241   ふりフリ〜ふつうのまいにちにわりこんできた、フシギなリンジンたちのおはなしおはなし〜(130cm)
 
 星振り台には不思議な力を秘めたガラクタがたびたび降ってくる。穐春秋(変更不可)はひたすらそれを待って回収するという部活に入っていた。その日も公園に降ってきたのだが様子がいつもと違っている。それはどう見てもガラクタではなく2人の少女。しかも、物騒な得物を持って切り結ぶ付近からは4人分の声が聞こえてくるのだ。
 暗闇から目覚める春秋。いつの間にか意識を失ってしまったのかと思いきや事実は残酷である。体の中から聞こえてくる声、首筋に走る赤い線、見守る2人の少女。信じ難いことに春秋は一度、死んで生き返ったのだという。ガラクタの力によって。しかも、その時、異世界の大魔王をその身に宿してしまったのである。
 
 130cmの新作はユニークな世界観が特徴的なアドベンチャー。
 購入動機は原画とキャラクター及び世界観に惹かれて。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典は星振り台タウンガイド’08。
 
 ジャンルはごく普通のマップ移動型のアドベンチャー。
 足回りは平均レベルからやや落ちるくらい。メッセージスキップは既読未読を判別して平均的な速度。
 バックログはウインドウ単位で行います。フェイスウインドウだけは再現されるという少し変わったタイプです。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが戻れる量はそれほど多くありません。
 タイトル画面からコンフィグに入れないのは意外と不便です。
 キャラクターによってボイスボリュームに大きな差があり(そういう設定なのだ、ということかも知れませんが)、個別の調整ができないのでやや困りました。
 
 シナリオは共通ルートがとても充実しています。勢いに任せた独特の世界観が気に入れば楽しめること間違いなし、というくらいのボリュームです。ところが、個別ルートに入ると実にあっさりと終了してしまいます。共通ルートが気に入っているほど残念に感じてしまう皮肉。その流れも性急でじっくり整然としているとは言い難いですが、本作に限ってはそのノリゆえにむしろ、それこそが本分ではないかと思ってしまうほどです。
 日常の掛け合いは大魔王とその下僕、勇者とその見習い、盗賊国家の双子姫とゼリー状のガーディアン、魔物と契約する少女といった面々との風変わりな日々がリズム良く書かれています。そこに新聞部の部員やガラクタの研究者といったメンツとの絡みがうまく互いの常識、非常識を鮮明に浮き彫りにしています。この賑々しさは十分に本作に売りになっているかと。
 惹かれあう過程は上で触れたようにちょっと厳しいです。そもそもフォーマットが相手に告白される、あるいはそれに近しい状態になってから主人公がそれに対してどうするか考える、となっているので主人公の方は望むべくもありません。
 Hシーンは基本的に巻き込まれ系とか受け身系と称される類です。よって発生するタイミングもその理由も普通の作品とは大きく異なります。衝動まかせのシーンが多いため、あまりエロさは感じにくいです。
 
 CGはやや安定度に欠ける印象。パッケージや販促CGなどいわゆる後期の仕事と思われるものは総じて出来が良いのですが、作中の前期の仕事と思われるものは出来が明らかに悪いです。特に立ちCGは体のラインについて気になるものが散見されました。
 しかし、基本のデザインはむしろ良く、個性の一翼をしっかりと担っています。イベントCGは差分とSD抜きで80枚と最近の作品としてはかなり少ないです。立ちCGは状況に応じて多彩な変化を見せてくれるのでイベントCGの少なさをあまり感じさせません。カット数は少ないながらもSDカットも非常にいい味を出しています。
 
 音楽はやはりというか作品の賑やかさを助長するような曲が多いですが、キャラクターの持つ破天荒さに比べるとややパワー不足な感は否めません。単独で聞くにもやや厳しいです。
 ボイスは主人公を除いた名前のあるキャラにしか用意されていません。とはいえ、名前のないキャラが出てくるシーンはそれほど多くはないのでほぼフルボイスといって良いでしょう。演技の方は問題なく、個性的なキャラクターを違和感なく演じています。
 
 まとめ。荒削りながら輝きが見える作品。短所よりも長所の方が記憶に残りやすいです。好きな人はクセになる魅力を備えているかと。作品そのものには勢いを保ったまま、完成度を増した力作を目指して欲しいです。
 お気に入り:ホロビ、桃瀬みのり、メルルーサ、鳳潤、馬子&鹿子、月詠かぐや(メインキャラ全員といってもいいです)
 評点:70
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、桃瀬みのり
 あまり人気ないそうですが、個人的には好きだなぁ。空気を読まない(読めない)ところがいい感じです。でも、コメントする内容にはどうしてか困ってしまう。
 
2、鳳潤
 日々正座して金魚鉢に入ったサメのぬいぐるみと語らう勇者見習い。議題は恵んでもらうご飯について。しかも、格好は上下とも赤のジャージ。素敵すぎます。潤の人気があるのも当然という気がします。
 巨大な槌が武器というのも既存の勇者っぽくなくて良い感じ。
 立ちCGの正面カットの出来がイマイチ。
 
3、馬子&鹿子
 普通は双子でも異なる声優が務めるものですが本作では同一人物が担当。で、律儀に同時発声を2回入れているのですからご苦労さまです。連続して聞くとちゃんと違うキャラに聞こえるあたりさすがプロですね。
 結局のところ、2人には何の能力もないというのはちょっと物足りないかなぁ。変質者に襲われて寝技でそのまま逆襲するのは面白いけど、そこに至るまで何もできないってのはちょっとねぇ。せめて何らかのガラクタを持っているくらいは欲しいところです。
 
4、月詠かぐや
 うーん。もうちょっと気持ちを伝わらないのをギャグっぽくした方が笑いに繋がって印象度が増したのではないかと思います。イレモノがいるとはいえ、かぐや自身は普通の人間なのですからもっとアピールポイントが欲しかったですね。隠している左目になにかあるとか。あるいは隠していること自体を彼女がネタとして活用するとか。


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