なにしろ僕にとって海外旅行は初めての体験なのだが、「じゃ、ちょっくら出かけてくるわ」って感じの比較的リラックスした気分で自宅を出発。
一緒に行くのは、会社の同期のエイチ氏。
彼は雨男だそうで、なるほど今日も雨が降っている。
横浜から電車に乗り、成田空港へ。
航空券を受け取り、出国審査、現金の両替などの諸手続きを済ます。
空港内で迷った以外は、特に問題なし。ちょっと拍子抜けである。
どうやら、今回の旅行で利用する航空会社は、アメリカン航空らしい。
サンノゼ国際空港まで行き、そこでラスベガス行きの国内線に乗り換えるようだ。
サンノゼ行き出発ゲート
日本を出発するのが17時05分、向こうに着くのが同じ日の朝10時30分。
なんとなく得した気分である。
飛行機の中は、決して快適とは言えなかった。
9時間以上も狭いシートに座りっぱなしなのだ。
しかし、なにもしなくても飛行機はどんどん米国に近づいていくのである。
よくわかんないけど、機内でこんな紙を渡された。
これに名前や滞在先などを書く。
裏には「逮捕されたことがありますか?」とか「ナチスと関係がありますか?」とかの質問が書いてあった。
この状況で、そんな質問に正直に答えるやつはいないだろうと思った。
機内の様子。
結局、ほとんど眠れないままサンノゼ空港に到着。
機内から見える景色も、なるほど日本のそれとは違う。
こんな感じ。
機内400問ペーパークイズを見事クリアした我々は、無事米国上陸を果たすことが出来た。
日本はあんなに蒸し暑かったのに、サンノゼは結構涼しい。
むしろ、Tシャツでは肌寒いくらいだった。
周りの景色も日本とは違う。
タラップを降りてすぐそこが、入国審査ゲートである。
いよいよ英語圏、と思いきや、いきなり日本語が書いてある(内容は忘れた)。
我々日本からの旅行者の並ぶべきカウンターも示されていて、混乱なく手続きは終了。簡単過ぎる。
そこから国内線のターミナルまでシャトルバスに乗るわけだが、まあ当然のことながら周りは異人さんだらけ。
耳に飛び込んで来る言葉も、当然英語。
ここの乗り換えのときはJTBの添乗員さんはついていないのだが、東京であらかじめチェックインを済ませているので、あとは搭乗ゲートにいくだけ。簡単である。
空港内には、結構日本語の表記もあったりする。
乗り換えた飛行機は、やっぱり国内線と言った感じのこじんまりとしたものだった。
機内では飲み物とスナック菓子が配られたが、このお菓子がすこぶるまずい。
でも、隣に座っていた東洋系の少年二人は、美味そうにバリバリ食っていた。
日本のポテトチップスを味あわせてやりたいと思った。
そして、いよいよ、ラスベガスはマッカラン国際空港に到着。現地時間で13時10分。
既に日本を出て12時間以上経っているが、体調は悪くない。
空港に到着し、到着ゲートから出たところで、いきなりスロットマシンが目に飛びこんでくる。
もちろんこのスロットは、ホテルにあるものと同じ。
ジャックポットを当てると、数万ドルが手に入るあれである。
到着から出発まで、俺達から搾り取ろうというのであろうか。
JTBの添乗員さんに連れられて、空港の中をてくてく歩く。
こんな店が、なぜか空港内にあった。
キャトルミューティレーションされて北朝鮮に連れて行かれないように気をつけなければ、と気を引き締める。
ターミナルからの移動は、近代的なモノレール。
空港の広さと、サービスの徹底ぶりに舌を巻く。
ちなみにエイチ氏は、荷物検査のところで引っかかっていた。
どうやら、空港側は無作為に人を選んで、荷物チェックをしているらしい。
彼はバッグの中をあらかた探られたようだ。運の悪い男である。
モノレールで移動し、JTBがスタンバイしていたバスに乗りこみ、いよいよ市街へ移動。
バスターミナルには、ごついリムジンがこれでもかと並んでいる。
この仰々しさ、いかにもラスベガスらしい。と勝手に偏見。
ちなみに、ラスベガスは砂漠の真ん中にあるわけで、年間降水量も十数ミリというものだそうだが、めずらしく前日雨が降ったそうで、添乗員さんもびっくりしていた。
僕は、エイチ氏の徹底した雨男ぶりに、びっくりした。
空港からホテルまでは、約15分。
