紹介文
1998年分 | 1999年分 | 2000年分 | 2001年分 | 2002年分 | 2003年分 | 2004年分 |
2004年 |
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11月29日 | 「バッテリーU」あさのあつこ |
11月28日 | 「バッテリー」あさのあつこ |
11月8日 | 「神秘の短剣 (ライラの冒険U)」フィリップ・プルマン |
7月15日 | 「理由」宮部みゆき |
6月30日 | 「朝霧」北村薫 |
5月23日 | 「黄金の羅針盤 (ライラの冒険T)」フィリップ・プルマン |
3月6日 | 「一瞬の光」白石一文 |
2月15日 | 「ローマ人の物語U ハンニバル戦記」塩野七生 |
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2003年 |
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12月26日 | 「シーズ・ザ・デイ」鈴木光司 |
12月6日 | 「螢川・泥の川」宮本輝 |
11月30日 | 「ローマ人の物語T ローマは一日にして成らず」塩野七生 |
11月17日 | 「鳥人計画」東野圭吾 |
10月31日 | 「海峡の光」辻仁成 |
10月26日 | 「きみの知らないところで世界は動く」片山恭一 |
10月19日 | 「日本庭園の秘密」エラリー・クイーン |
9月20日 | 「スイス時計の謎」有栖川有栖 |
8月24日 | 「リセット」北村薫 |
7月24日 | 「ニュートンの林檎」辻仁成 |
7月2日 | 「夏のロケット」川端裕人 |
6月15日 | 「レベル7」宮部みゆき |
5月13日 | 「放課後」東野圭吾 |
3月24日 | 「マレー鉄道の謎」有栖川有栖 |
2月11日 | 「13歳の黙示録」宗田理 |
2月5日 | 「黄色い部屋の秘密」ガストン・ルルー |
1月10日 | 「紳士同盟」小林信彦 |
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2002年 |
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11月25日 | 「車輪の下」ヘルマン・ヘッセ |
10月19日 | 「ハリー・ポッターと賢者の石」J.K.ローリング |
8月5日 | 「人間失格」太宰治 |
7月25日 | 「そこに君がいた」辻仁成 |
7月20日 | 「そこに僕はいた」辻仁成 |
7月12日 | 「人間の土地」サン=テグジュペリ |
6月1日 | 「トリガー」アーサー・C・クラーク & マイクル・P・キュービー=マクダウエル |
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2001年 |
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12月4日 | 「途中の家」エラリー・クイーン |
10月20日 | 「ターン」北村薫 |
10月14日 | 「スキップ」北村薫 |
8月18日 | 「奇跡の人」真保裕一 |
8月17日 | 「二人がここにいる不思議」レイ・ブラッドベリ |
5月13日 | 「第四間氷期」安部公房 |
2月4日 | 「風の谷のナウシカ」宮崎駿 |
2月4日 | 「詩的私的ジャック」森博嗣 |
1月14日 | 「ノルウェイの森」村上春樹 |
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2000年 |
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7月5日 | 「笑わない数学者」森博嗣 |
7月5日 | 「占星術殺人事件」島田荘司 |
5月2日 | 「風の一二方位」アーシュラ・K・ル=グウィン |
3月26日 | 「緋文字」エラリー・クイーン |
2月24日 | 「冷たい密室と博士たち」森博嗣 |
2月6日 | 「カンガルー・ノート」安部公房 |
2月4日 | 「ピアニシモ」辻仁成 |
2月2日 | 「六の宮の姫君」北村薫 |
1月24日 | 「奪取」真保裕一 |
1月21日 | 「新・電子立国」相田洋 |
1月21日 | 「物理学の世紀」佐藤文隆 |
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1999年 |
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11月28日 | 「部分と全体」ウェルナー・ハイゼンベルク |
10月24日 | 「帰還 ゲド戦記最後の書」アーシュラ・K・ル=グウィン |
10月21日 | 「すべてがFになる」森博嗣 |
10月16日 | 「災厄の町」エラリー・クイーン |
10月5日 | 「箱男」安部公房 |
9月2日 | 「秋の花」北村薫 |
8月16日 | 「変身」カフカ |
8月16日 | 「かもめのジョナサン」リチャード・バック |
8月12日 | 「コインロッカー・ベイビーズ」村上龍 |
8月5日 | 「双頭の悪魔」有栖川有栖 |
7月22日 | 「エラリー・クイーンの新冒険」エラリー・クイーン |
7月13日 | 「暗闇のスキャナー」フィリップ・K・ディック |
7月5日 | 「ロシア紅茶の謎」有栖川有栖 |
6月21日 | 「ペルシャ猫の謎」有栖川有栖 |
6月13日 | 「夜の蝉」(*)北村薫 |
5月23日 | 「空飛ぶ馬」北村薫 |
2月5日 | 「孤島パズル」有栖川有栖 |
1月15日 | 「鉄塔 武蔵野線」銀林みのる |
1月7日 | 「芽むしり仔撃ち」大江健三郎 |
1月7日 | 「死者の奢り・飼育」大江健三郎 |
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1998年 |
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12月1日 | 「ホワイトアウト」 真保裕一 |
11月18日 | 「さいはての島へ−ゲド戦記V」アーシュラ・K・ル=グウィン |
11月13日 | 「こわれた腕環−ゲド戦記U」アーシュラ・K・ル=グウィン |
11月9日 | 「ドルリー・レーン最後の事件」エラリー・クイーン |
11月4日 | 「メタルカラーの時代3」山根一眞 |
10月26日 | 「影との戦い−ゲド戦記T」アーシュラ・K・ル=グウィン |
9月16日 | 「われはロボット」アイザック・アシモフ |
8月27日 | 「自由未来」ロバート・A・ハインライン |
8月23日 | 「深夜特急」沢木耕太郎 |
8月23日 | 「五分後の世界」村上龍 |
8月5日 | 「宇宙の戦士」ロバート・A・ハインライン |
7月10日 | 「ミステリアス・アイランド」ジュールベルヌ |
7月2日 | 「十角館の殺人」綾辻行人 |
7月2日 | 「エジプト十字架の謎」エラリー・クイーン |
6月23日 | 「震源」真保裕一 |
6月23日 | 「マジックミラー」有栖川有栖 |
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★★★☆
○ バッテリーU あさのあつこ 角川文庫
第二作目。主人公が中学生になってからのお話。前作よりさらに面白く、半徹夜で一気に読んでしまった。久々にのめり込んでしまった一冊。ちなみに一作目を読んでなくても一応大丈夫だと思う。
まだ子供っぽさも持ちながら、ストイックな人生観(野球感?)を持つ天才ピッチャーの主人公(中学一年)がものすごく魅力的。学校や部活の不条理さにひるまずに自分を貫く強さがまぶしいです。周囲とかかわりながら、自我を強く感じながら、迷いながら、成長していく青春物語でもあると思うのだが、そんな青臭さは微塵も感じさせないところがいい。
いや、マジで面白い。バッテリーVが待ち遠しい・・・
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★★★☆
○ バッテリー あさのあつこ 角川文庫
なんとなく、表紙と裏表紙の文句につられて買ってしまった。小学校を卒業してこれから中学生になろうかという、天才?野球少年のお話。ただし、いわゆる優勝目指してがばんろう!的内容ではなくて、スポーツ物というよりは、人間物なのだ。プライド高き男どもの苦悩の物語だ。・・・というのは大げさか。
どうやらもとは児童文学として書かれたものらしく、そんな青くささも感じるが、私はそう言うのも結構好きなので面白く読めた。
中学になってからの展開が気になってしょうがない。次作「バッテリーU」へGoである。
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★★★☆
○ 神秘の短剣(上・下) フィリップ・プルマン 新潮文庫
冒険ファンタジー、ライラの冒険シリーズ2作目。「黄金の羅針盤」の続編です。
基本的に完全な連続物(完結編は「琥珀の望遠鏡」)なので、いわゆるパート2もののように質が落ちることはないです。多彩な登場人物に広大な世界、緊迫した場面の連続と、とても壮大な物語で面白いです。1作目(黄金の羅針盤)はまあほどほどの面白さって感じだったけど、いよいよ物語は盛り上がってきて、間違いなく面白かった。さらに盛り上がりそうな完結編が楽しみです。
ちなみに、ファンタジーとはいえ残酷な場面やも多く、ファンタジーといってもかなり大人向け。ハリポタよりはよっぽどHeavyです。
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★★★★
○ 理由 宮部みゆき 新潮文庫
まず、一言。 面白かった!! ・・・と以前「レベル7」の感想で書いたけど、今回も同じくです。高層マンションの一室で起こった大量殺人の真相について、ドキュメンタリー風に当事者のインタビューなんかを交えて淡々と進む。巻末の解説で作者が「NHK特集のように書いた」と言っていて納得。でも面白い。犯人もあるところで衝撃的に明かされるんではなくて、淡々と状況が明らかになってくる過程で見当が付いてくる(もちろん話の終盤でだけど)。こんなに淡々としているのになんで面白いんだろう?不思議である。
何組もでてくる家族の描写がいい感じで、とくに両親や世間を冷静に見つめる子供は非常に現実的でほほえましかった。
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★★★☆
○ 朝霧 北村薫 創元推理文庫
北村薫の<円紫さんと私>シリーズの5作目。以前<私>シリーズの別の作品で以下のような紹介文を載せていますが、全くもってそのまんまです。ほのぼのとホッと出来ます。
あいかわらず、ほのぼのと、というか、淡々と、<私>の日常が描かれ ます。そんな中に普通の出来事の奥深さや、謎に迫って いくおもしろさがつまっています。特にその課程での<私>や周囲の人の気持ちの動きがやはりいいなと。」
中編集で三作収まっているんだけど、表題にもなっている最後の「朝霧」が一番良かったと思う。このへんは好みの問題と思うけど。ただし、やたらと俳諧の話や落語の話が出てきてハッキリ言ってそこはわからんです。普通の人は気になって読みにくいかもしれません。だけど、それさえ気にならなければ面白い。次回作も楽しみ。
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★★★
○ 黄金の羅針盤 (上・下) フィリップ・プルマン 新潮文庫
ちょっと気分を変えて、冒険ファンタジーです。帯の文句によれば、なんでも世界的ベストセラーの超話題作で、待望の文庫化らしい・・・ あんまり大げさなこと書かれるとちょっと白々しいなと感じてしまうが、読んだ感想は・・・まあ面白かったです。でも売り文句ほどではなかった。冒険ファンタジーなんだけど、表現というか内容というか、ちょっと濃いところがあって、純粋に子供向けと言うより、大人が読むことを前提にしたような気もしないでもない。魔女やしゃべるクマや守護霊とか別世界とか内容はファンタジーそのもので、ある秘密をめぐって主人公の女の子が大活躍する(ハリーポッターとかロードオブザリングとかのように・・・)のだけど、もう一息、おお!っと思わせるようなことが無かった・・・ でも、ちょっと面白かったので続きも読みます(三部作らしい)
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★★★☆
○ 一瞬の光 白石一文 角川文庫
おもしろかった! 一応、純恋愛ものなんだけど、エリートの社会派ビジネス物と言えなくもない感じで緊張感があり、ありがちな安っぽさがない。仕事一筋エリートサラリーマンがあるきっかけから心に傷をもつ女性と知り合い、気付かぬうちにひかれていく。と、こう書くと安っぽいな・・・
もっとも冷静に物語を見るとどう考えてありえないだろ、という気もするが、読んでいるときはそんなこと思わせずグイグイ読めるのでまあ問題なし。
私みたいなダメサラリーマンには想像もできないけど、社会の限られたエリートってこんな感じなのかな、うらやましいけど、こうはなりたくない気もする・・・。なんて思った。
