4.コントラスト

水墨画に重要なのはコントラストです。いってみれば白い空間と黒い空間をどううまく配置して全体を統一させるか・・ということです。これは中国の陰陽思想に通ずる大切なポイントでもあります。白が陽で黒が陰とした場合、黒が多い絵は全体に暗くなりますし、白が多ければ明るくなります。一番よいのは画面の中で陰陽のバランスが保たれているものがよいですね。見ていても精神的に安定できます。また画面のなかの構図とも深くかかわってきます。西洋画はシンメトリーで構図をとらえることによって美を表現しますが、日本においては、アンシンメトリーな構図でバランスをとろうとする傾向があります。

右下に重たいものを描いたら、左上にも若干重たいものを持ってくるとバランスがとれる…というような感じです。そのバランスをとる方法として墨のコントラストを考えて薄くしたり濃くしたりと調整しながら描いていきます。

こうした調整は「いけばな」の基礎に酷似しています。三角の鋭角な3点をつねに意識しながら構図を考えていくと比較的うまくいきます。

また落款印でその3っつめの点を押さえて全体の構図をしめる場合もあります。この場合はあえて、2点のみしか意識して描かず、あとの一点は落款印を構図印として使用して全体のバランスをとるわけです。

初心者にありがちな失敗のなかで、めいっぱい画面に絵を描いてしまって、落款を押す余地のなくなってしまうパターンかあります。いわゆる「描きすぎ・・」というやつです。水墨画の場合は「なにか物足りない…」というレベルであえて筆を置くと、落款を押したときにグッと作品が引き締まります。

落款もコントラストに含まれますので、朱が多い「白文」の印と白地の多い「朱文」の印とを作品によってうまく使い分けます。全体に線描が多めで、画面が白い場合は「白文」の印でひきしめてやります。一方、全体に墨の多い作品にはあえて目立たない「朱文」を押します。水墨画はとにかくバランスの芸術です。西洋画にはないバランス感覚を養うよい要素になるでしょう。