ぬけるような青空、だだっ広い風景。遠くに見えるど派手でどでかいホテル。
(金色のホテルが『マンダレイベイ』、その横のピラミッドがホテル『ルクソール』)
日本では、絶対に味わえない景色である。
バス内から撮った、ホテル『ニューヨークニューヨーク』。名前だけ聞くと、ラブホテルみたい。
ニューヨークの摩天楼をイメージした外観。
こんなものを作ってしまうアメリカ人は、言わずもがなバカである。
ちなみに僕達の滞在するホテルは、パリをイメージした『パリス』。
ガイドブックなどによると、そこそこのホテルだそうだ。
実物の2分の1の大きさのエッフェル塔が、シンボルである。
話を聞くとびっくりするが、現地に行ってみると他のホテルも奇抜なものばかりなので、それほど注目って訳でもなかった。
カジノの天井は、お台場のビーナスフォートのように空の絵が描かれており、地下街はパリの町並みをイメージしているそうだ。
ホテルに到着すると、これまたJTBの添乗員さんが待っていた。
既にホテルのチェックインなど済ませてくれていて、大助かり。
非常に頼もしく見えるし、文系学生の希望就職先No.1ってのもうなずける。
ここから宿泊する部屋に移動するわけだが、エレベーターホールまで行くにはカジノを通る必要がある。
ラスベガスのホテルはどこでもそうなのだが、とにかくホテルを出入りする時には、必ずカジノを通らなければ行けない作りになっているのである。
フロントに行くにも、カジノ通過が必須。
そのくせ21歳以下は、カジノ内に入るには保護者の同伴が必要で、しかも立ち止まってはいけないらしい。
この辺は法律でかなり厳しく規制されていて、ちょっと若く見えるとID(身分証明書)の提示を求められる。
酒やたばこに関しても同様で、もしこの決まりを破ると、カジノ側が相当の罰金を払わされるそうである。
それから、カジノ内は一切の撮影が禁止されている。
といっても、これは特に法で定められているわけではないようで、最近では撮影可の所もちらほら出てきているそうだ。
また、なんだかんだ言ってビデオで撮影している人もたまにいる。
フラッシュをたくのは、さすがにまずいと思うが。
ホテルのいくつかは、地下通路や無料モノレールでつながっている。
これは、地下通路を通って隣のホテル『バリーズ』に行く時の、バリーズ側カジノの入り口にある巨大スロット。
写真撮影禁止といいながら、みんな撮影していたので撮ってみた。
でかいけど、1クレジット1ドル。
ちなみに僕の後ろには、ジャックポットがクルマ(実物が飾ってある)のスロットコーナーと、100ドルスロットがあった。
さて、僕達の部屋はホテルの10階であるが、そこのロビーで添乗員さんからいろいろ説明を受けた。
チップなどの習慣、ホテルの設備、行ってはいけない危険な場所、帰りのこと等々。
ホテルのカードキーを受け取り、とりあえず部屋へ。
大きなベッドが二つ並ぶ、なかなか豪勢な部屋。
でも、ラスベガスのホテルの部屋にしては、比較的狭いらしい。
ちなみに、窓から見える景色はあまりよくない。
客室フロアにも、自動販売機の類は存在しない。
部屋でくつろがれると、カジノに客が来ないからである。
なにか用があれば、下に降りてきてくれ、ということらしい。
荷物を部屋において、とりあえずエイチ氏とおでかけ。
いきなりカジノでは遊ばずに、ホテルを見て回ることにした。
まず、彼が行きたがっていたホテル『ミラージュ』へ。
これは夜の写真だが、『ミラージュ』の名物の一つとして、夜の火山ショーがある。
巨大な噴水から水が大量に流れ出し、てっぺんから派手に炎が噴き出すのである。
外で行なわれていて、見るのはもちろん無料。
ラスベガスにはこんなスケールのでかいブツがごろごろしている。
話は本題へもどる。
ホテル内は冷房が効いているので涼しいが、外も陽射しの割にそれほど暑くない。乾燥しているからだろうか。
そして、街の歩道橋には、もれなくエスカレーターが付いている。
サービス満点である。
ほどなく、『ミラージュ』に到着。
やしの木の植えられたエントランスを入ると、右手にガラス張りの檻みたいのがある。
どうもここで、ホワイトタイガーを飼っているらしい。