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★★★☆
○ ローマ人の物語U ハンニバル戦記 (上・中・下) 塩野七生 新潮文庫
ローマ人の物語の文庫版2作目。なかなか面白かった。ハンニバルってなんとなく聞いたことはあったけど、なるほどこういう人でこういうことした人なのね。と納得した。ハンニバルは結局最後には負けてしまうのだけど、もしローマが負けていたら歴史はどうなっていたんだろう?個人的にはハンニバルが勝って名将のまま終わって欲しかった気がする・・・
それにしてもヨーロッパでこんな大戦争をやっているとき、日本は縄文時代。天と地ほどの差があったんだねぇ。
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★★★☆
○ シーズ・ザ・デイ (上・下) 鈴木光司 新潮文庫
ホラー映画「リング」で有名な作者の新作。これはホラーではない。でもなかなか面白かった。深みのある作品じゃないけど、物語に引き込まれながら読めた。これ、面白い証拠ですね。新刊帯の「海洋小説の金字塔」ってうたい文句はちょっと言い過ぎだけど。だいたい海洋小説じゃないし。それに沈潜の謎に挑むのは完全に後半になってから。それまではどたばた恋愛劇って言う方が当てはまる。ただし、後半に入ってくるとその前半が生きているのがわかります。
後半から特に面白くなってくる作品。
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★★★☆
○ 螢川・泥の川 宮本輝 新潮文庫
中編2作のセット物。いわゆる純文学で、まさに教科書ッて感じ。でも面白かった。特に螢川の方が良い。物悲しい中にも微笑ましさと暖かさがある。泥の川の方は悲しいのみで終わってしまった。重い感じ。
どちらも主人公は小学生くらいの小さい子供で、大人の世界をかいま見つつ揺れ動く子供心を描いていると思います。こういう作品は物悲しくても心温まります。
純文学指向のヒトには特にお勧め。
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★★★☆
○ ローマ人の物語T ローマは一日にして成らず (上・下) 塩野七生 新潮文庫
もう十年も前から一年に一巻ずつ刊行されている単行本シリーズ。非常に評判が良く売れていて、単行本の装幀も綺麗で前から気になってました。今回、単行本が10巻目を数えてまだ刊行中なのにもかかわらず、簡易版として文庫でも刊行され始めたので購入しました。
いわゆる歴史物ですが、物語(フィクション)ではなく、事実を著者の観点で叙述していくお話(ノンフィクション)です。あまり読まないジャンルなのでどうかなと思ったけど・・・面白い! 普通の小説みたいにのめり込むって感じじゃないけど、それでそれで?それでどうなったの?って感じ。やはり事実は小説より奇なりっていうだけあるんですかね。
それにしてもローマって言葉は聞いてことあったけど、紀元前何百年も前からあったとは・・・理系の自分には初耳でしたが、たびたび聞いたことある名前などが出てきて面白いです。こんごのシリーズも読もうと思います。
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★★★
○ 鳥人計画 東野圭吾 角川文庫
スキージャンプ選手と関係者が舞台のミステリ。スキージャンプの日本第一人者が毒殺される。その犯人は? 動機は? 裏に隠された計画とは? と書くとありきたりな売り文句ですが、二転三転最後まで飽きずに読ませてくれます。面白いです。でもこれといって特筆する事がないかも・・・ 冒頭で殺される被害者の存在感がピカイチ。スキージャンプという変わったジャンルを舞台にしてあるのは面白いと思います。
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★★★★
○ 海峡の光 辻仁成 新潮文庫
辻仁成の芥川賞受賞作品。かなり短くて、すぐに読めちゃう。彼って恋愛物とか青春物の印象が強いけど、これは違います。人間の心理を描いた普通の文学作品です。
北海道の刑務所に勤める若い男の日常。ある日刑務所に幼い頃の同級生が入所してきてからの、男のとまどい・驚き・苦悩など人生の重く・暗い部分が、重々しい雰囲気で描かれます。
ともて面白かったけど、読んでる最中に芥川賞っぽい作品だなぁと思えてしまいました。これって、俺が素直じゃなくなったってことかな。
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★★★★
○ きみの知らないところで世界は動く 片山恭一 ポプラ社
なかなか面白かった。雰囲気としては、辻仁成や村上春樹なんかと似た感じです。青春恋愛物。すごく淡々と話が進むので人によっては退屈かもしれないけど、俺としては、そんな感じが結構よかった。変な盛り上がりを作っていない分、よくある強引な話の進め方や不自然さはありません。 物悲しい恋愛物語を落ちついて読めます。
でも大きな盛り上がりが無いぶん、話の収集が難しかったのかな?終わり方がちょっとものたりない気はしました。
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★★★
○ 日本庭園の秘密 エラリー・クイーン ハヤカワ推理文庫
情けない話なんですが、実はこの作品すでも持っていました。「日本樫鳥の謎」by創元推理文庫で既刊なんです。でも読んだのが高校生くらいのときだったのと、題名が違っていたのとで気づきませんでした。まあ、ここで紹介するのは初めてなんで、紹介しますが。
題名をみるとエラリーの有名な「国名シリーズ」だと思ってしまいそうですが実は違います。読者への挑戦状もないし。内容的には密室物の本格推理。そこはエラリー・クイーンなのでそこそこは面白いけど、やっぱり外国人の書く日本ってのはちょっとね・・・違和感たっぷりです。それにちょっとトリックにも違和感がありました。まあ、読んでいるときはそんなことは気にならないんだけど。
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★★★
○ スイス時計の謎 有栖川有栖 講談社ノベルス
私にはおなじみの有栖川有栖の国名シリーズ。ついこないだ長編のマレー鉄道が出たばかりなのでビックリしてたら、やっぱり短編集。私の独断では有栖川有栖は長編こそ面白い、と思っているので、ちょっと不安でした。
ところが。中編の表題作に限らず、その他数編の短編もなかなか面白かった。彼の短編集の中では間違いなく上位に入る作品集でしょう。 ・・・・でもやっぱり有栖川は長編の方がが面白い・・・・
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★★★★
○ リセット 北村薫 新潮文庫
「スキップ」「ターン」に続く作者の「時と人の三部作」の最後の三作目。
面白かったけど、この作品を読む前に読んでいた作品とまったく違う雰囲気の話だったから、読み始めに入っていくのがちょっと苦労しました。途中までは話の流れがよくわからず、ちょっと期待はずれかもと思ったけど、中盤以降、ジワジワと面白くなってきました。前半の伏線がよく効いているんです。最後にはこの作者らしく、さわやかな暖かい気持ちって感じで読み終えました。
初めは「期待の大きさにちょっと負けてるかな。ターンやスキップの方が面白かった」と思ったけど、読み終えて振り返ってみると、この作品の味がよくわかってきました。三部作それぞれ違う味付けで、面白いです。やはり全部読んで欲しいですね。
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★★★★
○ ニュートンの林檎(上)(下) 辻仁成 集英社文庫
決してSF科学読み物ではありません・・・「ニュートンの林檎」さすが辻仁成。引き込まれます。でもこういう作品はどうも気持ちが陰鬱になるよね。でも、なかなか面白かったです。
強烈な個性を放つ1人の女性と主人公たちをめぐる人間物語。話の展開は絶対あり得ないような物ですが、すごいパワーのある内容です。俺もこの登場人物のようなパワーが欲しいです。暗く、重い内容だけど、人間にはこういう面って絶対ある。・・・と思う。
不満はほとんど無し、だけどただ少し、ちょっと長いかなぁ・・・って感じはしました。
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★★★★
○ 夏のロケット 川端裕人 文春文庫
ちょっと惹かれる題名じゃありませんか? 店頭の売り文句に乗せられて買ってしまいました。第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞作。名前から連想されるけど、ちょっぴりさわやか青春物。そしてミステリーというよりはライトSF。
おもしろかった!!
「ロケットボーイ」ってアメリカのノンフィクションがあるけど、それの日本・大人版ってかんじ。高校時代の仲間たちとこどもの頃からの「火星ロケットを打ち上げる」という夢を大人になってからも実現しようとするお話。技術的なこととか、いろいろ実際にはあり得ないんだろうけど、いかにも実現できてしまいそうな話に心惹かれます。大人になってもこんなに純粋に一つの夢を追えたら、楽しいだろうなぁ・・・
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★★★★☆
○ レベル7 宮部みゆき 新潮文庫
まず、一言。 面白かった!!
宮部みゆきをちゃんと読むのは初めてだけど、現在もっとも優れたストーリーテラーとか言われてるのもうなずける(そう言われてたかどうか、俺の記憶であいまいなんだけど・・・)。文庫で650ページもある大作なんだけど、最後まで結末が読めず、ハラハラ・ワクワク・ドキドキ楽しく読めました。
レベル7まで行ったらもどれない・・・ 謎の言葉を残した女子高生の行方は? 記憶喪失の男女の腕の謎のマークの意味は? そして最後はどうなるのか? 謎は解けるのか? もう読み始めたらカッパえびせん状態ですよ。
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★★★★
○ 放課後 東野圭吾 講談社ノベルス
推理作家、東野圭吾のデビュー作。出張で移動時間が暇だったので駅で何となく買ってみた。日帰り出張の移動時間だけで全部読み切ってしまった。なかなか非常に面白かった。
なんというか、適度に盛りだくさんな内容で犯人も絞れず、トリックもよくあるような理不尽な物でなく、とにかく終盤は特に話に引き込まれたって事は間違いなく面白い推理小説ってことでしょう。人気作家なのもうなずけます。また機会があれば他の作品も読もうと思います。
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★★★☆
○ マレー鉄道の謎 有栖川有栖 講談社ノベルス
有栖川有栖の「国名シリーズ」6作目。このシリーズは短編集が多いのだけど、久々の長編。マレーシアに旧友を訪ねて旅行中のおなじみアリスと火村助教授がまたもや殺人事件に巻き込まれる。ジャンルとしては密室トリック物。全体的にそれほど目新しいことは無いけれど密室トリックとかアリバイ崩しとか、人間関係とか、そつなく面白いです。やっぱり有栖は長編が面白い。
一つ気になったのが、密室のトリック。ネタばれになるのでここでは詳しく書けないけど、これって有名なA次郎のあのシリーズの初期作品にほぼ同じようなトリックがあったような・・・
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★★★★
○ 13歳の黙示録 宗田理 講談社文庫
「僕らシリーズ」で有名な宗田理の作品。子供たちへのメッセージ性を持つ所は同じだけど、僕らシリーズとはまったく異なった作品。13歳の中学生の苦悩が描かれる。内容はかなり衝撃的、もう少しで救われそうな少年が犯してしまう過ち。あと少しはやく周囲の大人が彼の気持ちに気づいていたら・・・。心を傷つけられた少年が救われないまま周囲までも傷つけていってしまう有様はあまりにも悲しすぎ。読んでいて辛くなる内容だけど、最近の犯罪の若年齢化を考えると目を背けるわけにもいきませんね。
まあ、難しいことは抜きにしても面白かったです。
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★★★
○ 黄色い部屋の秘密 ガストン・ルルー ハヤカワミステリ文庫
とても有名な本格推理小説の古典。推理小説史上、完全な密室を扱った初めての小説・・・らしい。たしかに、ちょっと古めかしい感じ。それにここでは書けないけどトリックがなんともあっけないというか、そんなんでいいんかい? という感じだった。まあ、密室トリックなど何も知らなかったら結構衝撃的なのかもしれないな。主役で探偵役のルウルタビイユ(変な名前!)はまだ少年という感じで、「奇岩城」(ルブランのルパンシリーズ)の高校生探偵、ボートルレとなんとなくイメージがかぶる感じ。どっちが先に出版されたんだろう?
