台湾「行天宮 北投分宮」訪問記 |
1987年、『幽幻道士』がTBSで放送された時、そのオープニングとエンディングはビデオ版『キョンシーズ』に収録されていないシーンだった。
内容はこうだ。
時は現代。屋外でお茶を愉しむ金おじいさんの元へ子供達が駆け寄ってくる。この子供たちの中にはテンテンやスイカ頭もいる。
テンテンが「私たち夏休みなの!だから色んなお話を聞かせて!」とお願いし、金おじいさんが「とっておきの怖い話をしよう。むかしむかし…」と語りだし、キョンシーズの冒頭・親方が馬車を走らせるカットへと繋がるのだ。
そして映画の最後にまた現代の場面に戻り、「本当にあった話なの?」とスイカ頭。金おじいさんが「作り話じゃ」と返すと子供達全員で「どっか〜ん!」とズッコケて劇終となる。
前述通り、これらのシーンはビデオ版に収録されておらずテレビ放映のみだったため、かつては「なかなか見られない幻のシーン」だった。
しかし2005年に発売されたDVDにはこのシーンが特典映像として収録された。また2017年に発売されたブルーレイディスクにはテレビ放映通りのバージョンが収められている。Amazonプライムビデオなどの映像配信サービスで見られるのはこのBD版が元になっているので、今では誰もが見た事のあるお馴染みの場面となっているだろう。
さて、この現代の場面がどこで撮影されたかである。
1カット目と2カット目を見ると、神社かお寺のようである。ただし台湾で最も有名な龍山寺ではない。
最近になってテンテン愛好家の仲間が、この場所は行天宮 北投分宮であると特定したので、その情報を頼りに現地へ向かった。
行天宮は、台湾で最も有名な廟(びょう)の1つで、三国志の関羽が祀られている。
その本宮は台北市の中心にあるが、映画の撮影に使われたのは郊外の北投地区にある分宮だ。
台北駅からメトロで約40分の忠義駅へ。そこから徒歩約10分。道中至る所に案内表示があるので迷わず到着できる。
行天宮 北投分宮に到着!丘の上に荘厳な建物がそびえ立つ。境内への入り口は東西に2つある。
東側(向かって右側)の入り口を目指して階段を上ると…
上ると!
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境内に入って本堂を正面からとらえると、そこは2カット目の場所そのものだった。
しかし、映画では手前に黒い影が映っていたが、それらしき物はない。
あれは線香を供える香炉のシルエットだったと思われる。
調べると、PM2.5など環境への配慮から、2014年に本宮と共に香炉が廃止され、現在は焼香そのものをしなくなったという。
香炉廃止の動きは行天宮が最初で、他の神社仏閣などにも広がりつつある。長い線香を持って祭壇にお辞儀して供えるのは中華文化圏では伝統的な作法であり、キョンシー作品でもお馴染みの光景だが、近い将来台湾では一切見られなくなるだろう。
この香炉廃止の事は渡台前から知っていたので、映画のカットと同じ写真を撮影したい私は、3Dプリンターで香炉の型を作成して持参した!
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金おじいさんと子供の場面は、廟の外にある広場で撮影されていた。
その位置関係が分かる写真を掲載しておく。
写真で示している木の裏側に金おじいさんと劇場主が座ってお茶をしていたのだ。
金おじいさんが座っている位置は、背後の木と奥に見える門から特定できる。
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子供たちが駆け出した場所。
スロープが作られ、バリアフリー化されている事に時の流れを感じる。
金おじいさんに話しかけるテンテンと子供達。
後方にクリーム色の柱と梁がある。
これは日本の神社でいうところの手水舎(てみずや)だった。
参拝前にここの水道で手と心を清める。
子供達と話す金おじいさんの後方に、低い塀がある。
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塀は年季が入っていて、おそらく当時のままだろう。
私が訪れたのは土曜日。金おじいさんと子供達がいた場所には家族連れが集い、映画と同じようにのどかな時間が流れていた。
行天宮 北投分宮
住所:台湾台北市北投区中央北路4段18巷50号
アクセス:MRT淡水信義線・忠義駅より徒歩10分
開門時間:04:00〜20:00