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編集後記 平成9年3月

先日某電話会社の御用聞きが当院を訪れた。貴院にある他社の電話交換機は購入后7年を経過して居る。そろそろ耐用年数に成ったから、我社の新しいものと取り替えるべきである。さもないと何時事故にあうやも知れぬ。

先生の場合、急患やお産の電話が或を日突然につながらなくなったら困るでしょう。事故が起こってからでは遅い、幸いこの一帯の工事をまとめて行うから今なら工事費は只にすると云う。

交換機を診もせずに診断された勇気といい加減さに驚いたが、”事故に”と、”今なら工事費は只”と云うコトバに一寸は心が動かされた。

然し冷静になって考えれば、我々は医者であって、病気や怪我した方(機械ならば壊れた機械)を直したりチュ−ニングをするのが、生業である。五感とME(メディカルエンジニアリング)を駆使して交換機全体を診察し、老化部品があれば摘出や移植をしてやり、余命を全うさせるのが努めではないだろうか。

電話会社の感覚は平均寿命が過ぎたら姥捨て山へ捨てろと云うのにどこか似て居る。そのうち壊れると脅かされらば良い気持ちはしない、早速交換機の会社に頼んで外から来た電話線を二股ソケットにしてもらい交換機が壊れてもそこに直接普通の電話機をつなげば通話くらい出来るようにして貰った。

医者も70を過ぎれば、或る者は耐用年数に達し、誤診も多くなるかも知れない。だから定年を設けるという意見も聞かれる。

然し定年が無いことを条件に就職したようなものだから今更条件を変更するのは雇い主の単なる我が儘である。新規採用の方には定年が有るが其れでも保険医に成りたいかどうかをお聞きしてから就職させたらよかろう。

とは思うがもっとも手っ取り速い口減らしは姥捨て山であろう。なぜなら老人いじめは彼等のお家芸であるから。

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