2016梅雨時ご挨拶その2『先生、寝込む(仮)』(『誘惑〜Induction〜』より)

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 ベッドの中からサイドテーブルの上に放り出してある煙草を無意識に手に取ろうとした守崎は、ここ数年なかった身体のだるさに伸ばしかけの手を途中で落とす。三十九℃を超えている体調は中途半端な悪寒を振り切り逆に元気になったかの様に感じられるが、午前の診察が終わり明日の公休と合わせて一日半で体調を戻さないといけない以上大人しくするしかない。
 他に何かあった気がして閉じたままの目を開け、首を巡らせた男はベッドサイドの床に座り込みベッドに腕と頬を乗せている少女に気付く。白い繊細なブラウスと丁寧に結い上げた漆黒の髪を見、用事が済めば帰る様に厳命していた事を思い出し男の眉間に皺が寄る。言い出せば簡単には折れない意外な強情さは不思議と不快ではなかったが、しかし確実に青年男性よりはか弱くただでさえ儚げな少女に風邪を移す危惧は看過出来るものではない。
「……」
 熟睡している少女の顔を暫く眺めた後、男は力を抜き再び目を閉じる。既に警告したのだから後は自己責任だと思う部分もあるが何よりも身体が自由に動かなく、そして奇妙に精神が凪いでいた。いつまで居るつもりかは知らないが、勝手に居座っているのだから好きにすればいい…無防備に寝込んでいた間に傍に他者の存在がある不快感すらどうでもいいのは熱のせいだろう。
 微かに上下する華奢な肩にだるく重い指をそっと伸ばし、男はしなやかな前髪に触れる。

 朝から梅雨らしい激しい雨で薄暗かった空は再び目が覚めた時には暗くなっていた。帰宅前の処置が効いたのか楽になった気はするが、まだ熱は高く妙な悪寒で感覚器官がぼんやりとしている。
 かなりの寝汗を掻いている筈なのだが顔や首回りや手がすっきりしているのは眠っている間に少女が拭ったからなのだろう、熱いタオルで拭われる心地よさを微かに憶えていた。ゆっくりと手を動かすと多少重さを感じるものの身動きが出来ないと言う程ではない。少女を起こさない様に静かにベッドから抜け出た男はそっと華奢な身体を抱き上げる。風邪ひきの体力のない腕でも軽く抱き上げられる細い肢体はまだ熱のある手に心地よく、男は広いベッドの中央を避けて横たわらせる。
 柔らかな薄いブラウスと清楚な濃灰色の膝丈のスカートに結い上げた豊かな黒髪は良家の子女と言うより幼な妻を連想させ、男は少女の胸元に手を延ばし繊細な細工の貝釦をゆっくりと外していく。服が皺にならない様になのか、どこか悩ましい風情に触発されたのか、梅雨時の薄着を解いていく男の指先で乳白色の滑らかな肌と白いブラジャーに続き薄い腹部が露わになった。静かにブラウスを脱がす男の腕の中の身体がひんやりと心地よい。
「ん……」
 微かな声の後、腕の中で細い身体が揺れ弛緩していた四肢に力が戻る。寝起きでおっとりと瞳を瞬かせていた少女が至近距離の男に柔らかく微笑んでから不安げな表情になった。
「先生、まだお熱が……」
 そう言い掛け自分の姿に気付き瑞穂の頬が赤く染まる。
「あの、あの……横になって下さい。まだお熱があります」
「……。ああそうだな」
 心配そうな少女を男はベッドの上でのしかかる形で抱きしめて唇を重ねる。腕の中の身体の冷たさが堪まらなく心地よく、深々と重ねた唇の中で少女の舌を舌で捏ね回す。冷たい口内粘膜が温い葛饅頭の様で甘い。風邪を移すかもしれない思うものの、毎日の様に抱いていてもまだ下着姿を晒す事を恥じる初々しさと清楚さを失わないまま漂う匂い立つ様な危うい色香が男の歯止めを狂わせる。
 回した手で背中のブラジャーのホックを外すと豊かな形良い乳房に貼り付いたままではあっても弛んだレース地の下で僅かに撓む。水飴を舐める様に口内と舌を舐り回す男の腕の中で白い身体が身動ぎする度にブラジャーは徐々にずれていき、男の指は次にスカートのファスナーへと伸びて下ろしていく。
 ねっとりと唾液の糸を引いて唇を離す男に、発情で潤みきった瞳の少女が切なげに見上げてくる。
「駄目です……まだ風邪が」
「お前の身体は冷たくていい」
 男の言葉に自制を求めてた少女の瞳が揺れ、戸惑いがちに華奢な手が男の頬に触れた。男女の交わりらしく背中に絡めてきたりはしない子供の様な仕草に嗤いつつ男はゆっくりと白い肌を歯と舌で探りながら頭を下へと動かしていく。

