お互い以外に身寄りのないレクス(変更不可)とロッタの兄弟は幼なじみのパン屋の娘の家に世話になっていました。両親への墓参りを済ませたある日のこと、街に戻った二人を待っていたのは王都からの使い。二人は失踪した王女の忘れ形見、すなわち王太子さまだったのです。
lightのゲームを買うのは実に「Bluelight Magic」以来です。マリーシステムってずっと継続して搭載していたんだ、と妙なところで感心しました。購入動機は以前から悩んでいたところに世間の評判に後押しされて。と言っても買っても損はしないだろう、くらいの認識でしたが。
初回特典はテーマ曲、ヒロインのミニドラマを収録したマキシシングル。こちらの方だけカラーピクチャーレーベルというのはなんだか微妙なものを感じます。予算の問題でしょうか。ねこねこソフトなんかも時折、そんなような発言をしていますし。ちなみにミニドラマにネタバレはありませんので最初に聞いても問題ありません。
本題に入る前にいつものパターン。lightと言えばライアーソフトと並んでバグの多いメーカーです。残念なことに。今作も環境によっては強制終了の起こるバグを含んでいるのでとっとと落としておきましょう。
システムはお馴染みの場所選択型のアドベンチャー。移動先にいる相手があらかじめ誰かわかるようになっているので難易度は非常に簡単。セーブ&ロードによるプレイを強いられないのはありがたいことです。と言いたいところですが、セラクルカのシナリオのみ例外。途中までシーリーンと同じ選択肢にしなければならないというのは厳しいところ。どこまで同じにすればいいのかも知らなければわかりませんよ。
足回りはもう一歩というところでしょうか。メッセージスキップはスピードこそ早めですが、一部の「Kanon」を彷彿とさせる演出が全く加速されることなく進むのでトータルとしてあまり早く感じません。
メッセージの巻き戻しはウインドウ単位で行います。ロード直後にも使用できませんし、ホイールマウスにも対応していないので若干、使いにくいです。
また、こうしたコンフィグ機能の全てが一度、右クリックしてからでないと使用できないというのは不便なように感じました(つまりはクイックセーブ&ロードもないということです)。
今作には幾つかシステムボイスが収録されています。それは別にいいのですが、主に喋るのが実弟のロッタくんというのはどういうことなんでしょう。ヒロインの立場なさ過ぎ。
加えてロード時には最も好感度の高いキャラが喋りますが、スタート時にはロッタくんが設定されています。実弟から毎回告白されかかるというのはどうかと思います。個人的にはプレイ意欲が揺さぶられそうになってました。
シナリオは「ホワイトアルバム」型とでも言いましょうか。最初に恋人ありきな物語。ゆえに普段は穏やかながらも一歩、奥へ進めば鬱になりそうな展開も。主人公の優柔不断ぶりは間違いなくそれに拍車をかけています。「君が望む永遠」といい、もう方程式にでも出来そうな勢いです。
序盤は庶民から王太子になったため、その生活スタイルの変化に戸惑う様をほのぼのとしたノリで描いています。各キャラクターの個性も自然に表現されていて、すんなりと物語に入り込めるあたり、テキストのうまさが光ってます。ただ、個人ルートに入るまでは一日の半分が共通ルートなので、2周目以降は飛ばしては読み、飛ばしては読みという感じになり、長所が同時に短所も兼ねてしまっているのが難しいところです。
宮廷らしさという雰囲気は正直に言って薄いです。というのも登場人物たちの多くが主人公にぞんざいな口の利きかたをするのがその最たる理由。確かに主人公は王太子らしくはないですが、個人の人格に忠誠を誓っている訳ではないと思うんですけどねぇ。いくら幼なじみでも買い物の荷物持ちにするのはどうかと。他にも宮廷行事がほとんどないあたりもそれに一役買ってしまっています。
各シナリオは方向性が異なるせいか、レベルに差があるような気がします。例えば恋愛描写として大事な要素のひとつ、互いが互いを好きになっていく過程はシーリーンシナリオではしっかりと書かれていますが、ピアナやフェレースシナリオでは明らかに不足している感があります。もう少しレベルを揃えて欲しいと思うのは贅沢なことなんでしょうか。
おまけのハーレムシナリオはおまけとすれば充分でしょうが、設定を考えると明らかに不足気味。せめて全員で一つのルート分くらいのボリュームが欲しかったです。
CGは全体的に薄い色調でまとめられています。くすくす氏の描くキャラクターたちは相変わらず魅力的です。枚数以外はここで失望することはないでしょう。
イベントCGは息づかいが視覚的に見えるよう描かれているのが強く印象に残りました。寒い季節の物語という訳ではないだけに余計に。
立ちCGはバストアップという感じで大きめに描かれています。個人的には表情の変化がよくわかるのでこれぐらいの方が好きですね。
音楽はシナリオの穏やかな雰囲気に合わせてか、緩やかな曲が多いです。ボーカルもしみじみと聞き入るような曲に仕上がっています。
ボイスは名前のあるキャラは全てフルボイス(主人公除く)。実力は折り紙付きな方が揃っています。中でもシーリーン、アルテース、コロンははまり役ではないかと。何気なく男性キャラも充実しています。
まとめ。及第点という言葉が相応しい作品。記憶に残りにくいと言いますか、巧妙に長所と短所が相殺し合っているような印象があります。例えばヒロインが気に入っても結末が……、というケースが多そうです。
お気に入り:シーリーン、テルティ
評点:65
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、セラクルカ
やはり最後までどうも声に馴染めなかったのが辛いところでした。はっきりしているようで、実はそうでもないあたりは主人公とお似合いなような気もするんですけどね。
個人的には序盤の不在期間が予想以上に大きかったと思います。つーか設定、性格ともにシーリーンが手強すぎ。特に最初にシーリーンシナリオを終えているとセラクルカに進むのは激しい抵抗が伴いそうです。
2、シーリーン
正直なところ、結婚式バージョンの方が可愛いと思います。それはもうってくらい。寝る時は外すと思ったんですけどね、あのヘアバンド。
他のシナリオでも思うんですけど、個別ルートに入ったらもっと変化があった方が良かったように思います。シーリーンのシナリオだったら総督として赴任した後の話までにするとかね。
恋愛描写は充分なんですけど、それ以外が弱いのがもったいないところ。
3、ピアナ
実は何も取り柄がないという恐ろしいヒロイン。無能ぶりではシーリーン以上ではないでしょうか。なんにせよキャラが弱すぎるのが痛いです。
4、フェレース
なにか綺麗にまとまり過ぎている。このシナリオに関してはそこだけがどうにも気になります。出来そのものは今作でも屈指なだけに。
ただ、このシナリオの魅力は正直なところ、宰相閣下にあると思いますけどね。
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