杉山修一(変更不可)は弱小テニス部に所属している。人数はわずか5人で最上級生が卒業してしまえば来年には廃部の可能性さえある。しかし、危機感は薄く日々、同好会に毛が生えた程度の活動をするのみ。そんなある日、修一が足を骨折したことで変化が起きる。責任を感じたクラスメイトにして同じテニス部員の佐伯藍が世話係を名乗り出る。それが気に食わない修一の妹、澪とは必然的に角付き合わせることになり……。
Cielの新作はTony氏を擁して三角関係を書いたアドベンチャー。氏が参加する作品は毎回ある種の期待と不安がつきまといますか果たして。
購入動機は原画に惹かれて。シナリオは邪魔さえしなければいいと考えていました。
初回特典はサウンドトラック。
ジャニス系列なればあいさつ代わりとばかりに修正ファイルが出ています。クリアするのに問題はないので気になる人はあてましょう。なお、一部ストーリーの整合性を修正しました、と珍しい修正内容が含まれているようです。
ジャンルはパッケージによると青春トライアングルラブコメディADV。システム的には特に目新しいことはありません。
足回りはやはり弱いです。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、それほど戻ることはできません。ロード直後も不可。
クセの強いキャラがいるだけにボイスのオンオフを個別に行えないのが不便に感じました。
シナリオは修正内容の一文からもわかるように複数ライター制の影響が強く出ています。各所の描写が不安定で、そこまで少しも触れることがなかった設定がいきなり出てきたりします。裏設定が数多くあれども物語と有機的に結びついておらず、面白さに寄与していない感じでしょうか。実際、杉山澪シナリオでは物語の筋が通っていないような箇所も見受けられます。
ヒロインは4人いますが、まともな尺を備えているのは半分の2人しかいません。残る2人は完全におまけ程度。
三角関係は設定の段階ですでに破綻しています。これを書くにあたっては2つの角、すなわちヒロインに対して同じくらい主人公が惹かれていなければそもそも条件が成立しません(あるいは男女比の逆転)。
佐伯藍ルートの場合、ライバルである杉山澪がただの妹に過ぎないので三角関係とは異なる構図になっています。加えて藍が天然系キャラであるため、いわゆる恋の鞘当てというやつが起こりにくくなっています。
杉山澪ルートの場合、佐伯藍がライバルどころか完全なピエロとなっており問題外。サブキャラの悪友を角と見做してみても、こちらはヒロインを挟んだライバル関係が成立していないのでやはり機能不全に陥っています。シナリオ自体も呑気な三角関係を挟みにくいヘビーな要素を含んでいて不向きです。
日常の掛け合いは事務的なものが多く潤いに欠ける傾向があります。オタクネタは笑いに貢献できているとは思えず、そちらに明るくない主人公が寸評までするのでちょっとお寒い感じに。控えめに見てもコメディと称するのは難しいものがあります。
惹かれあう過程はとても苦しいです。フラグの問題ではありますが、あるヒロインとHしてから他のヒロインのルートへ突入可能な青春なので、推して知るべしというところ。
Hシーンはメインヒロイン7回ずつ、サブヒロイン2回ずつと明らかに身分の違いが感じられます。3Pがひとつありますがハーレムはありません。主人公は昔よくいたHシーンになると突然、人格が変わるタイプ。ヒロインを被虐体質にしようといつでも邁進しています。尺が短めということもあってシチュエーションが異なれどもワンパターン気味です。
CGはさすがのお仕事。原画買いの人間を満足させるクオリティを誇っています。エロ度も十分すぎるほどエロいです。ただし、イベントCGが差分抜きで66枚と数字的にはかなり寂しいです。この枚数ではヒロイン4人は配分がちょっともったいないように思います。せめて3人くらいの方が良かったのではないでしょうか。
立ちCGも全くイベントCGに引けをとりません。実に多くの表情、衣装でヒロインの魅力増に大幅に貢献しています。それだけに立ちCG鑑賞モードがないことが惜しまれるところ。
SDカットはその存在が疑問です。中途半端にリアルであるためにSDカットの利点であろう可愛さがまるでありません。和みなんてもっての外。むしろ、怖ささえ感じるほどでよくOKを出したなぁ、と思うほど。
背景は必要最低条件を満たしていないのでは、と思われるものがあります。豪邸のはずがとてもそうは見えなかったり、トロフィーが描かれていなければならないはずがなかったりと、基本は悪くないだけにもったいないものを感じます。
音楽は作品の邪魔をしないものは提供できていると思いますが、より盛り上げるだけの曲作りができていないように感じました。特に負の感情を励起させるような曲が弱かったように思います。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方に問題はない、と言いたいところですが常にキレているようなわがまま妹、澪の声優の青葉りんごさんが熱演しすぎな印象です。声優として優秀だからこそ困ったことになりやすいという珍しい事例。属性がない方は特に注意が必要です。
まとめ。ミドルプライスなら秀作な作品。ボリューム的な面でかなり損をしている感があります。コストパフォーマンスを重視する人には向きません。原画買いの人のみが無難。やはり、伝説は継続するしかないのか。
お気に入り:佐伯藍
評点:60
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、佐伯藍
藍さんはちょっとエロすぎます。困ることもしばしばでした。正直、澪とは勝負になっていないような気がします。髪形が2種類あるのも旨味があって良いかと。
佐伯家の秘密は深まるばかり。おっとりお父さんでなぜ着替え見放題。お風呂にも一緒に入るという事態になるのか。
ところで、プレゼントはどうなったんですか?
2、杉山澪
完全に意味不明。なにゆえに主人公に冷たい態度をとるようになったのかまるでわからず。藍をけしかけた理由はさらに謎。挑発して襲わせようとしていた(?)のはなぜでしょうか。
記憶をなくしている主人公に思い出させないようにすると誓ったはずなのに公園に行くと覚えていないのかと不機嫌になる。分裂症の疑いがあります。
肝試しやビデオ鑑賞で主人公が死なないどころか後遺症も残らなかったのは奇跡的な幸運だと思います。ここだけ見ても愛すべき妹とはとても言えない。
3、伊達ウイングフィールド黎子
良キャラだけにもったいない。澪の代わりに先輩を起用した方がよほど三角関係になったでしょう。というか、三角関係に妹という時点でなんか違うでしょ、と。
4、羽山璃花
メガネの割に悪くはないですが他と比べてしまうと。それでも理不尽妹よりましですが。
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