古典なので評価を鵜呑みにすると肩すかしですが、それなりに面白いです。推理好きなら一度読んでおいて損はないでしょう。
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★★★
○ 紳士同盟 小林信彦 新潮文庫
コンゲーム(騙し合い・詐欺等)小説としてちょっと有名らしい。内容はまさにそのもの。新米詐欺師集団の活躍?をおもしろおかしく、描いたもの。もっともコンゲーム小説と言うよりは、コンゲームを扱った小説という感じ。金に困った連中が元大物詐欺師の指導で次々と詐欺を成功させていくという話。面白いけど、読む前の期待値が大きかっただけに、ちょっと期待はずれだった感じがする。
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★★★
○ 車輪の下 ヘルマン・ヘッセ 新潮文庫
なんていうか、とっても有名な小説らしい。でも俺は最近まで知らなかった。まあいわゆる、血沸き肉踊る娯楽小説ではなく、本格文学って感じの作品です。内容的にはいわゆる青春小説でしょう。何処にでもある片田舎の、何処にでもいるチョットできる少年の、チョット出来るが故の悲劇を描いた物です。悲劇って言ってもそんなに悲劇的ではなく、最近の詰め込み教育問題を地でいってる感じなのであります。ただやはり青春小説らしく、ちょっと屈折した感じの友情と学生生活と日常がリアルに描かれます。
まあ、チョー面白いものではないですが、さすがに有名なだけあってそれなりに読ませます。主人公かわいそう。やっぱり子供は遊んでなんぼだよね、と思いました。
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★★★★
○ ハリー・ポッターと賢者の石 J.K.ローリング 静山社
最近、といってももう2年以上になりますか? 出版されると瞬く間に大ベストセラーになったファンタジーです。いわゆる童話ですな。日本だけでなく全世界でベストセラーになっているようです。で、あまりにヒットしていたので読んでませんでした(^^;
今回やっと読んでみた感想ですが、まあまあ面白い。あんまり評判がよいので意気込んで読むと肩すかしかな? 私はこのHPでも紹介しているゲド戦記の方が好きです。でも、ハリーポッターのほうが読みやすい。まあ、評判は大げさとして、面白いのは確かですね。読んで損はないです。一応あらすじを書いておくと・・・ 両親に早くに死なれて恵まれない生活を送っていたハリーはある誕生日に自分が魔法使いであることを知らされて、魔法学校に入学することになります。そこでの楽しくも冒険に満ちた生活が描かれ、お約束の事件をハリーが大活躍して解決?するというものです。
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★★★★☆
○ 人間失格 太宰治 新潮文庫
これまた有名で読んだ人も多いでしょう。私もこれで3度目くらいですが、今回はついに文庫を購入してしまいました。フィクションだけど作者の自己暴露本てき内容だね。世間(人間)になじめない自分を人間失格としておくる、墜落した人生と苦悩をえがいたもの。
よんでて身につまされる物があって嫌いってひとも多いだろうし、全然共感できなくてわけわかんないって人もいるでしょう。 それと逆にすごく共感できるって人もいれば、まるで自分のことのようと思う人もいるでしょう。
巻末の解説によればこの作品を読んだ人の感想ってこの両極端な二つに分かれるそうです。さああなたはどっち?
ちなみに私はかなり共感できました。
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★★★
○ そこに君がいた 辻仁成 新潮文庫
下に書いた「そこに僕はいた」の続編。内容も一緒。ただ無理矢理一冊の続編にしたって感じ。だって、行間がスカスカに空いていて、それでいてページ数はほぼ一緒。イヤに早く読み終わったので変だと思って気づいた。
まあ、中身は一緒なので面白いのは面白いんだけどね。
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★★★★☆
○ そこに僕はいた 辻仁成 新潮文庫
去年だったか? 冷静と情熱の間って映画がやってて結構はやってたと思うけど、それの作者です。エコーズってバンドのボーカリストで映画の監督もやって、ベストセラー青春小説の作者でもあり、凡人の私にはうらやましいかぎり...
そんなことは置いといて、その作者のエッセーです。子供時代に体験した事柄とそのときの思った事をおもしろおかしくときに感動的につづってます。まあ、よくあるパターンだね。それでもやっぱり面白いのは作者の豊かな人間性と、作家としての実力のせいなんだろうなぁ。
俺もこんなに波瀾万丈な子供時代だっただろうか...? かなりオススメです。面白い。
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★★★☆
○ 人間の土地 サン=テグジュペリ 新潮文庫
これってかなり古典的作品で有名で知ってる人が多いと思うんだけど。でも読んだことのない人も非常に多いと思います。まだ飛行機が普及していない頃、乗ること自体が非常に危険な頃のお話。作者の体験を元で自伝的な作品のようです。ヨーロッパでの飛行機による郵便配送の冒険的内容を描いてます。
こういうと全然内容が伝わらないのだけど、作者のパイロットとしての思いというか、人間のあり方というか、自然の厳しさというか、友情のすばらしさというか、そういう作者が言いたい事がひしひしと伝わってきます。現代に楽してのうのうと生きている自分がちょっと恥ずかしくなったりして。
ちなみにこの作者「星の王子様」の作者です。内容の違いにびっくり。
さらにちなみにこの新潮文庫の最後に宮崎駿の解説があるんだけど、それが面白かった。
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★★☆
○ トリガー (上)(下) アーサー・C・クラーク &
マイクル・P・キュービー=マクダウェル 講談社文庫
SF。アーサー・C・クラークは「2001年宇宙の旅」で有名な人なのでちょっと期待して読んだけど、ハッキリ言って期待はずれ。やっぱりもう年なので、連名のマイクルなんとかって人がほとんどかいたんだろうね。
内容はトリガーという新しい発明により銃火器が使用不能になることからくる、世界的混乱と世界的進化(成長?)を中心に描いた話。トリガーという発明がイマイチ中途半端で物足りない。もっとハードなSFが好きなんだけどな。それに話の中盤が政治的な話が多くてちょっとかったるい。中だるみって感じ。まあ、世の中の描写とか、政治的動きとかはよくかけてると思う。いわゆる社会派小説って奴かな。
まあ、色々書いたけど、つまらなくはないです。どっちかって言えば面白いかな。
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★★★
○ 途中の家 エラリー・クイーン ハヤカワ・ミステリ文庫
本格推理小説で有名なエラリー・クイーンの作品。探偵クイーンの友人兄妹が殺人事件に巻き込まれ、それをクイーンが解決すると言うもの。こういう風に書くと何の面白みもないけど、推理小説なんてそんなもんでしょ。で終わってしまうところがこの作品の今一歩な所。相変わらず本格推理としては申し分ないと思うし、読者への挑戦もあって楽しめるとは思うけど、いまいち盛り上がりに欠けるのと、トリックが地味なこと。それに全体的に古めかしい(昔の小説だからしょうがないんだけど...)のが欠点かな。
非常におもしろいとは言えないかもしれないけど十分楽しめる推理小説ではあるとおもいます。
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★★★★
○ ターン 北村薫 新潮文庫
「時と人」の三部作の二作目。半人前版画家だったわたしはある日交通事故に遭う。ふと気づくとそこは「昨日」...世界には誰もいない、ひとりぼっち。次の日のその「時」が来た瞬間、私はまた「昨日」のその瞬間にもどっている。時のターンは永久に続くのか...
と、こんな話です。けっしてタイムトラベルSF物ではありません。スキップでは私は青春物語だと思いましたが、今回は恋愛小説に近いとある意味言えるのでは? あいかわらず、主人公の女性は「強い」くて。そして非常に魅力的に描けていると思います。
非常におもしろい、といえるんだけど、前半の二人称で語られる部分にちょっととまどって、物語に没入仕切れなかった、だからスキップよりは評価は下かな?
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★★★★☆
○ スキップ 北村薫 新潮文庫
「時と人」の三部作の一作目。女子校2年生だったわたしはある日突然、25年後の「自分」となる。25年間の人生をスキップして42歳の私になってしまったのだ。心は17のままで...
と、こんな話です。けっしてタイムトラベルSF物ではありません。若い心のまま健気に今を生きようとする人の物語です。しかし際だつのはその私の目をとおして描かれる、高校生たちの平凡な日常だとおもいました。そして彼らと関わる主人公の気持ちが微妙です。う〜ん、よく分からないが、私はこれは立派な青春物語だと思うのです。私ももっと成長したい物です。それにしても北村薫の本ってどうしてこんなにホッとするんだろう。
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★★★☆
○ 奇跡の人 真保裕一 新潮文庫
「ホワイトアウト」が映画化されてさらにブレイクした作家ですね。この作品は交通事故で瀕死の重傷を負いながら奇跡の回復を遂げた主人公の話です。いっさいの記憶をなくした主人公は貪欲に過去の自分を知ろうとします。こう聞くといわゆる感動もののようですが、私はそうは感じませんでした。とにかく私はこの話を読んでいて辛くてしようがなくて、いやになりました。それでも読み進んでしまうのはやはり作者の筆力でしょう。
もちろん感動できる要素もたくさんあります。特に母親の心情の描写などは。しかし、単純な感動物語でもありません。それゆえに単純な話より一層おもしろく、やはりこの作者はすごいなぁと、思ってしまいました。これはお勧めできます。
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★★
○ 二人がここにいる不思議 レイ・ブラッドベリ 新潮文庫
アメリカ人作家の短編集。結構有名な人なのだけど私はよく知らない。かなり短い短編ばかりでこの一冊で23編が納められている。ジャンルとしてはSFというか、ちょっとファンタジーっぽいのが多く、あとはふつうの物語。当然これだけあれば(23編)おもしろい物もあれば、まったく訳の分かんないものもある。だいたい3分の1くらいはおもしろく感じた。短編らしい起承転結がハッキリして、最後にどんでん返しがあったり、非常に思わせぶりな余韻を残したり...