 クリトリスを甘噛みしている男は髪を乱していた手がいつの間にか左右に落ちているのに気付く。まるで何度も射精した後の様なぐっしょりと濡れた下腹部は細い腰の下まで愛液に滑り、ガーターを残し衣服をすべて剥がれた華奢な身体は前に男が付けた唇の跡や歯形がまだ残っている。人目につく場所だけはと哀願される度に意地の悪い攻めを繰り返しているが、今はそれも考えていなかった。腰をがくがくと震わせて泣きじゃくる少女にやり過ぎた事に気付き、男は愛撫のし過ぎで赤く腫れかけたクリトリスにキツく吸い付く。吸引音と少女の甲高い悲鳴が寝室に響いた。
 泣かせるつもりはないのだが。
 愛液と唾液まみれで薄い下腹部に貼り付いていた柔毛が一本、鼻先でぴんと跳ねる。まだ熱が下がっていないのだろう思考力が格段に落ちた頭は空回りもせず、男はしたいがままにクリトリスを舌で転がす。弄り過ぎられて身も世もなく悶える少女を可愛がるつもりで、男は執拗に加減を忘れたまま舐り続ける。
 まだ挿入する前から半失神状態の少女の腰を引き寄せ、猛りきったものをゆっくりと少女の中へと挿入していく。まだ抽挿前から汗でぐっしょりと濡れている身体よりも更に熱い膣内に埋めていく男性器への締め付けが堪らなく気持ちよい。まるでとどめを差された様な甲高い声をあげて白い身体が撓り、幹や傘を搾り切らんばかりに膣が締め付けてくる。挿入した程度で達した少女の鳴き顔はどこか悲痛で、いつもと違い何も考えず執拗に愛撫し過ぎただけで快楽を越えまるで拷問が何かの様に悶絶する少女に、男はぼんやりと考える。
 可愛がっているだけなのだが。
 ああ、気持ちがいいな。
 汗まみれの身体を絡め、ずちょずちょと粘液質な水音を響かせながら男は少女を求め続ける。どれだけ突き上げても膣奥を捏ね回し続けても腰奥から頭の芯までふつふつと滾る支配欲と独占欲が満たされる事なく溢れ、少女を犯し続けてしまう。体位を変えつつ、稀に突き抜ける快楽に膣奥で精を放ちつつも、止め処なく涌き続ける原始的な衝動のまま、華奢な少女の膣から猛り続ける性器を抜く事なく男は抽挿を繰り返す。互いの汗でベッドのシーツが重く濡れ、特に少女の腰の下はシーツや敷布が吸収しきれず、愛液と精液と汗でねっとりとした池の様な有様になっているその上で、クリトリスだけでなく膣口や小振りな襞も何もかもが鮮やかな鴇色に染まり腫れている中、赤黒い幹がずぶずぶと膣口に埋もれては引き戻される。
 言葉を発する事もなく鳴くか悲鳴をあげるだけしか出来ない少女の涙と汗と唾液で濡れた淫らな鳴き顔を見下ろし、男は笑みを浮かべた。酷い有様で尚清楚で可憐な風情が漂うこの女を綺麗だと思う。
 ぐちょぐちょと音を立てさせて最奥を突き回し、何度かの射精の後でも勢いを失わず猛るものを挿入したまま、男は少女の片方の腿を跨ぎ無力な白い膝を掬い上げて抱え込み足を組み合わせる体位で再び幹を少女の中へと深々と突き入れる。熱に浮かされているのか底無しに犯し続ける男性器を誇示する様に腰を使い、大きな動きで抽挿しては体位の違いで密着度が更にあがった膣奥をぐいぐいと捏ね回す。何度か放った精液と夥しい愛液もあるが全身から滴る様な互いの汗で寝室は男女のにおいが濃密に籠もっていた。それすら、快楽を促進させる。
 乱れきりよじれたシーツの上で白い身体がうねりびくびくと痙攣する。結い上げていた髪は解け、華奢な白い身体と白いシーツに貼り付き黒く細い縄が絡み付いている様だった。一突き毎にぶるんぶるんと跳ねる乳房がいやらしい。もう駄目ですと哀願してきたのは随分と前である筈だが、身体は十分に男を受け入れそして悦んでいる。
 少女の身体が冷たく感じられたのは最初だけで今は男と負けず劣らず熱く火照り汗塗れになっていたが、抱えた細い足は汗で冷やされているのか火照ったままなのか判らなくなる程、性器の快楽が全身を支配していく。どくんと脈打つ度に男自身が少女の膣内で上へと跳ね上がり、少女が脈打つ度に熱い牝肉が男をいやらしく搾り上げる。結合部から垂れる愛液と精液が互いの内腿を伝い、乱れた呼吸と男が呼ぶ少女の名前と悲鳴すらあげられなくなっている弱々しい鳴き声と、腰を打ち付けあう音だけが部屋に籠もっていた。

