものがあります。可愛い格好をしても言うほど変わっていないし、インパクトもないのが悲しい。シナリオもあんまり自分のものとして独立しきれていない感じ。
5、穂之上摩樹
メートル胸は空恐ろしい破壊力。貧乳組を鬱にさせるには十分すぎるほど。一旦、反目しておいてあとから仲間に戻るというおいしいパターン。そのせいか一行の中では思考もバランスがとれていてまとも。
6、仙島星良
ものすげー痛い娘さん。ヴォーパルブレードで喜べる神経が理解できない。だって結局はスリルさえない一人遊びじゃないですか。敵もずっと同じだし。むしろ、露見しないかにハラハラしそうです。
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