だた、もともと私は短編(特に短いもの)があまり好きでないのでハッキリ言っていまいちと言う感じだった。まあ、短編の好きな人や、時間が無くて短時間で読み切れる物を探している人などにはよいのでは。
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★★★★
○ 第四間氷期 安部公房 新潮文庫
だいぶ古い作品です。本格日本文学。でもSF。予言機械(今で言うコンピューターによるシミュレーションね)に振り回される人間たち。その中で予言機械の発明者はある事件に巻き込まれ、やがて国家的陰謀(?)を知ることになる。そして衝撃的な予言(未来)を見る....てな感じです。 題名は予言の内容を予言したものですね。しかしある意味、現代こそが第四間氷期ではないかと、私には思えるのです。過去とも未来とも断絶した世界。その中で過去にしがみつく者、未来を夢見る者...
作者は一時期ノーベル賞候補と言われたこともある人です。作品の出来は確かだと思います。ジャンルとしてSFと言っていい内容なので、純文学のような物に抵抗のある人でもおもしろく読めるでしょう。
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★★★★★
○ 風の谷のナウシカ 1〜7 宮崎駿 徳間書店 アニメージュコミッックスワイド版
たまには息抜きということで、小説ではなく漫画の紹介です。という風に紹介するまでもなく皆さんご存じの「ナウシカ」です。宮崎アニメが一気にブレイクした記念的作品ですね。しかし、テレビで何度も再放送されている映画はほとんどの人が見たことがあるでしょうし、話に聞いているでしょうが、そのほとんどの人が原作を知らないでしょう。私もそうでした。そこでちょこっと原作を読んでみたわけです。
はっきり言って映画と原作ではかなり別物です。始め(1〜2)こそ映画とだいたい同じストーリィーですが、その後より大きく深い内容に物語は広がっていきます。やはり映画は2時間に納め、しかも万人うけするように作った物であることがよくわかります。映画を見て感銘を受けた人も多いでしょうが、原作にはとてもかないません。その重厚さと深い内容には、読み終わった後ぐったりしてしまうほどです。
テーマ的にこれという答えの出る物では無いですし、取りようによっては非常に難しいので、軽く読んで楽しめる物ではないと思います。はっきり言って「漫画」と一言でいってしまう物ではないです。でも、映画を見ていろいろ考えてしまった人とか、娯楽小説よりも文学作品が好きだという人。それにとにかくナウシカが好きという人は読むしかないでしょう。
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★★★☆
○ 詩的私的ジャック 森博嗣 講談社文庫
現役国立大学助教授が作者の人気推理小説シリーズ4作目。大学で起こった連続密室殺人を解決する大学教授と女子大生。おきまりですがそこは巧みなトリックと設定で読ませてくれます。人気シリーズだけはある、という感じです。安定してよい内容ですね。ただ、トリックの回答のうち一つだけ、どうしても納得いかない事がありました。「これはこじつけだろ」って事が。それさえなければ良質な推理小説だと思うのですが(個人的意見ですが)。
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★★★★
○ ノルウェイの森 (上)(下) 村上春樹 講談社文庫
はたして、この作品を知らない人がいるんでしょうか? とても有名な作品で今更紹介文など必要ないと思うのですが........
いわゆる青春恋愛小説でしょうか? 心に病のある恋人との関係と大学生活という青年の日常を淡々と書いた作品。どうにも思い通りにならない人生に「ふっ」と寂しくなる。そんな小説です。自分もこんな青春を送ったという人、こんなことあるはず無いという人、これからこういう青春を送る人、送りたくないと言う人、いろいろいるんでしょうね。
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★★★★
○ 笑わない数学者 森博嗣 講談社文庫
現役大学教授で人気推理作家である作者の第3作目。今度は風変わりな天才数学者の住む三ツ星館が舞台。そして大がかり(に見える?)トリック。という風に全作とは対照的な出来。
クリスマスのパーティーに招かれた犀川助教授と彼に惚れてる女子学生の萌。風変わりな演出と複雑そうな人間関係の中、お約束通り殺人が起こる。消えたオリオン像と殺人事件との関係は? 密室のトリックは? そして萌に犯人の手がのびる...
まさにこれでもかと言うほどお約束な展開。でもそれだからこそ安心して面白く読める。お約束な展開で面白く読めるというのはなかなか難しいのだよ。
トリックは案外簡単ですぐに気が付く人も多いでしょう。それでも面白いです。全作(冷たい密室と博士たち)はちょっと消化不良だったけど、これはもんくなく面白かったっす。
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★★★★☆
○ 占星術殺人事件 島田荘司 講談社文庫
ついに手を出しました。新本格推理の旗手、島田荘司! つまり、作風は本格推理小説。エラリー・クイーンばりに読者への挑戦状まで付いている。しかも2回。
内容は、戦前、2・26事件があった頃の6人姉妹バラバラ殺人事件を文献・資料と当時の関係者とその知り合いから解決するという物。もちろん頭の斬れる変わり者の探偵と、常に予想が外れ悲哀を感じさせるワトスン役の二人が主人公だ。探偵の名は御手洗潔。ワトスンが石岡君。そして何より大事なのがトリック。さすがにここでは明かせませんが、そのすごさは保証付き。こんな手があったのね。なるほどねぇ。
ちなみにこれは作者のデビュー作らしい。噂どおりとっても面白く読めました。もちろんおススメです。
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★★★☆
○ 風の一二方位 アーシュラ・K・ル・グィン ハヤカワSF文庫
ゲド戦記シリーズで有名な作者のSF短編集。だいたい初期の10年間程に発表された17編がだいたい年代順に収録されている。さらに短編の最初にはその作品に対する作者のコメントが入っている。どういう意図で書いたのか、どういう背景なのか、その作品に対する作者の思い入れなど。なかなか興味深いっす。それに半分くらいの短編は作者の代表的な長編作品に深く関係した物となっている。そちらの方面から見てもなかなか面白い。もちろんゲド戦記に関係する物も2編入っている。ゲド戦記ファンは必見です。
17編、長い物や短い物いろいろだけど、さすがに全部が全部最高に面白いわけではなかったです。でも平均点は高水準。あまりぱっとしなかった物も好みの問題でしょう。この作者の作品らしく全般的にファンタジー的かつ道徳的内容です(こんな言い方すると誤解されそうだね...)。 まあ、面白いのには違いません。もう一度言うけどゲド戦記ファンは必読!
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★★★☆
○ 緋文字 エラリー・クイーン ハヤカワ・ミステリ文庫
本格推理小説。エラリー・クイーンでは中期の作品。友人夫婦の浮気について調査する事になるエラリーだが、夫婦のいざこざの中、悲劇が起こってしまい、予想も出来ない事実が明らかになる。
本格推理だが、国名シリーズやドルリーレーン4部作とは趣がかなり違う。何しろ殺人はなかなか起こらない。しかも途中までは浮気の調査という一見地味な作業が続く。しかし事件が起こると、今までの展開が嘘のように事実が急展開し何気なく読んでいた読者を驚かせる。 実際読んでみると、とてもテンポよく話が進み、とても読みやすい。浮気調査のまま終わるのかと思いきや、最後に大きな山場が用意されていて、エラリーの鮮やかな推理で締めくくられる。
クイーンの作品の中でも良くできていると思います。普通の推理小説とはひと味違うのも良いです。短めの作品ということもあってか、テンポの良さと、最後のどんでん返しが特に印象的でした。
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★★☆
○ 冷たい密室と博士たち 森博嗣 講談社文庫
本格推理小説。森博嗣の2作目、大学助教授を主人公にしたシリーズ。題名通り密室物。主人公は大学の助教授・犀川とワトスン役の女子学生・萌絵。他学部の低温研究室を見学しに行く2人、実験後のコンパ中に学生2人の姿が見えないことに気づくが、はたして死体で見つかったのだ。犯人は研究室のメンバーの中に?
どうも、冷静に考えると特徴のない作品って感じですね。一言で言えば密室トリック物ッていうだけだし。途中の盛り上がりもいまいちって感じです。前作「すべてがFになる」が強烈な印象だっただけにちょっと物足りない感じがしました。でも、推理小説として一級品であることは間違いないです面白いのも間違いなし。でも前作と比べると...ね。それと、このシリーズの特徴として理系な所があるんですが、この作品もそのものズバリ大学の工学部が舞台で同じく理系学生の俺としてはなかなか親近感があります。巻末の解説にもあるとおり理系人間が実によく描かれていると思います。たしかにこんな感じだもんね。
ちなみに出版されたのはこれが2作目ですが、作者本人としてはこの作品が執筆第1作目だそうです。それを聞いてちょっと納得。
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★★★☆
○ カンガルー・ノート 安部公房 新潮文庫
国際的作家、安部公房の最後の長編作品。主人公のすねにある日突然「カイワレ大根」が生えてくるところから話は始まります。驚き病院へ行くも、ベッドに寝かされたまま病院から追い出されてしまいます。そして自走ベッド!!とともに奇妙な旅が始まるのです。この男はもう死んでいるのか、夢を見ているのか、狂ってしまったのか? そして最後には....
なんとも奇妙な設定ですが、ユニークであるのは間違いないでしょう。もっと深く読むことが出来ればきっといろいろ解釈できるんでしょう。俺には訳がわからんですけど。でも訳が分からんなりに何となく読み進んでしまうのはやはり作者の力なんでしょうね。表現できなくても何か感じるところはありましたから。
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★★★★
○ ピアニシモ 辻仁成 集英社
辻仁成のデビュー作、らしい。第13回すばる文学賞受賞作。中学生の精神的成長を描いた作品。といってもそんなに清々しくはない。崩壊した家庭、いじめに満ちた学校、自分を認めることの出来ない自分... 読んでいてすごく重いけど、中学生の時って誰でもこういう気持ちを持っていると思う。へたすりゃ、大学くらいになっても、そういう人って多いかもね。今の時代。
それでも最後に大きく成長してくれるので救われた気持ちになった。この最後があるから、ちょっと、ホッとする作品になっていると思う。 そこの君も、自分のヒカル君と話してないかい?
