主人公は、豊かな自然に包まれた白上町で過ごす学生、樫葉透(変更不可)。一年前に関係を持ったきり、今日までずっと友人付き合いだった春木彩華。
恋とは程遠い関係だった2人は、ある日の逢瀬をきっかけに急速に恋に落ちていく。そして、幾度となく逢瀬を重ね、やっと心が近づいたと思った矢先、彩華から告げられる拒絶の言葉。
「私はもう一人で…一人で生きるんだから……もう、忘れて」
彩華の決断の言葉に隠された事実とは(パッケージより抜粋)。
「Baby,BE」に続くBeFの2001年第二弾。相も変わらずの厘京太朗専用ブランドですが、今回はやや年齢層が下がったようです。
初回特典は何を思ったか「うちわ」がついてます。組み立ててもあまり涼しそうに見えません。どういう関連かは不明ですが、その材質は前作「Baby,BE」のスリーブと同じだったりします。
システムはオーソドックスなアドベンチャー。そこに行動力システムを導入して、一風変わった選択肢になっています。
主人公にはデフォルトの考えや行動、大げさに言えば運命があります。それに逆らう選択肢を選ぶためには「行動力ポイント」を消費するという仕組みです。
第一印象はなかなか面白いな、と思ったのですが、残念ながら気のせいでした。アイデアそのものは悪くありません。問題はその使い方にありました。
理由はしごく単純。各キャラの個別シナリオへの分岐としての役目しかないからです。選択肢が1プレイで最大5箇所程度しかない、と言えば少しはわかるでしょうか。
おまけに行動力はエンディングごとに二段階で増えていく仕組みになっています。一見、順当な処置のようですが、少し考えればわかるようにこれならエンディングを迎えるごとに選択肢が増えるゲーム(「痕」など)と何ら違いがない訳です。見た目が違うだけ、アイデアを出した意味がありません。
足回りは前作までのPDSシステムを改良したものを使用しています。どうしてだかPDSは止めてしまったようです。個人的にはちょっと残念。
代わりにナビゲーションキャラが用意されました。要はシステムボイスにCGが加わったものです。特に何も感じませんでした。
メッセージの巻き戻し機能において、今回もボイスの再生があるのですが、これが以前より少し使いにくくなりました。時期的に「君が望む永遠」の同システムの使い勝手が非常に良かったのでそう感じるということもあるかもしれませんが。
シナリオは前作と比べてもあまり良くないです。相変わらず情緒というものがなく、加えて前作では良かった日常会話が非常に寒いものになっています。主人公がどういう奴なのか、どういうポジションにいるのか、ということがよく分からないことが主な原因と思われます。
キャラ同士の結びつきの弱さも前作に匹敵します。ヒロインたちはまるで新商品のお試し期間中のように「まぁ、いいかな」といった感覚で主人公を好きになります。これでは主人公とプレイヤーのシンクロ度は下がる一方というものです。
テキストもどうも引っかかる部分が多かったように思います。主人公の行動を無意味に列挙するシーンが非常に多いんですよ。○○をして○○をしてから○○した、というような。「雑用を片づけてから寝た」なんて文章、エロゲーで初めて見ましたよ。学生のモノローグじゃないでしょう。
文章初めのストーリー紹介ですが、いつもは自分で書いてます。それをわざわざ抜粋にしたのには理由があります。
このストーリーはメインヒロインのものなんですが、この文章を読んでどう思いますか? 個人的には文章がやや堅いということと、「逢瀬」という単語を2回使っていることが気になりました(この単語を使うこと自体、気になりますが)。
で、どう思ったにせよ、恐らくこうは思わないでしょう。このあとはわずかな間もはさまずエピローグだ、などとは。見え見え過ぎるがゆえに、よもや違うだろうと思ったオチはそのまんまでした。違う意味で激しい衝撃が走りましたよ。
前作から採用された複数回Hも上記のような理由に阻まれて効果が薄いように思います。簡単に言えばちっとも嬉しくないんですよ。そう思える土壌が出来ていないのですから。
プレイ時間もこれまでに比べてもなお、短いです。ヒロイン5人で5時間未満。ちょっとコストパフォーマンス低過ぎでしょう、これは。
CGは今回も文句なし。ただし、デザイン的にはほとんどのヒロインが学生になってしまったのが残念です。厘京太朗氏はやっぱり社会人メインの方が良いです。
背景は悪くはありません。が、前作と比べれば明らかなパワーダウンが見られます。BeFの背景は非常に高く評価していただけに残念です。
立ちCGもやや元気がない感じ。特にメインヒロインのノーマルポーズは棒立ちにしか見えません。
鉛筆描きのようなエンディングカットはなかなか良いかと。
音楽は及第点クラス。悪くはありませんが緩急に乏しく、ずっと似たような曲を聞いている印象を受けました。やはり前作と比べても、やや落ちるように思います。
まとめ。個人的には「ALL ONES LIFE」から「Baby,BE」へはゆっくりながらも順調な進化を遂げていると思っていたのですが、今作はどうにも逆戻りして、小さくまとまってしまっているように感じました。
お気に入り:消去法により田宮初美
評点:25
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意(むしろ知っていた方がいいような気もシマス)。
1、春木彩華
とんでもなく分かりやす過ぎるシナリオ。それゆえに「まさか、ねぇ」と思ったりしました。
この短さでこういう話は無理がありますな。唐突な終焉には事前の日常の積み重ねが必要不可欠。シナリオライターはどうもそれがわかっていないようです。
この話で感動する人がいるのでしょうか? 非常に疑問。
2、杉沢柚奈
無個性。私にはどうしてもそうとしか感じられませんでした。個人的にこのシナリオが最も寒く感じられました。
3、川瀬真冬
事前の人気投票1位だったそうですが、発売後の仕切り直しは最下位に転落(8月13日現在)。それも当然ですな。なんともいにしえの匂いのするシナリオですから。
おにいさまへ(爆)。今のユーザーにはちとしんどいか?
4、白坂菜緒
当然ですが、どんな映画かなんてわかるハズもありません。それが不明で彼女に入れ揚げるのは極めて難しいかと存じます。
5、田宮初美
で、どうしてそんな気分(主人公を誘惑した)だったのかは最後までわからず。このゲームはずっとこんな感じですな。
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