230   Pure×Cure(チュアブルソフト)
 
 わずかな期間の代理ではあるけれども米倉広海(変更不可)は養護教諭として母校、姫奈学園に帰ってきた。ここは広海にとって初恋の人である橘ゆずりと出会い、永遠に別れた場所。もう橘さんのような人を出さないために、それが広海に今の道を選ばせた。果たして広海は学園生の信頼を得ることができるのか。
 
 チュアブルソフト第1弾はありそうでなかった保健室純愛アドベンチャー。純愛でなければ随分とエロゲー界には溢れているのですけど。1話から6話まで体験版としてプレイできるなど広報面には力を入れていたようです。
 初回特典はどきどき保健室セット。ヒロインの身長が書かれた定規などがついてます。もちろん目盛りはゼロからではないので実際に使うには床からの距離を測らねばならず面倒です。まぁ、使う人はほとんどいないと踏んだ上での特典でしょうけど。
 購入動機は体験版(3話のみ)をプレイしてそこそこ気に入ったから、でしょうか。あとは養護教諭という設定の珍しさにも興味がありました。
 
 必要不可欠というものではありませんが修整ファイルが出ています。演出強化の面もあるようなので落としておきましょう。
 
 システムはオーソドックスなアドベンチャーに加えて診察モードというものが用意されています。これは養護教諭としての仕事を3択のクイズ形式で表現したもの。ヒロインの好感度にももちろん関係します。難易度的にはかなり簡単。1話に1度くらいの割合で用意されているんですが、雰囲気作り以上の意味はなくゲームとしての面白さは全くありません。特に2周目以降はスキップもできないのでまさしく面倒な障害物そのもの。もう少し考えて欲しかったです。
 
 足回りはもう一歩といったところ。メッセージスキップはかなり遅め。それを補うようにシーンスキップが用意されていますが(暗転でシーン毎にYes or Noの選択式)、シーンの具体的な内容が不明で、シーンとして扱われないテキストとの区別もよく分からないために使い勝手はイマイチ。個人的にはムービーが強制スキップなのが不便でした。補足として2周目以降は8話からプレイ可能になっています。
 バックログはメッセージウインドウで行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、戻れる分量は1シーン程度と少なめ。
 
 シナリオは構成に難あり。前半と後半で非常に大きな落差があります。
 物語は全13話構成。区切りの良いところで一旦まとめて次の話へ、というスタイルを採用しています。アニメを思わせるようなオープニングやエンディング、予告の類はありません。
 序盤から中盤にかけては1話ごとに1人ないし2人のヒロインに焦点を当て、丁寧に出会いから保健室の常連になるまでを描いています。日常会話は多人数が基本で掛け合いは実に豊富、ギャグ主体ではなく微笑ましい描写といった感じ。力が入っていると素直に感じます。
 ところが、個別シナリオに入ると状況は一変。それまでの丁寧さが嘘のような性急な展開を見せます。しかも、話のアウトラインが2年生ヒロインと3年生ヒロインでそれぞれ共通しているという不可解さ(つまりヒロイン7人で大まかな物語は3つしかない)。息切れしたのか、それで充分と感じたのかどうにも疑問です。
 ポイントの一つに初恋の相手を事故で亡くした痛みの克服というものがあるんですが、これもかなりテキトーな扱いをしているように感じました。わざわざ用意した割には説得力に欠ける理由ばかりでどうにも苦しかったです。
 ある意味で最も構成に疑問を感じたのは12話。これは個別シナリオが終了した後の話でなぜかヒロイン全員が共通シナリオ。2周目以降はスキップを挟んでエンディングロール突入という謎の現象が起きます。一体どういう意図でこういう仕様にしたのでしょうか。
 Hシーンは各ヒロイン1〜2回程度。純愛ゲームにしては頑張っている方ですが、主人公が真面目であるだけに保健室で手を出す傾向が強いのは微妙なところ。
 
