101   恋色空模様(すたじお緑茶)
 
 伊東誠悟(変更不可)がやって来た神那島は色々と因縁深いところだ。かつて滞在したことがあり、今では義父が巨大な橋を作ったことで英雄扱いされている。加えて義妹が療養しているところでもある。
 都会の生活スタイルに慣れた誠悟にはいささか窮屈に感じることもあったが次第に気にならなくなっていった。
 そんなある日、悪友たちに巻き込まれて風紀委員に追いかけられていた誠悟は運命としか言いようのない出会いを連続で果たす。これこそが全ての始まり。
 
 すたじお緑茶第7弾は離島の学園で廃校問題が、というさわりだけならどこかで聞いた気がするアドベンチャー。
 購入動機は原画、でしょうか。なにぶん半年も延期されたので意欲は減退気味でした。長期の延期作に滅多に良作なし、という格言めいた言葉もありますし。それと個人的には「プリンセス小夜曲」の悪夢を払拭してくれたら、という身勝手な思いも。
 初回特典はスペシャルMAXI CD。予約キャンペーン特典はお楽しみブックレット。
 
 ジャンルはごくごく普通のアドベンチャー。
 足回りは平均からやや弱め。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。ただし、選択肢間が非常に長いため、相対的に遅く感じやすいです。要暇潰し道具。限られたポイントしか選択肢がないので「次の選択肢へ」機能があると良かったのではないでしょうか。また、メッセージウインドウに何ら機能が付属していないため、スキップに限らず右クリックしてからでないと使えないのは不便です。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、ほどほどしか戻れません。作品のボリュームを考えると明らかに物足りなく感じます。
 次回予告、あらすじのある本作ですが残念なことにそこに戻ったり、そこから始めるといったことができません。2つが連続で発生するので間で止めるためにセーブも難しく(クリックするとあっさりスキップしてしまう)結局、連続で聞くので意義も半減しています。
 
 シナリオは驚くほど長いです。個人的な参考記録で1周目に要した時間は45時間ほど。話数形式でオープニング演出のほか、前述したように次回予告とあらすじがあります。その上で第1部が1〜10話、第2部が11〜20話、個別シナリオが21〜23話と腰を据えてかかる必要があるボリュームです。
 長いシナリオは丁寧な描写の積み重ねゆえ。主人公が神那島に慣れていく様子、学園でヒロインたちと絆を深めていく様子が過不足なくしっかりと描かれています。それを下敷きにして第2部が描かれているので説得力は十分です。飽きることなく楽しめるでしょう。
 日常の掛け合いは少しばかりクセがあります。アニメ、漫画などのいわゆるオタクネタが使われていますが、どうも使い方が強引な上に他作で見たものが多いのでエロゲーを多くプレイしているほど笑いは厳しそうです。一方でキャラは男女ともしっかりと立っているので個性を生かしたドタバタ劇が実に楽しく、普通の何気ないやりとりの方が素直に笑えます。
 惹かれ合う過程はヒロインによって差があります。基本的なところは共通シナリオで描かれているためにそれだけで是としてしまうとハーレムルートな状況になってしまうため、肝は差分シナリオなのですが分量が少ないこともあってか、ここは説得力が弱いです。しかも、本作は好きになるのに理由はいらない、というスタンスを採っている節があるので余計に苦しいように見えます。
 話数が示すように各個別シナリオはそれまでに比べてとても短いです。内容的にも性急でとってつけたような感があります。全体で見てもバランスが悪く、それまでと同じ作品とは思えないほど。1周目と2周目以降に想像以上の落差があり、非常にもったいないです。恋仲になって以降のヒロインの魅力ももうひとつ打ち出せていないように見えました。
 Hシーンはカウントが難しいですが、各ヒロイン3〜4回程度。主人公のルックスも相まってか全体的に受けの方向づけがされています。純愛系にしてはエロ度はまぁまぁというところ。
 
 CGは見た目、動き(演出)ともに気合を感じます。画面上を賑やかに見せる、ということにこだわりがあるのではないでしょうか。見ているだけで楽しくなることがたびたびありました。
 校庭の上空からの俯瞰カットにフェイスウインドウ(普段は使用しません)を使って擬似的に野球を見せる、立ちCGをうまく動かしてあたかもアッパーカットしたように見せる、背景の扇風機や海の波が動く、などなど。SDカットでさえ拡大縮小などを使ってよく動きます。
 イベントCGは全体的に高レベルの中にあっては少し苦しいものがあります。場面にそぐわないキャラクターの表情が稀にあるほか、ラフに比べると原画の魅力を100%抽出できているとは言い難い感じです。さらに上を目指せるポテンシャルの原画であるだけに惜しまれます。それでも、及第点は優に越えているのですが。
 立ちCGは作品の顔と呼べるレベルに仕上がっていると思います。シナリオのボリュームに比べてしまうと少ないイベントCG枚数を十二分に補うだけの魅力を感じられました。それだけに立ちCG鑑賞の存在がとても嬉しく感じます(なんかすごい本格的な仕様で驚きますが)。
 Hシーンは半脱ぎがどういう訳か構図というか、見せ方がもう一歩な感じです。せっかくの状況であまり見えない、そもそも見えない(テキストでは見えることになっている)ことが妙に多かったように思います。回数の割に(純愛系にしては)マニアックなシチュエーションが多くエロ度は今ひとつというところ。
 
