河野貴明(変更不可)と同じ学園に幼なじみの柚原このみが入学してきておよそ半年が過ぎた。出会いと別れの季節に貴明が感じた予感は空振りだったのだろうか。それとも未だに続いているのだろうか。今ここに動き出す。
それは語られなかった もうひとつの季節。
2005年末に発売された「ToHeart2 XRATED」のサブキャラたちをメインヒロインへと昇格させて構成した珍しい作品。
購入動機は消極的ながらXRATED(以下前作)のお気に入りキャラがまさにそのサブキャラであったから。あとは一応、製作者買いという面も。
初回特典はSECRET SOUND TRACK。予約キャンペーン特典は描き下ろしスティックポスター7枚セット、原画設定資料集、特製カレンダー。今回も大きなケース入りで本体よりも重いです。
詳細は不明ながら修正ファイルが出ています。プレイしていて問題がない場合は特に必要はなさそう。今時、適用後にセーブデータが使えないとか驚きの仕様。というか、個人的な事例ながら適用したら音楽の鳴りがおかしくなりました。エンディング前のシーン曲が鳴ったままでエンディングテーマが流れるとか。
ジャンルはビジュアルノベルからごく普通のメッセージウインドウのあるアドベンチャーに変わりました。変わってみると当然のようにしっくりします。萌えゲーにはこちらの方が明らかに相性がいいのでむしろ、前作が間違っていたのでしょう。
足回りはジャンルの変更に伴って一部で仕様が変わりました。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。前作とはアイコンのクリックしやすさや選択肢後も継続されるようになり改善が見られます。
バックログは再現タイプ。立ちCG劇やイベントCGをそのままの形で巻き戻します。ただ、動きのあるカットは例外のようです。このタイプのいつもの常で戻れる量はほんのわずか。
ワイドモニターに対応した縦横比の固定(スケーリング)はフルスクリーン派にはとても嬉しい機能なのですが、両端の黒いエリアにカーソルが入るとクリックに反応しなくなるのでちと不便です。
主人公の名前はなぜか変更できなくなりました。一部のシナリオはAnotherDays本編から独立していて何かひとつエンディングを見ないと選択することはできません。
シナリオは今回も全9本。プレイヤーの事前の認識が評価を大きく左右しそうな作りになっています。本作は良くも悪くもファンディスク的な作りをしていて、前作とは別個のもう一つの作品と考えていると大きく戸惑うでしょう。
およそ半年後なので前作とはまずスタート地点が違うということ。つまり、各ヒロインとの関係性などに変化が起きているのです。前作の10番目以降のシナリオという位置づけでプレイすると混乱してしまいます。誰と知り合っていて、誰とは知り合っていないのか。知り合っていたら親密度はどのくらいなのか。主人公はどれくらい成長しているのか、していないのか。一から学び直すくらいの気持ちが必要になります。
世間的なファンディスクにありがちな世界観を逸脱する設定や言動は本作にも健在。主人公がモテる理由などの設定変更は随所で都合よく起きています。これも慣れないと戸惑うでしょう。
ライター複数人制の弊害は今回も。シナリオサイズ、ノリ、展開など統一感は全くありません。このあたりもファンディスクだと思っていればむしろ、バリエーション溢れると言えなくもないですが。それでも各シナリオの出来映えに大きな落差があるのは何とも残念。惹かれ合う過程の描写も十人十色ならぬ九本九色。出色の出来から呆れ返ってしまうようなもの、意味不明のものまで。
キャラクターの横のつながりはさすがに同じ世界の二作品目ということもあってか、かなりましになりました。しかしながら、シナリオの状況に応じて登場する、しないが非常に意図的に行われているので不自然さを各所で感じます。
主人公の基本スキルである「おんなが苦手」。これは本作でも継承されていますが、より都合良く使われている印象を受けました。必要以上にこだわっておきながら、ある地点まで来ると突然、消失するといったような。
Hシーンは各シナリオ1回ずつ。ただし、菜々子、柚原春夏シナリオにはありません。前作も同じとはいえ、ぜひとも改善して欲しかったポイントですが、それも適わず。
CGはリーフならではの高値安定。枚数を除けば原画買いにしっかりと応える仕上がりです。差分の少なさがややもったいなく感じます。甘露樹氏のエロCGは今回も同じ芸風です。何とも言えないヒロインの微妙な表情が違う意味で印象的。今後ずっとこの表現でいくのでしょうか。個人的には昔に戻って欲しいです。
立ちCGは多少の追加はありますが、基本的には前作のものを踏襲。フルプライスということを考えるといずれのシナリオも冬服をそのまんまというのはちょっと寂しく感じます。
音楽は前作プラス新曲の構成。都合、初代から3作品分という歴史を感じるサウンドですが、特に違和感もなくまとまっているかと。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。ただし、小牧郁乃シナリオでは主人公が郁乃になるため貴明にも用意されています(Hシーン含む)。もちろん、無音にすることも可能です。演技の方は特に問題なし。高いレベルで安定しています。
まとめ。フルプライスのファンディスク。シナリオはかなりいい加減に作った感あり。細かいことを気にせず笑い飛ばせる人の方が向いています。
お気に入り:ミルファ、よっち、小牧郁乃
評点:65
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、まーりゃん先輩