 カーテンの隙間から差し込む薄暗い日差しに男は目を覚ます。シーツが冷たい。しかも掛布もなければ寝間着や下着すら着けていないらしい…寝起きの僅かな間にそう感じた男は腕の中に抱えている華奢な身体に僅かに目を見開く。
 細くしなやかな絹糸の髪、折れそうな華奢な肢体と豊かな乳房、小さな顔に愛くるしい清楚な美貌。向き合い軽く抱き締める形で眠っている少女に驚くと同時に男を満たしたのはどこか居心地の悪いこそばゆさだった。堪らなく胸の奥で膨らむ暖かな何かに、男は口の端を歪める。
 いつもならば失神している少女の汗塗れの身体を拭い自分は軽くシャワーで流し、酷ければシーツを交換して眠るのが昨日は情交からそのまま眠ったらしい。無様な話だが風邪は治ったのか身体は軽い。
 枕元のスマホで時間を確認しようと考えかけ、男は止めた。明日の出勤に合わせた起床アラームは鳴っていないのだから丸一日寝過ごしたと言う事はないだろう。昨日からの雨がまだ止まないのであろう薄暗さの中、男は少女を眺める。
 受け入れ難い事だが昨夜の行為は大まかには憶えていた。高熱だったとは言え獣染みた原始的な交わりの気まずさに、腹腔の底がざわざわと落ち着かなくなる…あれほど肉欲任せの射精を繰り返しておきながらまた少女を抱きたくなるのは失態を誤魔化したいからなのか、それとも野蛮な性交は野蛮らしく本能に忠実であり快楽に直結するものだったのか。
 空いている手でそっと少女の前髪を直し、指先で額に触れてみるが身体と同じでひんやりとしており風邪を移しての発熱の兆候は感じず、男は息を付く。いつ見てもいつ抱いても少女の身体の細さはどこか男には危うげに見える。不健康な貧弱さではなく生まれついての華奢な骨格に手折れそうなくびれと細いなりの強弱が付いた腰や脹ら脛、繊細な硝子細工を手にしている様な感覚は出会った時から変わらない。毎日の様に抱き膣内射精を繰り返しているのだからいつかは孕みこの薄い腹部が迫り出してくる日が来るのだろうか…全てを手に入れたい反面その想像を男の思考は拒む部分がある。男として逃げるつもりはないが感覚的なものらしいと男は分析して放り出す。
 何時かは確認しないまま男は目を閉じる。
 起きればまずシャワーを浴びるとして、今はまだ眠っていてもいいだろう。帰らず看病を続けた事を叱るのもその時でいい。たっぷり愉しませて貰った後に食事に出掛け、看病の礼に何かプレゼントを買うのもいいかもしれない。――だが今はとりあえず眠っておくとしよう。
 寝乱れて湿ったシーツの上で少女と裸で微睡んでいるのは、豪遊するよりも遥かに贅沢に過ごしている気がした。

梅雨時ご挨拶FIN
FAF201606200143

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