 音楽は田舎の離島らしさはあまり感じないものの、落ち着いた旋律で作品の雰囲気をうまく伝えてくれています。4曲のボーカルも思い入れを深める助けにしっかりとなっています。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技も素晴らしく、違和感を探せという方が難しいほど各キャラクターがイメージに合致しています。純粋にキャラの魅力に上乗せできているのではないでしょうか。
 
 まとめ。失速があまりに惜しい作品。半年の延期とか、初期発表では4部構成であったとか、色々あったであろうことが容易に想像がつきます。返す返すももったいない。1周目で終わっておけばもっと評価が高まりそう。けれど、スタッフの実力は確かなので次回作に期待したいです。
 お気に入り:加納佳代子、中西藍子、橋本優喜
 評点:75
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、加納佳代子
 タイプとしては別段、珍しくはないけれどもこれをメインに据えるというのは正直、珍しい。おかげで会話の中心にはけしていない彼女が販促イラストなどでは最も目立つ位置にいることが多いという不自然さ。描いた時期の問題かもしれませんけど、ちょっとキャラが違って見えるものが多いですよね。パッケージとかブックレット表紙とか。
 キャラとしては慌てふためきやすいところがいい感じ。けれど、そのために主人公はすっかり天然のセクハラマシーンに。共通シナリオでは驚異的なやらかし度でしたよ。あれでは妹様に冷たい目で見られるのもむべなるかな、です。
 抱えているものが重すぎて個別シナリオはなんか縮こまったような内容になってしまいました。高すぎるハードルを設定したがゆえに都合のいいオチを用意するしかなかったという。まぁ、聖良シナリオに活用できていると言えなくもないですけど、メインのシナリオを犠牲にするほどではないしなぁ。
 佳代子シナリオに限ったことではないですけど、田舎のせいかどうもヒロインとの思い出に乏しい感じです。特に恋仲になって以降はねぇ。
 
2、篠原聖良
 ブックレットのラフを見る限り、すたじお緑茶CGスタッフ陣は原画家るちえ氏の良さを100%引き出しているとは言い難いですね。他のヒロインにも言えることですけど、露骨にラフの方がキャラクターが活き活きとしておりますし、可愛かったりします。まぁ、ある程度は方向性のせいもあるにせよ。
 色々と傍迷惑なヒト。ゆっきーにはこんなのを目標にしてはいけませんよ、と強く言いたい。風紀委員居残りとかに関してもいい方に回りすぎですって。なんかそれこそ彼女の基本という気がしなくもないですけど。
 
3、服部彩
 どうもキャラ的に弱い。幼なじみという本来なら強力な武器を持っているとは思えないほどに。恐らくみんなの犬であるあたりに問題があるんだろうなぁ。そういう意味では「真剣で私に恋しなさい!」のわんこと似た病を患っている感じ。ライターの書きやすさというのは実はあまり良いことではなかったように思います。
 加えて幼なじみとしてブランク付きであるのも痛い。おかげで他のヒロインたちとほとんど横一線。特別な思い出もないだけにどうも不甲斐なく見えてしまいます。個別シナリオなんて親族の力を借りて盛り上げようとする展開に違う意味で泣きそうでしたよ。
 個人的には服部家唯一の常識人、歩くんの立ちCGが欲しかったなぁ。
 
4、内海静奈
 本音を言いますとなぜ好かれているのか最もわからないヒロインでしたね。確かに接点はありましたけれどだからといって……、という感じ。おかげでどうも恋仲がスッキリしない。そういった点では主人公よりもプレイヤーの方がふられることに合点がいきやすかったかも。ああ、やっぱりという感じで。Hシーンもどこか浮いていましたからねぇ。昼休みにみんなを待たせて用具倉庫で触りっことか。
 エロス的にはHシーンよりも海水浴の水着立ちCGの方が強烈だったような気がします。Hシーンの方ではあまり巨乳っぽく見えなかったですね。ラフでもるちえ氏が不得手であると書いていましたけど。
 
5、伊東美琴
 デザインが難航したのか、ラフは他のヒロインと比べて決定稿以外が多く掲載されています。そして、その方が可愛く見えてしまうのだよなぁ。妹というよりは嫌味キャラとして随時機能していたあたりがちょっと無駄に損をしているようにも。端から妹スキーならいざ知らず、そうでないプレイヤーにはちょっと難しそうです。
 
6、中西藍子
 ライターも書いているようにヒロインでないのは謎としか言いようがない。デザインからしても他のサブキャラと違って明らかにヒロイン寄りですよ。むしろ、美琴の方が地味に見えるくらいなんですから。実際、親友の存在をサポートしている感じです。
 
7、橋本優喜
 うーん。良キャラなのにシナリオ展開のせいでイメージを損ねているように見えます。能力的な部分ならともかく、精神的な部分でも魔王の引き立て役というのは悲しすぎます。考えなしにしか見えない人にねぇ。地味にセクハラ被害が激しい苦労人。そういやスタイル良いという設定の筈ですが、水着姿を見るにあまりそうは思えず。


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