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★★★☆
○ 六の宮の姫君 北村薫 創元推理文庫
<私>シリーズの4作目。<私>もいよいよ大学4年となり、卒論に取りかかる。その卒論のテーマ、芥川龍之介に関する謎を解き明かしていくという話。あいかわらず、ほのぼのと、というか、淡々と、<私>の日常が描かれます。そんな中に普通の出来事の奥深さや、謎に迫っていくおもしろさがいっぱいつまっています。 特にその課程での<私>の気持ちの動きがやはり、いい。共感してしまいました。
「六の宮の姫君」は芥川の作品名でそれの書かれた意図についての謎を探っていくのですが、文中にとにかくたくさんの文学作品、及びその作家名、作品中の言葉などが出てきます。よっぽど文学通の人でないとすべては知らないでしょう。 かく言う私もほとんどすべて知りませんでした。だってみんな大正とかの作家なもので... でも、それでも興味深く読むことが出来ました。だんだん、いわゆる昔の文学作品も面白いなぁと思ったりして。 やはり娯楽作品には娯楽作品なりの、純文学には純文学なりのおもしろさがあるのでしょうね。
それにしてもこうして不思議なことを調べ解き明かしていくというのは面白いものです。研究とはこうでなくっちゃと、卒論とは重要なものだと、大学4年生の俺は思うのでした。
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★★★★★
○ 奪取 上・下 真保裕一 講談社文庫
ホワイトアウトでブレイクした作家。この作品も日本推理作家協会賞と山本周五郎賞をダブル受賞した。 上下巻という大作ながら、たったの2日間で読んでしまったという、久しぶりにのめり込める作品でした。 借金を返すために偽札を作って以来その魅力にとりつかれ究極の偽札作りを目指す男の物語。
物語は3部にわかれ、だんだんと偽札作りもステップアップしていくのですが、その中でやくざや銀行との抗争などがあり、仲間を失い、自分を失い、それでも完璧な偽札を目指し突き進みます。 はたして完璧な偽札は出来るのか? やくざと銀行に復讐をとげられるのか? 大金を手に入れられるのか? はっきり言って、面白いです。 長い話にもかかわらず、強弱、上下が上手くつけられ飽きません。登場人物も魅力的です。 それと、今までのこの著者の作品と違うのが話が良い意味で重すぎず軽いということ。 テレビで言えば、コメディータッチのシリアスサスペンスを見ているようです。
私の勝手な予想ですけど、これはきっと映画化もしくはテレビ化されると思いますね。ホワイトアウトも映画化決定だけど、私はこの作品の方が好きです。痛快!の一言。文句無くおすすめです!!
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★★★
○ 新・電子立国 相田洋 NHK出版
NHKスペシャルで数年前に放送していたシリーズの単行本化です。全6巻。前シリーズは半導体の話でしたが、今回はソフトウェアの話。本文の半分以上は実際に当時の技術者や経営者とのインタビューになっています。しゃべり言葉なので非常に読みやすく、臨場感があります。このへんは聞き手(作者)の腕もあるんでしょうね。 それにソフト産業は現在進行形だけ会って、ビル・ゲイツやジャストシステムなど今も活躍している人や企業がでてくるのがいいです。 なかなか面白いです。
パソコン等が好きな人、情報産業に興味のある人、プログラムの好きな人、情報系でベンチャーを志す人などに、特におすすめです。
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★☆
○ 物理学の世紀 佐藤文隆 集英社新書
去年の暮れ、集英社新書が創刊されたがその第一回配本の中の1冊。新書らしく広く一般の人が読めるような内容の教養書がそろっています。これは題名の通り、今世紀の物理学の発展と現在の状況、これからの展望を簡単にまとめたものです。と言っても、難しい用語が頻出でいちいち理解しようとしていたらとても読んでいられませんでした。わかった気になってすーっと読み進むのが良いです。 それでも、いまいち読み終えてすっきりしませんでした。
はっきり言って、一般の人にはお勧めできません。俺のように知ったかの物理かぶれの人や、ほんとに物理を勉強している人、しようと思う人、には良いでしょう。
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★★☆
○ 部分と全体 −私の生涯の偉大な出会いと対話 ウェルナー・ハイゼンベルク みすず書房
量子力学を作ったドイツのノーベル賞物理学者、ハイゼンベルクの自伝的ノンフィクションです。自伝というか、題名にもあるとおりいろいろな人々との対話を中心に書かれています。若い頃から最近まで年代ごとに細かく章が分かれており、各年代で著者にとって重要な対話が書かれています。
初めの頃などはまだ二十歳にも満たないというのに、その会話はとても抽象的、哲学的で、さらにその学問に対する探求心には驚かされました。やはり天才というのは少し違うのだなと、妙に納得したりして。 登場する人物もアインシュタインだとか、プランクだとか有名な物理学者ばかりですごいの一言です。物理の解説だとか公式だとかはまったく出てこないので別に気にしなくていいです。量子力学等が出来るまでの学者の考えだとか、当時の時代背景などがわかります。
まあ、堅い本といえば堅い本かもしれないけど、あまりそうは感じませんでした。ちょっと哲学に関する話は訳が分からなかったですけど。科学史的なおもしろさもあるし、天才学者の人間的な面も書かれるので、興味深く読むことが出来ました。 物理が好きな人、著者に興味のある人、科学史が好きな人、等は読んでみると良いでしょう。(なかなかいないとは思うけど...) それと、訳者が物理学者なのでか訳がいまいちかなと思いました。
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★★★★
○ 帰還 −ゲド戦記最後の書 アーシュラ・K・ル=グウィン 岩波書店
児童向けファンタジー小説「ゲド戦記」シリーズの4作目にして完結編。前編「最果ての島へ」で王子レバンネンを導き、闇の世界から自分の’力’と引き替えに世界を救った魔法使い「ゲド」の物語。前々編「壊れた腕輪」で救った巫女のテナー(アルハ)が今回の主人公です。あれからテナーはゲドのふるさとゴント島で普通の百姓と結婚し暮らしていました。夫が亡くなりまた1人となったとき、大やけどをした孤児を引き取ります。さらにゲドの師である魔法使いオジオンも亡くなり、オジオンの家で暮らし始めます。そして、傷つき、力を失い魔法使いではなくなったゲドが竜のカレシンに乗りゴント島に帰ってきます。 男より劣る’女’として迫害されるテナーと大火傷を負い人々からおそれられる孤児テヌー、そして力を失ったゲドはこれからどうなるのか?....
あらすじはこんな感じ。前編までと違って力を失ったゲドの活躍はまったくありません。それよりも年を取ったテナーの力強さが目立ちます。物語もテナーを中心に進み、ゲド戦記と言うよりはテナーの物語、という感じ。これといった大冒険もなく、日常?とテナーの感情が淡々と語られるだけだけど、それでもいろいろ考えさせられながら読んでしまいます。
一応子供向けの本ですが十分すぎるほど大人が読んでもおもしいです。これだけ読むのはちょっと辛いので、第一巻から順に読むことをおすすめします。
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★★★★☆
○ すべてがFになる 森博嗣 講談社文庫
大学の工学部の助教授が書いたミステリ、というのがあるのは前から知っていて、評判がいいのも知っていて、今回初めて読みました。これが作家のとしてデビュー作です。
15年前に殺人を犯した天才プログラマーが閉じこめられた研究所で殺人が起こる。偶然居合わせた大学助教授の犀川と学生の西之園萌絵が探偵役。しかも研究所は無人島にあり、研究所には所員以外は入れず、殺された天才がいた部屋も密室。研究所はすべてがコンピュータで管理・記録され、他人との接触を好まない一癖ある研究者ばかり。犯人はこの所内にいるはずなのだが...
と、これだけではとうていこの作品の雰囲気は訳が分からないので、読んでもらうしかありません。とにかく派手な感じですね、登場人物もみな個性的だし、舞台も突飛で、事件も物々しい密室物。展開も早くて飽きません。 トリックもなかなか独創的で解決編では誰もがあっと驚くでしょう。こんな密室トリック思いつくわけないです。 判った人がいたら教えてもらいたいね。 とにかく普通にすごく面白いです。よく推理物ってマニア受けするおもしろさってあるんですが、これは誰でも面白いと思えるという意味です。読んでみるといかにも理系っぽい感じですが、特に問題ありません、久しぶりに、時間を忘れ風呂にはいるのを忘れて読んじゃいました。 それにしてもこんな天才。ホントにいたら怖いですね。
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★★★
○ 災厄の町 エラリー・クイーン ハヤカワミステリ文庫
久しぶりに僕の好きなエラリー・クイーンの紹介です。クイーンは国名シリーズが有名ですが、その後空想の町「ライツヴィル」を舞台にした作品群がありますが、これが初めてのライツヴィル物となります。
田舎町のライツヴィルに推理小説を書きにエラリーが訪れます。ひょんな事から町で「災厄の家」と呼ばれる貸し家に泊まることになります、時は何事もなく平穏に過ぎていくのですが... ある日貸し家の持ち主の娘ノーラの失踪していた婚約者が突然3年ぶりに姿を現し2人は結婚します。幸せな結婚生活が続くと思われたのですが、やがて毒殺事件が起きてしまいます。はたしてエラリーは事件を解決できるのか?
国名シリーズ等と違っていきなり事件が起きることはありません。それから読者への挑戦状もありません。それでも、しっかり、本格推理です。誰が犯人なのか、解決する鍵はしっかりと提示されていますので読んでみて犯人を当ててみるのも面白いでしょう。僕は犯人までは分かりませんでしたが、いくつかの伏線や最後に明らかになる謎に途中で気づくことが出来ました。
殺人は物語の3分のを過ぎるあたりまで起こりません。それまで、特に前半は読んでいてあまり面白くないかもしれませんが、進むにつれどんどん面白くなっていくので我慢してよんでみてください。
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★★★
○ 箱男 安部公房 新潮文庫
作者の阿部公房は「砂の女」などで有名ですね。国際的にも評価が高かった作家です。数年前に亡くなりました。大江健三郎がノーベル賞を取ったときに少し話題に出たので覚えている人もいるでしょう。
で、「箱男」です。なんじゃこりゃと思うかもしれないですが、段ボール箱を頭からすっぽりかぶった男の話です。 乞食に近いですが、少し違います。箱により世間から自分を隔絶し、それ故、何も気にせず「見る」事が出来る世界。そんな世界に入り込んだ男の話です。 箱の製作法から始まり、他の箱男の場合、生活の仕方、などが淡々とつづられますが、だんだんとどれが本当でどれが空想なのか。 訳が分からなくなってきます。 結局誰が箱男で、何が空想なのか、僕にははっきりわからずに終わってしまいました。まさに倒錯の世界。
なかなかに文学的で、それでいて箱男という奇妙な物が滑稽です。まあ、「面白い」って作品ではないですが、つまらなくはないし、文学作品にありがちななぜか引き込まれると言うところもあるので、よい時間つぶしにはなりました。
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★★★★
○ 秋の花 北村薫 創元推理文庫
女子大生の「私」シリーズ3作目。初めての長編。しかも、初めて人が死にます。殺人なのか、事故なのか? 「私」の通っていた高校で屋上から人が転落死するという事件があります。その娘は「私」の小さい頃からの知りあい...。双子のように仲の良かった友人はそれ以来抜け殻のようになってしまっています。刻々と日常生活が過ぎてゆく中で、状況が少しずつ明らかになり、よりなぞは深まっていきます。最後には探偵役の落語家にうち明け、解決を見るのですが、やはりこのシリーズは謎解きと言うよりも、登場する人間たちの日常生活の中で誰にでも起こる些細なことがこんな意味を持って居るんだという。そんなメッセージがあるようで、そこが一番いいところです。(だいぶ無理した解説だね(^^; )
このシリーズ初の長編と言うことで、いろいろな出来事が盛り込まれていますが、ややまのびする感もなきにしもあらずかな? それでも、最後では今までになく緊迫感もあり、人が死ぬだけあって、今までよりは推理小説ぽいかなぁって感じですね。 この作品では「私」も大学3年になり、次には4年でシリーズ完結でしょう。早く次が見たいです。
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★★★
○ 変身 カフカ 新潮文庫
有名な文学作品ですね。今回初めて読みました。文庫の最後に書いてる紹介文の一部に「読む者に激しい衝撃を与える」とありますが、全然そんなことなかったです。衝撃を受けるのはバリバリの文学者、評論家、などの人たちだけでしょう。 主人公がある日突然、朝起きてみるとでっかい虫になっているのです。ムカデみたいなやつです。 普通ならびっくりするところですが、それはそれと受け止めて淡々と冷静に話が進むのです。その辺が僕はとても面白いと思いました。 もっも、主人公の家族は動揺します。当たり前ですね。でも、一応家族としておびえながらも部屋に閉じこめて一緒に暮らすのです。 でもやがて親との喧嘩? がもとの怪我で弱っていくのですが...
