労働運動研究復刊25号 通巻409号 2010年4月発行
4月号目次
焦点 鳩山政権は不退転の決意で、普天間基地のグアム移転を要求せよ!
特集 グローバルな構造変動に対応する日本再生戦略の策定を
新しい局面に入った普天間基地撤去闘争
―抑止力としての海兵隊は真実に沖縄に必要なのか―
沖縄近現代史研究者 沖縄大学理事長 新崎盛輝
バラク・オバマ米大統領へ―沖縄からの声―
デフレ・スパイラルに陥った日本経済
―労働者を犠牲にした景気回復― 埼玉大学名誉教授 鎌倉孝夫
民主党の農業政策を検証する
―示唆に富むIAASTD(開発のための国際農業技術評価)提言―
農業ジャーナリスト 大野和興
新たな教育運動の実践に向けての貴重な教訓
―津田道夫『国分一太郎―抵抗としての生活綴方運動』改訂版に寄せて―
大阪府立貝塚高校教員 中河由希夫
鳩山新政権への左翼諸党派の反応
―深刻な現状分析の対立の本質は何か― 労働運動研究所 福田玲三
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「百年に一度」の2008年恐慌
―日本人が『戦争』を選んだもう一つの理由―
札幌学院大学経済学部教員 佐々木 洋
不破哲三『マルクス未来社会論』の批判〈下の2〉
社会主義研究家 中野徹三
私の戦後史(2)占領下ヒロシマの怒涛のような政治的劇変の中で
「中国だより」4・〈安徽編〉中国は社会主義なのか
在安徽省 日本語教員 大畑龍次
山本徳二君の死を悼む 京都 妹尾源市
実践的グラムシ研究者―片桐薫さんの死を悼む 労働運動研究所 柴山健太郎
樋口篤三氏の死を悼む 埼玉 菱田 彰
〈読者便り〉戦後史の歪みと闘った佐藤一さん 北海道 佐々木洋
[書評]
加藤哲郎/小野一著「ドイツにおける『赤と緑』の実験」〈御茶の水書房2009年12月刊 8600円+税〉
ゆき・ゆきえ/編集・解説 武井昭夫・中村慎吉『新編 濱口国雄詩集』〈土曜美術出版社販売 2009年12月刊 1470円+税〉
焦点
鳩山政権は不退転の決意で、普天間基地のグアム移転を要求せよ!
政府・与党は、3月中に普天間基地の移設案を決定すると言明し、「日米合意」に基づくかつての辺野古案に加え、国民新党のキャンプ・シュワブ陸上案、さらにはホワイトビーチと津堅島の海域案などを密室で検討しているという。
しかし、沖縄県議会は2月24日、全会一致で「普天間基地の県内移設反対」の政府宛の意見書を採択し、代表団が上京して政府に手交し、名護市議会は海上・陸上を問わず市内への移設に反対する決議を採択するなど、現地の県内移設反対の声は日ましに高まりつつある。他方、沖縄県外で名前が挙がったすべての移設候補地の住民や議会は、いずれも強い反対意見を表明し、鳩山政権の移設先の選定作業は一段と厳しさを増している。
いま政府・与党の動きを見て痛感することは、2006年5月の「在日米軍再編のための日米ロードマップ」の日米合意以降の劇変した国際情勢、特にアジア・太平洋情勢の分析と、日本の新しい東アジア安保戦略の再構築の努力が大きく欠落していることである。
だがこうした努力は皆無だったのではない。岡田外相は就任直後にこの「日米合意」に至る交渉経過の検証作業の開始を言明していた。だが昨年のオバマ大統領の先触れとして来日したゲーツ米国防長官に「『日米合意』を履行しないなら在沖海兵隊のグアム移転も嘉手納空軍基地以南の基地返還も中止だ!」と恫喝されて、一挙に消極姿勢に転じた。日本のマスコミや御用学者、評論家たちも震え上がり「日米関係の空前の危機だ」といっせいに鳩山首相非難の大合唱を煽り立てた。
彼らは、この在沖海兵遠征軍のグアム移転が米国の新軍事戦略に基づくグアムの一大軍事基地化構想の一環であり、「日米合意」はその構想に日本を引き入れるための単なる口実に過ぎないという事実に目をつぶり、米軍部タカ派の尻馬に乗ったのである。
事実、この「日米合意」直後の2006年7月には米太平洋軍司令部が「グアム統合軍事開発計画」を発表し、その2年後の2008年4月にはこの計画に基づき米国防総省の「グアム統合軍事マスタープラン素案」が承認された。さらに2009年11月には米海軍施設本部からこのマスタープラン(基本計画)実現のための厖大な「環境影響評価(アセスメント)案」全10巻が公開されているのである。
この計画では、沖縄駐留の第三海兵遠征軍の指揮部隊、第三海兵師団司令部および後方群司令部、第一海兵航空団司令部などの海兵隊要員約8000人と家族9000人、各種訓練施設、武器弾薬庫、武器・軍用車両・航空機の修理施設の建設のほかに、原子力空母の一時駐留埠頭の建設、基地防衛の陸軍ミサイル防衛隊までが配置される。さらに普天間基地の移設先に予定されるアンダーセン空軍基地は総面積63.5平方キロで、普天間基地のほぼ13倍、嘉手納空軍基地の4倍の広大な敷地に全長3400メートルと3200メートルの2本の滑走路を有している。上記のアセスメントでも「アンダーセン空軍基地は(飛行場機能の)適合性と基準のすべてを満たした、唯一の理にかなった選択肢である。この国防総省の現存飛行場は、沖縄から移転することになっている航空機のすべてを受け入れるだけの十分なスペースを持つ」「海兵隊の飛行場機能要件は、アンダーセン空軍基地の現存飛行場で対応する」と明記しているという(吉田健正著『沖縄の海兵隊はグアムへ行く』 高文研、09年1月刊)。
これらの米軍側の資料によっても、いま在沖米軍が抱える様々な諸問題は「グアム統合軍事マスタープラン」により十分に解決できることが分かる。鳩山政権は沖縄県民の固い決意を背景に、これらの米軍資料の徹底的な検討に基づき、不退転の決意で普天間基地のグアム移転を要求すべきである。(柴山健太郎)
労働運動研究 復刊第25号 通巻409号 2010年4月発行
4月号目次
焦点 鳩山政権は不退転の決意で、普天間基地のグアム移転を要求せよ!
特集 グローバルな構造変動に対応する日本再生戦略の策定を