やることがいちいちすごいと感心しつつ、苦笑い。
ここのホテルではじめてスロットをやってみる。
スロットにはコインの他に紙幣を食わせることも出来るので、とりあえず20ドルほどすってみた。
この時はまだ、スロットのお楽しみをよく分かってなかったので、ほんの10分ほどで20ドルなくなる事実にびっくりしていた。
ほんでまあ、そこのバッフェ(バイキング形式のレストラン)で飯を食ったのだが、これがまたまずかった。
で、『ミラージュ』を出るときになんとなく持ち物をチェックしてみると、オーボウイな出来事が発生。
いくら探しても、部屋のキーが見つからないのである。
どうやら、落としたようである。
いきなりのアクシデントに、めちゃくちゃブルーになる。
泣きそうな顔でホテルに帰り、さっきお世話になった添乗員さんに事情を話すと、どうやらフロントで再発行してもらえる様だ。
早速英会話の出番。頭の中で英文を考えながら交渉してみると、あっさり通じた。
一気に浮かれ気分になった。
このあと、エイチ氏と僕は待ち合わせ時間と場所を決め、単独行動をすることにした。
まずは、自分のホテルのカジノを攻略することにする。
ここでちょっと、カジノの簡単な説明。
カジノにはスロットの他にも、ブラックジャックやポーカーなどのカード台、ルーレット、さいころを2個振るクラップスなどがある。競馬、テニス、フットボールなどのスポーツの結果に賭けることも出来る。
5セント硬貨1枚からプレイできるスロット台から、最低500ドルからのブラックジャック台、はては庶民は一生縁のないであろうVIP専用スペースまであり、さまざまな大人が楽しめるものになっている。
また、カジノ内にはセクシーな格好のウエイトレスがいて、彼女達に飲み物を頼めばアルコールでもなんでもタダで飲み放題。
ただし、持って来てくれたウエイトレスには1ドル程度のチップを支払う必要がある。
また、カジノ内には「キャッシャー」と呼ばれる両替所があり、高額紙幣の両替等を行なっている。
ここではなんと、日本円をドルに交換出来たりする。銀行並みのサービスである。
さまざまなギャンブルを楽しめる鉄火場で、少ない賭け金で一攫千金を狙えると言う理由から、僕はとりあえずスロットを楽しむことにした。
本当は、会話をしないで済むというのもあるが。
はっきりいって、スロットはつまらない。
カネをベットしてボタンを押すと、あとは勝手にドラムが回って止まるだけ。
ひたすらスピードくじを引いているようなものである。著しくゲーム性が低い。
と言っても、レートの低い(25セント2枚賭け)スロットでちびちびやっていると、あっという間に時間が過ぎる。
ドラムがくるくる回っている様子を眺めていると、催眠術にかかったようになり、回りの音が聞こえなくなる。時差ぼけのせいかもしれないけど。
気付いたら、90ドルも負けていた。
パチンコを考えるとたいした金額ではないが、現金をあまり持っていない(この時点で100ドルちょっとしかなかった)僕にとって、これでは今後のカジノ生活に重大な支障が出てしまう。
エイチ氏と合流してどうしようかと考えていると、ふとATMが目に付いた。
このATM、どこのカジノにも最低2台は設置されている。
クレジットカードでキャッシングが出来るように設置されているものだが、使い方を覚えると非常に危険なマシンと化すことは想像に難くない。
しかし現金のない僕は、あえてその危険に挑んだ。
作りたてのVISAカードをマシンに通すと、画面に説明が出る。
なんとなく読んでみるが、全てを把握しないままどんどん手続きを進めると、キャッシュ額の画面になったので、100ドルを借りることにする。
ここで当然、マシンから現金が出てきてウハウハ、ってのを想像していたわけだが、いつまでたっても現金が出てこない。
それどころか、画面に「Thank you.」とか出ている。これで手続きは終わりってことだろう。
まさか、いきなり100ドルぼられたのか!?とパニックになりかけだったが、画面をよく見ると「一番近くのキャッシャーに行け」みたいなことが書いてある。
不安を抱きつつキャッシャーに行き、交渉開始。
と言っても、英語で何て言っていいか分からない。