この異常な話にはそれなりに深い意味がありそうですけど、やっぱり何も考えずに読むのがいいです。そうするとなかなか面白いです。とくにやけに冷静な主人公の「虫」君が笑えます。 短い作品ですので名前は知ってるけどまだ読んだことないという人、かなりいると思いますが、この機会に読んでみてはいかがですか?
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★★★☆
○ かもめのジョナサン リチャード・バック 新潮文庫
これは有名です。内容をしならなくても名前くらいは聞いたことがあるでしょう。僕もそうだったんで、読んでみました。 カモメのジョナサン・リヴィングストンは餌をとることよりも飛ぶことが好きという群の中での変わり者です、いつも群から離れて飛び方の練習をしています。超低空飛行とか超低速飛行とか宙返り、横転、そして超高速飛行。 両親に止められても辞めません。 やがてついに時速342キロという記録をうち立てます!! ところがカモメの群からはそんなジョナサンは理解されずに追放されてしまいます。
ここまでが、3章立ての第1章です。けなげに飛行法を追求するジョナサンがかわいく、面白いです。その後ジョナサンは別の場所へと移りより高度な飛行法を覚え、やがて群に帰って来るのですが、この辺から最後まではちょっと説教臭かったです。それでもなかなか楽しい物語ではあります。
本には大量のカモメの写真が挿入されていて、物語も短いので(写真を除いたら70ページほど)ちょっと読むにはちょうど良いです。小学校高学年程度のお子さんにもおすすめです。
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★★★★☆
○ コインロッカー・ベイビーズ(上)(下) 村上龍 講談社文庫
名前の通り、コインロッカーで生まれた子供2人の話です。古い僕から見れば非常に前衛的な作品。(前衛的って??)コインロッカーに捨てられた事による自閉的で攻撃的で鬱屈した不満、疑問、敵意、欲望・・・・がうずまき、もう何とも言えず混沌としてきます。果たして彼らはどこへ行くのか?彼らの願いとは?彼らに安住の時は訪れるのか?
読者(私)までが登場人物たちのように、「自分って? 俺はこの空間に閉じこめられているんだ、ここから出せ!! みんなぶっ殺してやる! うぎゃーー」 的気分になっちまいました(^^; という風に自分の気分まで入り込むわけですから、面白いっす、一気に読んでしまいました。何しろ、物語の初めから終わりまで、主人公から脇役まで、そして日本の大都市も、前記のような雰囲気なのでもうすごいです。ある意味ここまで極端な描写にすることでより作者の意図がはっきりとしている、といえなくもないですね。まあ僕は別に話を分析しようとかいうつもりはありませんが、そういうことが好きな人には格好の題材でしょう。(これは文庫の解説を見てもらえばわかる)。 難しいことを考えなくても読み始めるとぐっっと引き込まれるので気にしなくていいですけどね。 村上龍はやはり面白いです。おすすめ。
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★★★★
○ 双頭の悪魔 有栖川有栖 創元推理文庫
文庫で680ページに及ぶ大作。もちろん本格推理。探偵役、江神次郎と英都大学推理小説研究会の面々が活躍するシリーズの3作目。読者への挑戦(「犯人を当ててみな」ってやつ)が三度もあります。僕は1つ目だけ当てられました。
推理研のヒロイン「マリア」を連れ戻しに四国の山奥で川を隔てた二つの小さな村に行くことになるのですが、唯一の橋が大雨で流されひょんな事から両側に孤立してしまいます、両方の村で殺人が起こり、それぞれの側での推理がだいたい交互に進んでいきます。もちろん最後は探偵役が見事両方の事件を関係付けて解明します。 舞台は山奥の孤立した村、しかも芸術家しかおらず、誰も入れない、という異常な状況。なぜか殺人現場に必ずまかれる香水...まさに「本格推理!!」という出来映えです。
殺人が起こる前はマリアの心の葛藤や推理研の面々による連れ戻し作戦などでしっかり読ませ、中盤以降はしっかり推理で引き込まれます。はっきり言って面白いです。少し難を言えばちょっと長すぎて読むのが大変なのと、両方の村で交互に展開する話で頭がこんがらがってくるくらいですね。この作品に限らず、このシリーズはお薦めですよ。ああ、はやく次の作品でないかなぁ。
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★★★☆
○ エラリー・クイーンの新冒険 エラリー・クイーン 創元推理文庫
エラリー・クイーンの2冊目の短編集です。中編の「神の灯」以下、9編の短編が収められています。中でも中編の「神の灯」が一番面白かったですね。家が丸ごと消えてしまうというトリックなんですが、それがそれが苦しいところなくきれいに行われるのがすごいです。他では最後の4編はシリーズ的な物で、すべてスポーツ(野球、競馬、ボクシング、アメフト)をあつかっていてなかなか良く趣向を凝らしてあります。
全体的に推理の好きな人は楽しめる内容だと思うんですが、どうにも文章が古くさくて少し読みづらい面があり、それほど本を読まない人にはつらいんじゃないでしょうか。その辺は訳者がもう少し読みやすく訳してくれてもいいんじゃないかな? 原作に忠実なのも必要だけど、それで読者が減っちゃうのもちょっと... などど珍しく出版学的なことを考えてしまいました。
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★★★★
○ 暗闇のスキャナー フィリップ・K・ディック 創元SF文庫
久しぶりのSFです。フィリップ・K・ディックは映画「ブレードランナー」の原作となった「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(ハヤカワ文庫SF刊)の作者として有名です。傾向としてはなかなかディープな世界で主人公達の思考が深く描かれます(2作しか読んでないのに、こんな事言っていいのか?)。この作品も同様、ヤク(ドラッグ、麻薬)売買を取り締まるためにヤク中(麻薬中毒者)の中に潜り込んでいる覆面捜査官(主人公)が徐々に麻薬に犯されていく様がリアルに描写されています。
何しろ、主人公は上司から自分自身を見張るよう言われ、徐々に捜査官としての自分と、ヤク中の自分と区別がつかなくなり、やがて全く廃人同様となってしまうのです。しかも、捜査のために麻薬をやっていたのにも関わらず、上司からは「自分のせい」で終わり。もうやりきれないですね、さらに最後には中毒になることさえも上から操作されていたのが明らかになります。ふぅ。最悪ですね。 だんだん狂ってくる主人公の思考がそのまま描かれるので、どっぷりはまって読むと自分の思考まで狂ってくるような気がしました。やっぱり麻薬は駄目ですね(当たり前...)。
たぶんほとんどの人がこの作品を知らないでしょうが(自分もそう)、解説などにはディックの傑作と書かれていて、読んだら実際「アンドロイド...」よりも面白かったです。
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★★
○ ペルシャ猫の謎 有栖川有栖 講談社ノベルス
有栖川有栖の国名シリーズ第5弾。全7編を収録した短編集。今回はいままでになくバリエーションあふれる作品があつまっています。正統派推理小説、推理でない作品、2人のコンビが全く出てこない作品、語り手が有栖川有栖でない作品、こんなんあり!?というトリックの作品、事件とは直接関係ない謎を解く作品、そして最後の7編目は推理ではなく、探偵「火村英生」にまつわるちょっとしたエピソードで終わっています。内容的には傑作とは言えないものの、いろいろと楽しめる内容になっていると思います。
でも、ちょっと俺的に納得いかない作品が多かったかな? 表題作の謎解きとか、「赤い帽子」の結末とか。やっぱり、有栖川有栖は短編よりも長編の方が面白いと思うのは俺だけでしょうか?
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★★☆
○ ロシア紅茶の謎 有栖川有栖 講談社ノベルス
有栖川有栖の国名シリーズ第1弾。本格推理の好きな人なら知っていると思うがエラリークイーンの国名シリーズをまねた物です。ただこちらは短編集で表題作を含めて6編が収録されています。話し手に売れない推理作家の有栖川有栖、探偵役にその友人で犯罪学者の大学助教授、火村英生が登場します。2人が数々の事件を解決して行くわけです。
全編、本格推理になっています。特に最後の「八角形の罠」などは”読者への挑戦状”がついているくらいです。もちろんこれくらいの謎は簡単に...解けませんでした(^^; 。 だいたい、どの短編も同じくらいの出来映えだと思います。ただたまにこれは苦しいなと思うトリックもありますが。そこは推理の好きな人なら、許せる範囲です。推理小説の好きな人ならまあ読んで損はないでしょう。でもエラリーの国名シリーズとはとても比べられませんので、そこはご注意を。
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★★★★
○ 夜の蝉(虫單) 北村薫 創元推理文庫 (*)
はい、北村薫の2作目です。今回は中編(短編?)が3編、「朧夜の底」「6月の花嫁」「夜の蝉」です。前作同様、推理小説でありながら刑事事件は起こらず、主人公の女子大生(らしくないけど)の日常の生活が描かれます。で、もちろんこの作品の特徴である、「事件」だけでなくそこに登場する人たちの「心の動き?人間模様?」が謎解き以上に描かれます。
僕には推理小説ではなく、推理っぽい普通の小説(誤解しないでね、「平凡な」って意味じゃないよ)として読めます。そこがこの著者の作品のいいところで読み終えた後、何かホッとしたり、やりきれなかったり、そんな気持ちにさせられるのです。 簡単に言えば面白いから読んでみぃ。となるわけです。 3作品の中ではやっぱり表題作の「夜の蝉」が面白かった。特に兄弟、姉妹のいる人は共感するところも多いんじゃないかな?
それにしても文中に多くの文学作品の名前が出てくるんだけど、ほっとんど知らん!!