 CGは色の系統を幅広く使っている割には地味な印象があります。落ち着いたデザインと原画のせいでしょうか。
 立ちCGは表情、ポーズ、服装とも豊富に用意されていて見ているだけで楽しめます。ただ、秋の私服に厚着したものが冬の私服、というデザインの方向性はちと悲しい感じでした。
 
 音楽は全体的に大人しめな印象。BGMに徹しているというか、CGともども全体の雰囲気を考えての作曲と思われますが、プレイ後に記憶に残る曲は少なかったです。
 ボイスは主人公以外フルボイス。キャスティングはキャラの特徴に合わせてよく考えられているな、と感じました。流れるような掛け合いにおいて真価を発揮しています。ただ西原翔子だけはかなり特徴的な声なので好き嫌いが分かれるかも。
 
 まとめ。作り込みの甘さがもったいない作品。ボリュームを弄れないならヒロインの数を減らしてその分の力を個別シナリオに注いでいれば飛躍的に完成度が上がっていただろうと思えるだけに残念。しかし、良いものは持っているブランドなので今後の成長に期待したいです。
 お気に入り:神楽坂月乃、朱雪梅、橘ゆずり
 評点:65
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、橘果林
 せっかくの姉妹ネタなのに果林の成長した姿にゆずりをだぶらせたりといったことがなくしょんぼり。絶対そういう展開だと信じていただけにショックが大きかったですよ。果林はちょっと物分かりが良すぎる(みずきシナリオとか)のが全体的に不満かなぁ。性格を考えると主人公に対してだけでももっとわがままになってくれるといい感じなのだけど。
 
2、吉野みずき
 まさかとは思いますけど、果林の主人公への気持ちに気付いていない、なんてことはないですよねぇ。どう考えても自縄自縛で動けなくなりそうなタイプなのに。
 しかし、みずきに気に入られた理由はこのゲーム最大の謎じゃないかしら、と密かに思ってみたり。
 
3、冠城遙南
 考えてみると誰のシナリオでもあのベッドシーンは通過しているんだよなぁ、とかふと思ったり。月乃とか雪梅とかに知られたら大変だよなぁ、絶対。
 シナリオの都合で遙南がはっちゃけるシーンはかなりの違和感が。少なくともちゃんと登校するようになってからはそんな娘じゃなかったよ。しかも、無理矢理あんなイベント(極論すれば果林の命よりその日遊ぶ方が大事)にした割には仲直りはとってもあっさりでした。
 
4、郡司都
 駄目だ。ゆずり派の私には到底、許容できません。彼女の死にいつもヤな形で都の言動が絡んでいるんですけど。あと普通に婚姻届を持っているのがキモイ。
 
5、西原翔子
 珍しく自分の言葉で翔子を立ち直らせたことについては好印象だがヒロインとしてはツライ。こういうキャラ苦手です、とても。
 
6、朱雪梅
 片言の日本語が素晴らしい。頭は良くとも信じやすく騙されやすい点もナイス。月乃、翔子とのトリオは非常にバランスがとれていて面白かったです。
 
7、神楽坂月乃
 オーソドックスなタイプのヒロインながらやっぱり弱いです、こういうタイプには。や、病弱なところはどうでもいいんですけど。
 「英国茶屋つきのんち」のイベントは最高。つーか、ゲーム中で唯一ハッキリと記憶に残ったやりとりです。弄られキャラであるとこがまた良い感じです。
 いつの間にかなくした(!?)というヘアピンの件はアレでしたがシナリオそのものは全体の中でもかなり良かったです。
 
8、橘ゆずり
 片思いで終わらせて正解なんでしょうねぇ。もし恋人まで進展していたなら強力すぎて全ヒロインが束になっても太刀打ちできなかったでしょう。さながら「木漏れ日の並木道」の未来のように。
 しかし、結局のところ事故の原因は不明なんですな。当時の養護教諭を罵ったとかいう描写があったから何かあるのかとばかり。


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