21   アルフレッド学園魔物大隊(ソフトハウスキャラ)
 
 魔界の有力者である主人公は教師に憧れて人間界にやってきた。そして念願かなってアルフレッド学園の教師に就任した。夏野雪継(変更不可)という名で。ところが平和な教師生活は長くは続かない。ある日を境に学園に魔力があふれ出したのだ。このままでは生徒に悪影響が出てしまう。雪継は学園の平穏を守るために対策に乗り出すのだった。
 
 エロゲーを日々プレイしているとアドベンチャー以外のジャンルが恋しくなることが多々あります。前作「真昼に踊る犯罪者」に出会うきっかけとなったのもそんな精神状態からでした。そのときがメーカー初買いだった訳ですが、想像以上の出来に感嘆。以降、メーカー買いの対象になりました。
 
 初回特典は卓上カレンダー。プラスティックのケースがそのままスタンドになってます。残念ながら使われている絵は既出のもので描き下ろしではありません。開始日付のスタートは2002年の7月からで微妙に発売延期の影響が出ているような気がしないでもありません。
 その他の通常特典は今回も初期設定資料集が付属。現状ではソフトハウスキャラの設定原画集などは出にくそうなので有り難みも倍増。好きな絵師のラフカットは見ているだけで楽しくなります。
 
 修整ファイルが出ているのでさっくり落としてあてておきましょう。一部のエンディングに行けなかったりするみたいですし。
 
 ジャンルとしては陣取りシミュレーション+アドベンチャーが最も近いでしょうか。あくまでも近い特色を持っているというだけで、実際には陣取りが目的ではありません。
 基本スタイルは昼間に学校行事をこなすかたわらヒロインとの会話を進め(アドベンチャー)、夜間に生徒から魔力を回収し、原因を追求していきます(シミュレーション)。
 夜間は午後10時から午前5時までの7ターンで構成されています。生徒たちも学園の異変には気がついているので、風紀委員を筆頭に夜の園内を巡回しています。主人公は魔物の部下(こちらもヒロイン)を使って魔力を持ってしまった生徒からそれを取り除きます。
 ここからがエロゲーの面目躍如でその方法とはズバリ生徒とHすること。細かいゲーム中の理屈は省略しますが、生徒を大切に思う主人公の葛藤はほんの一瞬でした。
 しかしながら、無条件でHシーンという訳ではありません。生徒から魔力を回収しやすい状態というのが混乱している時、ということで主人公の部下たちは生徒を怖がらせます。ここが戦闘にあたる訳ですが、生徒たちは敵ではありませんのでやり過ぎてはいけません(もっとも部下たちは敗北すると死にこそしませんが、最後に雪継とHしたレベルまで戻されてしまいます。下っぱは辛いところです)。「混乱」を通り越して「気絶」にまで至っては魔力を回収できません。加減が大事になってくる訳です。
 生徒たちにはひとりひとり名前が付けられていて、1度クリアすれば名簿も閲覧することが可能です。もちろん、手を出した……、いえいえ主人公の手で救ったかどうかもわかるようになっています。やり込み派の人は全生徒制覇を目指してもいいんじゃないかと。ちなみにアルフレッド学園は処女率100パーセントのようです(含む教師)。さすがにCGは数種類の色違いですが。
 集めた魔力は他作品のお金に相当し、加工してアイテムを生み出すことができます。とはいえ重要度はそれほど高くはありません。
 陣取りに当たるのは学園内を魔気に染めるか聖域にするか、の部分。通常状態を含めた双方3レベルずつで全7段階。主人公たちは魔に属しているので魔気に染めた方が色々と有利なのですが、最終目的は学園の清浄化なのでそこでジレンマが生じる訳です。とはいっても一般的な陣取りシミュレーションに比べれば、それほど重要ではありません。
 足回りは可もなく不可もなく。ジャンルがジャンルなのでメッセージスキップは使う機会があまりないせいか、システムで設定されたものはなく、Ctrlキーの押しっぱなしのみ。
 メッセージの巻き戻しは別枠で。こちらもあまり使う機会はないでしょう。ボイスの再生は表示されているメッセージのみ可能で、遡って使用することはできません。
 
 シナリオはちょっと微妙なラインです。このゲームは教師になりたくて魔界からわざわざ来た魔王の話なのですが、その割に日中の生徒との会話が充実しているとはお世辞にも言えません。いわゆるメインヒロインでない生徒との会話はないに等しく、メインヒロインとの会話も数が少なく、すぐにループしてしまいます。これはちょっといただけないのではないかと。テキストのレベルが低い訳ではないので余計にもったいない感じがします。
 これが1プレイの短いゲームならばそれでも構わないのですが、このゲームはプレイ次第とはいえ、基本的には長いゲームですので繰り返されるとテンションが維持できません。まして、今作は何度もやり直すゲームなのでダメージも大きいです。もう少しなんとかならなかったんでしょうか。
 イベントの配置も薄く広くという感じで個々の内容は良いものの、やはり繰り返しプレイには向かないように思います。
 自由度の高さと何をしていいかわからないというのは表裏一体でリスクを踏まえた上でのゲーム設計な訳ですが、これがもう一歩うまくいっていません。手さぐりで進めても、返ってくるものがあまりにも少ないんですよね。せめてもうちょっと説明があると印象も変わると思うのですが。個人的には攻略情報を片手に進めることを推奨します。
 どんなエンディングを迎えるためにも、なにがしかの条件が必要なのですが、それを満たさないとエンディング寸前で問答無用のゲームオーバーというのはどうかと。長くプレイするゲームだけに、この報われなさは並大抵のことではないと思うのですが。条件を満たしていないのならエンディングへ向かうイベントを発生させない方が良かったのではないでしょうか。
 
 CGは前作よりも確実に進歩しています。魅力的な原画がより映えるCGになってきたのではないかと。
 立ちCGはシステム上、それほど見る機会がありませんがイベントCGにも負けない仕上がりを誇っています。ただ残念なことに種類はハッキリと少ないです。
 
 音楽はやはりソフトハウスキャラの弱点に当たりますかねぇ。前作よりは耳に残る曲に仕上がってはいますが、それでも印象の弱さは拭えません。ここがレベルアップするとブランドのイメージもかなり変わってくると思うんですけど。
 
 まとめ。各素材は良いけれどもバランスの悪い作品。もうちょい方向性を与えるとかしてプレイヤーの快感指数を刺激してくれると良かったんですけど。ぶっちゃけ長時間プレイのゲームでいきなりのゲームオーバーは良い印象を生まないんじゃないかと。かけた時間に応じたものを与えて欲しいです。
 お気に入り:鷹ノ森咲夜、大鳥千里
 評点:68


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