ま、それでも楽しめますのでご安心を。
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(*)注
北村薫の「夜の蝉」の蝉(せみ)の漢字ですがこの作品では虫に單と書いて「セミ」と読む漢字を使っています。ATOKで変換しても出てこないのでこのHP上では仕方なく「蝉」と表記しました。
★★★★★
○ 空飛ぶ馬 北村薫 創元推理文庫
さて久々の紹介です。北村薫の空飛ぶ馬。今まで北村薫と高村薫の区別がつかなかったのは俺だけでしょうか?(^^; 今回初めて北村薫の作品を読んで、やっと違いに気づきました。北村薫が男性で高村薫が女性です。
とまあ、そんなことはどうでもいいとして。これは作者のデビュー作で推理小説の短編集です。女子大生の「私」が事件にあって、噺家がずばっと解決するという、この部分はよくあるパターン。ただこの小説のちょっと違うところは、殺人、強盗、その他いわゆる犯罪は起こらないで、普段の生活で誰でも体験するような不思議な事件を解決していくところなのです。この事件がまたいかにもそこら辺に転がっていそうな普通な出来事で、涙あり、笑い有り、憤りありの話が展開されるのです。これだけだとどうって事無いんだけど、主人公の女子大生がとても魅力的に描かれているんですね。魅力的と言っても美人とかって言う事じゃなくて、人間的に魅力あると言うことです。他の登場人物(主人公の学友とか)も個性的です。この辺が事件だけを見ると大したこと無いのに、実はとても魅力的な話になっていて読み終わるとなんだかホッとしてしまう原因だと思います。
バリバリの推理小説はちょっと苦手と言う人や、普通の小説(いわゆるドラマ)も好きだけど推理にも興味があると言う人に特におすすめです。
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★★★★
○ 孤島パズル 有栖川有栖 創元推理文庫
久々に、新本格ものです。有栖川有栖のデビュー2作目。ちなみに一作目は「月光ゲーム」です、すでに持っていますので機会があったら紹介文をアップします。
夏休み、孤島での休暇中に殺人事件発生。しかも密室、外部との連絡方法は無し。さらに連続して殺人が起こる。とまあ、推理小説にもってこいの状況なわけです(というか”いかにも”って感じだね)。ただし’そして誰もいなくなった’ではないのでご安心を。密室だの、孤島だのといういかにもおいしい素材を簡単に使わない内容には好感を持ちました。事件の内容はいたって普通です。でも、読ませます。あ、そうそう、しかもこの作品には「読者への挑戦状」があります。犯人を特定するためのデータはすべて出そろった、さあ読者のみなさん解けるかな? というものです。これはエラリー・クイーンの作品の特徴で、この作者のエラリー好きと本格推理小説として自信があることが分かります。
実に素直な本格ものでした。そうか、確かにそうじゃん。と、納得しました。それに、この本の解説にも書いてありますけど、青春グラフティーという趣もあります。自分が主人公と同じ大学生なだけによけいそれを感じました。決してコテコテ(トリックとかね)になりすぎず、それでいて本格推理のつぼはしっかり押さえている・・・そんな作品ですね。以前紹介した同じ作者のマジックミラーよりも面白いです。おすすめです。
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★★☆
○ 鉄塔 武蔵野線 銀林みのる 新潮文庫
第六回日本ファンタジーノベル大賞受賞作です。この賞知ってますか?ちなみに第一回の受賞作は「後宮小説」です、「雲のように風のように」(あっているか自信ない)のタイトルでアニメにもなりました。この「鉄塔 武蔵野線」も同名で映画化されました。
何だこのタイトルは?と思うかもしれませんね。いわゆる鉄塔ありますよね、高圧電線の。それらは皆名前が付いていて、武蔵野線というのがあるんです。またそれらの鉄塔には番号が付いています。その武蔵野線を鉄塔好き(!?)の少年が鉄塔沿いに1号鉄塔を目指して行くという物語です。はたして幾多の困難を乗り越え少年は1号鉄塔にたどり着けるのか?
何じゃそりゃ? と思うでしょう。でも小さい頃ってそう言うどうでも良いこととか、馬鹿げたことに夢中になった事ってありますよね。川を源流まで遡るとか、消防車を追いかけるとか....。 僕なんかこの少年にめちゃくちゃ共感を覚えちゃいましたよ。っていうよりうらやましいね。自分はここまで徹底して行動出来なかったし。今でもこういうことやってみたいと思う。
それとこの本の面白いところとして、写真が豊富に載っている事。実際の武蔵野線鉄塔の写真が全部載ってます。全部で90本。それに鉄塔の知識も付きますよ。
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★★★★☆
○ 芽むしり仔撃ち 大江健三郎 新潮文庫
ご存じ、ノーベル賞作家です。比較的初期の長編作品。
舞台は第二次世界大戦の末期頃、感化院(少年院のような物らしい?)の少年たちの疎開先の僻村での物語です。疎開先について早々、疫病により村民は皆逃げてしまい、少年たちは村に閉じこめられます。解放されて自由に振る舞う姿や疫病による恐怖が描かれ、そしてそこに村人たちが帰ってきます。自由は奪われ、自分たちの無力さを味わうのです。
......なんか、違うな(^^;
でも、大まかな感じはこんな所です。上手く言えないけど、上手く言おうとしなければ面白いですし、難しいことなんかありません。一言でいえば「ふぅー。面白かった」。ただ、暗い話が嫌いな人にはちょっとつらいかな? 題名がなんだこりゃ?ですが、読めば分かります。芽がむしられ、仔が撃たれるのです。主人公が少年だけに、大人たちの不条理さを感じますね。
小説の雰囲気としては、中学や高校の国語の教科書に載っている物語みたいですね。その辺が「難しい」と思われるのかな? 何にも考えないで読めば結構面白いですよ。ページ数も少ないので読みやすいです。
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★★★★★
○ 死者の奢り・飼育 大江健三郎 新潮文庫
ご存じ、ノーベル賞作家です。ノーベル賞を取ったときに読みました(それまで知りませんでした)。TVで初期のこの作品はわりあい読みやすい方だと言っていたので...。
ところが読んでみたら、全然そんなことはなかったです。読みづらいことなんかありません、とても面白かったです。やっぱり賞を取る人は違いますね、確かに難しそうな表現が結構出てくるし、抽象的な感じで一見難しそうなんだけど、実際読むとスムーズに頭の中に入ってきます。
この本は短編集で、6編の短編が収められています。中でも題名になっている2編が特に面白かったですね。死者の奢りは解剖用死体の処理バイトをする青年が主人公。飼育はある村で捕らわれた黒人兵と少年との交流が描かれますが...。
どの短編も、主人公の気持ち考えがよく書かれています。読み終わった後は、なんかやりきれない思いと言うか、現実の非情さというか、うーん、そんな感じがしますね。
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★★★★☆
○ ホワイトアウト 真保裕一 新潮文庫
このコーナーでも紹介している「震源」などの通称”小役人シリーズ”である程度知られていた著者が一気にブレイクした作品。吉川英治文学新人賞受賞。冒険小説。
舞台は真冬、厳寒の山奥にある巨大ダムが武装グループに占拠された!! 職員が人質に取られダムは彼らの管理下にある中、地元の警察に50億円が要求される。一方、武装グループの手を逃れた一人の水力発電所職員が抵抗を開始する...
てなぐあいで、まあありふれた感じで相変わらず主人公は超人的ですが、色々サブストーリーが盛り込まれ(ここでは言えません、読んでください)これだけ迫真に迫る描写をされると、否が応でも面白くなるってもんですよね。ただ最近いまいち気分が乗っていなくて、面白いとは思ったけど「読み終わってみて気づいたら徹夜してた」みたいな感じでは読めませんでした。たぶんもっと面白いと思うので、少ししたらまた読み返したいと思います。
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★★★☆
○ ドルリー・レーン最後の事件 エラリー・クイーン ハヤカワミステリ文庫
エラリー・クイーンがバーナビー・ロス名義で書いたドルリー・レーン4部作の4冊目。この4部作のうちXの悲劇、Yの悲劇は特に有名。
それほど期待しないで読んだんだけど、途中までは確かにそれほどでもないかな?と思って読んでいたら、最後の最後でやられました。こういう結末はあまりクイーンではなかったので結構びっくりしました。傑作といえばまあそう言えないこともないけど、クイーンの作品としてはもう一歩という感じ。でもクイーンがいまいち好きではないという人にはいいかも。それでも充分面白いので心配なく。XYZを読んでいる人はこれでドルリー・レーンものが完結するので読むべきです。そうでない人も面白く読めますよ。
警察を退職し探偵事務所を開いたサム警視のもとへ奇妙な髭の訪問者があり貴重なものが入っているという封筒を預けていきます。一方で元警官の失踪事件がありそれに関連していると思われる、博物館でシェイクスピアの稀覯書の盗難事件があり、ドルリー・レーンが捜査に乗り出しますが...。
ちなみに殺人はなかなか起こりません、でも前半は盗難本の話でけっこう読めます。とにかく、最後の意外な解決には驚かされるでしょう。
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★★★★
○ メタルカラーの時代3,2,1 山根一眞 小学館
このコーナーで初のジャンル、ノンフィクションです。メタルカラーとは作者の造語で、技術者のこと。いままでブルーカラー(肉体労働者)、ホワイトカラー(事務労働者)という言葉はあったのですが、それに対して技術開発者をメタルカラーと名付けたのです。この本は作者が多くのメタルカラーたちとの対談したときの証言集です。単行本で3巻目が発売となりさっそく買って読みました。内容は3冊とも同じです。
とにかく、技術者たちのパワーには圧倒されました。文章からもインタビューされている技術者たちの生き生きとした姿が想像できます。開発秘話や驚くほどすごい技術が面白く語られます。明石海峡大橋やHUロケットなどの大きなプロジェクトも多くのいろいろな技術分野が関係してそれらすべてが融合して初めて成功したものだということがわかります。HUロケットの先端(とがっているところ)や、明石海峡大橋のコンクリート1つ取ってみても、大変な技術開発があったことなどはほとんどの人が知らないでしょう。
色々技術的なことも簡単にですが説明されるのでそういうことが好きな人はたまらないでしょう。経済的にもやはり日本は技術力あっての日本経済だなと思わされるでしょう。
とにかく、面白いです。特に技術系の人、理科系の学生などにお勧めです。単行本の1巻と2巻目は文庫にもなっているので読んでみてください。
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★★★★
○ さいはての島へ−ゲド戦記V アーシュラ・K・ル=グウィン 岩波書店
ゲド戦記の第3巻です。エレス・アクベの腕環を奪い返してから、かなり時間がたち、ゲドは賢人の島ローク島で魔法使いのトップである大賢人として学院にいます。エレス・アクベの腕環が戻り、平和が訪れたと思われていたところに、世界各地から魔法が使えなくなって、物の名前を忘れてしまった、言葉が分からないという報告が相次ぎます。ロークには、800年の昔に全世界を治めていたモレド王の血を引くエンラッド国の王子アレンが賢人の判断を聞きに来ていました。ゲドはアレンとともにこの災いのもとを見つけ、鎮めるためにアレンとともに旅に出ます。
とまあ、こういう流れで物語は展開します。果たしてゲドたちは平和を取り戻すことが出来るのか? まあ、普通こういう本ではハッピーエンドになるのが普通ですが..(^^; でも、相変わらず読ませてくれます。この年になるとさすがに説教臭いと思う事もありますけど、まあそれが良いところでもありますよね。大人になってもたまにはこういう本を読んで初心を思いだなくてはね、と思う今日この頃です。
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★★★★
○ こわれた腕環−ゲド戦記U アーシュラ・K・ル=グウィン 岩波書店
ゲド戦記の第2巻です。影との戦いを終えてから数年後の事。ゲドはアチュアンの墓所にエレス・アクベの腕環を奪い返しにやってきます。墓所では名なき者に仕える巫女アルハと出会い、捕らわれの身となります。しかしやがてアルハとともに墓所を脱出します。
この巻では、ゲド以上に主人公と言ってもいいくらいにアルハについて事細かに描かれます。何も知らない子供のうちにつれてこられ巫女になり、自分という者を忘れてしまったアルハがゲドにより自分を取り戻していくのです。
うーん、泣かせるねぇ。なんて言わずに読んでみてください。1巻目を読んで面白いと思った人はぜひ読むべきです。このあと3巻、最終巻とあるので、全部読みましょう。面白いので頑張らなくても自然に読めますよ。(と思うのは僕だけだったりして...)