終わってみると共通シナリオ部が一番インパクトがあって面白かったかな、と。ささら密輸の衝撃に勝るものは後に見出せませんでした。それとどんな形であれ主人公と恋仲になってしまうのはまーりゃん先輩が日和ったように見えてしまってどうも。帝王なんですから孤独を貫いて欲しいというのが正直なところ。つうか、あの主人公になびくというのは何があってもあり得ないと思うのデスヨ。頼むから株を下げないでくれ、と。
その一方でHシーンに第2ラウンドがなかったことは強く不満。思わせぶりなイベントCGを出しておいてささらとの3Pはなし、とは意地悪がすぎます。一体、何のためにあのエンディングなのか。痴漢ごっこイベントだってあそこからが本番だと思うんだけどなぁ。
XRATEDではお気に入りキャラにいれましたが、本作ではちょっと空振り気味。ネタだけに絞っても期待が高すぎたのかも。
2、吉岡チエ
前評判から最も評価が上がったのは彼女でしたね。シナリオの予想を上回る出来の良さもさることながらキャラクター描写も一貫していてとても良かったと思います。元サブキャラとはいえ口癖が「〜っス」というのはいそうでなかなかいなくて新鮮でした。やはりメインとサブでは受ける感覚が違いますね。
主人公もこのシナリオに限ってはそれほど悪くなかったように思います。わりと自然だったかな、と。ただ、他のシナリオと比較してしまうといきなり成長しすぎなのは否めませんけど。セミなら地上に出ることなく死んでますよ、ってくらいのレベル。
狙いすぎなイベントCGも結果的には悪くなかったかと。というか、このくらいしないとみつみ美里氏のイベントCGは可愛い成分ばかりが勝ってしまってちっともエロくならない。
3、山田ミチル
メガネにしてはかなり好印象な方だとは思うんですけど、ね。でも、その後が続いて来ないというのが正直なところ。何を考えているのかわからないちゃるに誉められたり、認められたりするのは男心をくすぐられる感じで悪くないんですが、それはあくまでこのみやよっちの友達だから。いざ恋人になるとそんな浅い段階で喜んではいられないのだけれど、それ以上先はあんまり見えて来ないんだよねぇ。
結局、ちゃるが主人公を求める心というのが最後までもう一歩ピンと来なかったのが厳しかったです。何を考えているのかわからないキャラだけにそこはもっと鮮明なものが欲しかったです。主人公は相手に引きずられるだけなんだから。
4、菜々子
えーと、記憶に乏しいのですがこんなキャラだったでしょうか。あの語尾とかちっとも覚えていないのですが。
ロリ属性がない以上はネタとしてどうかというところが主眼になりますが、イマイチ面白味にかけるかな、と。もっとまーりゃん先輩が積極的に主人公に洗脳を施しても良かったかも。ロリに開眼しかけるシナリオなのだし。
ぶつ切りのイベント集のようであった構成はあんまり誉められません。
5、河野はるみ(ミルファ)
キャラはとても好きなんですけどねぇ。シナリオがどうにも落胆ものでした。みっちゃんがはるみというのもあまり受け付け難いものがありました。もっとプライド高いのではないかとあのやりとりからは思っていただけに。3センチはあまり効果的に示されてはいませんでしたな。
終盤の展開もどうしたって納得がいかず。なぜみっちゃんとの思い出をなかったことにしようとするのか。バス停の別れはしんみりした良いシーンだと思うんだけどなぁ。どうしてもやりたいなら別のシナリオでやるべきでしょう。
Hシーンはリーフの悪いクセが出てました。1回しかないというのに夕陽なんて光源を用意するものだから、髪が黄金色になってまるでシルファ。基本的に顔は同じ、であることをもっと考えるべきではないでしょうか。
6、シルファ
実際に聞き続ければイライラしそうですけど、ゲームならばあの口癖はOKといったところ。悪い子でないのはすぐにわかりますが、一人だけ選べといわれたらやはりイルファさんかミルファを選びますね。積極的に彼女を選ぶ理由が見当たらない。
シナリオもなんだかそんな感じでした。なぜ恋仲になるのか、なぜシルファを相手に選ぶのかよく分かりませんでしたよ。いつの間にか痴話喧嘩しているという感じで。
Hシーンはこちらも悪いクセが出て髪の毛が緑色に。だーかーらー、そういうのはHシーンが複数回あるゲームでやりましょうよ、と。リーフはどうも印象的な構図、見栄えにすることにこだわり過ぎてもっと大事なエロさなどを疎かにしていると思います。
7、小牧郁乃
シナリオは勘弁してくれ、としか言いようのないものでしたが、郁乃のキャラ描写自体はなかなか良かったです。というか、こういうひねくれたキャラは基本的に好きなんで。
主人公?の名前を打ち込むのがとても虚しいものであったのも大きなマイナス。てっきりまともに出番があるのかと思えばゲスト以下の扱い。下手すればホントに登場しないという。
感情移入にも絡む話なのであの手法は正直、下の下であったように思います。貴明を主人公から外した上で郁乃が攻略される、なんてどんな趣味の悪い采配なのやら。
貴明、愛佳カップルの最悪さ加減も予想を遥かに超えてました。まぁ、そのへんは郁乃の声優が特典でちょっと触れてましたが。
8、柚原春夏
「八神くんの家庭の事情」。読んだことのある人にはこれで全て伝わるような気がします。違うところは春夏さんが実の母ではなく、幼なじみの母であるという一点。
攻略できないという意味からすると逆にサービスしすぎかな、と。よっちやその他のヒロインへの当て馬としては十分だったと思います。些細なちがいでしょうが、印象としてはXRATEDの時の方が良かったですね。
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