「あっちの黒い機械でキャッシングしたけど、現金が出てこない」と言いたいのだが、カードを見せて「キャッシュキャッシュ、マシーンマシーン」とか言うだけでは伝わる訳もなく、係の人は「ATMはあっちにあるよ」と親切に別のATMの場所を教えてくれて、奥に引っ込んでしまった。
それでも、ここで一万円を手に入れないと俺の今後はない、とばかりに必死こいて主張。
さっきの人を捕まえて「I have cashed!」とむちゃくちゃな英語を言ってみると、「IDとカードをよこしな」とのこと。
思わずエイチ氏と顔を合わせて「通じた・・・」と言ってしまった瞬間だった。
パスポートとカードを渡すと、程なく彼が100ドル分の紙幣とレシートを持ってやってきた。
レシートにサインしたあと、無事に100ドルを手に入れることに成功。
いい経験になったと思いつつ、あまりのエネルギーの消耗に、それまでやる気マンマンだったスロットリベンジへの意欲がかなりしぼんでしまった。
ここでエイチ氏、お気に入りのブラックジャックをするということで、ちょっと見物。
貧乏人の僕らは、一番レートの低い5ドル台を探し出し、そこに陣取る。
ブラックジャックは、ゲームをするだけならジェスチャーだけでプレイできるので、会話が出来なくても安心である。
ただし、ディーラーや他の客との会話を楽しむには、当然ヒアリング能力が必要。
隣に座った見ず知らずの人に話しかけられても、英会話が出来ないと満足に答えることが出来ないので、歯がゆい思いをする。
ブラックジャックが来て「Nice!」と言われても、「Thank you.」くらいしか答えられない。
ブラックジャックの魅力、半減である。
英語が出来ない僕としては、人生で初めて、心の底から英会話を学びたいと思った。
さてエイチ氏、ブラックジャックを始めるもいまいち調子がよくない。
ここまでの勝ち分を放出して、とりあえず終了。
開いている席を譲ってもらうことにした。ブラックジャック初体験である。
ブラックジャックは、一攫千金を狙うには向かないが、少ない掛け金で長く遊べるし、駆け引きもかなり楽しめる。
これまた、時間があっという間に過ぎていく。
気付いたら午前1時。2時間くらい座っていたことになるだろうか。
なんとか40ドルほどプラスに持っていき、本日の収支はマイナス50ドルほどになった。
ひとまず安心。
ところで、このブラックジャック台で面白い出来事があった。
僕の遊んでいた卓に、若者がビール片手に座った。
無論、ディーラーがID提示を求める。
若者が得意げに差し出したIDをにらむディーラー。ちょっと様子がおかしいので、まさか21歳未満なのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
なんと彼は、前日誕生日を迎えて21歳になったばかりだったのである。
しかも、隣の卓に双子のもう一人が座っていて、卓は大盛り上がりだった。
カジノで遊んで、この日寝たのは午前3時30分。
カジノは24時間営業だし、いつも薄暗いから時間感覚が全く無くなってしまうのである。
JTBの添乗員が、空港で「ラスベガスに来たら、睡眠時間3時間くらいになるよ」と言っていたのは、あながちうそではないようだ。
明日はいよいよ、スカイダイビング。朝6時30分起床である。
ホテル『ベネチアン』の建物内にある水路。
名前から分かるとおり、イタリアのベネチアをイメージしたホテルである。
ここも天井は空の絵。
ホテル地下のショッピングモールの真ん中にこんな水路があり、ゴンドラに乗ってこの水路を遊覧することも出来る。
建物内にこんなものを作るという発想が驚き。びっくりしてばかりである。
夜のラスベガス。
遠くに、我々が泊まっている『パリス』のエッフェル塔が見える。
手前の「][」こんなマークのホテルは、フラミンゴヒルトン。
映画『バグジー』でも出て来た、歴史あるホテルである。
大通りは深夜でも明るく、人も結構歩いているのでそれほど物騒ではない。
が、ラジカセを抱えた黒人集団なんかも出現するので、目を合わせないようにしなければならない。
あと、ポルノ雑誌のビラをまいている人がいっぱいいた。
ニ千円札、100ドル札、航空券。
浮かれて撮ってみた。