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★★★★★
○ 影との戦い−ゲド戦記T アーシュラ・K・ル=グウィン 岩波書店
ゲド戦記3部作の第1作目です。ジャンルは空想物語です。いわゆるお子さま向けファンタジー童話。
と聞いてあなどってはいけません。僕の読んだところ、子供には「ちょっと難しいかな?」と思うくらい。つまり、つまらん小説よりよっぽど面白いって事です。
主人公ゲドの子供の頃から偉大な魔法使いとなるまでの物語。この第T部「影との戦い」では何も知らない子供の頃から、学院で魔法使いの資格を得て、自分が招いてしまった自分の「影」との戦いを終えるまでが描かれます。
生まれた島で貧しい生活をしている幼いゲドはそのうちまわりから魔法使いとしての才能を見いだされ、大魔法使いオジオンのもとで修行し名前を与えられます。しかしその修行中に誤って「影」を呼び出してしまいます。その後魔法使いの学院に入り、様々な魔法を覚え正式な魔法使いとなりますが、ここで愚かな行動から影を完全に解き放ち自らも大怪我を負います。そして学院を卒業してすぐ、「影」との戦いが始まるのです。
「影」と戦ううちにゲドは魔法使いとしても、また人間としても大きく成長していきます。最後に「影」との決着が付くわけですが、そこで「影」の本当の正体が明らかになります。
とにかく、すべてが想像の世界ですから(地球から国から動物から魔法まで)その世界に入り込んだようにして読めるんですから、これは文句なく面白いでしょう。
お子さんのいる人は子供と一緒に読んでみてください(ただ中学生程度でないと難しいかも)。
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★★★★
○ われはロボット アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫SF
これはもう超有名なSF作品。題名は知らなくとも、「ロボット工学三原則」は聞いた事があるでしょう。
「ロボット工学三原則」とは、
第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない、またその危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第2条 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし与えられた命令が第1条に反する場合はこの限りではない。
第3条 ロボットは第1条、第2条に反することのない限り、自己を守らなければいけない。
というもの。聞いたことあるでしょう?
このロボット工学三原則を使って、陽電子頭脳ロボット開発史が語られる短編集です。この三原則を使ってさまざまな開発段階のロボットの事件が解決されていきます。この解決されていく課程は三原則をうまく使った謎解きのようなもので、なかなか面白いです。さすがにSF推理なども書いているだけのことはあります。SFが特別好きでない人も楽しめるはずです。
登場するロボットたちは実に人間味あふれ、ロボットらしからぬロボットたちです。人間のように考え、悩み、楽しみます。こんなロボットたちが現実に近い将来登場するのかどうか? なかなか難しいところですが、実現すれば楽しいでしょうね。
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★★★★☆
○ 深夜特急 沢木耕太郎 新潮文庫
ジャンル的にはノンフィクションなのかな? 作者が旅行したときの事を書いた紀行文です。
とはいっても単に観光旅行で面白かった所を紹介する、などというものでは全くないです。1年以上かけて香港からロンドンまで貧乏旅行をした記録です。インドのデリーからロンドンまではなぜか乗り合いバスしか使わないという、訳の分からない、それでいてなんとなく、納得してしまう。そんな主人公(作者)の考えが丹念に書かれています。
文庫で六冊、単行本なら3冊とけっこう長いです。だいたいインドまでが前半で、インド以降が後半。やはりアジアの部分はとてもエネルギッシュで、ヨーロッパにはいるとだんだん感傷的になるというか、長旅の人が感じるであろういろいろな想いが描かれます。
現地の人たちとの出会いや、思いがけない出来事など面白いエピソードがいっぱいです。また、これからこの様な貧乏旅行をしたいと考えている人にはよいガイドブックにもなりそうです。こんな旅に僕もあこがれるけど、とてもそんな実行力はないよなぁ。
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★★★★
○ 五分後の世界 村上龍 幻冬舎
けっこう話題になった作品。ヒュウガウイルスという続編も出てます。もっとも作者の作品はいつでも話題になるけどね。
題名の通り、この世より五分進んだ別の世界の話。日本は太平洋戦争で降伏せず現在は占領状態、地下に潜りゲリラ戦を続けている。主人公はなぜか五分後世界に入り込み、戦闘にまきこまれることになる。
戦闘がとてもリアルに描かれていて、迫力があり、突拍子もない設定にも妙に現実感を感じます。現実の日本人のアメリカに影響されまくっている状態が、とっても痛烈に描かれているような気がします。
まあ、堅苦しいことを考えなくても、とにかく面白いです!! かなりお勧めですね。まだ読んでいない人は文庫になっているので読んでみましょう。
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★★★
○ 自由未来 ロバート・A・ハインライン ハヤカワ文庫SF
SF御三家の一人ハインラインの作品。久しぶりに読み返してみました。
アメリカである夜、原子爆弾が落とされます。主人公の一家は自家用シェルターに避難するものの一歩外へ出るとそこは予想もできない世界だった... これ以上はネタばれとなってしまうので言えませんが、時間移動ものです(このくらいのネタバレはご容赦くださいな)。もっともその後がさすがに一筋縄では行きません、なかなか興味深い、想像もできない世界が展開されます。
おもしろさは、とりあえず面白いです。でも文句なく面白いとはちょっと言えないかな。人にもよるけど俺には主人公がちょっと気に入らない、読んでいて憎らしくなってくる。それにテクノロジー的描写はあまりなく、その文明的な描写が多いのもそれほど好みに合わないのかもしれない。文明はいわゆる欧米に関するものなので日本人の僕たちは客観的に見られるかな。でも人種差別問題とかそういったことはどこでもあるか。
それでもこの作品で一番印象に残りのはやっぱり主人公だね。まあこの主人公あってのこの作品、と言っていいんじゃないかな? みなさんも読んでみてください。
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★★★
○ 宇宙の戦士 ロバート・A・ハインライン ハヤカワ文庫SF
今映画でやっているスターシップ・トゥルーパーズの原作。
少年が昆虫のような異星生物との戦争を戦い抜いていく課程で成長していくという物語です。なんとなく機動戦士ガンダムに似ています。モビルスーツみたいな物に乗っているし。でもガンダムよりよほど現実味を感じますね。
映画は見たことないので何とも言えませんが、この本はけっこう前に書かれた物で、当時は戦争を肯定的に書いていることに対して批判が出て話題になったそうです。僕はそうは感じませんでしたけど。
映画を見てつまらないと思った人もこの原作は読んで欲しいですね、絶対映画より面白いですよ。(映画見てないのにこんな事いっていいのかな(^^; )。
だいたい原作より面白い映画ってなかなかないですよね、特に原作に忠実な場合。
この本はかなり前に読んだんですけど、今回映画になったので紹介してみました。あんまり映画の評判はよくないみたいなんで。原作は面白いですよ。
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★★★
○ ミステリアス・アイランド(神秘の島) ジュール・ウ゛ェルヌ 集英社文庫
いわゆる無人島もの。ロビンソンクルーソー物です。作者は「2年間の休暇」や「海底2万里」などで有名ですね。
気球に乗った5人が嵐で飛ばされ、太平洋の無人島に流されます。そこで力を合わせ生き延びていくわけです。ありがちですね。しかも御多分に洩れず、何でもありの島で衣食住何でもそろってしまいます。さらに5人はそろいもそろって勇敢で誠実で頭のいい強い男たちです。当然、数々の事件を乗り越えていきます。
と、こう書くとなんかつまらないみたいですが、そんなことはありません。作者の得意な冒険物ですからね、なかなか読ませます。無人島物の中でも上位にランクされるおもしろさでしょう。(でも、やっぱり、そこまでするか!というほど、この島には何でもある。)それにこの物語は実は作者の別の有名な物語の続編となっています。とても有名な作品なのでほとんどの人が知っているでしょう、その作品とは....
ここでは言えません。どうぞ読んでみてください。
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★★★★★
○十角館の殺人 綾辻行人 講談社文庫
新本格のエース、綾辻行人の記念すべき第一作目です。
もう、超お勧めですよ。ただでさえ本格推理の好きな僕ですからね、完全にはまっちゃいました。
この後、館シリーズとして〜館の殺人と言う作品が続いているわけなんですが、この一作目が一番面白いとおもいますね。展開に無理がないし、なさそうで実はありそうな感じだし。
大学生のミステリーサークルのメンバーが無人島に行くわけです。そこで殺人が起こるわけです。どういう展開になるのか?
興味津々ですね?みなさん読んでみましょう!! 僕の一押しです。
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○エジプト十字架の謎 エラリー・クイーン 創元推理文庫
本格推理といえば、エラリー・クイーン。定番ですね。これは僕の読書好き人生のなかで、”推理がすき!”という根本的な習性を植え付けた記念碑的作品です。
小学校3年の時に図書館で児童向きに意訳された物を読みはまってしまいました。読者への挑戦状に素直に挑戦し見事に負けたのを覚えています。その後、完訳を読んでさらにはまり、現在のエラリー好きが出来たわけです。
実際、エラリーの国名シリーズの中でもトップの出来ではないでしょうか?
相変わらず題名はこじつけですけど。
いきなり殺人事件現場から始まります、しかも首を落とされた死体の張り付けです。さらに同様の殺人が連続して...
いろいろな面でバランスの取れた良い作品だと思います。エラリー初心者に特にお勧めです。
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★★★
○震源 真保裕一 講談社文庫
この震源は1996年にホワイトアウトで吉川英治文学新人賞を受賞した作者の第3作目に当たります。ホワイトアウトはかなり人気が出たようなので知っている方も多いでしょう。
この震源もなかなか良いです。一見すると分厚い本で(文庫で630ページほど)読むのに骨が折れそうですが、僕は一気に読み終えてしまいました。ジャンル的にはミステリーです。題名どおり地震が国家的陰謀として話に絡んできます。一人の地震観測者が調査に乗り出すのですが、しかしそこはミステリ、そのまますんなり終わるはずもなく....
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★★
○マジックミラー 有栖川有栖 講談社文庫
ここ10年位で急に人気が出てきた新本格推理ものです。新本格といえば(僕の中では)綾辻行人ですが、有栖川有栖も新本格の代表的な作家の一人でエラリー・クイーンのような作風です。いわゆる僕好みです(^^。
殺人が起こり、アリバイに鉄道が関係してくるわけです。これは作者の作品としては珍しくいわゆる鉄道ミステリか、と思わせて...
この先は言えません。どうぞご自分でお読みください。でも僕としては作者のこてこてなエラリー風な所が好きなので、ちょっと残念。
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